TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
「やっぱり戦う…!」
「リルラールちゃんダメ!ニンジャさんに魔法は使うなって言われたでしょ!」
「でも…」
「落ち着きなさいな、さっきの魔法が効かなかった時点で無駄撃ちは避けるべきですわ…くろまる、貴方本当に戦えないので?」
「…いや悪いとは思ってるからな?戦えるなら戦いてぇけどよぉ…」
「仕方ありませんわね…これが終わったら毎日特訓ですわ!」
馬車からニンジャさん達の戦いを伺う。
魔族の攻撃を防いで隙を見てカロルさんが攻撃したけど全然効いていない。
自己申告していた人族からダメージを受けないのは本当のようだ。
「ダメージが無理なら…目潰しとかも効かないんでしょうか…一応アシッドポーションを顔面に当てれますけど…」
「効かなかった時2人の邪魔になると思う…」
「そう、だよね…」
「というかお前ここから当てれんの?あの魔族の顔面に?」
「はい、私【スロウマスター】持ってるので大体のものは狙った所に当てれます。…まぁ力は無いので武器とかは投げれないんですけど…」
「そういえばミロネ様がポーションを投げる時百発百中でしたわね…」
後続の回復役としては有り難いスキルだけど…ヒールポーションをニンジャさんに投げるべきだろうか。
でも急にポーションが当たった時の衝撃が来たら集中が途切れかねない。
足を引っ張る訳には、いかない。
「何か…何か考えないと…!」
馬車から出て邪魔にならない方向から魔族に虚脱のポーションを投げてみようか。
直接ぶつけると攻撃になりそうだし…地面に当てて中身を飛散させる形で。
「でもリルラールちゃんが…」
頼まれた以上、リルラールちゃんから目を離せない。
すぐにでも戦ってしまいそうな勢いだ。
手を離してはいけない。
「(また…また役に立てない…?)」
焦燥感が自分を支配し始める。
決してそんな事は誰も思っていない。
皆、私を回復役として頼ってくれている。
分かっている、でも─。
そう思いながら戦っている2人の方を見た。
見てしまった。
カロルさんがニンジャさんをレイピアで刺している所を。
「え…?」
◇
「あぁ?なんだ?」
目の前でいきなり細い金髪がニンジャ・カウンターの左足を刺しやがった。
ニンジャ•カウンターの足から血が流れる。
「恐怖で頭おかしくなったのか?可哀想に…仲間に刺されるなんて辛いよなぁ…ギャハ!」
「………【クイックムーブ】!」
細身の金髪はニンジャ・カウンターを刺したレイピアを抜いた後、なんとこちらに背中を見せて西へ走り去っていった。
「…おかしいな、お前には仲間が居るって聞いてたんだが…普段の行いが悪いんじゃ無いか?刺された挙句囮にされて逃げられるなんてよぉ!」
「カロル…」
「しかし拍子抜けだぜ、わざわざ俺に頼んでくるもんだから相当強い奴なのかと思ったが…俺の考えすぎだったな」
「…誰に依頼されたんだ?知らないまま死ぬのは…嫌だ…」
「ブハハハハ!そうだよなそうだよな!俺ももし死ぬって時に何もわからんまま死ぬのはごめんだ!教えてやるさ!」
哀れな男に冥土の土産をくれてやる。
背後の女共も大した事ない奴らだ、手を抜いてもいいだろう。
「お前ら聖女の手紙貰ったから王都に向かってたんだろ?だがざぁんねん!完全に筒抜け!もう既に正道教会の人員殆どが魔族に置き換わってんのさ!」
「王都に…魔族が…!?何のために…!」
「そんなの決まってんだろ?漸く目処が付いたのさ…お前ら人族を皆殺しに出来る方法がなぁ!サハギンなどの人族に擦り寄る雑魚もついでに殺せるし、一石二鳥ってやつさ!」
人族に敵対的な魔族の殆どが参加する一大イベント、それがこれから、王都を起点に始まる!
「俺達は蘇らせる!太古の昔、お前ら人族に封印されちまった最強最悪の化け物!世界の邪悪が集まり誕生した生きとし生けるもの全てを憎む災厄、【マノ・トユ】をなぁ!」
「【マノ・トユ】…!?バカな、あれの封印を解くだと!?そんな事をすればお前ら魔族とて…」
「勿論そのまんま封印を解く訳じゃねぇ、そんなんやったら盛大な自殺やってるだけだからな…。完成したんだよ、【マノ・トユ】を完全に操れる術式がなぁ!」
「何と言う事だ…!」
かーっ!いいねぇその絶望顔!
やっぱ人族狩ってる時に見れるこの表情たまんねぇわ。
「わざわざ呼び出されたと思ったら援軍のお前を殺してこいって今回の魔族の軍を率いるトップから直々に頼まれてな…まあ俺も人族殺したいし引き受けたわけよ」
「4桁は人族殺してるけど全然減らねぇだろ?お前ら数だけは多いからなぁ…俺1人がどんだけ狩りをしても追っつかないわけだ」
「だが今回の策が上手くいけば人族は滅ぶ!そんでもって魔族がこの世界の支配者さ!素晴らしいだろ?【マノ・トユ】ならあの白銀のリティアでも勝てねぇだろ!いくら奴が強くても限度があるからな!」
「………」
最早言葉も出ないってか?
