TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
ご迷惑をおかけします。
あとお気に入りが100件超え&日刊ランキングにも入ってました!
嬉しいです!ありがとうございます!
キラーマンティス。
数いるレベル7のエネミーの中でも、火力が高すぎて運次第ではPL側を1ターンで半壊させてくる奴だ。
単発火力の高さ、命中精度、追撃性能、この3つがこいつの強さの大部分になる。
まず攻撃だがオーガの攻撃なんて天と地程の差がある。
レベルが4も離れているので当たり前ではあるが、他の7レベルのエネミーと比べても火力が高い。
更にこいつは専用スキル【捕食者の複眼】という物を持っている。
これは近接攻撃をする際、命中に大幅な補正をかけるパッシブスキル。
こいつの攻撃を避けるのは諦めた方がいいレベルだ。
最後に追撃性能だが、こいつは常に2回行動、そして2回目の行動は─。
「(一度目にダメージを与えた相手に『必中』の攻撃を行う・・・!!!)」
キラーマンティスの次の攻撃対象は腕を切り落とされた俺になる。
だがいきなりの攻撃で俺は完全に体制を崩した。
どうあがいても、即死─。
奴のもう一つの鎌が振りかざされる。
死ぬ間際だからなのか、やたらと視界に移る物がスローに見えた。
「ダメェェェェェェェェェェェ!!!!!」
その時、ミロネが絶叫と共にキラーマンティスの顔面にポーションを投げつけた。
ガラス瓶に入ったそれは、奴の複眼に直撃して中身が零れ─。
「キュオアアアア!?!?」
ブシュウ!と煙を上げながら奴の片側の複眼を焼いた。
「(アシッドポーションか!)」
強力な酸で対象の防御力を下げれるポーションだが、防御力皆無な複眼に直撃したからか、奴は大きく怯んだ。
その隙に俺は切られた右腕を拾う。
「【アイスフィールド】!」
俺が腕を拾った瞬間、カロルが地面を氷に変える。
そのまま─。
「頼むから・・・踏んでくれぇぇぇ!!!」
自分が装備していた円盾を滑らせるように投げ込んだ。
盾はそのままたたらを踏んでいたキラーマンティスの足元に滑り込んで。
「キュアアアアアアアア!!!」
踏んでバランスを崩して転倒した。
逃げるチャンスは今しか無い。
「走れ!!!」
返事を聞く前に駆け出す。
後ろから3人分の足音が聞こえるため、付いてきてはいるようだ。
キュアアアアアアアアアア!!!
後方から怒り交じりの鳴き声が聞こえる。
どうやら完全に奴を怒らせたらしい。
◇
「ひとまずは隠れれたか・・・」
「ニンジャさん、動かないで・・・!腕の接着がズレちゃいます・・・」
「すまない、助かるよ」
「ううぅ・・・」
何とか奴の視界から外れることが出来た俺たちは巨木の根の下にあった空間に隠れていた。
しかし腕の縫合まで出来るとは・・・薬師なのに外科医も出来るミロネは相当凄いな。
だが泣きながら縫合してくれているのを見ると、罪悪感で満たされてしまう。
「本当はこういうところで繋げたくないんです・・・不衛生だから・・・」
「でも繋げないと血が止まらないからね・・・仕方ないよ」
「出血多量で死ぬよりはマシだからな・・・」
俺の腕は取り合えず何とかなった。
それよりもあのキラーマンティスだ。
「完全に目を付けられた・・・奴は俺らを殺すまで絶対に追跡してくる・・・」
「そ、そもそもの話なんで!なんであんなデカマキリがこんな所に居るんですの!?」
ミレッラの言う通り、キラーマンティスはここに居るはずがないのだ。
ミレッラのシナリオには当然出てこない。
それどころか、あの魔物の生息地はもっと温暖な火山地域だ。
森林で涼しい方の場所であるファストウに居るのがおかしい。
「一体どういうことだ・・・」
ちぐはぐも良いところだ。
シナリオが終わった後に狙ったようなタイミング。
まさか【糸】を操る相手は、やろうと思えばどんなエネミーでも操れるのか?
