TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
馬車からカロルが飛び出して俺の横に付く。
サルナードは俺が名前を呼んだのが聞こえたのか不思議そうな顔をしていた。
「おかしいなぁ…出会った人族は全部殺してるんだが…何で俺の名前知ってんだ?」
「答えてやる道理はない」
「そうかい、まぁどうせここで死ぬんだから構わねぇよな!」
「【プロテクトシェル】!」
リルラールが俺を完封した時のようにサルナードを結界で囲む。
攻撃が効かないなら拘束に移る判断の速さは相変わらず大人顔負けだ。
「あぁん?何だこりゃ…なるほど防護魔法を相手を閉じ込めるのに使ってる訳か、中々頭いいな…だが、お前魔法使ったな?」
「─!リルラール!今すぐ【プロテクトシェル】を解け!」
「遅ぇ!【マジックフロー】!!!」
サルナードの手から出た魔力の奔流は【プロテクトシェル】に打ち込まれる。
「!!!…ま、魔力が…」
「助かったぜ?1番レベルが高いお前が魔法使いで…わざわざでけぇ的を目の前に出してくれてご苦労さんっと。さっき使い忘れちまったからなぁ」
「リルラール!それ以上魔法は使うな!魔力切れで倒れる!下がってろ!」
「…!…わ、分かった…」
【マジックフロー】、このスキルは魔法を使う相手を機能不全に出来る対魔法使い系スキルだ。
効果は『対象が自身に魔法を使った時に使用できる。相手のMP消費を一時的に5倍にする』…相手の魔法に触れないと使えないスキルだが性能は唯一だ。
魔法使いは強力且つ汎用性の高い魔法を多く使える代わりに、MPが第二のHPと言ってもいいくらいMPが大切だ。
何せ何をするにも基本的にMPを使用する。
そんなMPを過剰に使わされたらすぐに枯渇する。
TRPGの方ならMPが切れても倒れる事は無いがこの世界ではMPは精神力や気力に近い。
当然空になれば意識を保つ事は難しいだろう。
一度自分で『デスマッチ•チェーンリング』の鎖を出しっぱなしにしてMPを使い続けてみたから分かる。
ただ立ってる事すら無理な程の眩暈に襲われたからな…。
「ミロネ!リルラールを見といてくれ!ミレッラは補助を!」
「は、はい!」
「【迅速なる叱咤】!」
ミレッラから素早さ上昇のスキルを受ける。
速さが底上げされるのは助かる…が。
「いくら支援しようがなぁ…お前ら人族からはダメージ受けねぇんだよ!」
突っ込んでくるサルナードの剣を短剣で止める。
奴のレベルは分からないが、打ち合えないレベルでは無い。
「ハァッ!」
カロルがサルナードのガラ空きな横っ腹をレイピアで突き刺した。
だが─。
「!?硬いわけでも無いのに刺さらない…!」
「無駄さぁ…俺はお前らから受ける攻撃も、魔法も道具からも!何一つダメージを受けない!」
全く刺さらなかった。
ダメージは皆無、サルナードはそのままレイピアを掴む。
カロルは咄嗟にレイピアから手を離したがワンテンポ遅かった。
サルナードの剣がカロルの首に届く───
「すまんカロル!」
前にカロルの足を蹴飛ばして転ばせる。
間一髪、カロルの首は切られずに済んだ。
だが今度は俺が足を地面から離してしまった。
「仲間想いだなぁ!?」
当然サルナードがそれを見逃すはずも無く、今度は俺が足払いされる。
バランスを崩した俺は奴の剣の斬り返しを避けられ無かった。
「ニンジャさん!!!」
「ッ!オオオ!!!」
即座に起き上がって全力でサルナードに体当たりをする。
サルナードは衝撃で少しだけ後方に飛ばされたが、全く手応えが無い。
「ごめんニンジャ…!」
「いい!だが奴には攻撃は無駄だ!あいつの人族からダメージを受けないというのは虚言じゃ無い!」
幸い傷は浅い。
攻撃力自体はそこまで高く無いようだ。
カロルより少し高いくらいか?
