TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
「・・・よし、準備は良いな」
「は、はい・・・」
「うん、大丈夫だよ」
「や、やりますわ!」
作戦が決まり、準備も完了。
上手く行くかは・・・僕次第だ。
「カロル頼りになるのは申し訳ないが・・・頼む」
「一番身体を張るのは君だろ?これくらいやってみせるさ」
「そうか・・・なら、俺も必ず仕留めて見せる」
「頼んだよ、ニンジャ」
全員で一斉に外に出る。
出た瞬間、草を掻き分ける音がこちらに近づいてくる。
「キュアアアアアアアア!!!」
「来るぞ!」
「【奮戦の激励】!」
ミレッラさんからのスキルが自分たちに付与される。
自分の視界がいつも以上によく見える。
先ほど試しで受けてみたが、やはり慣れないな。
「キュオオオオオオ!!!」
来た。
ここで防げなければ、終わる。
「「チャンスは・・・一度だけ)」
キラーマンティスの鎌がゆっくりと一番前に出ていたニンジャに振り下ろされる。
まだだ、まだ。
奴の攻撃の急所を狙え。
引き寄せて、引き寄せて。
「【パリィ】ィィィィィィィィィ!!!」
全力でレイピアを奴の鎌に突き立てる。
凄まじい硬さの鎌にレイピアが耐えられない。
レイピアが砕け散る寸前─。
キィィィィィィン!
甲高い音と共に、奴の右鎌が弾かれた。
「キュオア!」
しかし、キラーマンティスはすぐに左の鎌を振り切り─。
ニンジャの体を切り裂いた。
◇
『思いついた作戦だが・・・やはり俺の【仕返しの刃】で倒しきるしか無いと思う』
『そうは言うけど・・・無理じゃないか?レベル差が・・・』
『そ、それに相手の攻撃をニンジャさんが耐えられませんよ!死んじゃいます!』
『まず聞いてくれ、キラーマンティスの攻撃は苛烈を極めるが・・・半面、耐久力はそこまで高くない。同レベル帯の中では低いくらいだ。あの細さだからな』
『だとしても火力が・・・』
『そこでこのヘルスポーションだ。【仕返しの刃】は俺の生命力が減れば減るほど火力が上がる。ヘルスポーションで生命力を増強すれば、実質的に火力に変換できる。俺は他のスキルで【仕返しの刃】の火力をさらに上げれるからな』
『・・・仮にそれで倒せるとしよう。でも奴のスピードは凄まじい。君の攻撃が届く前にもう一度攻撃してくるよ』
『そこだがカロル、君に奴の攻撃を【パリィ】してほしい』
『・・・マジか』
『ミレッラ、君は確か【奮戦の激励】が使えたな?』
『は、はい』
『【奮戦の激励】は一時的に命中力・・・集中力が上昇する、これがあれば、出来ないことは無い』
『俺が一番前に出て、攻撃を誘う。一撃目を防いだ後もう片方の鎌で攻撃されるだろう。それをそのまま受ける』
『───っ!!!』
『ヘルスポーションを飲んでおけば、運が良ければ耐えられるだろう。攻撃で出来た隙を狙って奴の首を落とす。ミロネのアシッドポーションのおかげで右側の複眼は潰れている。右から攻撃すれば、可能性がある』
『反対です』
『ミロネ、だが─』
『反対です!運が良ければって、ダメだったらそのまま死んじゃうじゃないですか!』
『・・・キラーマンティスは食欲旺盛だ、俺がやられたら俺を食おうとするだろう。その間に─』
『ふざけたこと言わないで!!!絶対認めない!!!』
『・・・ならどうする。ここもいずれバレる。今死ぬか後で死ぬかの違いになるぞ』
『・・・・・・少し、いいかしら』
『これは・・・〈聖女のロザリオ〉!?』
『何だいそれは?』
『非常に希少なアイテムだ、一度だけ致死の攻撃を受けた時、ギリギリ命を繫ぎ止めてくれる』
『ギリギリって・・・もしかして【仕返しの刃】に』
『ああ、今この瞬間、一番欲しい物だ・・・だが』
『はい・・・それは一度使えば砕け散ってしまいます』
『・・・いいのか?』
『ええ、少し迷いましたけど・・・ニンジャ様、貴方の言葉で決心しました』
『私の・・・?』
『知り合った人に死んでほしくない・・・そんなの、私だって同じです。私を助けてくれた皆さんに、私は死んでほしくない。なら、母の形見を使うのは今しかありません。どうか・・・使ってください』
『必ず・・・必ず成功させる。約束しよう』
キィン!
身に着けていたロザリオが砕け散った。
明らかに即死の攻撃を受けたが、ギリギリ生きている。
「(ミレッラ・・・ありがとう)」
彼女の母親の形見を使ったのだ。
負けるわけには─いかない!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
【復讐者】【背水の陣】
【復讐者】は言わずもがな、この前覚えた【背水の陣】、このスキルは─。
「(HPが一桁の時、自身の力を2倍にする!」)」
一発逆転、このビルドの真骨頂。
ここで倒せなきゃ、何のために。
【ニンジャ・カウンター】は生まれたって言うんだ!!!
「【仕返しの刃】ぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
俺のナイフが、キラーマンティスの細い首に吸い込まれるように届く。
一瞬、凄まじい抵抗を感じた後、ナイフはそのまま滑り込んで─。
ブシュッ!
