TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。   作:水道館

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釣り

「いい天気だ・・・」

 

雲一つない晴天、俺達は海の上に居た。

ミレッラの所有している船でドラクル島に向かっている。

 

「にしても速いな魔道船、初めて乗ったがこの調子じゃ夜には着きそうだ」

 

魔力を動力源に動く魔道船、一度魔力を込めれば丸一日動かせる便利な船だ。

途中普通の船で島に向かっている人たちをどんどん抜いていく。

 

「これ一台、一体いくらなんだ・・・」

 

あまり考えたくない、どうせとんでもない額だろうし。

 

「待った!待った!」

「またですか?もうこれで6回目なんですけど・・・犬より待ってるような・・・」

「強すぎますわ!なんですのこの人!30戦して全勝って!」

 

背後で三人・・・と言うか主に二名の悲鳴が聞こえる。

時間潰しにチェスをやっているのだがミロネが強すぎるのだ。

カロルもミレッラもチェス経験者なのにぼろ負け。

勝てる試合じゃなさすぎる。

ちなみに俺はとっくの昔に10連敗かました。

萎えてしまったので船に置いてあった釣り竿を垂らしている。

 

「しかし・・・釣れないなぁ」

 

かれこれ1時間はやっているがボウズだ。

俺自身釣りなんて1、2回しかやってないがだとしても釣らなさすぎる。

船が早すぎて食いつかないのだろうか。

 

「『降竜祭』・・・ルルブにそんな設定無かったと思うんだがなぁ」

 

やはりこの世界はルールブック通りでは無いようだ。

足りない設定を埋めるようになっているのだろうか。

俺のルルブの知識が通用しない時がいずれ来るかもしれん。

 

「上手く立ち回りたいものだ・・・」

 

あといい加減死にかけないで済ませたい。

【仕返しの刃】なんて技使わなくていいならそれが一番なのだ。

ちらりと後ろを見ると落ち込んだカロルが歩いてきた。

 

「どうだい?釣れてる?」

「お前しか釣れんな、チェスはもういいのか?」

「うん・・・負けたし・・・心折れたかな・・・」

 

ようこそこちら側へ(負け犬)

共にあたりが来ない釣り糸を眺めようではないか。

 

「にしても、こうして見ると結構な数の船があるよね」

「どれも進路は同じだし、全部降竜祭に行く人々なんだろうな」

「僕らの船なんか比べ物にならないような大きさの船もあるね」

「客船か何かだろう、流石に比べるのはミレッラに悪い」

 

あれは個人の物では無いしな・・・。

個人でこれを持ってる方がおかしいくらいだ。

 

「・・・あれ、ニンジャ釣り竿引いてるよ」

「なにっ」

 

手元を見ると確かに引いてる。

苦節一時間、今こそ苦労が報われる時か!

 

「ふんっ!・・・重いな」

「ニンジャの筋力で重いなら相当だね」

 

ずっしりした感触が腕に伝わってくる。

だがこの前のカマキリを倒した俺はレベルが一気に4レべまで上がっているのだ。

当然その時の能力値上昇も入っている俺の筋力は相当なものだ。

 

「この程度なら・・・よし来た!」

 

海面から獲物を釣り上げることに成功した。

どんな魚だろうか、目線の所まで糸を巻いてみると─。

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

魚顔の筋肉ムキムキ全裸が釣れた。

その何考えてるのか全く分からない目と視線が合う。

 

「あの・・・外してくれないすか?」

 

ちゃぽん

 

上げてた竿を海に戻した。

 

「釣れないなぁ・・・」

「釣れないね・・・」

 

釣り竿がバカみたいな勢いで引っ張られる。

どうも見間違いでは無いようだ。

 

 

 

「いやぁすんませんすんません!釣りの邪魔したのに食事まで貰っちゃって!」

「ああ・・・もう釣りする気は失せたしな・・・」

 

釣り上げてしまったサハギンに残った釣り餌を献上する事で、先ほどの現実逃避を許してもらった。

幸い相手側も邪魔をしたと思っているらしく怒ってるわけでは無さそうだ。

なんだったら上機嫌に釣り餌をかっ食らっている。

 

