TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
「帯電ポーションですか?一個ありますけど・・・」
「彼女に譲ってやってくれないか?頼む」
「いいですけど・・・もしかしなくてもアレやるんです?」
「・・・まぁ知らないままよりはいいだろ」
全員船から降りてミロネに頼み、ポーションをリューグに渡す。
「よし、これを一気飲みしてくれ」
「分かりました!・・・まずい!」
「ポーションだからな」
美味しいポーションなんてこの世界に存在しないのだ。
何でも混ぜ物をすると効果がガタ落ちするとか。
「飲みました!」
「じゃあ誰も居ない海上に気合を込めて正拳してくれ」
「はい!」
「・・・本当にこれでスキルが出るのか?」
「ああ、一応」
リューグが拳を突き出す、すると─。
バチバチィ!
拳から電流が走り、空に消えていった。
「・・・え、なんか普通に強そうな感じなんですけど・・・これが?」
「ああ、スキル【雷鳴拳】だ、正確には同じ効果を持つ現象だが」
微妙スキル【雷鳴拳】、モンクやグラップラーなどの格闘系ジョブが覚えれる遠距離も兼ねた攻撃スキルだ。
威力も普通に高く、大体通常攻撃の三倍くらいの火力だ。
性能は優秀だ、性能は。
「実は帯電ポーションを飲むと【雷鳴拳】が一時的に使えるようになるんだ」
「そうなんですか!?なんで!?」
「さぁ・・・」
公式が「帯電ポーション弱すぎてやばいな、テコ入れするか」で追加された効果なんて言ってもな・・・。
この世界じゃ違うかもしれないし。
ちなみにテコ入れ前の帯電ポーションの効果は、接触してきた相手に1ダメージを与えるだ、しかも1/2、弱い。
「や、やったぁぁぁぁぁ!!!これさえあればもう無双です!師匠今までありがとうございました!」
「こ、こら!道場の証を投げるな馬鹿!」
老人に道場で使うのであろう帯を投げてはしゃぐリューグ。
「あ、あの・・・落ち着いてください、【雷鳴拳】は・・・」
「よーし、もう一回撃ってみますか!【雷鳴拳】!!!」
リューグの拳は空中に留まったまま何も起きない。
何回か繰り返してみるが【雷鳴拳】は出ない。
「あ、あの、出なくなったんですけど・・・」
「ああ、【雷鳴拳】は一日一回しか撃てないからな」
「え」
「帯電ポーションの効果で使う【雷鳴拳】も同じで1回なんです」
「なんで!?」
そう、これが【雷鳴拳】が微妙スキル足る所以、『このスキルは一日一回しか撃てない』と言う要らなすぎる制約だ。
公式は多分この一文を完全に忘れているのだろう。
付いたあだ名が『ログボ拳』。
一日一回しか撃てないのに別にぶっ壊れって言う訳でもない。
それが【雷鳴拳】だ。
「これ詐欺じゃないですか!?」
「詐欺では無いだろ、実際撃てるし」
「でも実戦で一回こっきりのスキルなんてどうすればいいんですか!」
「【雷鳴拳】は全く使えない訳じゃない、諦めるな」
「てか帯電ポーション毎回飲まなきゃいけないんですか!?」
「はい、それと帯電ポーションは素材が結構高いので一本5000ゴールドします」
「高すぎませんか!?」
冒険者の中では割と有名な話、【帯電ポーションの雷鳴拳コスパ悪い】だ。
最初は皆この帯電ポーションに夢を見るが金額にすぐに屈することになる。
一日一回電気出すために毎日5000ゴールド払える冒険者は居ない。
「・・・あの、私お金無くて・・・」
「だろうな」
「帯電ポーションの予備って・・・」
「すいません、帯電ポーションは使わなすぎるので作ってないんです、効果も弱いし・・・」
「・・・あの師匠、私やっぱり道場で頑張ります」
「今までありがとうなのだろう?元気でやれよリューグ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
泣き始めるリューグ。
確かにコスパ最悪だけど何も使えないよりマシだから教えたのだが・・・。
やめた方がよかっただろうか。
泣いてるリューグを放置して老人が近づいてくる。
「まぁ嘘では無かったな、疑って悪かった」
「すまない、傷つけてしまっただろうか・・・」
「いや、ああやって泣いてはいるが、今までは本当に何も使えなかったのだ。少しは前進だろうて」
なんだかんだリューグの事を大切にしているのか、微笑みながら話す老人。
やはり10年も一緒に居るからか、情が沸いているのだろう。
ギャンカスだけど。
「ところでご老人、先ほど護衛任務などの仕事をさせていると言っていたが・・・」
「うむ、そうだが・・・」
「なら一つ聞きたいことがあるのだ」
