TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
「じゃあ『リルラールは今後ドラクル島への出入りを禁ずる』…処分はこれでいいな?」
「うむ、今まで起こした犯罪とあの化け物を倒した功績でそんなものじゃろうて」
「実際問題、悩みの種が全部無くなったと言うのもあるがな、ファントムドラゴンも奴に喰われたし【竜信教】も壊滅、島としては結果として万々歳よ」
「まぁそうか…寛大な処置、感謝する。行こうリルラール」
「う、うん…あ、あの…」
「…何だろうか」
「ごめん…なさい…」
「…いや、謝らねばならんのは儂等なんじゃ、う。ずっと苦しんでいたお主を見つけられんかった。すまなかった」
「ううん…いいの…来てくれたから」
「そうか…こんな島の事は忘れてくれ、達者でな…」
◇
あの後、ハーヴグーヴァの死骸を片付けて諸々の修復作業になった。
と言っても俺らがやったのは瓦礫の撤去作業だけ、他は島民達がゆっくりやって行くとの事。
「なんか…無事に終わって良かったんだろうけど…」
「拍子抜けが過ぎますわ!」
「で、でも死者0人は凄いことですよ!奇跡です!」
「…まぁ奇跡ではあるが…」
めちゃくちゃ低確率だからな、【即死クリティカル】。
今までのリルラールの不運が全部ひっくり返ったくらいの勢いだ。
「えっと…」
「ああ、言ってなかったな。リルラール、何か特別な荷物とかあるか?」
「う、ううん。無いけど…私どうすれば…」
「どうすればも何も私達とファストウに行くんだが?」
「で、でも私…みんなの事傷つけて…」
「…と言ってるが皆どう思う?」
「ちょっと頭打ったくらいですし…まぁニンジャさんがボロボロになったのはあれですけど、本人が悪いので大丈夫です!」
「あんな状態じゃ仕方ないよ、僕だって同じ立場なら同じことをしてたかもしれないからね」
「子供のお茶目は笑って流す物ですわ!」
「…と言うことだ。大丈夫そうだぞ?」
「じゃ、じゃあニンジャは…?」
「私か?」
少しだけ思案して、すぐにリルラールに笑いかける。
「君を助けるのが遅くなった私が悪いからな、気にするな」
「そんなこと…」
「…それに、リルラールには感謝している」
「え…?どうして?」
「懐かしい記憶を思い出せたんだ、偶然ではあったが…な」
「昔の?」
「ああ、私がまだ子供の頃の記憶だ」
「へー、気になるな。どんな子供だったんだい?」
「気になりますわね、昔からこんなに筋肉ダルマだったので?」
「な訳ないだろ、どんな子供だ。普通だ普通」
「わ、私も普通でしたよ。よく薬草と間違えて毒草食べたりしてましたし…そんな感じですよね!」
「怖…」
「えぇ!?」
5人で船に向かっていると、島に来る時と同じ場所に人影が見えた。
「皆さーん!」
「リューグ、まさか見送りに来てくれたのか?」
「勿論!私の恩人ですから!色んな意味で!」
島の中心部から結構離れてるのにわざわざ来たのか。
義理堅い奴だ。
「島を救ってくれてありがとうございました!皆さんがいなければ滅んでましたよ!」
「倒したのはリルラールだぞ」
「そのリルラールさんを闇堕ちから救ったのは貴方じゃないですか!ニンジャさん!」
「闇堕ち言うな」
こっちの世界で存在する言葉なのかよ。
「それに【雷鳴拳】教えてくれましたし!いやーあの化け物がワンパンされなかったらなー。私がワンパンしてたんだけどなー、おしかったなー」
「起きたまま寝言言えるのなんて凄いですわ!」
「傷つきました慰謝料ください」
「今のままだと君が貰えるのは拳骨だが大丈夫か?」
「皆さん・・・お元気で!」
「早く帰ってほしいみたいだね」
「・・・この人変・・・?」
「そうだぞ、私の服装より変だからな」
グダグダした終わりだったが、今思えば丸く収まったのかもしれない。
何かしら問題が残ると思っていたんだが・・・。
「・・・【糸】も切れたみたいだしな」
自分のギルドカードを見ると【異界の救世主4/8】となっている。
・・・俺が倒したわけじゃないんだけどな、ハーヴグーヴァ。
「(結局【糸】の切れる条件分かんなかったな・・・)」
てっきり公式シナリオクリアだと思っていたが、公式要素なんて殆ど無かったし・・・。
と言うか絶対連中、俺の事監視してるよな。
ハーヴグーヴァが来るタイミング完璧すぎるだろ。
「この先・・・勝てるだろうか・・・」
船に乗って帰る際中、俺は不安をこぼした。
◇
船に乗って揺られている。
皆思い思いに過ごす時間。
「・・・私、ダメだなぁ」
結局私は所詮ただの薬師。
戦うときはいつも頼り切り。
皆は回復してくれてるから助かるって言うけど・・・。
「あれだけなら、私じゃなくてもいいよね・・・」
物さえあれば私である必要は無い。
確かにポーションを作れるのは利点かもしれないけど・・・。
回復魔法が使える人が居れば、私なんて必要ないのだ。
「・・・役に立たないと・・・」
あの人の力になりたい。
そう自分で決めたくせに。
他の人に取って代わられるくらいの力しかなくてどうするのだ。
「置いて行かれたくない・・・」
どんどん強くなる皆。
ずっとポーション作ってるだけの私。
スキルは生まれ持っての物だから仕方ない。
ならそれ以外だ。
「もっと医療関係の事勉強しないと・・・」
何かの役に立つかもしれないから。
些細な事でも詳しくなろう。
薬以外も毒とか戦闘用アイテムとかもっと作れるようになろう。
「ニンジャさん・・・」
貴方の力になりたいから。
その為ならどんな努力も惜しまない。
だから、どうか─。
「傍に・・・」
◇
「いやはや!よもやよもや!まさかうっかり【物語の門番】付け忘れた時に限って【即死クリティカル】とは!GMとして不甲斐なし!PL側は天晴!アッハッハッハッハッハッ!!!・・・・・・ハァ・・・・」
溜息も出るよこんなの。
悪いの僕なんだけどね?
