TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。   作:水道館

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ドラクル島編はこれ含めてあと数話で終わる予定です。


謝罪

「頼まれてた物です、どうぞ」

 

「ありがとう、リューグ」

 

「いやいいですよお礼は…ホントに皆さんだけで行くんですか?」

 

「人数が多ければ良いわけでも無いからな」

 

「そりゃそうかもですけど…」

 

「後はミロネの準備が終わり次第向かうつもりだ。リルラールの居場所、見つけてくれて感謝する。探す手間が省けた」

 

「見つけるの自体は簡単でしたよ、同じ場所でじっとしてたし…」

 

「何かしてたか?」

 

「何も、強いて言えば地面にパンが落ちてたくらいですね」

 

「…成程な」

 

「…その、なんだろう。あんまこういう事言うのあれなんですけど…頑張ってくださいね」

 

「ああ…頑張るさ」

 

 

夕暮れ間近の空。

人気の無い高台にぽつんと座っている影があった。

ゆっくりと近づいて行く。

 

「…死んでなかったんだ」

 

「手加減してくれたからな」

 

「…してない」

 

「そうか、少し話をしたいのだが…」

 

「話す事なんて…何も無い!」

 

立ち上がって杖をこちらに向けてきた。

…あの時は一瞬で吹っ飛ばされたから分かりませんでしたが…。

 

「(酷い顔ですわね…)」

 

頬は痩せこけて、目の下には大きな隈。

碌な食事も睡眠も取れていなそうに見えた。

…見ていられないが、目を逸らしてはいけない。

 

「…俺達は君を傷つけるために来たわけじゃ無い」

 

「じゃあ何しに来たの…」

 

「君を…助けに来た」

 

ニンジャ様がそう言った瞬間、表情が変わった。

困惑や疲労の色が一気に憤怒に変わる。

 

「今更…助けに来たとか!言うなぁ!【サンダーブラスト】!!!」

 

「ミロネ!」

 

「はい!」

 

彼女が魔法を撃つ瞬間、ニンジャさんの指示でミロネ様が地面にポーション瓶を叩きつける。

中身が空気に触れた瞬間、白い煙となって辺りを漂う。

魔法がその煙に触れた瞬間─勢いが殺される。

 

「!?なに…これ!」

 

「無理やり効果を強めたせいで持続性は落ちてます!持って30秒です!」

 

耐魔ミスト、使用する事で空気中に拡散して魔力の流れを遮断するポーション系アイテム…でしたっけ。

時間を短くしてでも遮断率を上げるのに苦労したと言っていましたわね。

ミロネ様が使う事で【ポーション効果増加】のスキルが乗って更に効果が上がっている。

これならば─。

 

「【シャドウバイト】!」

 

「俺が受ける!」

 

続け様に撃ち込まれる魔法はミロネ様に向かって行く。

盾になるように前に出たニンジャ様に当たるが─。

 

「ぐっ!─反動はあるが…耐えられる!」

 

レベル差が4あっても、【全知の杖】で強化されてても、十分耐えられる…!

それでも、体力の高いニンジャ様以外が当たれば倒れてしまうでしょう。

 

「【頑健なる声援】!」

 

この前覚えた新しいスキルの一つ。

体力の最大値を上昇させて、上昇分の回復も行う…!

 

「カロル!準備を始めてくれ!」

 

「了解…!」

 

「【ブリザードアロー】!!!」

 

即座にカロル様に飛んでくるが、耐魔ミストは魔法の勢いを殺す物、速度が落ちたのなら─。

 

「あっ…ぶない!でもそれならギリギリ避けられる!」

 

カロル様の速度なら回避が間に合う!

 

「もう…いい加減にして!【タイタンアーム】!」

 

 

 

来た。

 

 

 

 

『リルラールの杖を破壊する方法だが…俺とカロルの波状攻撃が必要になる』

 

『このギルドカードを見るに…【プロテクトシェル】を突破する為かな?』

 

『ああ、【プロテクトシェル】はどんな物理攻撃でも一度だけ無効化出来る魔法だ。発生も早いから、杖に攻撃しようとした瞬間に使われる筈だ』

 

『一度だけって事なら…どんなに威力が低くてもいいんですか?』

 

『流石に触った程度では破れないが、攻撃であるなら、まず破壊できる。カロルが攻撃して【プロテクトシェル】を誘い、俺が杖を砕く』

 

