TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
8歳に負ける25歳
「ニンジャ、私冒険者になりたい」
「ダメだ」
「ニンジャ、私ギルド『風車』に所属したい」
「不許可」
「ニンジャ、私依頼を受けて仕事したい」
「…どこで?」
「…内緒」
「NG」
「…ケチ」
「ケチで結構、だがこれは譲らんぞ」
「…何してるんだい?さっきから」
ミレッラさんの屋敷に戻ってきた僕らは数日間休暇を取ることにした。
戦いの疲れを取る為もあるけど…主にリルラールちゃんの為だ。
何せ彼女はずっと食事を取れてないし睡眠も取れてなかったのだ。
当然体はボロボロ、よく魔法が撃てたものである。
竜人族は生命力が強いとは聞いてたけど…ここまでとはね。
「さっきからリルラールが冒険者にしろと言ってくるんだ」
「カロル、カロルも一緒にお願いして欲しい」
「う、うーん冒険者…ね…」
鍛錬が終わってリビングに戻ってきたら二人が言い争い…とまではいかないけど、リルラールちゃんは不満げ。
何かと思ったが…冒険者かー。
「リルラールちゃん、冒険者ってのは凄く危ないんだよ?無理してやることじゃない」
「でも私強いよ?みんなよりレベル上」
「現実に負けた…」
「負けるな、立ち向かえ…ギルドカードを渡したのは失敗だったか…」
「どうしてダメなの?」
「8歳の子供を戦わせるとか正気じゃないだろ…」
それはそう。
冒険者に年齢制限は無いけれど、暗黙の了解で子供がなる様なことはない。
「でもハーヴグーヴァの時は戦った、私もみんなと一緒に戦いたい」
「あれは本当に緊急事態だったからだ。勿論あの時の事は感謝してるが…今は緊急じゃないだろう?」
「むー…」
「むーじゃない、そもそも君はまだ治療中だろ、大人しくしてなさい」
「そうだね…まだ数日しか経ってないんだし」
彼女は度重なる父親からの実験で体に魔族や妖精の一部を移植されている。
今はミロネさんが調合した薬で落ち着いてはいるけど…無理をしたらどうなるか分からない。
「じゃあいつになったら冒険者になれるの?」
「そう…だな…まぁ大人になったらか?」
「…分かった、カロル行こ。また来るねニンジャ」
「え、僕?」
「夕方には帰ってくるんだぞー」
そのまま僕はリルラールちゃんに引っ張られて外に出る。
休もうとしてたんだけど…。
「と言うわけで大人になろうと思う」
「いや無理だよ?いきなりそんな大きくなれないからね?」
「大丈夫、きっとなんとかなる」
「子供特有の謎の自信…」
リルラールちゃんに連れられて屋敷の廊下を歩く。
今更だけど会った時から明らかに性格が変わった。
何と言うか子供っぽさが凄く増えた、やはり心に余裕が出来たから本来の性格が出てきたんだろうか。
「それでどうするんだい?」
「困った時は人に聞けってニンジャが言ってた、だから聞く」
「誰に?」
「お金持ち」
◇
「大人になりたいですの?」
「うん、どうやったら大人になれる?」
「そーんなの簡単楽勝ちょちょいのちょいですわ!私に任せてくださいまし!」
自室で紅茶を飲んでいたミレッラさんの所に来た。
やたら自信満々な彼女を見て、僕は不安になる。
「(この人いい人なんだけど何でもかんでも金で解決しようとするからなぁ…)」
暫くパーティーメンバーとして共に行動しているがこの人は兎に角金遣いが荒い。
列に並んでる時は先に案内されたいから前に並んでる人達買収するし。
冒険者同士の喧嘩を仲裁する時も「これをあげるから落ち着きなさいな!」って言って金渡すし。
ちなみに喧嘩の仲裁は火に油を注ぐ形になった為、ニンジャと僕が抑えることになった。
「では早速出かけましょう!流石に屋敷では無理ですわ!」
「どこに行くの?」
「当然ファストウの権力者の家ですわ!」
「ほらもう嫌な予感しかしない」
◇
「ニンジャ!ニンジャ!」
「ん、早かったな。おかえり」
「ただいま。ニンジャ、私大人になった!」
「いやなってないが…嘘はよくないぞ」
「嘘ではありませんことよ!」
「ミレッラ?」
部屋でギルドに提出する報告書を書いていたらリルラール達が帰ってきた。
新たにミレッラも加えている。
そのミレッラは机に何枚も書類を置いてきた。
「…何だこれ」
「リルラールを特例で成人として認める認可証ですわ!これで文句なく!リルラールは大人ですわ〜!」
「お前賄賂渡したな!?」
「賄賂ではありません!お気持ちですわ!普通に頼んだだけ!ただその前に普段お世話になっている感謝をカタチにして送っただけですの!」
だから賄賂だろそれ…。
確かに書類を見るとファストウのお偉いさんの名前が書いてある。
何だこいつら、どいつもこいつも金に屈しやがって。
「これで大人!いいでしょニンジャ!」
「さぁリルラールを大人と認めなさいなニンジャ様!」
「いやダメだが…」
「「……………………………………なんで?」」
「書類上では大人でも実際リルラール自身はまだ普通に子供だろ」
「…そう言えばなんで大人になりたいんでしたっけ?」
「理由聞かないで賄賂渡しに行ったのか…」
「爆速で権力者の家に行ってたね…」
「そこは止めろよ」
「いやどうするのか興味出ちゃって…」
頼むカロル、しっかりしてくれ。
お前がダメになると俺の負担が増えるんだ。
主にミレッラ関係で。
「私冒険者になってみんなと一緒に戦いたい。でもニンジャが認めてくれない、大人になったらいいらしいから大人になりたい」
「そう言うことでしたの…でも私も冒険者じゃありませんわよ?」
「え」
「ギルドカードは作りましたけど冒険者にはなってませんわ、依頼を受けることなんて無いので…」
「…じゃあ冒険者じゃなくても戦っていいの!?」
「私既に戦いまくっておりますわよ」
「やった!やった!」
待て待て待て待て待て!