「【竜信教】、この言葉に聞き覚えは無いだろうか」
◇
公式シナリオ『竜神への生贄』
個人的に公式シナリオの中で一番嫌いなシナリオだ。
難しさもそうだが、何よりも物語そのものが嫌いだ。
シナリオの内容としては単純、カルト宗教に捕らわれた生贄の少女を救い出す。これだけだ。
だが内容は単純でも道中が難しすぎる。
所謂シティシナリオで、情報をかき集めて少女を探して助けるのだが、RPで聞きこむだけでは分からない情報が設定されている。
NPCへの対話で好感度を稼ぎやすいスキル【対話の天才】は最低でも欲しい。
そして場所が分かったとしてもカルト宗教【竜信教】、こいつらの信者が妨害してくるのだが・・・。
『うおおおおお!!!教祖様万歳!』
とか言いながら自爆してくるのだ。
体に爆弾を巻き付けて突撃してくる。
それらを何とかしのいでも教祖がクソ強い。
魔法使いなのだがレベルは8、あのカマキリより強いのだ。
しかもやたらと障壁張ってきて攻撃が通りずらい。
遅延しつつ魔法でチクチクしてくるのでストレスマッハだ。
だがここまでは前座。
本当に酷いのは生贄の少女だ。
リルラール、竜人族の八歳の少女。
この子は非常に賢い子でPC達にも友好的。
そして教祖の娘だ。
そう、カルト宗教の親に神への生贄にされる為だけに生み出された子供なのだ。
これだけで頭が痛くなるが、彼女は自分が生贄にされるのを知っている。
それこそ何年も前に。
PC達とはシナリオ最序盤に外で遊んでいる時に邂逅する。
その時に仲良くなるのだがその時のセリフが。
『最後に遊んでくれてありがとうございます』だ。
その後彼女は親に連れていかれ生贄にされる。
わざわざこういうセリフを書いてる当たり、製作者は性格が悪い。
だがこのシナリオの酷さはここじゃ終わらない。
無事にリルラールを助け出してクリア・・・にならない。
突如として教団の連中が自死をし始めていくのだ。
そして教祖すら自分の命を捨てる。
今わの際に『我らが神よ、我らの命で蘇り給え!』と言って。
教団の連中が死んだ後に、祭られていた宝玉が輝きだしてその後、島に大地震が起きる。
島の中心にあった寺院が破壊され、過去に封印されていた巨大な竜が現れるのだ。
その竜は辺りを破壊しつくし、島を滅ぼそうとする。
そこでリルラールがこう言う。
『私が死ねば、もう一度封印できるはずです』
そして自ら命を絶ち、竜神は再び封印される。
かくして島は平和を取り戻したのだ─。
ハーブか何かやっていらっしゃる?
話が唐突だし何で封印されるのかも書いてないのにリルラールのセリフだけはしっかり書いている。
どんだけリルラールを殺したいんだよ。
クリアしても失敗してもリルラール死ぬんだぞふざけてんのか?
俺は子供と犬と猫が死ぬ話が嫌いなのだ。
どうもこの公式シナリオは公式が外部の人間に依頼した物らしく、かなり露悪的になっている。
クレームが入ったのかその後の追加サプリメントに乗っている公式シナリオにこのシナリオの作者の名前は無くなっていた。
そりゃそうだろ、悲劇を演出したいのは分かるがにしたってそっちを優先しすぎだ。
総じて難易度調整も微妙、話は暗すぎ、人の心が無い。
ぶっちゃけクソシナリオ筆頭だ。オーガのやつより酷い。本当に。
「(多分【糸】を繋がれているのはリルラールだろう)」
こんだけ酷い死に方をするのだ、GMもどき共の格好の餌だろう。
何としても助けなければならない。
そこで俺は船で考えた。
「(じゃあ先に【竜信教】ぶっ潰せばいいじゃん)」
シナリオが始める前に【竜信教】を潰す。
これ以外無い。
ミロネ達の時もそうだが、どうも連中はシナリオの内容を大きく変更することは出来ないようだ。
あくまで一部の改変に留まっているしな。
俺の近くは【糸】の効果も制限されるみたいだし、先に動いてやれば何もできないだろう。
「『竜信教』・・・お主よそ者だろう?どうしてその名を・・・」
「風の噂で聞いてな、その言い分だと知っているみたいだな」
「ああ・・・非常に危険な連中だ・・・いずれ大変な事を起こすだろうな・・・」
知っているのは非常に助かる。
【竜信教】自体は知っているが、どのくらいの規模とかどこに本拠地があるとかはGMが決めていいので分からないのだ。
相手の戦力はある程度知っておいた方がいいだろう。
「やはりか・・・私としてはそれをどうにかしたいと思ってな」
「そうか・・・しかし今の連中は危険だ、何せ─」
「親を殺して自分が教祖になったリルラールがトップになってからはどんどん過激に・・・」
「嘘やん」
【悲報】生贄の少女、親をぶっ殺して自分が教祖になる【怖すぎ】