TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
いつも読んでくださってる方、申し訳ありません。
「・・・大丈夫だろうか」
通信が切れてから早一日、本人は何とかすると言っていたが・・・。
「彼は素で口が悪いからな・・・」
変な摩擦を異界の者と起こしかねない。
本人に悪気は全く無いのが困ったものだ。
書き換えられる前からの付き合いである私は平気だが・・・。
「祈るしか無いか・・・」
現状王都から離れることが出来ない。
何せもうすぐ始まってしまうからだ。
【ナクア】から託された情報・・・しなりお、だったか。
この世界を奴の遊びに消費されると思うと・・・かなり堪える。
「だが今は耐えるときだ」
【ナクア】の権能を受け取った者と合流出来た時。
その時こそ動く時。
【ナクア】の権能で奴の奪った力をかき消しながら動くことが出来る・・・。
「彼女の研究にも、いずれ頼る時が来るだろうな」
今は離れているが・・・きっと順調だろう。
彼女は慎重だ、ボロを出すことは無いだろう。
・・・奴に近い身分であることは、問題だが。
「さて・・・準備しなくてはな」
もう長い付き合いになる体に鞭を打ちながら立ち上がる。
駆動音が少々煩いが、もう慣れた。
口以外何もない顔を隠す仮面を付けて外套を羽織る。
恐らく本格的なしなりお開始は異界の者が来てからになるだろう。
何しろ今の奴はそれが目的なのだから。
だから私は─被害を最小限に。
少しでも、世界の寿命を延ばすために。
「諦めはしないさ・・・」
もう存在しない仲間達へ誓う。
必ず敵は取ると。
◇
『アナザーワールド•ボウケンジャー』には所謂神と呼ばれるような存在は設定されていない。
神を信仰したところで魔法が使える訳も無いだろと言う公式の思想かは知らないが、宗教への価値観は元いた世界と大差無いのだ。
なら正道教会とは何ぞやと言う話だが、例えるならNPO団体が1番近い。
国関係なく魔物や魔族の被害を受けている場所に出動し、民を守る事が正しい道と信じて活動する団体だ。
名前にある教会も俗称のような物で、活動初期に教会を借りていた為、その流れで呼ばれるようになったと言う設定だ。
所属している者達も神を信じていると言うよりはトップに心酔してるからと言う方が正しい。
そしてそのトップが聖女アリス、公式NPCの中でもかなりの人気を誇るキャラだ。
「(野良卓でアリスが出てくるオリジナルシナリオ大量発生してたからなぁ)」
今の卓メンと会うまで俺はSNSの野良募集をメインにTRPGをしていたが、まーよく出る。
3回卓をやれば1回はアリスが出てくる。
それくらい人気だ。
「(金髪碧眼女騎士はそりゃ人気出るよなぁ)」
キャラ設定も人々の為に身を粉にして活動するまさしく聖女と言って差し支えない物。
しかもドジっ子属性と可愛いものが好きと最早狙ってきている。
ミロネやミレッラも普通に人気な方だが比べ物にならない。
わざわざ自キャラを作る時に正道教会に所属していると言う設定にするプレイヤーも居るくらいだ。
だが─聖女アリスにドラクル島に友人が居るなんて設定は、存在しない。
「(設定改変…と思ったけどこの世界別にルルブの設定まんまじゃないのがなぁ)」
ミロネが薬草にはしゃぐのも、カロルがやたら女にモテるのも、ミレッラの金遣いが荒いのも、何一つそんな設定はルルブに書かれていない。
だから別にドラクル島に昔行った時に友人が出来ただけと言う可能性は捨てきれないのだ。
「(結局この世界って、アナケンにそっくりな異世界って事でいいんだろうか)」
真相は不明である。
なにしろ答え合わせしてくれる奴なんて居ないから仕方ない。
