TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。   作:水道館

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手紙

「あ、これだよこれ。【ダークブラッドホース】。間違いない」

 

「巨体、漆黒の肌、赤い瞳…確かに一致してますね」

 

「数が少ない希少種ですわ、気性が荒くて扱いづらいタイプですが、手懐ければ非常に優秀な馬になりますわ!」

 

「…まぁ気性は荒いか」

 

気性ってか口が悪いだけな気もするが。

何にせよ騎獣データの読み込みが浅かったせいで気づけなかった。

あんま使わないんだよなぁ騎乗系キャラ。

管理怠くて…。

 

「でも人語を話すなんて書いてませんわね」

 

「書いてたら困るけどね…」

 

「普通馬は話しませんし…」

 

「自分の事、人間って言ってたよ」

 

「ますます分からないね、意味が」

 

同意しかできない。

 

「結局あいつはどうするんだ?ミレッラ、君が買った以上決めるのは君だが…」

 

「勿論飼いますわ!それに何かで旅に出る時にいちいち馬を借りなくてもいいのは利点ですわよ!」

 

「確かに、大きいし力もあるから馬車も引けそうですよね」

 

「でも本人…本馬?が嫌がるんじゃ無いかい?」

 

「それまでに手懐けて見せますわ!では早速…」

 

ミレッラはバケツ一杯の人参を持って部屋の外に出て行った。

肉食いたいとか言ってる馬に人参食わせても懐くだろうか。

いっその事ステーキでも食わせたら言うことを聞くかもしれん。

 

「ニンジャ、私も見てきていい?」

 

「うーむ…私も付き添う、それでもいいか?」

 

「うん、一緒に行こ」

 

リルラールに何かあったら大変だ。

まぁレベル10のリルラールがあの馬如きにどうこうされるとは思わないが、念の為である。

 

「2人はどうする?」

 

「そうですね、遠目で見ただけですし折角だから会ってみようと思います」

 

「馬と会話するのは初めてだなぁ…なんか緊張するね」

 

「安心しろ、大体の人が初めてだろうから」

 

 

馬小屋代わりにしている物置小屋に来た。

物置と言ってもバカみたいにデカいのでスペースが有り余っている。

 

「おお!来たか!早速だが助けてくれ!この金髪ドリルが一生人参食わせようとしてくるんだ!何とかしてくれ!」

 

「馬なのに人参を嫌がるなんて馬の風上にも置けませんわ!食べなさいな!」

 

「馬にだって好き嫌いくらいあるだろ!いや俺は人間だけど!」

 

好き嫌いに関してだけは同意する。

実際馬が人参を好むと言われてるのは甘味があるからであって、フルーツとかカボチャとかもガンガン食べる。

人参よりそれらが好きな馬も居るだろう。

肉を食う馬は知らんが。

 

「ねぇねぇ、乗っても良い?」

 

「うるせぇなぁ・・・乗りたきゃステーキ持ってこい、話はそれからだ」

 

「鼻に人参詰めてみますわ!」

 

「虐待だろこれ!おい何とかしろ変態覆面!」

 

「ミレッラ、目にも突っ込んでいいぞ」

 

「分かった、話し合おう。俺らには言葉という素晴らしいものがあるじゃ無いか」

 

「その…流石に鼻に詰めるのは…窒息しちゃうかもしれませんし」

 

「お!話がわかる女だな!貧相な体してるが心はデカいみたいだ!」

 

「ミレッラさん、手伝いますね」

 

「すまんすまんすまん!悪かった!だから太い方から詰めるのだけはやめでででででででぇ!!!」

 

「今時見た目の揶揄は流行らんぞ」

 

「うーん・・・まぁ仕方ないんじゃないかな、畜生だし」

 

「おいそこの優男が一番ひでぇよ!ちょギブギブギブ!」

 

馬鹿が当然の理由で折檻を受けてるのを見ながら少し考える。

何故このタイミングでこんな変なのがこの街に来たのか。

 

「(思えば前回、ドラクル島の時は起きた事件をシナリオと考えた場合納得出来るものだった)」

 

