TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
「で、俺は何すりゃいいの」
「塩屋くんにはプレイヤーやってほしいな!」
「ん?お前は何するんだ?」
「僕はGM・・・ゲームを進める方をやるね、塩屋くん初心者だし!」
あの後、ファミレスに来てTRPGをやる事になった。
大体2、3時間で終わるらしいのでそんな遅くならんだろう。
「まずは今回のやるTRPGの説明だね!プレイヤーは自分のキャラを操作して、人知れず宇宙人と戦うってやつなんだ!でも最初だし、キャラに関してはサンプルキャラ使おうか」
「何でもいいよ、その宇宙人はどう倒せばいいんだ?」
「基本的な流れは探索フェーズで隠れている宇宙人を探して倒す、これを何回かやってボスを倒したらクリアだよ」
佐藤はそういうとサイコロとペンとなんか印刷された紙をテーブルに広げる。
「これがキャラクターシート、これに今の状態とか使えるスキルとか書いてるから・・・」
「これ見ながらやれって事ね」
「うん、それで今回やるシナリオだけど一番簡単なのにしたからサンプルキャラでも多分大丈夫!」
キャラクターシートなる物を見ると、確かに色々数値だったりスキルらしいものが何個か書いてある。
これを使って進めんのか。
「えーっとまずはシナリオの導入だね、組織から公衆トイレに来るように言われたあなたは・・・」
「どこに呼んでんだよ、もっとマシな所あっただろ」
「・・・・・」
「・・・なにしてんの?いきなり上向いて・・・」
「一緒にやって突っ込みまでしてくれるなんて・・・嬉しくて・・・」
「うわぁ・・・」
やっぱ早まったかもしれない、こいつとTRPGするの。
◇
「じゃあ塩屋くんのターン、ここで当てれば勝てるよ!」
「くっそもうアイテム無いから振り直し出来ねぇぞ!?」
「一発で決めるしかないね・・・ターン渡したら確実に負けだし・・・」
「頼むマジで頼む!」
3時間かけた結果負けるの嫌すぎるので気合を込めてダイスを振る。
出目は・・・。
「6ゾロだ!!!」
「すごい!スペシャルだ!攻撃は必中になるから…プレイヤーの勝ち!」
「よーしよし!最後の最後でツキが回ってきたぜ!」
何とか俺のキャラの攻撃が当たり、ボスを倒した。
危なかった・・・残りHP一桁だぞ。
「あっぶねーマジビビったわ」
「塩屋くん、ここぞって時の運強いね!」
「まぁ何だかんだ悪運は良い方だな、ボクシングの試合で事故った時もギリギリ大丈夫だったし」
「ボクシングやってるんだ・・・だから筋肉凄いんだね」
「小学生の頃から惰性でやってるだけだがな、そろそろ飽きてきてはいる」
最近練習も行ってないしなぁ。
コーチも察してるのか何も言ってこないし。
「ところで・・・どうだった?」
「どうだった・・・か」
「お、面白く・・・なかった?」
不安そうに聞いてくる佐藤を見て、俺はこの3時間を思い出す。
『探索スキル無いから全然居場所分からねぇ!』
『もっとNPCに話しかけるといいよ、ある程度RPで聞けるようになってるから!』
『やばいこいつ火力高いぞ!敵がバンバン倒せるじゃん!』
『初心者用に分かりやすい強ビルドだからね、高レベル帯でも活躍できる構成だよ』
『回復!回復くれ!NPC!早く!』
『じゃあ回復を・・・あ、失敗』
『おいぃぃぃぃ!!!』
「まぁ・・・楽しかったわ」
「ホント!?よかったぁ!」
満面の笑みで喜ぶ佐藤を見ているとなんか負けた気がする。
そうこうしてると俺のスマホが鳴った。
「ん?・・・あ、母さんだ」
電話に出ると「早く帰って来いしばくぞ」と言われた。
時間を見るともう21時になる寸前だ。
「やっべ、俺帰るわ。親からキレられたし」