「別に冒険者じゃないから駄目と言ってるわけじゃない、危ないから駄目だと言ってるんだ。論点をずらさないでくれ!」
「危ないも何も…リルラールのステータスちゃんと見ましたの?」
「…いやスキルしか見てないが…」
「はい、これ見て」
リルラールにギルドカードを渡される。
ステータスの方、何だかんだ見てなかったな…。
「…あれ?」
なんかおかしいな、そりゃレベルが10だからステータスが高いのは当たり前だが問題は耐久力だ。
「HPも防御も…バカ高い…」
本来魔法使いは両方低い筈なのに特化してる並に高い。
何だったら俺よりめちゃめちゃ耐久ある。
てかリルラール以外の4人の合計値より高い。
なんで?
「私なんてリルラールにかすり傷も付けられませんわ」
「これは…凄いね…」
「な、何でこんなに高いんだ…?レベル10だとしても高すぎるだろ…?」
ハーヴグーヴァ倒してからレベルが上がったのは知ってたが…。
まさか父親がやった実験のせいか!?
日誌は所々駄目になってて全部読めなかったんだが…何をリルラールに移植したんだよ!
…そう言えば竜人族って全体的にステータス優遇されてる種族だったな。
もしかしてそれも合ってこんなステータスになってるのか…。
「い、いやだが!8歳の子供を!戦わせるのは倫理的にも私的にも許容できん!」
「でも私全然ダメージ受けない!強い!みんなを守れる!戦わせて!」
「強さの問題じゃない!やはりちゃんと大人になってから─」
何とか説得しようとしてるとドアがノックされる。
「ミロネです、入ってもいいですか?」
「あ、ああ、いいぞ」
「すいません、頼まれてたポーションですけど…あれ、皆さん全員でどうしたんですか?」
「いや実は…」
ミロネに事の顛末を伝える。
「そうですか…リルラールちゃんが…」
「ああ、ミロネも説得してくれないか?」
「ミロネ、ニンジャを説得して、お願い」
「うーん板挟み…でもニンジャさん、一つだけいいですか?」
「どうした?」
「子供を戦わせたく無いってのは分かります、出来ることなら私もそうしたいですけど…今度あんな化け物出てきたら私達だけで勝てるんですか…?」
「………」
じ、自信ない…。
ハーヴグーヴァ並のが来たら…無理だ…。
現実と理想が俺の中でせめぎ合う。
ど、どうすれば…。
「…分かった、ならこうしよ」
「どうするんですの?」
「ニンジャ、私とカロルとやってるみたいな手合わせして」
「ええ!?リルラールちゃんがですか!?」
「大丈夫、私は魔法を一つしか使わない、ニンジャは一撃でも私に当てたら勝ち。負けたら言うこと聞く、でも私が勝ったら一緒に戦うね」
「…一撃ではなく鬼ごっこのようにタッチでもいいか?」
「うん、いいよ。私もニンジャに痛いことしないから」
これはもはや俺が納得できるかどうかの問題だ。
感情では全く納得できない。
だが現実問題、今の俺たちには戦力が必要。
完全に俺の意地の問題だ。
「私もそこそこ修羅場を潜っている…そう簡単に勝てると思うな!」
◇
30分後、全く疲れた様子を見せないリルラールちゃんと疲労困憊で地面に突っ伏してるニンジャさんが居た。
「私の勝ちでいい?」
「そ、そんな馬鹿な…こんなに歯が立たないなんて…」
リルラールちゃんがやった事は簡単だ。
手合わせ開始の瞬間にニンジャさんを囲うように【プロテクトシェル】を使ったのだ。
当然攻撃して破壊したニンジャさんだったがすぐに次の【プロテクトシェル】が周りを囲った。
壊しても壊しても即貼られる障壁に何度も何度も何度も攻撃し始めた。
始めざるを得なかった。
逃げる事も出来ずひたすらに障壁を殴る事しか出来ない。
その間リルラールちゃんは余裕そうに枝毛探してた。
私達はそれを眺める事しか出来なかった。
「む、酷い…」
「8歳の子供に完封されると言うのが1番きついですわ…」
「こ、こんな戦法あるんですね…」
もはや感心するしかなかった。
てっきり防御にしか使えないと思っていたが、相手を閉じ込める事も出来るなんて…。
歩いてニンジャさんに近づくリルラールちゃん。
「ニンジャ、私の勝ちでいい?」
「……………………………………いいぞ」
「めちゃくちゃ嫌そうですわ」
「凄い間だったね」
「見た事ない顔してます…」
はちゃめちゃに渋い顔をしながら項垂れるニンジャさんに水を持っていく。
「どうぞ、お疲れ様でした」
「…ありがとう」
「その…えーっと…が、頑張りましたね!」
「泣いていいか?」
「ち、違うんです!煽りじゃなくて!」