内容の是非はともかく、島に巣食う教団を潰してファントムドラゴンという厄ネタを処理しつつハーヴグーヴァというラスボスを倒す。

難易度とか狂ってるだろと思うがそれでも、あれがTRPGのシナリオと言われれば「まぁ・・・ええんちゃう?」と言いそうな流れだった。

少なくとも「竜神への生贄」よりかはずっと。

 

「(明らかに仕掛けてくるやり方が変わり過ぎている)」

 

シナリオクリア直前にキラーマンティスぶっこんでくる雑さが無くなっている。

到底同じ奴がやっているとは思えない。

と言うより、本当に同じ奴じゃないのかもしれない。

 

「(キラーマンティスを通じて会話してる時、複数の声が聞こえた)」

 

もし奴らが一枚岩で無かったら。

もし奴らの中で仲間割れが起きていたら。

その中の一体が、ドラクル島の時に事件が起こるように暗躍していたとしたら。

 

「(めっっっちゃ厄介だぞこれ・・・)」

 

前回の事件をシナリオ難易度で例えるなら「身内卓の極まった連中相手にいい感じにボコボコにしつつクリアできそうな難易度」だ。

決して野良卓で回してはいけないやつ。

あらゆる場面で最適行動取らないと死ぬやつだ。

よくもまぁ生きてるもんだ、俺。

 

「(明らかに遊んでやがる・・・)」

 

俺が目障りならクリアさせなきゃいいのだ。

でもクリアの道は閉ざさない。

生き残る方法自体は無くさない。

リルラールが【即死クリティカル】出さなくても倒せるレベルにしてたかもしれん。

それくらいに─遊んでいる、可能性がある。

 

「(どうしたもんか・・・付き合うしかないのか・・・?)」

 

幸いあのちゃぶ台返しよかマシではある。

公式NPCも今のGM気取りに変わってから【糸】を外されたと思ってよさそうだ。

ハーヴグーヴァ引っ張ってくるのに使ってたみたいだし・・・。

操られて何回も殺される被害者が解放されるのはいいけど・・・。

 

「(この鬼畜GM気取りのシナリオ通りに進むのすげー不快だな)」

 

なんとかして出し抜けないかな。

シナリオぶっ壊してやりたい。

でも変に刺激して勝てないの出されたらあれだし・・・。

 

「(で、この馬だよ)」

 

これシナリオの導線か?

喋る馬が?

でも普通にありそうだ、だってオリジナルエネミー作るくらいだもん。

喋る馬くらい作れるだろ、多分。

こちらが動かな過ぎて焦れたからこいつを送り込んで自分のシナリオに入るようにする・・・。

 

「(これがぁ?この気が狂ってる馬がぁ?)」

 

もう少しまともなのあっただろ・・・。

でももしそうならこいつは唯一の手掛かり。

今はこの誘導に乗るしかない。

そう思い馬に質問しようと思ったその時─。

 

「すいませーん、どなたかいらっしゃいませんかー?」

 

小屋の外から声が聞こえた。

丁度扉の近くに居た俺が対応する。

 

「ここにいる、なんだろうか?」

 

「ああ、その恰好・・・ニンジャ・カウンター様ですか?」

 

「その通りだが・・・何か用か?」

 

「こちら手紙のお届けです、お受け取りください」

 

「手紙?」

 

はて、全く心当たりが無い。

誰からだろうと思い開いてみる。

 

 

 

 

『拝啓、ドラクル島を救いし英雄ニンジャ・カウンター様。

 突然のお手紙、申し訳ございません。

 ですが、どうしても伝えたくてお手紙を送らせていただきました。

 ドラクル島には古い友人が居ます。

 その友人を守ってくれた貴方には是非とも直接お礼を申し上げたいと思っています。

 どうか王都アトラータに来ていただけませんか?

 来ていただければ、精一杯のおもてなしをさせていただきます。

 貴方に会える日を心待ちにしております。

                     正道教会アリスより』

 

 

 

 

「え?こっちが導線?」

 

送り主聖女なんだけど、なんすかこれ。

てかなんで俺が救った扱いなんだよ。

倒したのリルラールだぞ。

いやそれはまずいい。

小屋に入り、馬を見る。

 

「助けて!助けて!」

 

「じゃああれは何なんだよ・・・」

 

本当に自然に沸いて出た喋る馬なの?

この世界って低確率で喋る動物がポップするの?

