TRPGしてたら自キャラになった・・・特化ビルドの一発屋で。 作:水道館
ミロネの話を纏めると
・自分は何度も公式クエストをループさせられてた。
・一挙一動、全ての行動に自分の意志が無かった。
・様々な冒険者に盾にされたり巻き添えに攻撃されたりしていた
・でも俺がオーガを倒したら糸が切れて操られなくなった。
こう言うことになる。
どういう事だよ。
お前は何を言っているんだと言わざるを得ないが、信じるといった手前否定はできない。
一応ミロネに非道を働いていた連中の事を聞くと、その連中は毎回顔ぶれが変わってやることも変わる。
終わった後は居なくなる。
そして今は居ないということだ。
正直、今ここを考えても答えは出なさそうなので一旦スルー。
問題なのは【糸】だ。
状況的に見て、ミロネに付いていた【糸】がループの原因だと思われるがそもそもその【糸】は何だという話である。
ミロネを操り人形にしていた目に見えない概念的な【糸】。
本人も「ついていたような」とハッキリしない。
まぁ知覚できないんだからそりゃそうか。
ひとまずその【糸】が無くなった以上、操られることが無くなった訳だ。
じゃあその【糸】を切れる俺はなんなんだ。
そしてその条件は。
「(もしかして・・・公式シナリオをクリアする、なのか?)」
ミロネもカロルも「冒険者をオーガから救い出せ」に登場するNPCだ。
他の公式シナリオにも、公式NPCは出てくる。
つまり、その人たちが【糸】によって操られている。
不本意な終わり方を何度も強制させられていた人を、俺がちゃんとクリアすることでそこから解放できる。
俺にはその力がある。
てことは依頼を受けるとき光っていた───。
「これってそういう事だったんだな」
机の上に置いていたギルドカードを手に取る。
やたらと光っていた【異界の救世主】が、ループに捕らわれている人を助けるスキル。
「俺である必要・・・ある?」
「あります!!!」
「すまない、今のは独り言だ。気にしないでくれ」
やべぇミロネ居たのにうっかり呟いてしまった。
口には気を付けないと。
「(まさか俺は別世界の人間だなんて言ってもなぁ)」
信じてもらえそうではあるが・・・。
変に混乱させないだろうか。
もしかしたらワンチャン医務室に縛り付けられるかもしれない。
…とりあえず保留で。
「・・・ん?」
手に持ってたギルドカードを見ると「更新してください」と文字が出ていた。
冷静に考えてこの謎技術は何?
てか依頼に行く前に更新したばかりだろ。
Windowsかよ。
「どうしました?」
「いや前に更新したばかりなのにまた更新しろとギルドカードがな」
「あぁ!それならきっとレベルが上がったんです!」
「レベルが?」
てことはこの更新はアナケンで言うところのキャラ成長なのか。
もしかしたら前に更新を求められたのは【異界の救世主】が生えてきたからなのかも。
「大丈夫そうでしたら後で更新してもらいましょう。ここギルドの医務室ですし」
「ここギルドだったのか・・・3日も占領しているなら早く出た方よさそうだ」
「む、無理したらダメですよ!」
「傷はミロネが治してくれただろう、大丈夫だ」
【塩屋幸次】ならダメなんだろうが今の俺は【ニンジャ・カウンター】だ。
この世界で生まれたという設定であるこのキャラの体はやたらとタフだ。
多分俺の世界の人間とは作り方が違うのだろう。
そりゃ魔法もスキルもあるからな、同じだったら使えないか。
「よっと・・・うん、問題ない」
「よかった・・・で、でも少しでも変だったら教えてくださいね!」
「主治医の言うことには従うさ」
「主治医!?・・・ニンジャサンノシュジイ・・・」
さて、ひとまずリハビリもかねて少し歩くか。
分からないことだらけで今でも困惑が頭の中を占めているが、少しづつ解決していこう。
そのうち帰る方法も見つかるかもしれないしな。
親から前向きに生きなさいと教わって生きているのだ。
前に歩いてさえいれば何とかなるだろう。
そう決意しながら医務室の扉を開ける。
「zzz・・・・・」
「・・・・・・・・」
ドアを開けた先に居たのは寝相が悪すぎるカロルだった。
どのくらい悪いかというと座っていたであろう椅子に座られている。
「・・・ん?ハッ!ニンジャ、目覚めたんだね…僕を救ってくれて・・・ありがとう!」
「どこの世界にその体勢で礼をするやつが居るんだよ」
ここの世界だよって?