「う、うん分かった」
「じゃあな、佐藤」
「・・・うん・・・じゃあね」
帰る準備をするとまるで捨てられた子犬のような顔をする佐藤。
こいつ無駄に顔が女っぽいから罪悪感が出てくる。
「・・・・・・・ライン交換、するか?」
「え!?うん!勿論!交換、交換しよう!」
その後、家に帰ってからラインの通知が20も溜まっていて何だと思ったら全部佐藤からだった。
やっぱり早まったかもしれない。
◇
あの夜から1年経った。
結局何だかんだTRPGにハマった俺は玲とよく遊ぶようになった。
TRPG以外にも海行ったり祭り行ったりと、恥ずかしいが親友のようになっていた。
学校が違う為、会うのは基本土日だが毎週のように片方の家に泊まってTRPGをしていた。
「【アナザーワールド・ボウケンシャー】?」
「うん!この前発売された新しいTRPGなんだけど、正当ファンタジー物なんだ!」
「それだったら別に既存のでもよくないか?」
「評判見ると何でもデータがすっごく豊富なのにバランスがいいんだって!」
「ふーん・・・」
二人でキャラシの整理をしている時にそんなことを言われた。
興味が無い訳では無いが・・・。
「それいくらすんの?」
「えーっと・・・6000円かな」
「高すぎんか!?」
「かなりページ数あるからね・・・やっぱ値段も相応するよ」
「流石に手出ないわ、この前他の追加サプリ買ったから金ねぇよ」
玲と最初にやったTRPGの追加サプリメントが3000円したから俺の財布は既に冬を迎えているのだ。
これ以上使うと日常生活に困る。
「お金貰うこととかできない?」
「無理、俺兄貴居るしその兄貴も大学で金かかってるから。これ以上くれ言ったら貰えるのは拳骨だけだ」
「そっかぁ・・・」
「うちの学校バイト禁止だしな、ひとまず諦めるわ」
「じゃ、じゃあ僕買うよ!二人で一冊使えばいいし!」
「お前この前もそういって買ったばかりだろ?そこまで頼りきりになりたくねぇよ」
玲は一人っ子なので親からも可愛がられているのか、欲しいものは基本何でも貰える。
次男の俺からすれば羨ましいものだ、基本後回しだし、俺。
「別に他で遊べばいいだろ、な?」
「・・・そうだね、他ので遊ぼうか」
やたらと残念そうな玲を横目に大量のキャラシを整理する。
・・・この辺全然使ってないし、捨てよっかなぁ。
この時、無理しても買えばよかったと、一緒に遊べばよかったと俺は一生後悔することになる。
◇
高校3年になって受験を意識する必要が出てきた。
玲も俺も受験勉強をしなくてはならず、会う機会はめっきり減った。
一応ラインでの連絡は取っているものの、毎日では無くなった。
「塩屋~お前このままだと志望校落ちんぞ~」
「んなこと言ったって苦手なんすよ英語」
「そうは言うがな、これ以上実力落ちると選択肢めちゃめちゃ減るからな?」
「・・・うす」
「まぁお前は決して成績が悪い訳じゃない、もう少し頑張ればなんとかなるから気張れよ」
担任との面談で英語がやばいと言われて萎えながら教室を出ると友人達が待っていた。
「塩屋~面談どうだったよ」
「英語やばいから気張れだとよ」
「まぁお前成績中間だからなぁ、一教科でも低いと一気にやばいだろうな」
「そうなんだよなぁ・・・重点的に英語やるかぁ」
帰りに本屋に行って英語の問題集でも買おうかな。
受験の為って言えば親も金くれるだろ。
「そういや塩屋、お前他校の友達居たよな?」
「去年あたり土日いっつもそいつと遊んでたよなぁ、もう親友じゃん」
「まぁ・・・否定はしねぇよ、最近会ってねぇけど」
「同年代だろ?受験控えてるから仕方ねぇだろ」
「でもたまには会ってもいいんじゃねぇか?一度疎遠になると中々会わないからな」