まぁそりゃそうか、何せ知らない間に人族が崖っぷちな訳だしな。
「王都に魔族を潜入させているのは…何でだ…?」
「さぁ?俺もそこまでは聞いてねぇな、やるならさっさと攻め込めばいいと思ってたんだが…まぁ上には上の考えがあるんだろ。実際【マノ・トユ】復活には大量の人族が必要になるとか言ってたし…それ関係じゃね?」
ニンジャ・カウンターにゆっくり近づく。
冥土の土産は終わりだ、こんなにくれてやるなんて俺めっちゃいい奴だな。
「さぁて、時間だ。最後に何か言い残す事あるか?」
「…そうだな、なら─」
「おお、何だ何だ?」
「お前の負けだ、サルナード」
次の瞬間、ニンジャ•カウンターの左腕の腕輪から出た鎖に、俺は拘束された。
◇
「おー!こんな手がまだあったのか!その腕輪くっそ珍しいやつだな…【デスマッチ・チェーンリング】か?いいもん持ってるなぁ、お前殺したら貰うわ」
両腕諸共、サルナードを拘束することが出来た。
奴が完全に油断してくれてて助かった。
「聞こえなかったか?お前の負けだぞ」
「あー可哀想可哀想!たかだか縛れたくらいで勝ちを確信するほど追い詰めちまってたか〜。悪い悪い」
「全く抜け出せない分際でよくもまぁベラベラ喋り続けれるものだな」
「いやいや、拘束はされたぞ?でもだから何?としか言えんわな。お前もしかしてこのまま鎖出し続けて何とかしようとか思ってんの?無理無理!」
「…【デスマッチ・チェーンリング】は自在に鎖を出せるが、それは自分の魔力を変換している。私の魔力が切れれば鎖も出せない」
「何だ知ってんじゃん、確かに【デスマッチ・チェーンリング】は一度鎖で縛ったら抜けられねぇよ、一定時間はな?筋力バカなお前と俺じゃお前が俺の事を引き寄せれる訳だが…お前の攻撃は効かないんだぜ?忘れちゃったのかな???」
「この状態で私が【復讐者】を使えばどうなると思う?」
「あ?【復讐者】って確か攻撃与えてきた奴に隣接するスキルだろ。俺の近くに来てどうすんだお前、アホか?」
「何を言っているんだ?」
「あ?」
「…は?」
「【復讐者】」
スキルが発動する。
【復讐者】はサルナードが言った通り、最後に自身に攻撃を与えた相手に隣接するスキル。
最後に与えたカロルは既に西に走っている。
つまり─。
ビュン!
俺の体は高速でカロルの走った方向に移動し始める。
そして当然、鎖で拘束しているサルナードもその移動に抗えない。
「うおおおおおおおおお!?」
鎖は拘束している状態でも伸ばすことが出来る。
奴から距離を空けつつ、手元の鎖を掴んで地面に叩きつける。
「ぶべっ!」
ザリザリザリザリザリ!
サルナードは前に倒れ込む形で引き摺られていく。
地面がサルナードの顔を削る音がするが─。
「ざ、残念だったな!考えた方だがこれもお前が干渉している以上、人族の攻撃!俺には効かない!」
だろうな。
元から期待していない。
これはただの鬱憤晴らしだ。
こいつの調子に乗っている顔に非常に腹が立ったからやってるだけである。
「ニンジャ!!!」
カロルの声が聞こえる、なら今だ。
俺は【復讐者】の使用をキャンセルする。
スキルは自分の意思で途中キャンセルできるのだ。
基本的にはそんな事しても意味が無いのだが…今は違う。
俺とサルナードは今高速で移動している状態。
ここでスキルを切っても慣性は消えない。
俺達はカロルの隣を横切ってその先の─。
崖から飛び出した。
「………は?」
サルナードが抜けた声をあげるがもう遅い。
俺もサルナードも崖から飛び降りた。
なら、次に俺達に起こるのは当然、落下だ。
「な、な、な、何考えてんだテメェェェェ!!!」
サルナードの叫び声と共に落下し始める。
軽く下を見る。
地図にあった通りかなりの高さだ。
大体300mはあるのでは無いだろうか。
ちなみに地面はしっかり岩だ。
「人間である以上私達では殺せないんでな…この世界の
「な…!」
「さて、人族からダメージを受けないお前は
鎖を引き寄せてサルナードが下になるように背中にしがみつく。
その際、奴の生えてる翼を思いっきり掴んだ。
下手に飛ぼうとして勢いを減らされたら困るからな。
「お前も死ぬんだぞ!分かってんのか!?」
「覚悟の上さ…!」
「ち、畜生がァァァァァァァ!!!」
俺の体重とサルナードの体重が合わさって更に落下速度が上昇する。
200、100、50とどんどん地面が近くなっていく。
なら、もういいか。
サルナードの拘束を解いて【復讐者】をもう一度使う。
当然、俺に最後に攻撃したのはカロルから更新されていない。
スキルによって俺は高速で浮かび上がっていく。
数秒後─。
グシャァァァ!
音がした地面に目線をやる。
そこには魔族の黒い血と肉片が岩に散乱していた。