TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
その日、俺は図書館に来ていた。
と言うのも国語の授業でやるように言われた読書感想文をほっぽいたからである。
担当教師から出せ出せ催促を受けたのでやることにしたのだが・・・。
「(図書室の本じゃ碌なのねぇよ・・・)」
元々本なんて読まないのに、学校に置いてある本なんてどれもこれもつまらないものばかりだ。
学術書とか読む奴いないだろ・・・。
「(小学生以来だなぁ・・・)」
やたらと弱い冷房が肌を撫でる。
外はクソ暑いので無いよりはマシだが・・・。
「だりぃ・・・」
めんどすぎるので早く済ませよう。
こんなことで時間食うくらいなら友達とカラオケにでも行った方が絶対いい。
適当な本を何冊か見つけて・・・。
「(・・・なんだこいつ)」
他校の生徒が一か所の本棚を前にして突っ立っていた。
しかもずっと唸ってるし、キモ。
「おい」
「うひゃあ!」
声をかけるとやたらと驚いた。
てか声高いな男のくせに。
「お前なに突っ立ってんだよ、邪魔だろ」
「ご、ごめん・・・」
「ふん・・・」
そもそも気になる本があるなら取って席に座ればいいだろ。
わざわざ邪魔になる所に立ってるこいつが悪い。
適当に置いてある本を一冊取ってみるが─。
「ん?・・・なんだ、ここゲームブックしかねぇじゃん」
しかも小学生とかやるようなやつだぞこれ、無駄な時間使った。
「そ、それ・・・」
「あん?」
「君も・・・それ借りるのかな・・・って」
「借りねぇよ、お前これ小学生がギリやるやつだぞ、こんなん読む高校生いねぇよ」
いや、わざわざ聞いてくるって事はこいつは読むのか。
「ほら」
「え?」
「お前借りんだろ、早く取れ」
「い、いいの?」
「そもそも適当に手に取っただけだ、借りねぇって言ったろ」
「あ、ありがとう!」
ゲームブック如きでなんでこんなに喜べるのかね・・・。
理解できんな。
「よし、これでシナリオの参考書が揃ったぞ・・・」
「しなりお?」
「あ、ご、ごめん・・・うるさかったよね・・・」
「別に、てかシナリオって何?」
「え、えっとね・・・ちょっと待ってね・・・」
そいつは自分のリュックを近くの机に置いて開く。
中には本がみっちり詰まっていた。
「お前それ全部持つ必要あんの・・・?」
「い、一応ね!一応持ってるんだ・・・あったあった」
そいつが取り出した本には─。
「てぃーあーるぴーじぃ?」
『TRPGのシナリオはこう作れ!』というタイトルの本が出てきた。
剣を持ったキャラがドラゴンと戦っている。
「うん、TRPG・・・テーブルトーク・ロールプレイング・ゲームの略で遊ぶ人同士で会話しながら進めていくゲームなんだ」
「それ普通のゲームでよくね?」
「い、いやいや!普通のゲームとは違って、同じシナリオを遊んでも人によって全然違う物語になるんだ!」
「なんで?」
「サイコロで結果決めたり・・・キャラに成りきって会話したり・・・プレイしてる人の自由に物語を作れるんだよ!」
「成りきって・・・それごっこ遊びじゃねぇの?」
「え、う、うーん・・・そういう言い方も出来るかもだけど・・・」
ごっこ遊びってお前、幼稚園児で卒業したぞ俺。
「お前その年でごっこ遊びはきついって・・・」
「えぇ!?ち、違うよ!ごっこ遊びと違ってルールがあるんだ!」
「ごっこ遊びにもあったろ、バリア禁止とか」
「そうじゃなくて、もっとしっかりしたルールだよ!」
そう言ってそいつはリュックから更に本を取り出す。
「これ、僕が今やりたいTRPGなんだけど・・・これルールブックなんだ」
「いや分厚過ぎるだろ、辞書か?」
「これはTRPGの中でも分厚い方だね、他のだったらもう少し簡単なのもあるけど・・・」
「てか待て、お前もしかしてこの中身全部・・・」
「うん、シナリオ作りの参考書とルールブック、追加サプリメントもあるね」
「家に置いとけばいいだろ・・・」
こいつバカなのか?
こんなクソ暑い季節にわざわざ自分の荷物増やす理由が分からん。
「・・・まぁ、好きにしろよ」
俺は読書感想文を書かなければならんのだ。
国語担当の教師はキレやすい上にハゲだから遅れたら面倒だ。
「あ、え、えっと・・・」
「じゃあな」
何か言いたそうなそいつをほっといて、俺は他の棚を物色することにした。
◇
「・・・・・・・・・・・・」
「じぃ・・・・・・・・・・」(離れたところからずっと見ている)
なんだあいつ、頭おかしいんじゃねぇの。
さっきから俺が本を読んでる最中ずっと見てくる。
視線が気になって全然集中できない、しかも。
「(振り向いてみる)」
「(本で顔を隠す)」
お前それで隠れてるというのは無理があるだろ。
読書どころでは無いので仕方なく席を立つ。
「おい、何なんだよお前・・・」
「ひぃ!」
「何がひぃ!だ、悲鳴を上げたいのはこっちだわ。さっきからなんで俺に付きまとってんだよ」
「そ、その・・・」
「・・・言いたいことあるなら早く言え」
「え、えっと・・・ぼ、ぼくと・・・」
「僕と?」
「い、いっしょに・・・」
「一緒に?」
「TRPG・・・遊んでください!!!」
「やだ」
読んでた本を持って受付に行き、借りる手続きをする。
仕方ねぇから家でやるか・・・。
図書館の外に出ると日中というのもあって、日差しがやばすぎる。
立ってるだけで汗が出てきてしんどい。
「うげぇ・・・早く帰ろ・・・」
クソ暑いコンクリの道路を歩きながら、俺は家に帰った。
「待って!待って!お願い!待ってよぉ!」
クソ!逃げ切れなかった!
