TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。   作:水道館

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次話から本編に戻ります


雨の中の2人

「王都の情報ですか?」

 

「ああ…何かないか?」

 

「何かと言われましても…どんな情報が欲しいんでしょうか」

 

「あー何というか…その…戦争が起きそうとか…ま、魔族が攻めてきそうとか…」

 

「そんな情報あったら大騒ぎになってますよ」

 

「そりゃそうか…そうだな、すまなかった」

 

超改変されて最早別物になった『竜神への生贄』。

しかしそれでも場所などに関しては変わらずドラクル島だった。

なら『王都防衛戦』も流石に場所は変わらんだろうと思って定期的に情報を集めているのだが…相変わらず何も無し、か。

 

「(手詰まりだなぁ…)」

 

ここファストウが割と辺境の位置にあるとは言え、残ってる公式シナリオは大体が大規模な物だ。

高レベルキャラ用のシナリオばっかだからな、公式シナリオ。

「王都防衛戦」もその一つ。

割と事前に動いていればそれなりの対処が出来るシナリオなんだが…。

 

「(でもどうせシナリオ通りに進まないんだろ分かってるわ)」

 

元々オーガが棍棒投げてきた時点で今更である。

リルラールのように設定しかないNPCを魔改造してくる可能性もある。

要は出たとこ勝負をするしか俺に選択肢は無いのだ。

 

「(でもだからこそ取れる手段は多い方がいい、こちらも積極的に相手のやりたいことを潰していかないと)」

 

いくらなんでも連中だってやれることに限界はあるだろう。

何でもかんでも改変出来るなら黙って俺の存在を消すとかやればいい。

それをやらないという事は出来ないのだ。

恐らく…【異界の救世主】の影響で。

 

「(これを俺に付与した奴は味方…と思っていいんだよな)」

 

まぁ味方は言い過ぎでもGMもどきと敵対はしているんだろう。

何かしらコンタクトを取れれば、未だに分からない連中の正体とか聞けるんだが…。

 

「そう言えば最近あまり依頼を受けてませんよね、どうですか?たまには」

 

「…確かに鍛錬ばかりで依頼はあまり受けてなかったな」

 

と言うのもレベル上げしたいがファストウの依頼は既に俺たちにとっては低レベルのものしかない。

これは依頼内容ではなく、出てくる魔物が弱いのだ。

ファストウはそもそも初期作成のキャラの舞台なので当たり前っちゃ当たり前である。

オーガのレベル3がめちゃめちゃ強い扱いなのだ。

 

「どんな依頼が入ってるんだ?」

 

「討伐系のは既に掃けてしまったので…それ以外、採取とか人手不足の応援とかですね」

 

「どれどれ…」

 

カウンターに並べられた依頼をざっと見てみると…どれも微妙なものばかりだ。

人気の依頼は他の冒険者だってやりたがるのですぐ無くなってしまう。

昼前に来てる俺は完全に遅すぎるのだ。

 

「…ん?」

 

依頼を眺めてると一つだけ、見覚えのある依頼者の名前があった。

 

「ミロネ、依頼を出してたのか」

 

「あら、てっきり聞いてるものだと」

 

「いや、そんな話はしてなかったな」

 

毎日顔を合わせてるがそんな素振りは見せなかった。

内容を見てみると薬草の採取…結構量が必要らしい。

言ってれれば依頼なんて出さなくても手伝ったんだが…。

 

「これを受けよう、いいだろうか?」

 

「はい、分かりました。依頼者に同行する形になりますので、記載されている場所に行って依頼者と話し合ってください」

 

「了解した、失礼する」

 

ミロネがこうして薬草を補充したがっているのは前の戦いでかなりの在庫を吐いたからだろう。

耐魔ミストなんて貴重な素材をバカスカ使うアイテムだ。

ポーションもかなりの数使ったしな。

主に俺とか俺とか俺とか。

だったら俺が集めないと筋が通らないだろう。

早速ミロネが泊まっている宿の方に向かった。

 

 

 

「私も何か依頼出しましょうかね、受付の手伝いとか何とか言って」

 

 

 

 

「まさかニンジャさんが依頼を受けるなんて…」

 

「言ってくれればいつでも引き受けたぞ」

 

「最近カロルさんとの鍛錬とかでお忙しいじゃないですか、薬草採取くらいで邪魔するのもなーって…」

 

「邪魔も何も大体私が消費してるからな、ポーション。自分で使う分くらい手伝わさせてくれ」

 

「そういう事なら…助かります」

 

ミロネと合流して近くの山に来ていた。

何でも新しいポーションを作りたいのだが市場には出回らない物らしく、それを探しに来た訳だ。

 

「カロル達は見当たらなかったがどうしたんだ?」

 

「リルラールちゃんの服を買いに行ったんです、今来てるのと緊急用で買った数枚しか無かったので…ミレッラさんがそんなのあり得ないって」

 

