TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
皆さんのおかげです、ありがとうございます。
旅行
「すまない、もう一回言ってくれ」
「ですから!ドラクル島に行きましょう!」
「いや・・・」
「そこはせめて「行きたくない」まで言いましょうよ!いやだけで止められると辛いのですけど!?」
キラーマンティスを倒してから7日後、いきなりミレッラがドラクル島に行きたいとか言い始めた。
俺たちは今、ミレッラの屋敷に泊まらせてもらってる。
そんな分際だが行く気はあまり無い。
「どうして行きたくないのです?」
「行く理由が無いだろう・・・」
「ありますわ!」
「聞こう」
「皆さんと旅行したいですわ!」
「聞かない」
「聞きなさいな!」
ミレッラの顔が俺の顔と数センチまで近づく。
勢いが良すぎて俺の鼻を彼女の額が掠める。
危ないからやめてほしい。
「すまないが今それどころでは無い、【糸】の件もあるし新しいスキルの使い方も練習しないといかん」
「旅行に行っても出来ますでしょう!?」
「だったら旅行に行く意味が無いのでは?」
「うぶぶぶぶ・・・」
「どんな呻き声だ」
彼女が俺たちに友情のような物を感じてくれているのは分かっている。
何せ死線をくぐった仲間だ。
親近感もそりゃ沸くだろう。
だがダメだ。
次の公式シナリオが発生するのはおそらく王都。
ドラクル島はその次のはずだ。
今行く意味は無い。
「・・・何か他の事で埋め合わせさせてくれ」
「じゃあ・・・一緒にゲームでも・・・」
「あまり得意では無いがそれでもいいか?」
「私もトランプ以外は碌にやってませんから大丈夫ですわ」
取り合えず収まってくれたか。
今日はこのまま彼女のゲームに付き合って、夜に公式シナリオの情報をノートに纏めて・・・。
「(待てよ?)」
俺の記憶では確かに、残っているであろう公式シナリオで一番推奨レベルが低いのは王都の物だ。
だから俺は次は王都のシナリオだろうと思っていたが・・・。
「(あのGM気取りが推奨レベル順に出してくるか?)」
無い。絶対に無い。
推奨レベル3のシナリオの最後にレベル7を出して来てるんだぞ。
なんでわざわざ俺らに合わせてくるんだ。
俺だったら一番難しいのをぶち当てる。
「(そもそも公式シナリオが発生するという保証も無いんだぞ)」
現状入ってくる情報から『王都防衛線』が起きそうな気配は無い。
だとしたら先に『竜神への生贄』が発生するかどうかを確認した方がいいんじゃないか?
何せドラクル島の情報は殆ど入ってこないのだ。
陸路が無いと商人などの行き来が激減するから仕方ないのだが・・・。
「(『竜神への生贄』はタイミングを逃したら事だぞ・・・)」
もしあの公式シナリオが発生して介入するタイミングが遅れたら多分ドラクル島が沈む。
そんくらい規模がぶっ飛んでるシナリオなのだ。
そして公式NPCに対しての扱いもぶっ飛んでる。
「(8歳の子供を当たり前のように生贄にするな本当に)」
GM気取り共への手がかりが欲しいのもそうだが、8歳が死ぬかもしれんと知っている以上助けない選択肢は無いのだ。
助けるチャンスを逃すわけにはいかない。
「・・・ミレッラ」
「はい?なんですの?」
「なんか突然ドラクル島に行きたくなってきたんだが・・・」
「何者かに洗脳されてますの?」
違うわ。
流石に意見変え過ぎだとは思うけど。
◇
「ドラクル島?行ったことないなぁ・・・」
「あそこって確か竜人族しか住んでない所ですよね?いつも天候が荒れてるせいで頑強な種族しか生活できない筈ですけど・・・」
「その荒れた天候が一年の間で一週間だけ!晴天になるタイミングがあるんですの!その時期に開催されるのが『降竜祭』ですわ!」
話があると言われて来たけどドラクル島に旅行か・・・。
僕達を操っていた連中を追いたい気持ちも、【糸】に操られている人を探したい気持ちもあるけど・・・。
「竜人族は基本的にドラクル島から出てこない・・・彼らは長寿だ、もしかしたら【糸】に関して何か知っているかも・・・」
「この街にも竜人族の人居ませんもんね」
「気候的にどうも不快感があるらしい、嵐が多いあちらと比べると少し乾きすぎているのかもな」
