TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。   作:水道館

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景品

翌朝、俺はミロネと祭りを周る為に準備をして宿の入り口で待っていた。

なんでも準備に少し時間がかかるとかなんとか。

女性だしな、色々あるのだろう。

ちなみに俺はいつも通りだ。

カロルに他に無いのか聞かれたがそもそもサイズが無いし何故かこの世界に来た時に荷物に同じ服が5着あったのでずっと着回している。

そのせいで年中忍び装束の大男と言う変人が誕生しているわけだが。

でも変態では無い、絶対。

 

「『竜信教』…どうも元のシナリオよりやばくなってんだよなぁ…」

 

リューグの師匠から過激になったとは聞いたが、元から連中は拉致監禁暴力上等と言うカスの満漢全席設定なのでこれが更に酷くなったとか考えたく無い。

竜神様が救ってくれるから何をしてもいいと言うのが連中の言い分だ。

正気の沙汰では無い。

 

「と言うかリルラールって別に戦闘データ設定されてないよな」

 

教祖であるリルラールの父親はレベル8の魔法使いではあるが…リルラールまで強いなんて設定はなかった筈だ。

だがレベル8の父親を倒せると言う事は…最悪レベル8より上の可能性がある。

 

「まぁ不意打ちとか考えればそこまで高くないかもしれないけど…ある程度はあると思った方いいよな」

 

ここまでの大幅介入が出来ると考えると…もう公式シナリオの記憶は当てにしたらダメだな。

今も奴らはどこかで世界を自分達の悦楽の為に使い潰しているのだろうか。

 

「情報が欲しすぎる…現状これしか無いからなぁ」

 

ギルドカードを取り出してスキル欄を見るとレベルアップで覚えたスキルと《異界の救世主3/8》が記されている。

 

「もうちょっとこう…なんか…あるだろ!」

 

せめてどの辺に操られてる人がおりますよ、くらい書いてくれんか。

公式シナリオが当てにならん以上俺が取れる行動なんて限りがあるぞ。

 

「す、すいません!待たせちゃって…」

「ああ、大丈夫だ」

 

背後から声をかけられて振り返るとそこには浴衣を来たミロネが居た。

紺色の浴衣が彼女のピンク髪と合っていてよく映える。

 

「浴衣を着てたのか、時間がかかるわけだ」

「あれ?ニンジャさん浴衣知ってたんですか?私ここに来て初めて知りましたよ」

「あ、あーーーーうん、まぁ風の噂で、な」

「そうなんですか、そ、それで…どうですか?」

「ん?似合ってるな、自分で選んだのか?」

「あ、ありがとうございます!ミレッラさんが選んでくれたんです、これなら似合うって」

 

流石はお嬢様、ファッションセンスはかなりいいみたいだ。

俺は基本安売りの服しか買わない無頓着人間なのでそのセンスは羨ましい。

 

「じゃあ行くとするか、日差しがそれなりにあるから日傘をさした方いいぞ」

「人混みだと迷惑じゃ無いですかね」

「俺が持てばそうそう邪魔にならないだろう、高さの問題で」

「え、で、でも…」

「気にするな、行こう」

 

宿の入り口にご自由にどうぞの札が貼ってある日傘をさしてミロネと祭りに向かった。

 

 

 

 

「すごい盛り上がりですね、まだ午前なのに」

「出店も殆どが開いてるな、掻き入れ時だし早めに開けたのかもしれん」

 

出店が並んでいる通りにやってきたが色んなところからいい匂いが漂ってきたりと食欲を湧かせてくる。

朝食食べてないからなんか適当に食べるか…。

 

「み、見てくださいニンジャさん!こ、ここに置いてある薬草!本でしか見たことないようなのも置いてますよ!」

「祭りに来てまで薬草調達しなくてもいいのでは…?」

「うわぁ…すごい。この薬草はお通じがとんでもなく良くなる物で臭いも殆どしないから便秘薬に最適で…」

「しかもよりにもよって便秘薬の薬草買わなくても良くないか?」

「でもファストウは勿論他の街でも殆ど流通してないんですよ!?こんなの買いますよ!」

「…そうか」

 

ミロネは職業病かたまーにこうやって薬草オタクになることがある。

いや好きな物があると言うのは良いことではあるが…。

初手奢るのが便秘薬かよ…いや良いんだけどな?

