TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
「停泊する場所無いように見えるんだけど・・・」
「やっべぇ!他の観光客の船で船着き場が占領されてますわ!」
「停泊するとしたら・・・あっちだな」
「港から凄い離れちゃいますね・・・」
ドラクル島に着いたは良いが、夜だというのにここから見える範囲でも人の山しか無い。
観光客の船で港はぎっちぎちだし今後来る人らの事は考慮されてないらしい。
「いやぁここまであざした!それじゃお先に!」
サハギンはそう言うと海に飛び込んで島に上陸していった。
「い、行っちゃいました・・・」
「まぁ彼は船関係無いし・・・仕方ないね」
「ひとまず他の人に場所を取られる前に止めてしまおう、港から離れるのは我慢するしかない」
「桟橋無いから降りる時に足はびしょぬれ確定ですわ・・・」
ぶつぶつ言いながらミレッラは船を停泊できる所まで移動させる。
魔道船はある程度は自動操縦が可能だが細かい移動に関しては手動でやるしかない。
勿論ミレッラ以外船なんて乗ったことないので全部頼りきりだ。
すまん。
「しかし・・・観光客が多すぎて竜人族が全然見えんな」
「一般の竜人族は出店で買ったりする必要が無いのかもね、地元だし」
観光客からしたら珍しくても現地民からしたら興味ないって事か。
なんか元の世界でもあるあるな気がする。
「もう少しで着きますから降りる準備お願いしますわ~」
「分かった、靴は脱いで降りるか」
「砂浜だから貝殻とかに気を付けてくださいね?」
「足切ったら大変だからね・・・っと?」
「ん?なんだあれ・・・」
靴を脱いで待っていると船を止めようとしている近くから騒ぎ声が聞こえる。
どうも何か揉めている様だ。
「だから言ったんじゃ!!!案の定詐欺ではないかぁ!!!」
「ち、違いますよ!ちょっと運が悪かっただけなんです!次こそ当たります!」
「ただのギャンカスじゃろそれ!いい加減にせんか!」
「お慈悲!お慈悲を!これを逃したら私に未来は無いんですぅぅぅ!!!」
本当に何だあれ。
ブチギレ老人に引っ張られている竜人族の女性が泣きながら駄々をこねている。
デパートのおもちゃ売り場でも見ないレベルだ。
「もう少し離れた所に止めますわね」
「頼んだ」
触らぬ神に祟り無し。
変に藪蛇もしたくないのでスルーしよう。
「そこの!そこのお金持ちしか乗れないような船に乗った覆面してる全身黒コーデの変な人ぉぉぉ!たすけてぇぇぇ!!!」
お前なんでこの状況で俺だけピンポに選ぶんだよ!
◇
「それで?全身黒の覆面変人が来たわけだが何があったんだ?」
「聞いてくださいよ変態さん!師匠が私の未来を奪うんです!変態さんは私の味方ですよね!?」
「ご老人、コレ殴っていいだろうか」
「いいぞ」
「やめて!暴力反対!」
お前の言葉の暴力を棚に上げるな。
変態では無いだろ、流石に。
「話を省略しすぎだ・・・一から説明してくれ」
「えっと・・・私武器スキルが使える武器が欲しいんです」
「武器スキル?」
武器スキルとはその名の通り武器に付いているスキルだ。
装備している武器にそれが付いていると誰でもその武器についているスキルを使えるという強力な物。
だがこの武器スキルは簡単に手に入るものじゃない。
基本的にシナリオのクリア報酬やダンジョンの宝箱などでしか手に入れられないようになっている。
少なくともファストウには武器スキル付きの武器なんて置いてなかった。
「あれはとても希少な物だろう?そう簡単に手に入らんと思うが・・・」
「そうなんです、でもこのチラシを見てくださいよ!」
彼女が手渡してきたクシャクシャなチラシには『あなたの武器、作ります。運が良ければ武器スキル付きの物が出来るかも・・・?』と書いてあった。
すごく・・・胡散臭いです・・・。
「運が良ければって・・・鍛冶で作った武器にスキルなんて宿らないぞ」
「その通り、出来たらもっと世の中に武器スキルなんぞ溢れておるわ」
残念ながら武器スキルは鍛冶を行っても付与されない。
ルルブにも明記されてたし、この老人も賛同しているから間違いないのだろう。
「いやいやタダの鍛冶じゃないんですよこれが!」
「と言うと?」
「この島で取れる希少な『竜光石』を武器作成時に一緒に使うことで低確率で武器スキルが付与されるんですよ!」
「『竜光石』・・・?」
また知らない単語だ。
早速ルルブの知識が活かせない物が出てきてしまった。
「その石を使っても必ず出来るわけでは無いと」
「そうです!」
「その石は大体いくらくらいの価値なんだ?」
「一個5万くらいです!」
「それを既に何回くらいやったんだ?」
「10回です!」
「それは誰の金なんだ?」
「師匠のです!」
「ご老人、コレ殴ったほういいぞ」
「もう飽きるほど殴ったわい」
人の金でギャンブルしてるだけやんけ!