あーまじで俺がこの世界に来た原因とか諸々全部教えてくれる人現れないかな。
「なぁ、休んでいいか?」
「お前まだ出発して30分だぞ」
「いや重いんだよ荷台の方が!」
「当たり前だろ、それこそ何日王都に居るか分からないからな。荷物も嵩むさ」
「だからって5段チェスト積むのはやり過ぎだろ!!!」
それはそう。
でも積んだのはミレッラなので俺のせいじゃ無い。
「飼い主がどうしてもって言ってるんだから、それに答えるのが騎獣ってものだろう」
「自分を引っ張ってくれる馬の負担を考えるのが飼い主じゃ無いのか!?」
「お前馬じゃなくて人間なんだろ、なら当てはまらんな」
「畜生!」
「突然自己紹介してどうしたんだい?」
「なぁやっぱこの金髪が1番ひでぇって」
然もありなん。
自分の口の悪さを恨むんだな。
人の事言えないけど。
「王都って数回しか行った事ないんですよね…あまり覚えてないです」
「ミロネは何しに行ったの?」
「えーっと確か新しい薬師道具が出たって聞いて行ったんですよ」
「どうでしたの?」
「私が持ってたのに製作者のサインが入っただけの物だったので帰りました」
「新しくないと思う、それ」
「販売員の人が凄い微妙な顔してたので怒る気も失せました…」
上から売れと言われたんだろうな。
どの世界も末端は上層部の思いつきに振り回される定めなのか…。
「あれからずっと王都に行ってませんけど・・・今どうなってるんでしょうか」
「まぁそう簡単に変わるとは思えないから、精々店が少し変わってるくらいなんじゃないかい?」
「私は聖女様の所に行く前にカジノに行きたいのですけど・・・」
「せめて終わってからにしてくれ・・・」
「おーい、後どのくらい進んだら休んでもいいんだよ、教えてくれぇ」
「日が沈むまでだな」
「今朝だぞ!?」
「くろまる頑張れ」
◇
「あれ?あそこ・・・誰か倒れてませんか?」
「・・・本当だ」
「まぁ大変!助けに行き「待ってくれ」・・・どうしたので?」
「・・・変だな」
「何で変なの?」
「手が見えないからだな」
「・・・確かにここからだと見えないね」
「私が確認してくる、待っていてくれ」
馬車を降りて倒れている人に近づく。
行き倒れは全く動かない。
一歩、また一歩と近づいて─。
剣をこちらに振ろうとしてきた男から後ろに飛んで距離を取った。
「・・・何で分かった?」
「何でも何もこんな行き倒れる要素の無い場所で倒れていたら警戒もするだろう」
「ふん・・・馬鹿じゃなかったのが残念だな」
ゆっくりと起き上がる男は言ってしまえば標準な体型、どこにでも居そうな男だ。
だが油断してはいけない、何せスキル次第でどれだけでも強くなれるのがアナケンだ。
「だがお前らは俺に全員を持ってしても勝てない、何故なら─」
「【サンダーブラスト】」
後方から雷が飛んでくる。
男は避けることも出きずに直撃した、だが─。
「おいおい、いきなり魔法ぶっぱとはなぁ。だが無駄だね、俺には効かない」
「!・・・手加減しすぎた・・・?」
「お前・・・まさか・・・」
嫌な予感がする。
レベル10の攻撃魔法を手加減アリとは言え無傷。
アナケンのスキルに被ダメージを軽減するスキルは存在するが、ノーダメは不可能だ。
だとするとこいつは─。
「お前ニンジャ・カウンターとかいう奴だろ?上からの指示だからよぉ・・・いっちょ死んでくれねぇか?」
人間の顔がどんどん崩れていき、悪魔のような顔が現れた。
邪悪な笑みはこちらの恐怖を煽ってくる。
「人族狩りのサルナード・・・」
ルルブに存在しない公式NPC、人族キャラからダメージを一切受けない没キャラ魔族が姿を現した。
没キャラまでアリとかもうなんでもありだな・・・。