「あーわかるわ、俺も幼馴染の女居るんだけど今疎遠だもん」
「お前のそれは単に彼氏出来ただけだろ」
「やめろよ現実突きつけるの」
三人で駄弁りながら歩いていると俺のスマホから着信音がなった。
「ん?電話来てね?」
「ああ・・・あれ、玲のお母さんだ」
「玲って今言ってた友達じゃなかった?」
「親の電話まで知ってんのな」
「前に必要でかけたことあったんだよ、それっきり電話なんてなかったけど・・・」
ひとまず電話に出てみる、前に会った時の忘れ物でも出てきたのだろうか。
「はいもしもし、玲のお母さんすか?」
『もしもし・・・幸次くん・・・』
「はい、久しぶりっす。なんかありました?」
『あ、あのね・・・あのね・・・玲がね・・・玲が・・・!』
『死んじゃったのぉぉぉぉぉぉ!!!』
「死んだ・・・・・・・・?」
頭が理解を拒んでいる。
この人は何を言っているんだ。
玲が死んだ?
「・・・今どこですか」
『〇〇病院の・・・霊安室・・・』
「今行きます」
電話を切って走り出す。
「悪い!俺行かねぇと!!!」
「あ、ああ!気をつけろよ!」
「急げよ!なるたけ早く!」
廊下を走りまくってるせいで他の人に肩が当たりまくる。
その都度謝りながら走ってると玄関近くに国語担当の教師が居た。
「おい塩屋!なに廊下走ってるんだ!あとお前まだ授業残ってるだろ!」
「すんません!どいてください!行かないといけない!」
「どこに行くんだ!お前が行くのは教室だ!」
「ダチが!死んだって!病院行かないと!」
「─っ!・・・どこの病院だ」
「〇〇病院っす!」
邪魔してきた教師にイライラしてると少し待てと言って職員室に走っていった。
戻ってきたその手には車のカギがあった。
「送る!車に乗れ!」
「っ!あざっす!!!」
走るよりずっと早い。
心の底からこの人に感謝した。
◇
病院の入り口前に止めてもらい、車から飛び出す。
急いで受付の方に走る。
「すいません!!!霊安室ってどこですか!?」
「あ、霊安室なら地下1階に・・・」
「どうも!」
「あ、ちょっと!受付・・・」
急いで階段に向かう。
エレベーターなんて待ってられない。
「(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ)」
何かの冗談であってくれ。
今なら許すから。
頼むから。
願いながら霊安室まで行くと玲のお父さんが立って居た。
「幸次君・・・」
「玲は!?玲は!?」
「・・・この中だ」
扉を開けて中に飛び込む。
そこには泣いてる玲のお母さんと顔に白い布で隠された人がいた。
「玲のお母さん・・・」
「こ、幸次くん・・・きて・・・くれたのね・・・」
玲のお母さんが白い布に手をかける。
「玲・・・幸次くんが来てくれたわよ・・・」
その白い布が取り払われる。
そこには。
眠るように、生気の無い白い顔をした玲が居た。
「────────────」
現実を受け入れられない。
寝てるだけなんじゃないか。
夢なんじゃないか。
夢であってくれよ。
「お前なに寝てんの・・・?」
近づいて顔に触れる。
その肌は驚くほど冷たかった。
「やめろってそういうドッキリ、笑えねぇぞ」
声をかける。
返ってこない。
「お前同じ大学行く言ってたじゃん」
その為に本来の適正大学より上目指してたんだぞ。
お前頭いいからさ。
「昼寝してたらお前が落ちんぞ、大学」
声が震える。
視界がにじむ。
「ああ、あああああ─」
「ああああああああああああああああああああああああぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
霊安室に俺の声が木霊した。
誰も、俺の声に答えなかった。