もうわけがわからないよ。

 

 

 

 

 

「聖女からのお手紙ですか・・・!?」

 

「うわー・・・この印章は確かに正道教会のだね、無関係の人が使ったら捕まるやつ」

 

「聖堂教会ってこの大陸でもガッチガチの規律で有名なとこですわよね・・・」

 

「えーっと僕が覚えてる範囲だと贅沢したら処罰、民の相談を聞かなかったら処罰、犯罪起こしたらどんなに小さくても・・・死刑」

 

「入る人全員覚悟キマってる人しか居ないって聞きますよね」

 

「そらそんな規律だったらそうだろうな」

 

「どう・・・するんですか?」

 

「・・・行くしか無いだろ、もしスルーなんかしてみろ。何されるか分かったもんじゃない」

 

「そうだね、言うこと聞いた方がよさそうかな・・・」

 

聖女・・・って事は王都か!

よし、なら話が早い、あいつが居るのは王都だからな。

変に誘導しなくても向かってくれそうだ。

 

「(奴の差し金だろうが・・・利用させてもらうぜ)」

 

問題はタイミングだ。

良い感じにこの男・・・ニンジャだったか?

こいつだけを他の連中から遠ざけてあいつと合流を・・・。

 

「どうやって王都に行きますの?」

 

「乗合馬車だと・・・流石にあれか」

 

「5人だからね、流石に厳しいよ」

 

「街道通るとして大体何日かかるんでしょうか」

 

「ファストウからだと最低でも4日はかかりますわね」

 

「4日は長いなー・・・どうしようか」

 

「仕方ない、個人で馬車を借りよう。馬もな」

 

そうそう馬も・・・馬も!?

 

「お、おい!俺はどうすんだよ!」

 

「いやここに留守番だが・・・」

 

「はぁ!?嘘だろ!?」

 

「お世話役は執事にやらせるので安心なさいな!大人しく待ってなさい!」

 

やばい!俺が置いてかれたら意味がねぇ!

どうする、何とか俺も王都に・・・!

 

「ねぇニンジャ」

 

「どうしたリルラール」

 

「このおっきな馬に馬車引いてもらえばいい」

 

ガ、ガキ!ナイスだガキ!

これに便乗するしかねぇ!

 

「えー・・・こいつにか?」

 

「うん、私この馬に乗りたい」

 

「でもこいつ乗せるならステーキとか言うんだぞ、そんなのより良い馬を借りた方が・・・」

 

「引く!引くぞ!だから俺も連れてってくれ!」

 

「なんだか・・・必死ですね」

 

「そ、そんなことは無いぞ!ちょうど馬車引きたかったんだわ!マジマジ!」

 

「信用ならんな・・・」

 

畜生!ホントの事言えればこんな苦労しなくて済むのによぉ!

奴に監視されてる可能性を考えれば誤魔化すしかねぇ!

 

「お、俺王都に詳しいぜ?なにせ前は王都に居たからな!」

 

「野生馬ですよね?王都は警備が厳重だから入ったりできませんよ?」

 

「商人居ただろ!前は王都に俺を連れてったんだよ!王都までの道も分かるからよ!な?な?」

 

「どうするニンジャ?」

 

「うーむ・・・急に下手に出てきて怪しいが、こいつのパワーは本物だからな・・・御者も会話できるならいらないだろうし・・・連れてってみるか」

 

よ、よかったぁぁぁ!

あぶねぇぇぇ!

うまい事やるってあいつに言った手前失敗は出来ねぇ!

 

「よかったね、くろまる」

 

「ああ、なんとかなった・・・なんだって?」

 

「名前、決めてなかったから決めた。くろまる」

 

「くろまる、良い名前ですわ!それにしましょう!」

 

「いいですね、可愛くて!賛成です!」

 

「え、ちょ」

 

「まぁ名前は無いと困るしね・・・いいと思うよ」

 

なんつー力の抜ける名前・・・。

だがここは我慢だ、受け入れよう。

そう思っているとニンジャが近づいてきた。

 

 

 

「スピィーディー馬田なんてどうだ?こっちも良い名前だと思うが・・・」

 

「俺はくろまる!よろしくな!」

 

そんな糞みたいな名前よりは「くろまる」のがマシだわ。

 

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