「お前・・・やだって言っただろ」
「そ、そうだけど・・・でも・・・やりたくて・・・」
「一人でやればいいだろそんなの」
「ぼ、僕がやりたいのは一人じゃできないんだ、最低でも二人でないと・・・」
「じゃあ他誘え、じゃあな」
止めていた足を動かす。
変に止まると汗がやべぇ。
「待って!居ないんだ!僕友達いなくて!」
「そうか、なら適当に作れ、頑張れよ」
「お願い!僕と友達になって!」
「なんでいきなり知らない他校の、訳分からんゲームに誘うやつの友達にならないといけねぇんだよ」
「君くらいなんだ!僕の話聞いてくれたのは!」
「世界は広い、きっと俺以外にも聞いてくれる奴は居るぞ、諦めるな」
「世界は広いけど僕が行ける範囲は狭いんだよ!」
「お前には立派な脚が付いてるだろ、どこまでもいけるさ」
「そんなどこぞの錬金術師みたいなこと言わないで!」
それからもぎゃーぎゃー騒いでるそいつを放置しながら早歩きで進んでいたが・・・。
突然声がしなくなった。
「はぁはぁはぁはぁはぁ・・・」
振り向くとそいつは俯いていた。
やたらと呼吸が早い。
これは─。
「おいお前熱中症じゃねぇかそれ!」
「そ、そうなの・・・?」
「なんで自覚してねぇんだバカ!」
近くのコンビニに無理やり引っ張る。
「すいません!こいつ熱中症みたいで!少し休ませてください!」
「えぇ!?は、はい、わかりました・・・」
熱中症野郎をコンビニの飲食スペースに座らせる。
コンビニでスポーツドリンクと氷を買ってそいつの体に当てる。
なんでこいつの為に金使ってんだ俺・・・。
「おい早く楽な体勢取れ!」
「ま、まってね・・・えっと・・・」
「まずそのクソデカいリュックを置け!!!」
どんだけ大事なんだよそれ!
てかそれ持って早歩きしたから熱中症になったんじゃないだろうな・・・。
あり得るな・・・明らかこいつインドアっぽいし。
「ったく、なんで図書館に行っただけでこんな面倒ごとに・・・」
「ご、ごめんね、ごめんね・・・」
「・・・いいから早く休め」
症状はまだ軽めだが・・・こいつの家に電話した方がいいだろ。
「おい、お前んちの電話番号教えろ、迎えに来てもらえ」
「だ、だいじょうぶ、すこしやすめば・・・」
「大丈夫なわけ無いだろ、早く教えろ、しばくぞ」
「し、しばく!?・・・えっと─」
聞いた電話番号をスマホに入れて電話をかける。
やたらと腰の低そうな女性が出て、すぐに迎えに来ると返事をもらった。
「お前の母親来るってよ、よかったな」
「あ、ありがと・・・」
「・・・まぁほんの少しだけ、俺のせいだからな」
俺にとっては早歩きでも、こいつにとってはクソしんどい運動だったということ。
変に振り切ろうとしなければよかったかもしれない・・・。
いや、そもそも追いかけてくるこいつが悪いじゃん、じゃあ俺悪くないわ。
「やっぱ全部お前のせいだわ」
「そんな!」
◇
熱中症したTRPG野郎と遭遇した次の週、夏休みになった。
しかもなんとか読書感想文を提出したのにまた出してきやがった。
頭おかしいだろあのハゲ教師、毛根と一緒に脳みそも失ったに違いない。
「まさかまた来ることになるとは・・・」
今度は早めにやっておこう、そう思いまた図書館に来た。
今日は暑いのが嫌だったので閉館ギリギリにしたんだけど・・・。
「・・・嘘じゃん」
「・・・!、き、来た!」
何と入り口にTRPG野郎が待ち伏せていた。
嘘だろこいつ・・・。
「お前いつから居るんだよ・・・」
「えっと、10時からかな」
「今18時なんだけど・・・」
「あ、会えるかなって・・・夏休み始まってからずっと待ってたんだ」
あの、夏休み今3日目なんですけど。
こいつ一昨日、昨日もこうやって待ってたのか・・・?
「お前・・・」
「どうしたの?」
「頭おかしいな」
「そんなぁ!」
おかしいだろ、どう考えても。
どこの世界に一度会った奴にもっかい会いたくて開館から閉館まで待ち伏せするやつが居るんだよ。
ここにいる?そっかぁ。
「・・・で?何の用?」
「その・・・TRPGしたくて・・・」
「だからさぁ」
「お、お願い!一回だけでもいいから!」
「・・・・・・・・」
ここで断ったら永遠に付き纏いされそうだ。
一回で満足するなら・・・いいか。
「分かったよ・・・一回だけな」
「ほ、本当に!?」
「一回やったら満足するんだろ?」
「う、うん!ありがとう!」
結局、こいつとTRPGすることになった。
それが俺、
素の主人公は普通に口悪いです。