薬草をしこたま買った後、二人で出店を周りながら買い食いをしていると、何やら人だかりを見つけた。

気になり近づいてみると、司会だろうか。

壇上に上がって声を張りながら進行している。

 

『なんと!これで今日10連勝!凄まじい強さです!やはりチャンピオンは格が違う!30年間常勝無敗!圧倒的強さで今年も挑戦者を蹂躙するぅー!』

「はっはっは。まだまだじゃのう若いの。もっと精進することじゃ」

「くっそ!強すぎるって!」

 

どうも毎年やってるイベントのようだ。

年季の入った鱗の高齢竜人族が観光客に勝ったらしい。

 

「30年無敗か、凄まじいな」

「凄いですね、でも何で勝負してるんでしょう?」

 

確かに。

何をやっているのかここからだと離れていて見えずらい。

何かしらのゲームでは無いかと思うが…。

 

『さぁさぁほかに挑戦者はいませんか!?チャンピオンに勝利すれば、豪華景品の中から1つ選べます!全てチャンピオンが冒険者現役時代に手に入れた超希少なアイテム!これを手に入れる者は現れないのか!?』

 

あのチャンピオンらしい竜人族、冒険者だったのか。

やたらと体格はいいなと思っていたがその名残と言う訳か。

希少なアイテム…少し気になるが俺たちには関係ない話か。

 

『どなたかおりませんか!このチェスマスターと言われたチャンピオンに挑む勇気ある者は!』

 

ん?チェスマスター?

ミロネの方を見る。

 

「どうしました?」

「ミロネ、少し頼みたい事があるんだが…」

「いいですよ!何ですか?」

 

 

 

 

「ちょっとあのチャンピオンとチェスしてきてくれないか」

 

 

 

 

 

「待った!待った!頼む待ってくれ頼む!」

「あの…これで6回目ですけど…犬より待ってるんですけど…」

「い、嫌じゃ!30年無敗の儂の偉業が!伝説が!消える!消えちゃう!」

 

30分後、壇上にはミロネに待ったを懇願するチャンピオンがそこに居た。

さっきの威勢はどこに行ったのだろう。

 

「じゃあ・・・チェックメイトです」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

『あ、圧倒的!全ての手の内を読み、完封!これはひど・・・じゃなくてすごい!』

 

終わったようだ、チェスも無敗伝説も。

世知辛いがこれが勝負の世界、仕方ないね。

 

「ニンジャさーん!勝ちましたよ!」

「ああ、勝つって思ってたぞ」

 

なにせ既に4人の負け犬を量産してたからな、今回で5人か。

ようこそこちら側へ、歓迎するぞ元チャンプ。

 

『それでは!勝者のミロネさん!どうぞこの景品から一つお選びください!』

「え、えーっと・・・すいません、自分だとちょっと・・・仲間に選んでもらってもいいですか?」

『どうしますか元チャンピオン?』

「元やめてくれ・・・好きにしてくれ・・・」

 

どうも選べないみたいなので壇上に上がる。

一応何個かは挿絵付きのデータを見たことあるので選べはするだろう。

 

「さて・・・【暴威の矢筒】【光燐の盾】【シャドウイヤリング】・・・全部非売品の激レアだな」

 

こりゃ凄い、この老人相当な冒険者だったようだ。

しかし残念ながら今挙げた物はPTの全員使えない物だ。

カロルは軽盾を使うが・・・【光燐の盾】は大盾だからなぁ。

 

「何か無いものか・・・ん?これは・・・」

 

大量の景品の陰に隠れていた一つの腕輪。

手に取って観察すると、鎖のような絵が彫られている。

 

「なんだったかこれ・・・腕輪・・・腕輪」

 

これらの物と同格となると・・・。

 

「もしかして【デスマッチ・チェーンリング】か?」

 

【デスマッチ・チェーンリング】。

装備していると好きな対象を指定して、魔法の鎖を出して相手を拘束するアクセサリーだ。

拘束した際に対象と筋力の対抗判定を行って勝つと相手を無理やり自分の近くに引き寄せれる。

遠距離の敵に対する接近組のメタアイテムだ。

 

「ニンジャさんそれが欲しいんですか?」

「欲しいというか、あれば役に立つだろうと思ってな、現状私たちのPTは遠距離に弱いがこれがあれば少しはマシになるだろう」

「じゃあそれにしましょうよ!他のは私とかは使えないのばかりみたいですし・・・」

「いいのか?恐らく筋力の関係で私が装備すると思うが・・・」

「いいですよ!私からのプレゼントってことで!」

 

実際、短剣一本だと限界を感じていたので助かる限りだ。

これがあれば少しは俺でも【復讐者】無しでも攻撃を当てれるだろう。

 

「(暇な時にカロルと手合わせをしてるが全敗だしな・・・)」

 

俺が短剣の扱いがド素人というのもあるが、カロルは普通に強い。

器用貧乏なんて評価されてたがレベルが上がってくると万能になってきている。

正直俺なんてただの筋力バカなので戦力としては比べ物にならないだろう。

やることもほぼ自爆特攻だし・・・。

 

「じゃあ遠慮なく貰うとするよ、ありがとう」

「はい!どういたしまして!」

『仲睦まじい所申し訳ないですが勝者にインタビューさせてもらいたいです!お連れの方は壇上から降りてくださーい!』

 

