元E級のTS探索者は大金持ちになりたい   作:早乙女らいか

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第13話 変なやつが現れた

「あー……スッキリした」

 

 色々あったお風呂だが結果的には大満足。

 こびりついた汚れも大分落とせたし、入ってよかった。

 

「怜、これを着て」

「あぁ……うぅ……」

 

 だけど試練は終わらない。

 

 俺に用意された服。

 シャツとハーフパンツは普通だからいいとして。

 

 問題は下着だ。

 

「なぁ、本当に着ないとダメ?」

「ダメ。ブラしないと形崩れるし、ショーツじゃないと後々大変だよ?」

 

 テーブルの上に置かれた白いブラジャーとショーツ。

 レディースの下着だ。

 

 正直言って恥ずかしすぎる。

 可愛さと色気がありすぎるというか、今まで違う下着をつけるという事に脳の処理が追い付いていない。

 

 特にブラなんて実物で見るの初めてだし……

 

「上はウチが付けるから……少しずつ覚えていこーね」

「はい……」

 

 言われるがままショーツを履く。

 その後にマリーが俺の後ろに回ってブラジャーを付け始めた。

 

 凄いフィットする……

 けど今まで味わった事がない感覚だ。

 

 本当に着ちゃった、付けちゃった、

 なんかヤバいことしてる?

 

「あっ、綺麗……」

 

 ふと鏡に映った自分の姿を見た。

 今までの自分とは全然違う姿。

 だけど見た目は凄く好き。

 

 まるでモデルさんみたいだ。

 自分の身体なんて信じられないくらい美し…… 

 

「楽しいでしょ?」

「っ!? そ、そそそそんなことは!!」 

「素直になろうね、お姫様♪」

 

 徐々に堕とされている気がする。

 本当にいいのかな……

 当のマリーは楽しそうだけど。

 

 あっ、上も着ないと……

 

「……お腹も空いて来たなぁ」

 

 素材を売り終わったらご飯が食べたい。

 売店よりは食堂の方が色々あるしそっちにしようかな?

 

「怜、着替え終わったよ」

「ん? おぉ、似合ってるじゃん」

 

 着替え終わったマリーは白いTシャツに黒のスカートというシンプルな格好。

 ビジュアルが良ければ何でも似合うというのは本当なんだなー。

 

「サイズとかは大丈夫か?」

「うん。下着含めてぴったり」

「はしたないからやめなさい」

 

 スカートをひらひらと動かすマリーを止める。

 心臓に悪いから煽らないでほしい。

 俺も同じようなの履いてるけどさ…… 

 

 興奮を抑えながら俺達は銭湯を後にする。

 

「さて、素材はいくらで売れるかなー……」

 

 ロッカーに預けていた素材の数々。

 蜘蛛とかウサギとかドラゴンゾンビとかのドロップ品。

 後はマリーが閉じ込められていた水晶の欠片とか、宝物の欲地にあったエメラルド鉱石をいくつか採掘してきた。

 

 いくらになるかなぁ。

 少なくとも今までより遥かに稼げる気はしているけど。

 

「ん? なんの機械だ?」

 

 受付で素材の売買をしようとしていた俺の目に写ったのは、スロットくらいあるデカい機械。

 それが何台も並べられていて、探索者らしき人達がこぞって列を作っている。

 

「すみませーん、これって何ですか?」

「これですか? これは素材のセルフ買取機になります」

「セルフ買取機?」

 

 セルフレジの素材版だろうか?

 よーく見れば機械の口?が開いて、そこに大量の素材をいれている。

 

「えっ」

 

 しかも計算が早い。

 素材を入れて僅か十数秒で現金が出てきた。

 

 まさかあれで買取完了?

 一年半の間に探索者協会も随分ハイテクになったんだなぁ。

 

「よければ手順とか含めてお教えしましょうか?」

「あ、お願いします……」

 

 職員さんに言われるがまま、セルフ買取機を操作していく。

 なるほど、複雑かと思っていたが意外と簡単だな。

 

 アナウンスに従って入力していくだけだし、素材も入れるだけで終わるから細かく分ける必要が無い。

 便利な機械が増えたなぁ。

 

「いくらになるかな?」

「結構しそうだけどなー」

 

 怖いから振込方式にしたけど、いくらになるだろうか。

 何十万かにはなってほしいなー。

 借金もまだまだ残っているし、今日くらいは贅沢できるだけのお金があれば……

 

『総額 1652万4千円です。ありがとうございました』

「「「……」」」

 

 はい?

 今、なんて?

 

「しょ、職員さん? この機械壊れてませんか?」

「へっ? あ、いや、今日メンテナンスしたばかりなので……多分、正常かと……」

 

 額がやばい。

 借金以外で聞くことがないであろう数字がポンと飛んできて、俺も職員さんも固まっている。

 

 どゆこと???