『でもそう簡単に出来ますかね…耐魔ミストは時間的に一つしか作れないですよ…?』

 

『これは俺の考え…と言うか予想だが、リルラールはかなり戦闘センスがあると思う』

 

『戦闘センス…』

 

『いくら【全知の杖】で底上げされているとは言え、レベル10を軽く相手取れるんだぞ。闇雲に魔法をぶっ放して何とかなる様な事じゃ無い。タイミングや使う魔法の選択…これらがズバ抜けている可能性が高い』

 

『それがどうなるんですの?』

 

『耐魔ミストにすぐに対応してくると思っている。そうだな…数発魔法を撃った後、【ブリザードアロー】や【サンダーブラスト】では無理だと分かった場合、リルラールは絶対に【タイタンアーム】を使用する』

 

『それは…何でですか?』

 

『魔法は基本的に自分の魔力を変換して放出している。【サンダーブラスト】は雷に似た性質の魔力だし、【ブリザードアロー】は氷のような魔力だ。だから耐魔ミストの効果を受ける。だが【タイタンアーム】だけは違う。この魔法は対象の地面から岩の拳を出して殴り飛ばすんだが、これは地面の土を魔力で成形して岩にしているんだ。魔力が岩に覆われる形になるから耐魔ミストの効果を受けない』

 

『他の魔法がダメなら影響を受けない物を使うという事だね』

 

『ここだけ聞くと【タイタンアーム】は他の魔法より優秀に見えるが・・・この魔法は直接魔力を放つわけでは無い為他の魔法より発生が遅い。そして次への魔法に移行するのも隙が生じる』

 

『魔法は一度に一つしか使えませんもんね』

 

『一応【並列詠唱】のスキルがあればその限りでは無いがギルドカードに書かれていない』

 

『この縛りを受けるという訳ですわね』

 

『そして【タイタンアーム】を俺が受けて【復讐者】で急接近、カロルはそれに合わせて【プロテクトシェル】を割ってから俺が【仕返しの刃】で杖を砕く。・・・一応カロルも杖の方を狙ってくれな』

 

『勿論・・・だけどそもそも【タイタンアーム】を耐えれるのかい?耐魔ミストの効果を受けないなら一撃で倒れてもおかしくないと思うけど・・・』

 

『そ、そうですよ!無茶が過ぎます!』

 

『大丈夫だ、ちゃんと考えている。【タイタンアーム】は魔法ではあるが物理属性の魔法だ。防具を着込むことで軽減できる。今回俺は腹の下に鎖帷子を着てその上に盾を仕込む。まぁ一撃でこの防具は粉砕して俺にもダメージが入るが・・・耐えることは出来る』

 

『そもそも【仕返しの刃】の効果を使わないと壊せない杖なんですか?』

 

『【全知の杖】は秘宝と言われる程の装備だ。多少小突いて壊れるなら秘宝ではない。全力でぶち込まなければ無理だろう。安心してくれ、俺も前よりレベルが上がっているし更に自前で火力を出せるようになった。必ず破壊して見せる』

 

『・・・なら何としても【タイタンアーム】を撃ってもらわないとね』

 

『ああ・・・そしてミレッラ』

 

『はい?』

 

『君がこの作戦で、一番のキーマンだ』

 

 

 

 

【タイタンアーム】はニンジャ様の腹部を強打する。

ゴギャン!と音がしてニンジャ様の体が浮き上がる。

 

「─ッ!【復讐者】!!!」

 

腹に仕込んでいた壊れた盾を捨てながらニンジャ様がリルラールに急接近する。

【タイタンアーム】を使用した後だから、確かに隙が生まれている。

でも、まだ。

 

「カロルゥ!」

 

「【サドンアタック】!」

 

カロル様の新スキル、攻撃の威力を下げる代わりに速度を超強化して攻撃する【サドンアタック】が目にも止まらない速度でリルラールの杖に近づく。

 

「!!!───【プロテクトシェル】!」

 

障壁が現れてレイピアが弾かれた。

弾かれた反動で後方に吹っ飛ぶカロル様。

まだ、まだ撃つな。

 

「【仕返しの───」

 

「【サンダーブラス───」

 

凄まじい速さで立て直して次の魔法を放たれようとしている。

耐魔ミストはもう切れた。

なら。

ここしか、ない。

 

 

 

 

「【神の威令】!!!!!」

 

