TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
『アナザーワールド•ボウケンジャー』に置いて素早さと言う能力値は非常に重要度が高い。
行動順、回避、移動速度、危険察知…その他様々な判定に使用される。
勿論、構成次第では素早さが低くても非常に強力なビルドを組める。
だがしかし、どうしても相性というものがある。
俺こと「ニンジャ•カウンター」の素早さははっきり言って終わっている。
流石に後衛のミロネやミレッラよか速いが、カロルと比べたら月とスッポンだ。
まぁ正直ネタ構成で作ったキャラなので身内卓で遊ぶ分には全然問題無かったし、許されてた。
だが今この時─俺は何度目か分からないが過去の自分を殴りたくなった。
「ハハハッ!君やっぱりノロマじゃないか!全然当たらないよ!」
今すぐ「ニンジャ•カウンター」のキャラシ消してくれマジで!
まるで追いつけない、相手の攻撃を急所に当てないようにするだけで精一杯だ。
俺には《復讐者》があるが…。
「《復讐者》!!!」
ゾルべに隣接するように体が移動する。
その移動速度だけはゾルべにも引けを取らない。
だが─。
「何度やっても遅いんだって!」
俺が振るった短剣はまた空を切る。
理由は簡単、俺の攻撃速度が遅いのだ。
例え奴の近くに移動したとて、攻撃が遅いから相手からしたら見てから回避が出来る。
「はい隙あり!」
「チィ!」
ブシュッ!と足を軽く切られ、血が吹き出る。
こちらが仕掛けても避けられて返しに切られる。
『デスマッチ・チェーンリング』を使っても─。
「おお、ジャラジャラまた出してきたね!でもそれさぁ…確かに追尾するけど追いつかれないよ?」
そう、確かに『デスマッチ•チェーンリング』は対象に向かってくれはする。
だが、ゲームと違って必ず捕まえて筋力対抗とはいかないのだ。
別に遅すぎる訳ではないが…ゾルべを捕まえるには速さが足りない。
「(このままだとジリ貧だ…!)」
少しづつではあるが、俺の体に傷が増えていっている。
そこからは当然血も流れる訳で。
動き続けている以上、傷口が塞がる事もない。
治すために用意しておいたポーションを使いたい所だが…。
「休ませないよ!ほらほらぁ!」
「クソッ!」
「お、脇に何か仕込んでるなと思ったけど、今の一撃は隙間に入ったね、ポーションとか無いの?使ったら〜?」
「ほざけ…使ったら首を狙うだろう」
「そりゃ勿論。ハハッ!」
そんな隙は無い。
こんな状況下でポーションなんざ使ってたら次の瞬間、俺の首は地面とキスしているだろう。
「にしてもさ、君タフだね〜普通だったら痛くて動けないと思うんだけど…もしかしてそう言うスキルかな?」
「だったらどうだと言うんだ?」
「いや俺のナイフなんだけど毒塗ってんだよ、と言っても死ぬようなやつじゃないから安心して。痛覚が3倍になるって言う感度が上がるやつなんだけど…常人だったら痛みで発狂してるぜ?」
《鋼鉄の精神》いつもありがとう。
お前が無かったら俺発狂死してたわ。
や鋼神。
「ま!痛がらないからなんだって話だけどね!このままだと君、俺のサンドバッグになって死んじゃうね〜?」
「腹立つ喋り方だな。まだ勝ってもないのに調子に乗っているのを見ると、随分と頭が悪いらしい」
「残念!俺は頭いいよ!ピザちゃんと分けれるし!」
「非行少年かお前は」
この程度の挑発には乗ってこないか…。
頭に血が昇ってくれればまだやりやすかったが仕方ない。
だったら─。
「《復讐者》!」
「また?芸が無いね!」
再び《復讐者》でゾルゲに急接近する。
当然奴は俺の攻撃を見てから避けようとする。
なら見えないようにしてやればいい。
地面に隠し持っていた煙玉を叩きつける。
「目くらまし?その程度・・・目痛ぁ!?鼻痛ぁ!?」
ここに来る前に道具屋で買った防犯用煙玉だ。
刺激物質がこれでもかと入っている。
ゾルゲは痛みで怯むが俺は《鋼鉄の精神》があるので怯まない。
「(今なら!)」
短剣を奴の足に振り下ろす。
こいつの脅威は速度、足さえ潰してしまえば─。
「ま、嘘なんだけどね」
その言葉が聞こえた瞬間、短剣を持っていた俺の右手に奴の二本のナイフが貫通した。
「な・・・!」
「いや普通にいい手だったよ、俺じゃなかったらそのまま勝ってたから気に病まないで!俺生まれが死ぬほど空気悪いところでさぁ、ガキの頃から刺激物いっぱいの空気吸ってっから慣れてんだわ!」
ケラケラ笑いながら俺の右手をナイフで執拗に抉る。
痛みは無い、だが右手の感覚は無くなっていた。
左手首につけている『デスマッチ・チェーンリング』から鎖を出してゾルゲを拘束しにかかる。
「おっと、欲張りさんはダメだよね、引き際肝心」
ひらりと身を躱されるが、目的は右手の解放なのでまずはいい。
・・・だが右手が動かない、短剣も落としたし完全にイカれた。
「大丈夫?武器落としちゃって・・・両手利きならそういう時便利だよ~」
「ご忠告どうも・・・」
やばいな、完全に追い詰められている。
このままだと一撃も当てれず殺されそうだ。
「(しかしどうする・・・俺の持ってるスキルでどうにかなる相手か・・・!?)」
《仕返しの刃》でどうにかなる相手じゃないし、移動スキルも兼ねてる《復讐者》はこの有様だ。
「(何かないか…ん?)」ジャラ
ふと左手を見ると手首の『デスマッチ・チェーンリング』から伸びた鎖が出たままだった。
今気づいたが引き戻そうとしない限り、出たまんまなのか・・・。
いや待てよ?