そんなことされれば勝てる訳・・・。
「(いや、今は生き残ることだけを考えないとダメだ)」
戦闘時では無いため【鋼鉄の精神】が機能せず、右腕が痛む。
この状態でどうこう考えたところでまともな答えは出ない。
「・・・どうするんだい?」
「倒すしか・・・無い」
「あ、あれを・・・?」
「無茶ですわ!明らかに私達とは格が違う!勝つのなんて不可能ですわ!」
「無茶・・・か」
アナケンでは基本的にレベル差があり過ぎると勝ち目がなくなる。
ステータスの比べあいが発生する以上、スキルでも埋められない差が出来ると完封されることもある。
その差は大体3レべとされている。
今の俺たちは最大レベル3、俺に関しては2だ。
「・・・ひとまず、全員持っている道具を全部出してくれ」
スタートセットのアイテムを地面に並べていく。
それに倣って他の皆も手荷物を出していく。
「・・・これは何のポーションだ?」
「ヘルスポーションです、3個だけですけど昨日作ったんです」
ヘルスポーションは使用者に後付けのHPを付与するアイテムだ。
1回の使用でHP30増える。
「僕はあまり無いね・・・何だったらさっき盾を無くしたし」
「あれが無ければ俺は死んでいたからな、助かった」
「ニンジャだけじゃなくてみんな死んでたと思うけどね・・・」
【アイスフィールド】を張って盾をカーリングのように滑らせる。
この一連の動きをあの一瞬でやれるなんて、カロルのバトルセンスは高いようだ。
いざというときに頼りになり過ぎるなこいつ。
「さて・・・この手札でどうするか・・・」
「あ、あの!」
突然ミレッラが俺の左腕を掴む。
向くと彼女はうつむいている。
綺麗な金のドリルロールが元気無さそうに垂れていた。
「ど、どうして貴方はそんなに戦えるんですの?」
「・・・どういう事だろうか」
「・・・ずっと【糸】に操られていた時、何回も何回も殺されて・・・地獄でしたわ」
俯いたまま、ミレッラの独白は続く。
「痛くて怖くて苦しい・・・死ぬってそういう事ですわ。さっきあのカマキリと出会った瞬間、恐怖で動けませんでした。転倒したのを見て我に返りましたが・・・」
彼女の震えが手から左腕に伝わる。
「あれと戦うのなんて、死ぬのと同じですわ!何度死を体験しても!私は慣れるなんて事は無かった!死んじゃうかもしれないのに、貴方に次なんて無いのに、腕を斬り落とされても尚!どうして戦おうと思えるんですの!?」
理解できないという感情が伝わってくる。
正直、彼女の疑問はもっともだと思う。
俺自身ですら、よく戦おうと思えるものだと感じる。
だが。
「・・・怖くない訳じゃない、死ぬかもしれんと思うと流石に怯むさ」
「じゃあ・・・」
「でもそれ以上に、私は知り合った人を死なせたくないんだ」
「え・・・?」
「・・・昔、私は親友を失った。あの時の無力感は凄まじかった。なんで助けられなかったのか、なんで忙しいなんてくだらない理由で会わなかったのか、親友だったのに」
「・・・」
「もうあんな思いはしたくない。君も含めて、俺はここに居る人を誰も死なせたくないんだ。だから戦うさ、例え勝ち目が薄くても」
諦める事なんて、飽きるほどやった。
嘆くことなんて、腐るほどやった。
もう、そんなことをしている暇はない。
あの時の喪失感を例えほんの少しだったとしても、味わいたくない。
次味わえば・・・俺は・・・立てないかもしれない。
「・・・これが理由だ。少々分かりづらかっただろうか?」
「い、いえ・・・十分、わかりました」
そう言うと、彼女は離れて黙ってしまった。
理解を得られたようなので、策を考える。
何とか持ち札で奴に勝てる策を。
◇
暗い部屋の中、ランタンの明かりだけで研究を続ける。
明るすぎるのは集中できないのでこれくらいがちょうどいい。
・・・もっとも、現在進行形で集中できていないが。
「・・・団長」
もう居ない団長の事を思う。
あの様子、やっぱり団長は・・・。
「そうですよね・・・団長は・・・あの時死んだんですもんね」
だから、
団長は私の手の中で息を引き取った。
その後、突然息を吹き返した団長は・・・。
「・・・早く出て行ってください」
いつまで私の恩人の体を弄ぶのだろう。
ふざけている、殺してやりたい。
でも、強さは団長のままだ。
私じゃ瞬殺されるだろう。
だから、何もできない。
「・・・必ず取り戻します」
団長の体をアレから取り戻す。
その為の研究だ。
まだ時間はかかるけども、進んではいる。
牛歩の進みだが仕方ない。
見つかって操られるわけにはいかないのだ。
ゴミ屋敷を隠れ蓑にして、警戒させずに研究をする。
幸い思考を読まれることは無さそうな為、何とかなっている。
ランタンの明かりがゆらゆら揺れる。
それはまるで、私の心を表しているようだった。