TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
玲が死んでから俺は何も考えられなかった。
葬式の時も、火葬の時も、何も。
死因は自殺だった。
部屋で首を吊ったらしい。
親が気づいたときには、もう遅かった。
「幸次・・・ご飯よ・・・?」
「・・・・・いらね」
「でももう三日も食べてないじゃない!」
「・・・・・」
あれから俺はずっと家に居た。
学校になんて行く気が無かった。
何もしたくなかった。
このまま何もしないで死ねば玲に会えるだろうか。
そんなことも頭によぎるほどだ。
「・・・なんでだよ」
なんで自殺なんかしたんだよ。
理由が両親も分からないらしい。
部屋を調べてみるとは言っていたがあれから連絡は無い。
悩みがあったのだろうか。
なんで俺に言ってくれなかったのだろうか。
「あれ・・・」
ふとスマホを見ると通知が来ていた。
送り先は─玲のお母さん。
「!!!」
食い入るようにスマホを操作する。
そこには家に来てほしいと書いてあった。
すぐに着替えて家を出る。
玲の家は電車で2駅離れている。
時間にして10分程度だったが、今はそれが死ぬほど長く感じた。
駅について走って家に向かう。
「はぁ・・・はぁ・・・」
自分でも驚くくらい早く家についた。
インターホンを鳴らすとすぐに玲のお母さんが出てきた。
「もう来てくれたの?ありがとう・・・あがって?」
「お邪魔します」
促されて家に入るがやたらと家が広く感じた。
物を片付けたのだろうか。
「座って、飲み物出すから・・・」
「いや、いらないっす、それより用あるんですよね」
「・・・ええ、ちょっと待ってね、持ってくるわ」
そう言うとリビングから出ていき、少しした後に一冊のノートを持ってきた。
「それって・・・」
「あの子が・・・書いていた日記よ」
「いやでも、俺前に見せてもらったけどそのタイプのノートじゃなくて・・・」
「これはあの子が隠して付けてた日記、棚に敷いてる板の下に置いてたわ」
「・・・読んでもいいすか」
「ええ、読んでほしかったから電話したの」
ノートを受け取って読み始める。
一枚、また一枚と捲る。
「・・・これ」
「ええ・・・」
「あの子が受けてた虐めの内容よ」
今日はまたなよなよしてるからと言って殴られた。
教科書を隠されたせいで忘れたことになり、先生に怒られた。
トイレの個室に閉じ込められた、抜け出すの大変だった。
その他も毎日のように受けていた仕打ちが書かれていた。
ちょうど、俺と玲が会わなくなってからだった。
クラスの5人組に目を付けられたらしい。
玲は大人しいから、狙いやすかったのだろう。
「受験も控えてたから揉め事起こさないようにって・・・あの子一人で耐えてて・・・」
「私何にも気づいてあげられなくて・・・」
「今お父さんが警察に相談しているけど・・・」
「どんなにやっても・・・あの子は帰ってこない・・・」
「もう・・・会えないの・・・うぅ・・・」
「あの、玲の学校の住所教えてもらっていいですか?」
◇
クラスメイトの佐藤君が自殺した。
原因なんてわかりきってる、あいつらのせいだ。
元々素行が悪く、不良みたいな連中だったけど誤魔化すのだけは上手い。
虐めを先生にバレないようにするなんて簡単だっただろう。
言おうと思ったけど・・・連中がナイフとかの武器を常に隠し持っているらしくて。
それを考えると、怖くて何もできなかった。
「(私って・・・最低だな・・・)」
自分の保身しか考えてない、分かっていたのに。
受験が大事だからって、恐怖を理由に見捨てたんだ。
地獄に落ちるのかなと思っていると、正門の前に見知らぬ人が居た。
「(誰だろう・・・同い年っぽいけど・・・)」
隣を通り過ぎようとすると、突然肩を掴まれる。
「えっ!?な、な・・・に・・・」
その男子生徒らしい人の表情は、今までの人生で見たことなかった。
人って─ここまで無表情になれるんだ。
「おい」
「は、はい・・・」
「お前佐藤玲のクラスメイトだろ、クラス写真に写ってた」
「そ、うです・・・」
「そうか、なら─」
「玲を追い詰めたクソ共の名前と特徴、分かるよなぁ?」
瞳孔がガン開きになったその人の質問に、私は答えるしかなかった。
◇
「くっそあいつ死にやがった」
「証拠とか残してねぇだろうなあのゴミ」
「大丈夫だろ、あいつにそんな度胸ねぇって」
「確かにwまぁ顔だけはよかったよな」
「女っぽい奴だったからその辺の変態に売ればよかったわ」
「いねぇだろそんな奴www」
「まじ泣いてるとことか絶望してるの見るの楽しかったわー」
ゴミの鳴き声が聞こえる。
「あいついいカモだったのになぁ」
「金だけはあったよな」
「家が金持ちだったんだろ、そのおかげで遊びまくれたけどな」
「でも大学どうすんの?」
「適当な所入ればいいだろ、またカモ見つけようぜー」
クズの笑い声が聞こえる。
「・・・ん?何だお前」
「おい邪魔なんだけど?どけや」
「見ない顔だな、他校か?」
「俺ら強いからさぁ、逆らわない方がいいぞ?」
「ひとまず金置いてけよw殺すぞw」
「お前らが、佐藤玲を虐めてた連中か」
「あん?何で知ってんだよお前」
「クラスの奴誰か言ったのか?」
「だったら何だって言うんだよw」
「そうか、なら」
「死ね」
ゴギャア!