殺戮者の首が、宙を舞った。
◇
「ニンジャさぁぁぁぁぁぁん!!!」
駆け寄りながらポーションの栓を抜いてニンジャさんに投げつける。
上手く当たり、巨大な裂傷が治り始める。
〈聖女のロザリオ〉のおかげで命は繋いでいるけど、そんなの関係ない。
「ニンジャさん、ニンジャさん!しっかりしてください!」
「ミロネ・・・コントロールがいいな・・・」
「無理して軽口叩かなくていいです!馬鹿!」
「ぐむぅ!?」
血だらけのニンジャさんの口に増血作用のある薬草をねじ込む。
少し咽ているが知ったことか、少しくらい我慢してほしい。
「ははは・・・なんとか・・・なったね」
壊れたレイピアを片手にカロルさんが近づいてくる。
レイピアを構えていた右手が、血まみれだ。
「カロルさん!その手・・・!」
「レイピアが壊れた時、その破片がね・・・でもニンジャを優先してよ」
「ニンジャさんの傷はひとまず大丈夫です、ポーションかけまくったので・・・、手、出してください」
カロルさんの右手から刺さった破片を取り除いてから包帯を巻く。
「ごめんなさい・・・ヒールポーション尽きちゃって・・・少しだけ、我慢してください」
「いやいや、十分だよ。ありがとう」
「やったぁ!やりましたわぁ!勝ちましたわぁ!生きてますわぁ!」
ぴょんぴょん跳ねながら喜ぶミレッラさん。
その眼には涙が浮かんでいる。
きっと安堵の涙だろう。
「・・・よかったです。勝てて」
「ああ、どうなるかと思ったが・・・何とかなるものだな」
「もう二度とごめんだけどね、こんなの」
「もう遺跡はこりごりですわぁ~!二度と来ませんわ!」
ホントに良かった、みんな無事で。
これで街に帰れる。
そう思った瞬間。
「フザケルナ」
地面に落ちているカマキリの首が、声を発した。
「!」
ニンジャさんが跳ね起きて私の前に出て、ナイフを構える。
でも─私は、私たちは、動けなかった。
「こ、この声・・・」
「し、知っていますわ!この声・・・私が死ぬときに・・・!」
「こ、れは・・・」
「お前・・・何者だ・・・?」
不気味な声が辺りに響く。
まるで遠くから語り掛けてるような・・・。
カマキリの頭を通じている・・・?
「オマエ、オマエ、ジャマスルナ、オマエイルト、アヤツレナイ、オマエノマワリ、アヤツレナイ」
「何・・・?」
「イトアルノニアヤツレナイ、シナリオドオリニシカ、ウゴカナイ」
まるで遊びの邪魔をされた子供のような不機嫌な声で、カマキリの口が動く。
「その言い方だと、お前がミロネ達を【糸】で操っていた奴か」
「ソウダ、オレガ、ワタシガ、ワシガ、ボクガ、ウチガ、ワレガ、イトデアヤツッタ」
「随分とペラペラ喋るな、なら目的もついでに教えていけ」
「モクテキ・・・?」
「そうだ、何度も彼女達に繰り返しの日々をやらせて、何が目的だ!!!」
「オモシロイカラ」
「え・・・?」
その言葉を聞いたとき、私の思考はフリーズした。
「おも・・・しろい・・・?」
「オモシロイ、シヌトコロ、ゼツボウスルトコロ、ヒドイメニアウトコロ、ナイテルトコロ、タノシイ」
「ミテルトブザマデタノシイ、クルシンデシヌトコロタノシイ、ズットミタイ、タクサンミタイ」
「モットモットモットモット─ミテイタイ」
「ダカラクリカエス、イトデマキモドシテ、マタハジメル」
「ナンドデモリプレイスル、ナンドデモシナセル、ダッテ」
「「「「「「「タノシイカラ」」」」」」」
それ・・・だけ・・・?
たったそれだけの理由・・・?
わ、私は・・・見て楽しむだけに殺されてたの・・・?
私は・・・面白いからって肉盾にされて死んでいたの?
私は・・・。
足に力が入らなくなり、地面に座り込む。
勝手に涙が流れる。
そんな理由で、私はずっとあの地獄に居たという事を知ってしまって。
やるせなくて・・・。
「う、うう・・・・・」
カロルさんとミレッラさんも、絶句している。
繰り返された地獄が、コイツが楽しむだけのもので─。
「お前ら今なんつった???」
聞いたことのない声がした。
それは前に居るニンジャさんからだ。
「楽しいだと?面白いだと?見ていたいからだと?
ふざけんなよゴミクズが、お前らのくだらねぇ快楽の為にミロネ達殺しまくっただぁ?
よく分かった、お前らがあの連中と同じ穴のムジナって事がな。
帰る為とか考えてたが・・・やめだ、やらないといけないことが出来た」
ニンジャさんが喋っていたカマキリの頭に近づいて。
「何があろうと、お前らをぶち殺す、どんなにお前らがクソGMでシナリオを改変しようがちゃぶ台返しでエネミー追加しようが、必ず見つけ出して殺す。お前たちの存在を俺は許さない。せいぜい─」
首でも洗って待っていろ
ニンジャさんがカマキリの頭を踏み潰す。
ぐちゃという音と共に、不快な声は無くなった。
ニンジャさんの顔は、最後まで見えなかった