「もしかしてもう打つ手無し?そっかぁ・・・まぁ相性が悪かったね!別に君弱い訳じゃないと思うよ!うんうん!」
「お前なんで慰めてきてるんだ・・・」
「いやほら、今から死ぬのにわざわざ嫌な気持ちにしたら可哀そうじゃん!死ぬ時くらい褒めてあげて「ああ、頑張ったなぁ俺・・・」って思わせてあげたいんだよ!」
「なんで変に優しいんだお前は」
ゾルゲの会話に適当に合わせながら、思案する。
ぶっつけ本番だが・・・やるしかないか。
「それじゃ行く・・・よっと!」
ゾルゲが突っ込んでくる。
俺は左手首の腕輪から伸びている鎖をそのまま左手で持つ。
そして─。
「おおおおおお!!!」
思いっ切り腕を真横に薙ぎ払った。
地面に付いていた鎖は俺の力で一気に引っ張られる。
だが鎖を引き戻している訳じゃない。
つまり鎖はそのまま空中を鞭のように薙ぎ払った。
「ちょおおおおおおおおお!?」
ゾルゲの顔面擦れ擦れを鎖が勢いよく横切る。
鎖は勢いよく壁に激突した。
壁は鎖の跡をくっきり残してかなり凹む。
「成程、こいつはいい」
「待って待って!それ振り回せるの!?てっきりやらないから出来ないもんだと思ってた!」
「今思いついたから・・・なっ!」
「うおおおお!?」
今度は鎖を更に伸ばしながら逆方向に薙ぎ払う。
奴のリーチと何倍も違う攻撃にゾルゲは立て直さざるを得ない。
「危ない危ない!・・・でも所詮は思いつき!中々に雑な動きだね!」
素人の振り方だからか、ゾルゲは早速適応して俺の鎖を避け始める。
「左手で振り回してる訳だからさぁ!右が手薄だよ!」
ゾルゲは右側から一気に距離を詰めてくる。
奴が俺の眼前まで来る直前に、俺は奴の目の前に左腕を突き出す。
「鎖は一本しか出せないんでしょ!ブラフかな!?」
「いや、一本しか出せないぞ。だから」
『デスマッチ・チェーンリング』に念じる。
「戻そうと思ってな」
伸びまくっていた鎖は一気に引き戻される。
その際俺は再び鎖を握って手前に引く。
腕輪に引き戻される勢いと、俺が引っ張った勢い。
二種類の力が加えられた鎖は、先端を荒ぶらせながら─。
ビシャァァァァン!!!