碌でもねぇなこいつ。
「師匠!これは先行投資ですよ!武器スキルさえ手に入れば私は強いんです!もうあっちこっちから護衛の依頼が来まくりです!お金はその時返すのでお金ください!」
「ふざけるな!既に50万飛んでおるんだぞ!」
ここまで取らぬ狸の皮算用が似合うやつも居ないだろう。
武器スキルと言っても大して使わないような外れスキルが付く可能性だってあるんだぞ。
「そもそも武器スキルに頼る前に自分のスキルを磨いた方がいいのでは?その方が金もかからんぞ」
「・・・これ見てください」
そう言って彼女はギルドカードを俺に渡してきた。
言われるがままにカードを見てみる。
名前「リューグ」
レベル・・・5
スキル・・・【筋力強化】【防御強化】【素早さ強化】【筋力強化Ⅱ】【防御強化Ⅱ】【体力強化】【筋力強化Ⅲ】
「(こいつ能力増強スキルしか無い・・・!)」
これはひどい。
別に能力増強系スキルは弱いわけでは無いのだ。
俺というか「ニンジャ・カウンター」だって【筋力強化】は取っている。
だがそれはあくまで火力補助の為だ。
間違っても能力増強だけで組んでも碌な強さにならない。
それくらい攻撃スキルや移動スキル、パッシブスキルは優秀なのだ。
「成程な・・・これだと確かに武器スキルに頼りたくなるのも分かる」
何せこの世界ではスキルは完全に個人の才能だ。
生まれつき決まってしまうせいで本人の努力でどうにかなるものではない。
だが武器スキルさえ使えればこの能力値の暴力を活かせる。
ギャンカスになる気持ちも分からんでもない。
「・・・儂は少し変わった道場をやっていてな、弟子を鍛えてある程度レベルを上げて死亡率を下げてから護衛任務などの仕事に就かせている」
所謂ボディーガードの会社みたいな物だろうか。
実際レベルが上がるだけでも死亡率は大きく下がる。
やり方としては理にかなっている。
「だがこやつはいつまで経っても能力増強スキルしか覚えん、それに関しては仕方ないと思っておる、生まれつきの物だからな」
だが!と女性、リューグの方に一歩踏み出して怒鳴る。
「だったら潔く道場の手伝いに従事するなり、他の道を探すなりあるじゃろ!どれだけ言ってもこいつは護衛任務を諦めん!こやつが道場に入って既に10年だ!これ以上無駄な時間を使うな!」
「竜人族だから時間はありますよ!まだまだピチピチです!」
「三十路がピチピチとか言うんじゃない!」
「ひどい!」
この老人は決してリューグを嫌っている訳では無いようだ。
要するに「いつまでも夢追ってないで現実見て家の手伝いするか就職しろ!」という事だ。
実家暮らしの売れないミュージシャンみたいだな。
「わ、私は師匠の護衛任務をする所を見て、師匠みたいになりたいって思ったんです!」
「気持ちは嬉しい。だがそれであるかもわからん武器スキルの可能性にかけてどうするんじゃ!」
「あ、あります!きっと運が悪いだけでそろそろ波が・・・」
「50万使って波が来ないならもう来んわ!凪っとるわ完全に!」
俺もそう思う。
完全にコンコルド効果にハマっている。
金の方もそうだが、今までの特訓が無駄になるのが嫌なのだろう。
「(と言っても武器スキルなんてそうそう手に・・・いや待てよ?)」
【竜光石】の武器ガチャに関してはよくわからないが・・・一つだけ、彼女が攻撃スキルを覚える方法がある。
この世界がルルブ通りの挙動をすれば、だが。
「・・・武器スキルでは無いが、少し心当たりがある」
「え!?嘘!?」
「・・・お主、慰めるだけの嘘はいかんぞ」
「いや、本当にあるんだ、と言っても一種類しか無いが・・・」
「そ、それでもいいです!お願いです!教えてください!」
「分かった、ならまずは」
船に乗ったままこちらの様子を伺っているミロネを指さす。
「あそこの女性、ミロネに頼む必要があ─」
「ミロネさんお願いします私をお救いください!」
「いや誰ですか貴方!?ちょ、足掴まないで!靴舐めないで!」
爆速で船に飛び乗ってミロネの靴を舐め始めた。
師匠と言われていた老人は天を仰ぐ。
俺も一緒に仰ぎたくなった。