TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。   作:水道館

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アンケート閉めました。
僅差でしたが開けた方がいいとの事だったので、今後は行間空けるようにします。
ご協力ありがとうございました。


手遅れ

ある程度回復した俺はひとまず片っ端から周囲を探索してようやく転移された場所から抜け出せた。

部屋の中に階段があった時は欠陥住宅じゃねぇのかと思った。

どうも俺が飛ばされたのは最下層のようで、ひたすら上に登り続けた。

 

「戦闘音は一応する…そちらに向かうか」

 

音のなる方向に進んで行くと所々で鎮圧班であろう兵と信者が倒れ伏しているのが見える。

先に進む度にその数は増えていき、走ってる最中に無事な者には会わなかった。

3人は無事だろうか、拉致られてる人達の解放が上手くいっていればいいのだが…。

 

「に、ニンジャさ…ん」

 

ふと通路の横から声をかけられる。

か細い声に振り向くとそこには頭から血を流してるリューグが居た。

 

「大丈夫か!しっかりしろ!」

 

「助けてください!頭から血出てます!痛いです!ヘルプ!」

 

「よし、大丈夫そうだからポーションはいいか」

 

「そんな!」

 

よく見たらちょっと切っただけじゃねぇか。

貴重な回復ポーションをこの為だけに使うわけにはいかない。

悪いが我慢してもらう。

 

「何があったんだ、確かに戦闘である程度の被害は出るとは思ってたがまさか信者がそんなに強いのか?」

 

「いや信者は弱いです、島長と師匠居たので余裕でした」

 

そりゃあの2人レベル10だからな、そこら辺の相手なら余裕だろ。

今回鎮圧班を彼ら2人が率いてるのも、2人ならリルラールがどれだけ強くても勝てるだろうと結論になったからだ。

だが…。

 

「この倒れた者達は…」

 

「教祖に一撃でやられました…」

 

「ならば今戦ってるのは2人とリルラールなのか」

 

「そ、そうです!それと伝えないといけない事が!」

 

焦ったリューグから凄く嫌な予感がする。

 

「拉致された人達の解放は上手く行ったんですけど、その後少しでも戦力にってミロネさん達と合流したんです」

 

「…まさか」

 

「多分先の方でまだ戦ってるか…もしくは…」

 

全部聴き切る前に通路を駆け出す。

音がする方向に近づけば近づく程、倒れている人が増えていく。

走って走って、戦闘音のすぐ傍まで来た。

壁に寄りかかるように座っている人影が見えた。

薄暗いせいでよく見えないが、見慣れた鞄が、中身を近くに散乱させて落ちていた。

息をするのも忘れて近づく。

そこには─

 

綺麗なピンク色の髪を、鮮血で染めたミロネの姿があった。

 

「─────ッ!!!」

 

俺は持っていたポーションを無意識に彼女にかけていた。

傷が治っていくが、それでも意識は戻らない。

 

「ミロネ!ミロネ!しっかりしてくれ!」

 

声をかけても反応は無い。

不幸中の幸いか、呼吸は安定している。

今すぐ命に別状は無さそうだ。

 

「まさかリルラールに・・・なっ」

 

離れている時は気づかなかったが、辺りを見渡すとカロルもミレッラも意識を失っていた。

どうもカロルはミレッラを庇ったのか、一人だけ怪我の具合が酷い。

急いで手持ちのポーションを振りかける。

 

「・・・どうする・・・」

 

本当は皆を連れて逃げ出したい。

このまま皆をここに放置はできない。

だが・・・島長達は今も戦っている、これだけの強さを持つリルラールをここで止めないと・・・。

しかし俺如きが行って戦力になるのか・・・?

 

「に、ニンジャさん・・・」

 

「ミロネ!?意識が戻ったか!」

 

決断できずに居るとミロネが目を覚ました。

目がまだ虚ろだが、言葉はしっかりしている。

 

「わ、私達はいいです・・・あっちの手助けを・・・」

 

「だが君達を置いては・・・」

 

「リルラールって子…すごい強さでした・・・あれだけ居た私達より強い兵士さん達を簡単に・・・。もし島長さん達が負けちゃったら・・・もう誰も止められないです・・・それに・・・」

 

ゆっくりと顔をあげてこちらの目を見つめて、ミロネは悲しそうな顔をする。

 

「あんな・・・悲しい顔した子を・・・あのままなんて・・・」

 

「・・・・・・」

 

日誌を見ている以上、リルラールの境遇は分かっている。

聞きたい話があるのも確かだ。

 

「分かった・・・行ってくる」

 

「気を付けて・・・ください・・・」

 

ミロネに見送られて俺は鉄火場に駆け出した。

 

 

 

 

「肝心な時に役に立たない・・・くやしいなぁ・・・」

 