右ストレートで先頭に居た奴の顔面を殴る。
そいつの前歯が全部折れた。
「「「「は?」」」」
呆気に取られている他のゴミに宣告する。
「お前ら全員ここで殺す」
「一人も逃がさん」
「全員纏めて」
「殺す」
手前に居た奴の顔面を掴み、地面に叩きつける。
バキャッという骨の折れる音がした。
「な、なんだてめぇ!」
「一人でどうにかなると思ってんのか!」
「お前が死ねよ!」
騒がしいゴミ共が殴りかかってくる。
一人の腕を掴んで右膝に思いきり叩きつける。
そのままそいつを突き飛ばして腹を全力で蹴り飛ばす。
残りの二人は顎にアッパーをぶち込む。
軽い脳震盪になったのか、そのまま崩れる。
ザクッ
背中から強い衝撃が来る。
遅れてくる痛み。
どうやら刺されたみたいだ。
「調子に乗んなよボケ・・・ざまぁみろ」
こんなので止まると思っているのだろうか。
その頭のおめでたさが最早笑えてくる。
「は?なんでなんとも─」
「うるせぇよ」
裏拳でゴミの顔面をぶん殴る。
絶叫をあげながら怯んでいるうちに股間を蹴り飛ばす。
「がぁ─」
前かがみになった瞬間、頭を掴んで地面に叩きつける。
何度も、何度も、何度も、何度も。
丁度地面はコンクリートだ。
こいつらにはお似合いだろう。
「ひ、ひぃぃぃ」
1人が逃げようとした。
とび蹴りを背中に食らわせて倒れたそいつの背中を踏み潰す。
脳震盪を起こしてた連中が回復したのか、ナイフやら包丁やら出してくる。
恐怖は全くなかった。
とにかくこいつらを殺したいという思いしか、俺にはなかった。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
殴る、蹴る、刺される、殴る、殴る、殴る。
こいつらが二度と動けなくなるまで。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
ゴミの悲鳴が辺りに木霊した。
◇
周辺の人が通報したのか、警察が来て俺は取り押さえられた。
結局、俺は一人も殺すことが出来なかった。
そのまま俺は出血が酷過ぎるとのことで病院に搬送された。
医者曰くなんで意識保ってるの?らしい。
知るか。
当然俺が起こした暴力事件は大問題になった。
玲を自殺に追い込んだゴミ共は全員全治半年以上。
一番重症な奴に関しては1年だった。
だが連中が凶器を所持して使用した、これがデカかった。
これにより、素手の俺と連中とで大きい差が出来た。
乱闘事件として進められて俺はかなり軽い処分になった。
俺自身も刺されて半年以上の怪我を負ったというのもあったが・・・。
何よりも、世間の反応だろう。
連中が虐めで同級生を自殺に追い込んだという報道がされた際に、俺の事まで報道された。
ニュースが付けた見出しは「親友の敵討ち」だった。
虐められて自死を選んだ少年の親友が虐めグループをボコボコにする。
世間が実に好きそうなニュースだった。
俺には求めてもない賞賛が、連中にはとんでもないバッシングが飛び交った。
俺の家や学校には手紙が、警察には俺の刑を軽くしろなんて署名まで来た。
連中の家には嫌がらせや個人情報をバラまかれたりと攻撃がすさまじかった。
もうまともに生きることは出来ないだろう。
そういうのもあり、俺は観察処分で済むとかいう軽すぎる処分を受けた。
俺の親友の死は、感動ポルノとして世間に消費され、俺はその恩恵を受けた。
てっきり高校は退学になると思ったが事情を知った担任や国語教師が頑張ったのか。
大学受験は受けれないが、高校は卒業認定を貰うことになった。
面会に来て絶対に高校を卒業させてやると言われてたが、まさか本当になるとは。