ゾルゲの後頭部に直撃した。
鎖同士がぶつかる音と共に、ゾルゲの後頭部から血が吹き出る。
「ガッ───」
そのままゾルゲは前に倒れこみそうになる。
なので俺は。
「フンッ!」
全力で奴の顔面を膝蹴りする。
筋力特化の俺と耐久皆無のゾルゲ。
そんな差がある状態で勢いよく膝蹴りしたもんだから奴は後方に倒れていく。
そのまま俺は引き戻しを途中で止めて、鎖でグルグル巻きにした左手を振りかざす。
『デスマッチ・チェーンリング』の鎖は魔法の鎖だが強度は鉄より硬い。
さながら強化版メリケンサックだ。
「き、君さ・・・強いね」
ゾルゲが鼻が折れてる顔でそう言ってきた。
なので─。
「まぁ相性が悪かったな、別にお前弱い訳じゃないと思うぞ」
言われた言葉で意趣返ししつつ、渾身の腹パンをゾルゲに叩き込んだ。
腹の中にあった酸素を全て吐き出しつつ、ゾルゲは動かなくなった。
持っていたポーションを自分の傷に振りかけながら一息つく。
「・・・地味に人相手に初白星だな」
ちょっと嬉しい。
いくら手合わせとは言え、カロルに完敗してたからな・・・。
にしてもかなりやられた。
血が流れ過ぎたのかふらふらする。
「くそっ・・・早く合流しないと・・・ん?」
たまたま手を置いた壁が妙な感覚だ。
気になったので少し強く押してみた。
すると壁が奥に押し込まれていき、その横に扉が出てきた。
「なんだこれ、アジトか?・・・アジトだったわ」
ドアノブに手をやると鍵はかかってないようだ。
わざわざこんな所に隠しているぐらいだ。
何か隠してるのだろう。
もしかしたら・・・教団のちぐはぐな行動の謎が解けるかもしれない。
「どの道今すぐに戦うのは無理だしな・・・」
ミロネから貰ったブラッドポーション・・・以前食わされた増血作用のある薬草の濃縮版だ。
使ったはいいが効きにラグがある。
血が足りない状態では走ることさえできない。
回復ついでにここを見てみるか。
部屋に入るとそこは妙に明るかった。
どうもランタンがついているようだ。
「これは・・・研究室?実験場?」
様々な書物や自分では理解できない程小難しい文章の書かれた羊皮紙などが散乱している。
何よりも目を引いたのが─。
「・・・血痕」
しかも尋常ではない量だ。
これがもし一人の人間から出た物だとしたら、そいつは間違いなく死んでいるだろう。
「乾いている・・・結構前だな」
これだけの量が乾いてる以上、一日二日では無い。
他にめぼしいものが無いか見渡していると一冊の日誌を見つけた。
「なんだこれ、一部血が付いているが・・・まだ読めるところはありそうだな」
何と無しに開いて読んでみる。
『●月×日
魔力を増大させる為 妖精の魔力を強制投与
結果・・・一部成功 検体が痛がるが問題なし』
『▲月○日
ファントムドラゴンを操作する為には核の魔力に直接干渉する必要がある。
その為、魔力操作に長けている魔族の一部を移植。
検体とは相性が悪かったのかのたうち回る為、鎮痛剤を強制投与。
移植は成功。』
『×月□日
自身より高レベルの肉体の一部を移植したからだろうか。
なんと検体のレベルが上がっていた。
他の実験に活用できそうだ。
ファントムドラゴンを操る改造は最終工程まで来た』
『〇月▲日
検体の様子がおかしい。
魔法封じの拘束具を付けているのに魔法を使用した。
実験の影響で検体は強力な魔法をいくつも習得してしまった。
無駄に暴れられても困る。明日加工してしまおう。
全く、無駄な手間をかける娘だ』
「これ・・・は・・・」
ファントムドラゴンを操る為に検体を加工・・・?
娘・・・?
まさかこれは・・・リルラールの父親の物か?
「まさか・・・リルラールはこの実験を全て受けて来たのか!?」
他の箇所を見ても碌でもない研究を検体に行っている。
検体は間違いなくリルラールの事だろう。
なにせ『竜神への生贄』ではリルラールは生贄として育てられたという設定がある。
これが『育成』だとしたら・・・辻褄があってしまう。
「シナリオで助けたリルラールが自死を選ぶのは・・・まさかピクシーの能力を使って消滅させるためか!?」
ピクシーはアナケンでは中立エネミー、いたずら好きの妖精だ。
だがピクシーは種族の特性として死亡時に近くの生物に乗り移るという能力がある。
ピクシーの魔力を移植した後、高レベルの魔族の肉体を移植してそれを無理やり強化する。
そして自我を奪い、リルラールをファントムドラゴンのコントローラーにする・・・。
「・・・あのガバガバシナリオがこういう風に補完されたのか・・・?」
何と言うか本当に終わっている。
これではまるでリルラールは─死ぬために生まれてきたようなものだ。
「・・・この世界、嫌いかもしれん」
【糸】関係無しにこれだとすると、もう頭が痛くなる。
何せこの研究に関してはシナリオ開始前からやられてることだ。
それこそ何年もかけて。
「・・・本人に聞かないとな」
もしかしたらこの状況は─俺が思っている数倍はやばいことになっているかもしれない。