「じゃあカロルは荷物持ちか」

 

「本当はニンジャさんが良かったらしいですけど、丁度居なかったので代わりにだそうで…」

 

すまんなカロル。

諦めて荷物持ち頑張ってくれ。

 

「にしても、ミロネもミレッラの屋敷に住んでもいいんじゃないか?宿代もバカにならないだろう。どうせ毎日リルラールの様子見に通っているだろ?」

 

「薬草の加工って臭いがどうしても出ちゃうんですよね…お屋敷を薬草臭くするのもなぁって。今の宿は立地的に風通しが良くて臭いがあまり篭らないんです。宿の店主さんが許してくれてるのが一番の理由ですけどね」

 

成程、言われてみれば納得の理由だ。

実際ポーションは想像の5倍は臭いがきつい。

悪臭と言うわけでは無いが、薬臭いと言うべきか。

パクチーのすごい版みたいな臭いがするので慣れるのに時間がかかった。

 

「それで欲しい薬草というのは市場に出回って無い種類なのか」

 

「価値が無いわけじゃないんですけどね、どうしても加工に手間かかったりしてあまり好まれないんです。今までは自分でコツコツ集めてた分でやってたんですけど…ここ最近消費が激しくて在庫が無くなっちゃいました」

 

「成程な、薬草の見分けは出来ないから頼る事になるが、採取自体はしっかり働かせてもらうよ」

 

「ふふ、お願いしますね」

 

二人で山を進んでいくと背の高い植物がズラッと生えていた。

ミロネはそれに近づいて軽く触ると頷く。

 

「まずはこれですね!よく使うポーションにも使える薬草です!」

 

「分かった、どのくらい取ればいい?」

 

「全部取るのはダメなので…半分くらい頂いちゃいましょう!」

 

早速仕事だ。

日が暮れないうちに帰れるように、気合を入れて採取するか!

 

 

あれから数時間、山のあちこちを歩いて採取をしていたら顔に水が当たった。

 

「雨か」

 

「あんなに晴れてたのに…」

 

山の天気は変わりやすいと聞くがそれでも突然過ぎた。

どうしたものかと辺りを見渡すと雨宿り出来そうな岩の窪みを見つけた。

 

「一旦あそこに行こう」

 

「は、はい」

 

移動してる間にも雨はどんどん強くなり、窪みに身を隠した辺りで本降りになってしまった。

ざぁざぁと降り続ける雨を見ながら担いでいた荷物を置く。

幸い服はそんなに濡れてないから、風邪を引いたりはしなさそうだ。

 

「運が無いな、日頃の行いのせいだろうか」

 

「あはは…でも天気雨だと思いますし、少し待てば晴れると思います」

 

「折角だし休憩しとくか…」

 

「そうですね…」

 

2人で座り込み、雨を眺める。

木や落ち葉に雨が当たり、辺り一面に音が広がる。

いつの間にか2人で会話もせずにぼーっとしていた。

 

「…ずっと聞けてなかったんですけど」

 

数分した辺りでミロネが話し始める。

声は大きくないが近いからよく聞こえた。

 

「オーガの攻撃から庇ってくれた時…あったじゃないですか」

 

「ああ、あったな」

 

「どうして…庇ってくれたんですか?」

 

「どうしても何も、依頼主を守らないのは冒険者としてどうなんだ」

 

「危険な所に着いて行ったのは私です、操られていたと言うのもありますけど…それでも会って数時間の相手を命を賭けて守ったのは何でだろうと思って…」

 

「それは…」

 

あの時、俺はシナリオをクリアすれば元の世界に帰れると思ってた。

ミロネが死んだらクリアできない、だから俺は彼女を─。

 

 

 

 

 

本当にそうか?

 

 

 

だって俺は自分が死ねばそれこそ終わりかもしれないと思っていた。

最後の最後まで助けに行くか迷っていた。

そんな俺が、足を踏み出したのは─。

 

 

 

 

『ニ、ニンジャさん・・・ありがとうございます!』

 

 

 

 

あの時の、彼女の笑顔が。

頭の中に浮かんで。

気づいた時には走り出していた。

 

「ああ………そうか………」

 

「?」

 

我ながら随分とチョロいものだ。

まさか元の世界じゃ存在しないような美人に感謝された程度でそうなるとは。

自分がチョロ過ぎて笑えてきた。

 

「クックックッ………」

 

「え!?なんで笑ってるんですか!?笑うようなこと言いましたかね…?」

 

「ハッハッハッハッ!いやすまない、バカにしてるとかでは無いんだが…自分に笑っていた」

 

「え?何でです?」

 

「さぁ?何でだと思う?」

 

「質問に質問で返さないでくださいよぉ!」

 

「悪い悪い…ハハハッ!」

 

「もー!」

 

結局、俺は雨が止むまでミロネの質問を躱しながら笑いを抑えられなかった。

 

 

 

 

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