 

 

 

ミレッラのジョブ、エンカレッジは基本的にバフが主体だ。

攻撃スキルも妨害スキルも基本的には無い。

だが一つだけ、エンカレッジの多数あるスキルの中で唯一敵に対して使用するスキルがある。

それが【神の威令】。

アナケンのスキルの中でもぶっ壊れスキルと言われている物の一つだ。

効果はシンプル、「対象が行動を行う際に使用できる。その時の対象の行動をスキップする」これだけだ。

このスキルがどれだけイカれているか、アナケンで無くてもRPG系のゲームをやっていれば分かるだろう。

何せ実質こっちのエクストラターンだ。

当然制限があり「このスキルはセッション中1回しか使用できない」の文が書かれている。

こちらの世界ではこの辺どうなっているか分からないが・・・少なくとも一日二日で再使用できるものでは無いだろう。

だが───。

 

「─────」

 

リルラールが沈黙した。

この世界での効果は「数秒間、動きを停止させる」になっているみたいだ。

流石は壊れスキル、こちらでもインチキスキルだ。

 

「───刃】ァァァ!!!」

 

俺の短剣は【全知の杖】に届く。

刃が当たる瞬間に─

 

「【血の代償】!!!」

 

新たに解放されたスキル【血の代償】を使用する。

これは自分の攻撃が命中する際に使用でき、自分の現HPの5割を削る代わりに─。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

ダメージを1.5倍(端数切り上げ)するスキル!

 

バキャバキャバキャ!!!

 

【全知の杖】は耳を塞ぎたくなるような音を立てながら。

 

バキィィィ!

 

完全に砕けた。

 

「あ───」

 

リルラールが【神の威令】から解放されるがもう遅い。

唱えていた【サンダーブラスト】は魔力をうまく練れずに霧散した。

どうやらちゃんとマインドダウンしているようだ。

 

「(ちゃんとルルブの世界観コラム読んでおいてよかった・・・)」

 

実はこのマインドダウン云々はアナケンのちゃんとしたルールでは無く、GMがシナリオとか作るために見る世界観の説明ページの右隅に小さく書いてる情報なのだ。

確か魔法を使用する際には杖が必要だが、使用中に破壊されてしまうと本来放出される筈だった魔力が乱れて体が無意識に身を守るために魔法の使用を出来ないようにするとかだった気がする。

ぼんやり覚えていた程度だったし全然平気な可能性があったが上手く行ってよかった。

 

「うう───」

 

何度も魔法を使おうと試すが全て失敗に終わる。

ゆっくりとリルラールに近づく。

 

「リルラール・・・」

 

「うう…来るなぁ!」

 

リルラールの姿は酷いものだった。

専門的な知識は無いからあれだが、拒食症を引き起こしてるように見える。

・・・よほど追い詰められていたのだろう。

 

「頼むリルラール、話を聞いて欲しい」

 

「いやだ!いやだ!来るな!」

 

「大丈夫だ、ここに居る全員、君を傷つけるつもりは無い、今のも君に話を聞いてもらうために、攻撃を止めるためにやったことだ。・・・杖に関しては壊してすまなかった」

 

リルラールの目線に合わせながらゆっくりと話す。

急いだらダメだ、早く休ませてあげたいが、宝玉の事もある。

あまり刺激しないように少しずつ───。

 

 

 

突然、リルラールから強力な魔法のような物が放たれる。

 

 

 

「え─」

 

当然、それは真正面に居た俺に直撃した。

 

 

「な───」

 

「うそ─なんで─」

 

立て続けに叩きつけられる魔法、だがリルラールは詠唱すらしていない。

 

「(バカな!?マインドダウンはちゃんと発動しているだろう!?)」

 

実際先ほど魔法を使用できていなかった。

ならこれは─まさか。

 

「(【カウンターマジック】は魔法扱いじゃないのか・・・?)」

 

【カウンターマジック】は確かにパッシブスキルだが、それでも魔力を使うもの。

てっきりマインドダウンで封殺できると─。

 

「(やらかした・・・!)」

 

完全にやってしまった。

【カウンターマジック】はあくまで魔力を叩きつけるスキル。

これは確かに魔法ではない・・・!