「あの・・・ひとまずこれを塗っておけば針の痕は直ると思いますので」

「あ~すんませんホントに!塗り薬まで貰っちゃって!」

「ところで何で釣り竿に引っかかったので?見えなかったのです?」

「いや腹減りすぎてたんすよ、そんで食い物探してたら目の前に旨そうな匂いのする物があるじゃないすか!罠でもいい、罠でもいいんだ!って思って食いついてみたら─ホントに罠だったんすよね」

「切羽詰まり過ぎだろ・・・」

 

アナケンでのサハギンは中立に位置している魔族。

魔族は基本的に人族に敵対しているのばかりだがサハギンは一部を除いてまぁまぁ友好的だ。

立ち絵で軽く見ていたけど実際に見ると・・・すごいな、圧が。顔が。

 

「空腹って・・・魚を取ればいいじゃないか、君たちの主食だろ?」

「いやそれが全然いないんすよ!俺降竜祭見たくてドラクル島に向かってるんすけど全くいない!そのせいで俺ずっとお腹がペコちゃんでしたよ」

「全然いない?」

 

こんなに広い海で魚が全然いないってそんな馬鹿な。

 

「あ、船が多いからそれで逃げちゃったんじゃないですか?」

「そうなんすかねぇ・・・確かに船は多いっすけど」

「まぁ文字通り乗りかかった船ですし・・・乗っていかれる?」

「いいんすかぁ?船なんて乗ったことなかったから新鮮っすわ!」

「新鮮なのは君なんじゃないかな・・・」

 

確かに釣りたてだけども。

 

結局ドラクル島まで釣ったサハギンを加えて船旅は続いた。

あとサハギンもチェスでミロネに負けた。

 

 

 

 

「はぁ・・・」

 

今日もダメだった、これで50連敗。

 

「誰も雇ってくれないよぉ・・・」

 

いつまでこんな生活続けるんだろうか・・・。

私だけいつまでも卒業できない・・・。

 

「おい!リューグ!なにしとるんじゃ!」

「げ!師匠!」

「お前また売り込みしてたのか!」

「だ、だってぇ・・・」

「何度も言わせるな!お前じゃ無理だ!大人しく道場の手伝いをしておけ!」

「い、嫌だぁ!いつもいつも雑用ばっかり!いい加減私も実践に出たいよぉ!」

「足を引っ張ると言っているんだ!雇用主を危険にさらす気か!」

「わ、私だって・・・やれるんだぁ!」

 

拳を師匠に突き出す、でも─。

 

「【削岩拳】!!!」

「あ」

 

師匠の拳の方が早く、私の腹に叩きこまれる。

 

「うぼあ!」

「遅い!やるならもっと早く拳を出さんか!」

「す、すきるに・・・かてないよ・・・」

 

蹲る私を軽々と担いだ師匠はそのまま道場の方へ足を運ぶ。

 

「戻ったらまずは床掃除!その後は風呂洗いじゃ!」

「これじゃただの家政婦じゃないかぁぁぁ!」

 

いつまでも変わらない私の生活。

いつまでも成長しない私。

・・・何か一発逆転できる方法ないかな・・・。

 

 

「・・・ん?」

 

担がれている時に地面に捨てられている紙が目に入った。

気になったので体をねじって拘束から抜け出す。

 

「あ、こら!」

「えーっとなになに・・・?」

 

『あなたの武器、作ります。運が良ければ武器スキル付きの物が出来るかも・・・?』

 

武器スキル・・・武器・・・!

 

「これだ!これなら私でもぉぉぉ!?」

「逃げ出すんじゃない!全く!」

「師匠!見てくださいこれ!武器スキル!」

「ああん?・・・あほか!こんなん嘘っぱちじゃ!武器スキルの付いた武器なんぞ見たことないぞ!」

「でもチラシに書いてるじゃん!」

「騙され過ぎじゃろお前!詐欺に気を付けんか!」

 

そうか!この手があったか!

武器スキルさえあれば、『スキルが無い』私でも!

戦える!雇ってもらえる!強くなれる!

 

「絶対手に入れるぞ!武器スキル!」

「お前武器なんぞ使えんじゃろ!」

「これから使えるようになるもん!」

「30歳超えてもんとか言うんじゃない!」

「竜人族じゃまだめっちゃ若いんですけど!?女の子なんですけど!?」

「三十路が女の子とか言うな恥ずかしい!」

「ひどい!」

 

日が沈みかける夕暮れ。

竜人族の女と人間の老人が騒ぎながら帰路に就く。

その姿はまるで親子のようだった。

 

 

 

 

 

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