TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。   作:水道館

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王都アトラータ編
喋る馬


「今日も今日とて情報は無しか…」

 

ドラクル島から帰ってきて早二週間。

【糸】の手掛かりも公式シナリオが始まりそうな気配も無く、平和な日々を過ごしていた。

他の街からやってきた商人から話を聞いてみても何も無し。

 

「何も無いのが1番恐ろしいな…」

 

水面下で既に始まっている、なんて事されたらどうしたらいいんだろう。

情報屋とか探したほうがいいのだろうか。

悩みながら帰路に着いているとやたらと広場が騒がしい。

目をやると人だかりが出来ている。

中心には旅商人?のような風貌の男が何やら騒いでいた。

 

「喧嘩か?こんな昼間に血気盛んだな」

 

ファストウは治安が良い街だ。

少なくとも住民に危ない人間は居ないし流れてくる人間も割と穏やかな者が多い。

荒くれ者や怪しい奴が来ないほど田舎と言う話もある。

つまり喧嘩なんてかなり珍しいのだ。

気になって近くに寄って様子を伺う。

身長が高いおかげで周りに遮られないのはこの体の利点だ。

 

「だぁかぁらぁ!俺は人間なんだって言ってんだろ!?お前頭に脳みそ入ってんのか!?」

 

「お前のどこが人間なんだ!いいから黙って大人しくしてろ!買い手が付くまでな!」

 

「お前人身売買とか最低だぞ!」

 

「だからお前は馬だろう!?」

 

黒くてデカい馬が商人と口喧嘩していた。

なんて流暢に話す馬だ。

しかも自分を人間だと主張している。

 

「帰るか…」

 

この世界に来てから理解できない事の連続だが今日が1番意味不明だ。

たいして動いて無いはずなのに凄まじい疲労感が訪れたので帰って休もう、そうしよう。

 

「クソッ!話が通じねぇ!オイ!そこの!そこのデカくて黒一色の覆面マン!助けてくれ!差別されてるこの俺を!」

 

身長が高いせいで周りに隠れることが出来ないのがこの体の欠点だ。

つーかこの流れ前にもやっただろ。

もういいって。

 

 

 

 

「それで?公衆の面前で騒ぐ馬と飼い主を裁く法がこの街にあるか確認すればいいのか?」

 

「なんで私もなんだ!こいつが商品なのに暴れるから仕方なく・・・」

 

「おい今こいつ商品って言ったぞ!何かしらの犯罪に当たるだろ!早く逮捕しろ逮捕!」

 

やかましすぎるなこの馬。

と言うかアナケンで喋る馬なんて居ない筈だぞ。

 

「そもそもの話、なぜこの馬は人語を話せるんだ?ケンタウロスでも無いのに」

 

「俺が人間だからだ!元が付くがな!」

 

「・・・と言っているが実際どうなんだ?」

 

「こいつは普通に私が張った捕獲罠にかかった野生馬だ、自分で手に入れた馬を売ろうと自由だろう?」

 

商人の言っている事は間違いではない。

元の世界ならいざ知らず、この世界では野生動物をいくら捕まえようと問題ない。

勿論乱獲は流石に咎められるが、個人が数匹取るくらいなら当たり前だ。

しかし・・・。

 

「喋る馬なんてすぐ逃がした方がよかったんじゃないか?」

 

「それは・・・今さらながらそう思う・・・珍しいから高値で売れるかなと思ったんだが、気味が悪いとかうるさいとかで全然買い手がつかないんだ・・・」

 

「たりめぇだろ、誰が好き好んで自分を売るような奴に金が入るようにしないといけねぇんだ」

 

「口悪いなこの馬」

 

「人間だって!」

 

「さっきから人間を自称しているが・・・ならなんで馬になったんだ?」

 

「分からん!気が付いたら馬になってたんだ!助けてくれ!あと馬肉食いてぇ!」

 

しれっと共食いしようとすんな。

草食動物だろお前。

 

「何にせよ、こんな場所で騒がれると迷惑だ。これ以上騒ぐなら憲兵を呼ぶが?」

 

「なっ!ま、待ってくれ!折角ここまで来て商売しに来たのに・・・!」

 

「おー呼べ呼べ!憲兵の方が話が通じそうだ!ガハハ!」

 

めんどくさくなって来たので全てを憲兵に投げて帰ろうと思っていたが─。

 

 

「あら?ニンジャ様何をしているので?」

 

「ニンジャ居た、帰ってこないから心配してた」

 

ミレッラとリルラールが話しかけてきた。

以前の冒険者云々の際に仲が良くなったのか、最近は2人でよく遊んでいる。

 

「いやこの変な馬に呼び止められてな・・・」

 

「馬に呼び止められる???」

 

「だから見た目は馬だけどな?心と中身は人間なんだよ、分かるか?この意味が?」

 

「わかんない」

 

「ガキはダメだな、おい教育がなってないぞ」

 