どうも邪魔みたいだ、言われた通り壇上から降りる。

見上げるとミロネが司会に質問攻めされてたじろいでいた。

頑張れミロル、分からなかったら分からないでいいぞ。

半笑いになりながら見ていると─。

 

 

 

 

下から気配を感じた。

 

「(なんだ・・・?)」

 

視線を下げるとフードを被った子供が居た。

背中側から尻尾が見える、竜人族だろうか。

少しだけ体を動かしてフードの中を見る。

そこには緑色の髪の毛、赤い炎のような角。

 

「(リルラール・・・!?)」

 

間違いない、公式NPCの一人で今の【竜信教】の教祖、リルラールだ。

なぜ信者もつけずにこんな所に一人で・・・?

レベル8の父親を殺せるような彼女と今やりあえば辺りは確実に大惨事になる。

どうしたものか、そう思っていると。

 

 

 

 

目が合った。

挿絵では綺麗な緑色の瞳は、全く光が映ってなかった。

そして感じる憎悪、怒り、絶望。殺意。

間違っても8歳の子供がしていい目では無かった。

 

「─────。」

「・・・・・・」

 

俺は完全にその目に気圧されていた。

呼吸も忘れ、彼女と視線を交わす。

 

「・・・・・・・・・」サッ

 

リルラールが壇上とは逆方向に去って5秒程経っただろうか。

ようやく呼吸を思い出した。

 

「ブハァ!ハァ・・・ハァ・・・」

 

心臓がとんでもない速さで鼓動する。

生きた心地がしなかった。

間違いなく、彼女は俺なんてすぐに殺せるだろう。

殺さなかったのは、気まぐれだろうか。

 

「・・・あの目は・・・」

 

きっと気のせいとかでは無いだろう。

あの殺意は、嘘じゃない。

結局俺は、ミロネが戻ってくるまでずっと動けなかった。

 

 

 

 

 

島長に伝える事があるからって師匠と一緒に家まで来ましたけど・・・。

 

「島長、どうしたんですか。そんな道歩いてたら犬とカラスとセミの糞同時に食らったみたいな顔をして」

「どんな顔だそれは・・・しかし島長、大丈夫ですか」

「・・・30年・・・儂の30年無敗伝説・・・」

 

ダメだこりゃ。完全に壊れてる。

仕方ないので持ち歩いてた水を頭にかけてみる。

 

「ああ・・・この水は儂の涙か・・・?枯れたと思っていたがそんなことは無いのか・・・」

「師匠、島長もうダメです」

「ホントにダメそうだな・・・仕方ない、このまま報告しよう」

 

師匠は懐に入れていた資料を机に広げる。

そこには色んな名前と施設の間取り図が書いてある。

 

「他の者との連携でようやく上層部に入り込んだスパイと、奴らの本拠地が判明しました」

「・・・そうか、よくやってくれた」

 

一瞬で切り替わった島長が名簿を持ってパラパラとめくる。

一枚めくるたびに顔が険しくなる。

 

「ここまで入り込んでおるか・・・!」

「1/3・・・既に奴ら【竜信教】の手に落ちています」

「明らかに教祖が変わってからの動きが早すぎる・・・いったいどんな手を・・・」

「どうしますか」

「・・・既にかなりの人数が連中に拉致されている、早く助け出したいが・・・」

 

「でも動こうとしたら絶対情報流されて逃げられちゃいますよ?」

「そう、そうなのだ。だからまずは裏切った上層部から捕まえてしまいたい、一人でも逃せば情報が渡る、捕まえるなら全員だ」

「でもどうやってやるんです?人手足りなすぎますよ・・・」

「うーむ・・・」

 

島長が顎に手をやってしばらく思案していると、師匠が手を挙げた。

 

「人手ですが・・・少し気になることが」

「と言うと?」

「昨日偶然出会った観光客の一人が【竜信教】について聞いてきたのです」

「島の外の者なのにか?」

「はい、どうも冒険者で仲間と共に観光に来たみたいだったのですが・・・【竜信教】に探りを入れていました」

 

「・・・引き込むか、信用できそうな者たちか?」

「少なくとも4人全員、特に怪しくはありませんでしたね」

「え、師匠もしかしてニンジャさん達の事言ってます?」

「昨日話した観光客なんて彼らしか居らんのはお前が一番わかっとるだろ」

 

まあそうですけど・・・あの人達なら確かに大丈夫そう・・・かな?

ニンジャさんは見た目クソ怪しいですけど。

なにあの黒一色覆面スタイル。

 

「彼らに連絡は出来るか?」

「宿の場所は知っています」

「なら明日ここに来るように頼んでくれるか、話をしたい」

「了解です、島長・・・リューグ、島中央の高級宿だ」

「はーい、いってきまーす」

 

 




主人公強化イベント(ヒロイン頼り)
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