親は何も言わなかった。
怒ることすらしなかった。
ただ、無事でよかったとしか言わなかった。
親も玲とは何度も会っていた。
思うところがあったのかもしれない。
兄貴からはこっそりよくやったなんて言われた。
地味に玲と仲良かったからか、訃報を聞いたときは落ち込んでいた。
連中が肉体的にも社会的にもボコボコにされ、溜飲が下がったのかもしれない。
病院で入院中、玲の両親が来た。
「幸次君・・・怪我は大丈夫かい?」
「・・・ぼちぼちっすね」
「ごめんなさい、私が・・・私が日記を見せたから・・・」
「違います、俺が連中を許せなかっただけです。全部俺がやるって決めただけです」
「・・・玲は・・・本当にいい友達を持ったと思うよ」
そう言って俺に手紙を渡してきた。
「これは・・・?」
「部屋の整理を進めていたらこれが見つかってね、君宛だ」
「俺に・・・」
開けて読んでみる。
そこには玲の綺麗な字が書いてあった。
『幸次くんへ
君が図書館で声をかけてくれた日から、君が友達になってくれた日から
僕の人生はすごく楽しくなったよ!
大好きなTRPGを一緒にできるなんて夢みたい!
いつも一緒に遊んでくれてる君にこれあげるね!
僕も買ったから、これならネットで通話しながらでも遊べるね!
これからもよろしくね!
玲より 』
「これって・・・」
「これが一緒に入っていた・・・君へのプレゼントだったのだろう」
玲のお父さんから受け取った本は─。
「【アナザーワールド・ボウケンシャー】・・・」
あの時、金が無いと断ったアナケンのルルブだった。
「うう」
畜生。
「うううううう」
畜生。
「うぐっ・・・うううああああ」
助けられなかった。
「あああああああああああ」
遊んでやれなかった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ・・・・」
ごめん、ごめん玲。
友達なのに、俺。
しんどい時に近くに居てやれなくて・・・ごめん。
俺はその後、ずっと泣いていた。
あいつがくれた、アナケンのルルブを抱きしめながら。
◇
「・・・またこの夢か」
キラーマンティスを倒した後、街に戻った後で泥のように眠ったが・・・。
大体一か月に一回はこの夢を見る。
よほど俺の深層心理に入り込んでいるのだろうか。
「・・・皆には迷惑をかけたな」
あまりの怒りに素が出てしまった。
高校卒業から隠していた自分の素。
俺の時は玲が死んだ時から止まっている。
でもそれだと生きていけない、だから俺は自分を作ることにした。
幸い、TRPGをし続けている為、演技自体は楽だった。
「・・・俺はいつまでもお前を忘れられないんだろうな」
TRPGをずっとやってるのも、アナケンを読み込んでいるのも。
全部玲との繋がりだから。
あいつを忘れたくないから、俺はTRPGをやり続ける。
これまでも、これからも。
「さて・・・あのクソぶっ殺すためにもレベル上げしないと」
奴がどんな方法でシナリオを弄ってるのかは分からないが、レベルを上げておくのは分かりやすい対抗手段だろう。
どうも俺の周囲は【糸】でもうまく動かせないらしいし、周辺に【糸】が無い今なら邪魔も入らないだろう。
「もう二度と、あんな連中に奪わせないし、好きにさせない」
これだけは許しちゃいけない。
さんざん人を踏みつけにする連中が笑う終わりなんて、認めない。
一度失敗した、だから次こそは。
「まずは・・・三人に謝るところからかな」
その為にも、まずは仲間達に心配させた事を謝ろう。
そう思いながら、俺は部屋を出た。
フィクションです。