 

「ニンジャさん!」

 

「ニンジャ!今─「来るな!」」

 

「で、ですが!」

 

「頼む来ないでくれ!今を逃したら、もうリルラールを救えない!」

 

討伐隊まで組まれてしまえば、間違いなく彼女は宝玉を使ってファントムドラゴンを解放する。

・・・そして、一番最初に犠牲になるのは一番近くに居るリルラールだ。

それでは、ダメだ。

 

 

「何が!何が助けに来ただ!」

 

リルラールから止めどなく魔力の奔流が放たれる。

 

「たくさんしんだ!いっぱい殺された!」

 

泣きながら絶叫するリルラール。

 

「お父さんも殺しちゃった!悪いこといっぱいした!」

 

思いの丈をぶちまけられる。

 

「今さら来て!何が助けに来ただ!」

 

正論を放たれる。

 

「間に合ってない!もっと早く来てよぉ!!!」

 

その通りだ、もっと早く来れていれば─。

 

 

「助けるなんて言って!救世主づらするなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は玲の時は傍に居てやれなかった。

気づいてもやれなくて、あいつが死んで。

辛い時に傍に誰も居ないってのは、きっと何よりも辛いだろう。

リルラールには届くかなって思った。

でも・・・俺じゃダメだったのかもしれない。

所詮俺は自分が嫌だからって言う自分本位な理由で彼女を助けたかっただけなのかもしれない。

俺は・・・遅すぎたんだ。

俺は・・・どうすれば・・・いいんだろう・・・。

薄れゆく意識の中、走馬灯だろうか。

元の世界の記憶が─。

 

 

 

『幸次!幸次!!!』

 

父さん・・・?なんか若いな。

そんなに泡食ってどうしたんだ。

 

『おとうさぁぁぁぁぁん』

 

『あ、幸次くんのお父様ですか?よかった・・・気づいてくれて』

 

ああ・・・これあれだ。

俺が5歳の頃、デパートで迷子になった時の記憶だ。

懐かしいな、俺にゲーム買ってやるって言って連れてきてくれたんだっけ。

でも人が多すぎてはぐれて迷子センターに連れてかれたんだ。

 

『おそいよぉぉぉぉぉ』

 

自分から手を離したくせに随分な言いようだ。

今思うと中々にクソガキだったのかもしれない。

 

『ああ、よかった──』

 

・・・あぁそうじゃん。

なんで忘れてたんだろう。

父さんは俺を叱らなかった。

俺から手を離したのを分かってたはずなのに。

あの時、迎えに来て一番に言った言葉は───。

 

 

 

頭が一気に冴える。

前を見る。

泣いているリルラールが居る。

【カウンターマジック】を使うという事は、体が今の状況を危機だと認識しているからだ。

だからこれを止めるには安心させる必要がある。

一瞬の隙をついてリルラールに近づく。

この状態で【カウンターマジック】を撃たれれば俺は死ぬだろう。

知ったことか。

俺には今、言わないといけないことがある。

俺はリルラールを優しく、傷つけないよう、苦しくないように抱きしめて─。

 

 

 

 

「リルラール、遅れて・・・ごめんな・・・」

『幸次、遅れて・・・ごめんな・・・』

 

 

 

来るのが遅れたなら、謝らないと。

だよな、───父さん。

 

 

 

 

 

「え・・・・・」

 

いきなり抱き着かれて、謝られた。

何を・・・言ってるんだろう。

 

「は、はなれて」

 

大きな手のひらが背中に当たってる。

あったかい。

 

「はなれて!」

 

大きな腕が、優しく包んでいる。

あったかい。

 

「・・・はなれてよぉ」

 

大きな体が、私の守っている。

あったかい・・・。

 

「うう・・・」

 

苦しくない。

 

「うううう・・・」

 

痛くない。

 

「うううううううう・・・・・・・・」

 

寒くない。

 

「うああああああ・・・・・」

 

寂しくない・・・。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・」

 

あったかい。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

あったかいよぉ・・・。

離れたくないよぉ・・・。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

遅かったけど、たくさん遅れたけど。

来てくれた・・・。

来て、助けてくれた・・・。

 

 

もう、一人じゃないんだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中間戦闘終わったみたいかな?よかったよかった!ちょっと予定外もあったけど、許容できる範囲だし!」

 

「さぁて!うまい事彼女を仲間にするルートに行ってくれたから先に進めるぞ!」

 

「じゃあ幸次君!早速────」

 

 

 

 

 

 

「クライマックス戦闘始めようか」

 

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