ガバったのは僕なんだけどね?
でもさぁ・・・酷くない?
そう言う時に限ってクリティカルしなくてもいいじゃんね・・・。
「まぁまぁまぁ!クリアして大団円で終わったからいいよね!・・・第二形態あったんだけどなぁ・・・」
HPが半分になったら触腕が橋になって本体に近接組を攻撃通るようにしてたんだよね。
だから序盤は施設や遠距離、後半は近接でガチバトルって言うクライマックスになればよかったのにね・・・。
「・・・次はもっと難しくしてやるか」
そうだな、もっと強い敵出して・・・もっとえぐい展開にして・・・もっと・・・苦しめて・・・酷くて・・・僕がオモシロクテ・・・。
「・・・・?」
そんなのただのクソシじゃん、あり得ない。
僕は確かに難し目のシナリオ作ったし、回した。
でもちゃんと勝てるようにした、だってそうじゃなきゃ楽しんでもらえないよ。
TRPGはGMもPLも一緒に楽しむ物なんだから。
クリアしたら当然ハッピーエンド!当たり前でしょ。
「だってクリアするために頑張ったご褒美が陰鬱な終わりだと「は?」ってなるし」
だからファントムドラゴンの宝玉をハーヴグーヴァが喰うようにした。
幸次君がリルラールを担いで走ってるときに宝玉を落とすように追い込んだ。
「ボス2体は無理だからね、流石にね!」
無理ゲーやっても仕方ないしね。
やっぱりやる以上クリアしてほしいよ。
だって僕は─。
「ハピエン厨だから!!!」
ハッピーエンド大好き!
ご都合主義大好き!
特に説明の無い救済大好き!
主人公も主人公の仲間も!
みーんな生存大好き!
実際僕の作ったシナリオはクリアさえすれば全部ハピエンさ!
「でも・・・何の苦労もしないで得たハッピーエンドに・・・価値なんてないよねぇ」
最終的にハッピーエンドなら。
どれだけキャラを酷い目に合わせてもいいし。
どれだけ暗い陰鬱な道中でもいい。
それらは全部スパイスとなって、クリアした時に一気に爆発する!!!
死闘を乗り越えて得た幸せなエンディング!
これを超える脳汁なんてあるのかな・・・?
「幸い、あいつらがさんざん公式NPC虐めまくったからさぁ・・・シナリオ書くのに困らなかったよ」
流石に可哀そうだったから公式NPCに繋がっていた【糸】は取ってあげた。
でも当然、当時の記憶は残っている。
ならそれを組み込もう。
僕のシナリオに。
「鬼畜外道な連中に人生狂わされたNPCを!最高にかっこいいプレイヤーが救っていく!」
そう、これだ。これがやりたかったのだ。
僕の真っ暗な人生を明るく照らしてくれた彼が!
この世界のヒーローになる!
「でも手加減はしないよ?無理ゲーはしないけど・・・ちゃーんと殺しに行くから」
本気でやらないと面白くない。
GMは本気で殺しに行く。
PLは本気で乗り越える。
だからこそ面白い。
だからこそやめられない!
「頑張れ幸次君!君の冒険は始まったばかりだよ!!!」
さて、気を持ち直したところで・・・。
「・・・怖いから次のシナリオもう一回チェックしとこ・・・」
もうガバりたくない、ガバは怖い。
彼にも失礼だし・・・現地に行って状況も見とかないと・・・。
イマハムリ
今回でドラクル島編は終わりになります。
いつも読んでくれてる方達のおかげでUAが2万超えました。ありがとうございます。
次の章に入る前に少し閑話を挟みます。
また読んでもらえれば幸いです。
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