「ダメなのはお前の頭だろ、挽肉にしてやってもいいんだぞ」

 

リルラールをダメ呼ばわりしやがって。

頭に馬糞詰まってるんじゃないかこの駄馬。

 

「馬が人語を話してますわ!何ですの、この馬!」

 

「凄いでしょう?口は少し・・・まぁまぁ・・・それなり・・・だいぶ悪いですが!足は速いし頭も・・・いいかな?・・・どう思います?」

 

「何で売り込む側が買い手に尋ねてくるんだ」

 

「そこは嘘でもいいって言った方が売れやすいよ」

 

「あそっか・・・商売って難しいなぁ・・・」

 

それを言ってしまう辺り全然向いてないから他の仕事探した方がいいと思う。

ふとミレッラを見ると懐に手を入れていた。

全力で腕を掴んで止める。

 

「待て!待ってくれ!まさか買うんじゃないんだろうな!?」

 

「ですがこんなレア物!今を逃せばもう手に入りませんわよ!?」

 

「確かにレア物だが呪物的なレアだぞ!今すぐその手に掴んだ金貨袋を離せ!」

 

「金は何のために使うと思いますの?金より大事な物を守るために使うんですわ!」

 

「あの馬は金より大事な物じゃない!!!」

 

「ふざけんな!大事だろ!世界に一点ものだぞ!」

 

こんな訳分からん馬が近くに来るなんて勘弁してくれ!

何としても阻止して見せる!

 

「取った!」

 

「ああ!」

 

何とかミレッラから金貨袋を奪い取る。

ずっしり重い、どんだけ入ってるんだよ。

しかしこれで安心─。

 

「残念でしたわねニンジャ様!私、リスク分散するタイプですの!その馬買ったぁ!」

 

「ブーツの中に仕込むなぁぁぁ!」

 

「うおおおお!?こんなに・・・お買い上げありがとうございまーす!」

 

ブーツに隠していた金貨袋を投げ渡された商人はすごい速さで立ち去ってしまった。

残されたのはホクホク顔のミレッラとよく分かってないリルラール、ドヤ顔の馬、絶望する俺。

 

「まぁ金で売買されたのは癪だが・・・お前らの方が商人よか良さそうだ!よろしくな!」

 

「今日の夕飯、馬刺しにしないか?」

 

「食用ではありませんわよ!?」

 

「おっきい馬・・・真っ黒」

 

こうして自分の事を人間だと思ってる精神異常馬が来てしまった。

ミロネ、カロル、すまん。

俺は無力だったよ。

 

 

 

 

 

 

 

馬小屋なんて物は無かったのか、俺は広めの物置小屋に仮で置かれた。

わざわざ買ってきたのか、床には干し草が大量に置いてある。

 

「・・・ペッ」

 

口の中に忍ばせていた連絡用魔道具を吐き出す。

軽く魔力を流してやると、あいつに繋がった。

 

『─────?』

 

「ああ、何とかな。それよりも見つけたぜ、【ナクア】の力を持った異界の人間がな」

 

『─!・・・────?』

 

「大丈夫だ、バレてねぇよ。人語を喋る頭おかしい馬って事になってるからな、ガハハ」

 

『─────、────』

 

「【ナクア】の最後の連絡が間違ってねぇならな、・・・もう連絡は無いだろうが」

 

『────』

 

「ああ、お前と合流させりゃいいんだろ?うまい事やるさ、馬だけに」

 

『・・・・・・・・・』

 

「なんか言えよ」

 

渾身の自虐ギャグをスルーしやがって。

笑いどころだぞここ。

 

『─────────』

 

「壊せばいいんだな?分かった。ボロが出ると困るしな」

 

『────』

 

「死なねぇよ、俺が死んだら()()()()()()()()()が3人から2人になっちまうからな、・・・まぁ俺はだいぶ変わっちまったが」

 

『・・・────』

 

「ああ、じゃあな」

 

魔道具を踏み壊す。

何度も何度も念入りに。

魔道具は粉々になって地面のゴミと同化した。

 

「(あいつが【ナクア】から権能貰ってんなら、近くに居る限りは干渉されない筈だ)」

 

罠にかかった甲斐があったというものだ。

ファストウの方に奴が作った化け物を倒した奴が居ると聞いて来たが・・・運がよかった。

 

「(・・・勝てるかねぇ・・・)」

 

()()()()()()()()()()()()()

今は状況が違うとはいえ、結局この世界は遊び道具になっている。

だが・・・このままで終わるかよ。

【ナクア】が存在削ってまで賭けたんだ。

なら俺も、あの2人も、命を賭けるさ。

 

「あー・・・肉食いてぇなぁ・・・」

 

馬の餌に肉が出る訳もなく、仕方なく牧草を口にする。

今まで食ってた餌よりはずっと良いものだった。

でもやっぱ肉食いてぇよ・・・。

 

 

 

 

 

 

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