 確かにSランクダンジョンで潜ってるからいつも以上に稼げるかなーとは思ったけどさ。

 

 年収どころか数年分の金額を稼いでないか???

 とりあえず現金で受け取るワケにはいかないから通帳記入で……

 

「怜、今日はごちそう?」

「借金返済してもパーティできそう……」

「わぉ」

 

 なんというか、とんでもない事になってきたなぁ。

 

 ◇◇◇

 

「あ―……うますぎる……」

 

 探索者協会に隣接された食堂。

 そこで頼んだ520円の牛丼を一口食べただけで、俺は思わず涙を流す。

 

 食べさせる人に美味しいと思わせてくれる素晴らしい料理だ。

 かつてダンジョン内で食材とは思えない物を食い続けた俺にとって、この牛丼はどの料理よりも格別すぎる。

 

 生きててよかったぁ……

 ああもう箸が止まんないヤバすぎる。

 

「美味しいね、ここのご飯」

「安いのに美味いんだよなぁ……採算取れてるか心配になるレベルだわ」

 

 それでも前より140円値上がりしてる辺り、流石に無理してた所がありそう。

 値上がりしても安いんだけどね。

 おかわり無料だし。

 

(これからどうしようか……) 

 

 幸せになる。

 そんな目標を立てたはいいけど、具体的に何をするかは決まっていない。

 

 そもそも幸せってなんだ?

 俺は何を得たら幸せになれるんだ?

 

 答えが見つからないまま残りの牛丼に手をつけていく。

 

「どうしたの、怜?」

「え? あぁ、幸せってなんだろうなって……」

「幸せ? 確かになんだろーね」

 

 まあ気楽に見つけていくか。

 幸いにもダンジョンを抜け出してお金も結構稼ぐ事ができたんだし。

 

 まずは借金を返さないとだけど……あーだるい。

 

「げっ」

「どうしたの?」

「借金が1500万になってる」

「なんか凄そう」

 

 購入したモバイルバッテリーでスマホの充電を復活させた後、オンラインで確認できる借金額を見たのだが……

 額がえらいことになっていた。

 

 一年も姿を消してたら利子だってバカみたいに跳ね上がる。

 わかってはいたけどさ……

 

 あぁ嫌だ嫌だ。

 折角、幸せについて考えているのに憂鬱な事はごめんだ。

 

 本当に嫌だけどさっさと返そう。 

 

「一括返済……あぁ……」

 

 指定された口座に全額振り込んだ。

 1500万が一瞬で……

 

 金持ちから貧乏になるってこんな感じなんだ。

 幸福のジェットコースターに心が揺らぎ、また目元に涙を溜める。

 

「よしよし。ウチらならまた貯まるよ」

「そうだなぁ……少しずつ頑張ろう……」

 

 幸いにも今は力がある、マリーがいる。

 昔よりは楽な生活が送れると思うが……

 

「これぞまさに驚きの出会い……だねぇ?」

「ん?」

 

 誰だ?

 声の方向を見れば、金髪のお姉さんが俺に話しかけていた。

 

「誰?」

「さぁ?」 

 

 本当に知らねぇ。 

 こんな子と関わったことも無ければ見たことも無い。

 

 意味が分からず首をかしげている俺達に対して、金髪お姉さんはニマニマと嬉しそうな顔で見ているし。

 

「運命とはまさに驚きの連続……こうして君達と出会えるとは、最高のサプライズだと思わないかい?」

「言ってる意味がわかんねぇよ。お前は誰なんだ」

「ふっふっふっ……私も有名人かと思っていたが、どうやらまだまだのようだね」

 

 ガタッと立ったかと思えば、金髪お姉さんは腕をクロスさせて身体をもぞもぞと動かす。

 

「門梨怜くん、マリーくん、はじめまして。私はケイゼル研究所の宣伝担当にして配信者……」

 

 何がしたいんだと思っている間にあいさつは進んでいく。

 そして周りが急に暗くなったかと思えば、

 

「そして次代のエンターテイナー、ジェニー星崎だ!!」

 

 パーン!! パパパパーン!!

 電気が一気に点灯し、辺りに激しいクラッカー音と紙吹雪をまき散らした。

 

「フハハハハ!! 決まった、決まったぞぉ!!」

「わーすごい」

「無理やり褒めなくていいんだぞ……」

 

 本当になんなんだよ!!

 名前以外の情報が全く入ってこねぇ!!

 脱出して早々、とんでもない人に絡まれてしまったな……

 

「あっ、お話の前に片づけをしなければ……」

「だったら紙吹雪とか出すな……」

「何を言っている!! ドッキリは派手な演出があってこそだろう!?」

「知らねぇよ!!」

 

 謎のこだわりを持つ変人、ジェニー星崎。

 彼女の存在が俺達の行く先を大きく変えてしまう事を、この時は知らない。

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