素早さも追いつけないレベルでは無いのだが…。
「(何をしてくるのか全く分からん…!)」
どんなステータスなのか、どんなスキルを持っているのか全く分からない。
それも当然、この【人族狩りのサルナード】はルルブに記載されてない没キャラだからだ。
こいつの存在が世間に公開されたのは【アナザーワールド•ボウケンジャー】が期待の新作としてTRPG専門雑誌に取り上げられた際のインタビュー。
制作陣が取材者に「没ネタとかやっぱりあったりしますか?」と聞いた際に出てきたのがサルナードだ。
キャラ作成時には人族しか選べないアナケンだが本来であればPCとしてキャラ作成する際に人族以外のキャラも選べるようにする予定だったらしい。
その時に居たらおもろいかなと作られたのが一部種族からのダメージ無効スキルを持った敵キャラクターだ。
その後制作中に色々あって結局人族しか選べなくなり、この無効系スキルを持ったキャラは全部没、ルルブに記載されないで消えて行った。
その時の一例として出されたのがサルナードだ。
ご丁寧にラフ画まで掲載されていたからよく覚えている。
ファンタジーの悪魔そのものみたいな姿のくせに普通の剣を使って戦う辺り没キャラ特有の雰囲気しか決まってないような感じがする。
「見た目通りお前馬鹿力だなぁ?まぁどんだけお前が火力あろうが効かないんだが…」
「たまたま持ってたスキルでよくもまぁイキがれるものだな」
「煽りかましてる場合か?お前ら何一つ俺にダメージ与えられないんだぞ?」
「ダメージを与えられなくても衝撃は消せる訳では無いようだな」
「無駄に目ざといなお前…腹立ってきたからお望み通りお前から殺してやらぁ!」
煽り耐性は低いようで助かった。
ミロネ達の方に向かわれたら止めるのが難しい。
こちらに意識が向かい続けるようにしなければならない。
…だがどうする。
唯一、こちらに人族で無い奴がいるが─。
「すまんが俺に期待しないでくれ!メカニックだから碌に戦った事ねぇんだわ!馬になった後も基本逃げてた!だから無理!」
まぁ最初から期待してない。
てかメカニックなんてアナケンに無いだろ…科学なんて発展してないんだし。
それに戦えたとて、くろまるだけで倒し切れるかと言われれば否だ。
俺とカロルで勝つしか無い。
「時間稼ぎしか出来ねぇのか!?お前らの死ぬ時間が先延ばしになるだけだぜ?」
「喋る暇があるなら…さっさと倒してみろ!」
サルナードの剣を短剣で押し返す。
やはり、パワーはそこまでじゃない。
レベルも6、7程度だろう。
だが何よりもダメージ無効スキルだ。
こちらは防戦一方、相手は被弾を考えずにいくらでも突っ込んでくる。
ジリ貧だ。
ダメージを与えられない以上、俺のスキルはほぼ死んでるようなものだ・・・。
「カロル!【パリィ】で奴の攻撃を凌ぐのを最優先にしてくれ!絶対に後ろには通すな!」
「分かった!…でもどうする!?このままずっと耐えたとて…!」
「お前ら今まで殺してきた人族と同じような事してんな、過ちは繰り返すねぇ」
どうする…何か奴にどうにかダメージを通る方法は…。
ミロネにアシッドポーションを投げてもらうか?
だがそれも効くとは思えない。
ミレッラの【神の威令】を使う?
論外だ、5秒止めたとて逃げ切れる訳が無い。
絞り出せ、アナケンの知識を。
一見無理な盤面でも戦法で捲ってきただろ!
人族による攻撃でダメージを受けない、攻撃、攻撃…。
待てよ?
「(確か出発前に買った王都までの地図では近くに…)」
やるしか…ないか。
構えながらカロルの近くに寄る。
そのままサルナードに聞こえないくらいの声で囁く。
「一つ、策を思いついた」
「…!それはどんな…」
「ああ、カロル次第ではあるが…」
「やってみせるさ…!何をすればいいんだい!?」
「俺をレイピアで刺した後、西に向かって死ぬ気で走れ」
「………え?」