「そっち!?いやそっちも大事ではありますけど・・・何よりも『降竜祭』ですわ!」
「その『降竜祭』とやらは何をする祭りなんだ?」
「竜人族を生み出したとされる巨竜が晴れた日に降りてくる・・・それを願っての島をあげての大規模な祭りですわ!普段一般に公開されない技術や物が、島の外から来た人でも買えたりしますの!そしてやはり一番は巫女の祈祷ですわ!」
興奮したミレッラさんがすごい目力で伝えてくる。
「あの巫女舞ときたらもう!あまりに幻想的過ぎてびっくりしますわ!まるで別世界に来たような感じです!」
「うん・・・」
「ニンジャさん全然興味無さそうですけど本当に行きたいって言ったんですか?」
「言った、言ったぞ本当だ(もう既に来てるし・・・)」
「なるほどねぇ・・・そこまで力説されると見てみたいね」
「でしょう!カロル様は分かる方ですわ~」
祭りの方も気になるが・・・個人的には竜人族の方が気になる。
彼らには鍛冶師を生業としている者が多いのだ。
たまに流れてくる竜人族の打った武器は非常に品質がいい。
高値で売られているのをたまに見かけるが・・・。
「(直接買うならもう少し安いかもね)」
何せ以前まで使っていたレイピアは砕け散って盾もキラーマンティスに踏まれたせいでひしゃげていた。
今はひとまず安いものを買い直してはいるが・・・。
本音を言えば、良い武器が欲しい。
「(ミレッラさんに何でもかんでも出してもらうのも・・ね)」
流石に女性にあれやこれ買ってもらうのは自分のプライドがあれだし、仲間とは言え金銭関係はデリケートになりやすい。
いくらお嬢様でお金を持っているからってそれはそれ、これはこれだ。
「(まぁ二人はもう買ってもらってるみたいだけど・・・)」
ニンジャはずっといい短剣を、ミロネさんはポーション材料や作成キットのいいものを買ってもらっていた。
と言っても二人が卑しいとかそう言う訳では無い。
ミレッラさんが助けてくれた礼をさせて欲しいと言ったのを自分だけ断っただけだ。
「(損なんだろうなぁ、こういうの)」
でも仕方ない。
繰り返しの日々でかなり収まった方だが、自分はもとより見栄っ張りなのだ。
これが自分だと言い聞かせて、忘れることにする。
残った紅茶を飲み干そうとカップを傾ける。
「あ、カロル様!その紅茶ですけど茶葉が少し溜まりやすいので全部飲むと・・・」
「ごほっ!げほっ!うぼえ!」
「おい飛んだぞ・・・大丈夫か」
「お水ありますよ!どうぞ!」
水を受け取ってゆっくり飲む。
・・・しまらないなぁ僕。
◇
「これは・・・」
「おう、たまたま入ってきた激やば情報よ、ここだけの話な?」
「当然です、こんな話が広まってしまったら・・・」
「ああ、かーなりやばいことになるな、もう『降竜祭』も始まるっつうのに」
「・・・・・・」
ギルドに来て開口一番激やばと言うから話を聞いてみたら・・・。
こんなに激やばなの持ってこられても困りますよ・・・。
「・・・今の被害はどのくらいですか」
「漁村が5つ跡形もなく無くなってる、ぺんぺん草すら生えてねぇ」
「現在の進路は」
「見てねぇから形跡からの憶測になるが・・・ドラクル島に向かっているな」
「嵐が無くなったせいで余計に移動しやすくなってしまっていると・・・」
「タイミングとしては最悪も最悪だ、何せ大勢がドラクル島に集まるんだからな」
「島なせいで避難も出来ない・・・!」
「だがこの情報を広めると今度は・・・」
「パニックが起きてトンボ帰りをする者が発生しますね」
「あいつがいる海上でスピード出してみろ、即おやつだ」
「・・・まずいですね」
本来こんな時期に活性化する事なんて無いはず。
何せ一度動くと50年は眠るのだ。
以前動いてからまだ10年、早すぎる。
でも現実として動き出してしまった。
「ひとまず上には報告します、その反応次第ですね」
「碌な反応来ないだろそれ」
「中間管理職は上にお伺い立てないと何もできないんですよ」
「切ないな」
「本当に」
被害ゼロは・・・無理だろう。
どれだけ抑えらるか・・・。
兎に角後でギルド所属の冒険者にはドラクル島に行かないように言わなければ。
「勘弁してくださいよ・・・『ハーヴグーヴァ』なんて・・・」
せめて海中の魚だけで満足してくださいよ・・・。