 

 

 

 

戦闘が起こっているであろう大部屋に入る直前、凄まじい爆発が起きる。

ここが地下なの忘れてるのかと言わざるを得ない。

天井が落ちてこないのを祈りながら、爆発が収まった部屋に入った。

 

「・・・増えた」

 

「ハァハァ・・・お主、無事だったか・・・」

 

部屋には倒れ伏したリューグの師匠、ボロボロな島長、そして無傷のリルラールが居た。

俺は理解できなかった。

リューグの師匠も島長もレベル10だぞ。

アナケンでの最高レベルは15だが、キャンペーンシナリオをクリアしてもレベル10行くかどうかだ。

そんな歴戦の猛者を無傷で・・・。

 

「【サンダーブラスト】」

 

「いかん!!!」

 

即魔法を撃ってきた。

【サンダーブラスト】、貫通効果を持った雷魔法だ。

だがその勢いがとんでもない。

まるで大砲かのような勢いで飛んでくる魔法を横に飛び込んで回避する。

 

ドゴォォォォン!

 

後ろの壁にデカすぎる穴が開いた。

こんなもん受けたら絶対死ぬ。

というかあまりにも火力が高すぎる・・!

 

「気をつけろ!直撃したらまず助からん!とにかく動き続けて当たらないようにしろ!」

 

「そうは言うが・・・!」

 

「【ブリザードアロー】」

 

リルラールの周囲に鋭い氷が発生する。

島長に大量に飛来してきた。

 

「【弦月牙】!」

 

島長が刀専用スキルで氷を砕くが氷の強度が高すぎて何個かすり抜けてしまう。

足に刺さったせいで膝をついてしまった。

 

「島長!」

 

「まさか・・・ここまでとは・・・」

 

「【タイタンアーム】」

 

リルラールが魔法を唱えた瞬間、島長の足元から巨大な岩の拳が現れる。

拳はそのまま島長の腹部を殴り飛ばした。

島長は殴られた勢いで部屋の反対側まで吹っ飛ぶ。

 

「クソォ!」

 

鎖を出して壁に直撃する前に島長を回収する。

引き戻して様子を見るが、意識を失っていた。

 

「あと貴方だけ」

 

「・・・・・」

 

どうする・・・どうすればいい・・・。

頼みの綱である二人はやられてしまった。

このままでは─。

 

「・・・一つ聞きたい」

 

「・・・?」

 

「君は・・・【糸】には操られていないのか?」

 

俺が一番気になっていた事。

リルラールはミロネ達を操っていた【糸】の影響を受けているんじゃないかという事。

今までこの世界は多少の差異はあれど、公式設定や公式シナリオに順次していた。

だが彼女に関しては明らかに違う。

まるで何者かが介入して彼女を無理やり強化しているような・・・。

そんな不自然を生み出せるのを、俺は奴らしか知らない。

そう思い聞いたが、帰ってきた答えは─。

 

「【糸】はもう私を縛っていない」

 

「なに・・・?」

 

既に彼女は【糸】から解放されたというものだった。

 

「もうあの地獄は繰り返されない、私は自由になった」

 

「なら・・・なぜ島を滅ぼそうとする!?繰り返しの死から解放され・・・」

 

そこまで言って自分で気づいた。

そうだ、彼女はシナリオをクリアしようとしまいと─。

 

「何度も生贄にされた、何度も生贄になった」

 

「父の欲望の為に殺された、冒険者が父から私を助け出したこともあったけど」

 

 

『クリア条件確保!あとはこいつが死ぬだけだな』

 

『早く次のシナリオやろうぜ、こいつ死なせてさ』

 

 

 

「私はどこまで行っても、ただの消耗品だった」

 

一歩、俺に近づいてきた。

 

「何度も何度も何度も何度も使われ続けて」

 

また一歩。

 

「もう嫌・・・」

 

気づいたときには、リルラールは俺の眼前に居た。

 

「だから滅ぼす、何度も助けたこの島を、何もしてくれなかった島民を、私を使う冒険者を」

 

「私ばっかり死んでるのにそっちが死なないのはずるい」

 

「さんざん私の死で助かったんだから、一回くらい死んでよ」

 

「何で私ばっかり」

 

「あなたも冒険者でしょ?私を使って『しなりおくりあ』しに来たんでしょ?」

 

「私を使うんだったら─死んでね」

 

杖が俺に向けられる。

既に逃げるには遅すぎた。

 

「・・・私は君を助けたいと言ったらどうする」

 

「・・・どうせ嘘だと思うけど」

 

 

 

 

 

「もう・・・遅いよ・・・」

 

【シャドウバイト】

 

影の剣が俺を切り裂いた。

どうやら俺はこの島に来るのが─遅すぎたようだ。

 

 

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