そっかぁ。
◇
「次の方どうぞ…お元気そうでなによりです」
「医務室を占領して悪かった。ありがとう」
「あ・・・すいません、何のことだか・・・」
「・・・なるほど、分かった」
内緒な!という事なのだろう。
表立っていうと規則が云々というのはこの世界でも変わらないらしい。
「それで…御用件は?」
「ああ、実はまたギルドカードが更新しろとな・・・」
「レベルが上がったんですね、おめでとうございます」
「辛勝もいいところだがな」
「勝ちゃいいんですよ勝ちゃ、負ければゴミです」
「そうだろうか・・・そうかもな・・・」
「念のため言いますけど、生きていれば勝ちなんです、どれだけ偉大であろうと名誉だろうと死ねば負けなんです。…私の持論ですけど」
なんか思ってたより過激だなこの受付嬢。
だが・・・負ければ死ぬこの世界において、生きていれば勝ちというのは納得できる。
そう考えるとファンタジー世界ってただの世紀末だな。
転生したいとか言っている奴、今すぐ変わってくれよ。
そんでオーガのこん棒を頭に直撃してくれ。
俺の代わりに。
「それではお預かりしますね・・・お二人はどうですか?」
「え、私ですか?」
「そういえばあれからギルドカード見てないね」
二人がギルドカードを取り出すとそこには「更新してください」の文字があった。
「どうやらみんなレベルが上がったみたいだな」
「まぁ格上だったからね・・・」
「上がるのは良いことですもんね!」
違いない。
シンプルに強くなるのは大切だ。
アナケンではレベルが上がるとHPとMPの最大値が上がって好きな能力に3ポイントずつ割り振れるシステムだ。
さらに習得可能なスキルを一つ覚えることが出来る。
「(この世界だと・・・どうなってんだ?)」
割り振る?どう割り振るんだ?ギルドカードで割り振れんのか?
スキルって念じれば取れるのか?
それとも誰かに修行を付けてもらうとかなのか?
「更新終わりました、お返ししますね」
「ああ、ありがとう」
まぁ見れば分かるか。
割り振り・・・そうだな。
確かにこの【ニンジャ・カウンター】の構成は好きではあるが・・・。
「(流石に、この状況でネタに走るほど頭のネジ飛んでないからな)」
無難なのは取り合えず素早さだろうか。
実際戦闘してみて気づいたがアナケンの素早さとこっちの素早さは優先度が天と地ほど違う。
何せターン制のアナケンと違ってこっちは常に動き続けるのだ。
そして素早さは単純に被弾を減らせる。
俺の今のスキルと相性はそんなによくないけど・・・背に腹は代えられん。
毎回毎回今回みたいに死にかけるわけにはいかないのだ。
「(スキルも別の攻撃手段を取ろう)」
【仕返しの刃】は弱すぎるスキルでは無いのだがやっぱ使いづらい。
攻撃手段は多いほうがいいだろう。
遠距離とかいいんじゃないか?
弓とか良さそうだ。
遠くからチクチクしてるだけで倒せそう。
「(さぁてどれどれ~)」
受け取ったギルドカードを見る。
そこには──。
名前「ニンジャ・カウンター」
レベル・・・2
スキル・・・【仕返しの刃】【復讐者】【鋼鉄の意志】【背水の陣】【異界の救世主2/8】
「・・・・・・・・・・・ゑ?」
既にスキルが追加されていた。
なんで?
なんか誤操作したか?
戻るボタンとかありませんか?
「あ!やったぁ!【ポーション効果増化】です!」
「僕は【パリィ】だったよ・・・使いこなせるかなぁ」
二人の声を聞いて体が固まる。
「やったぁ!」も「使いこなせるかなぁ」も。
自分で取っていたら、言わないだろう。
「(ま、まさか・・・)」
いや待て、決めつけはよくない。
何か行き違いがあったのかもしれない。
きっとそうだ。
念のため、念のため聞いておこう。
「すまない、初レベルアップで疎いのだが・・・レベルが上がるとどうなるんだ?」
「え?ああ、そうですよね。初めて上がったなら知らないですよね」
ミロネがニコニコしながらこう言った。
「レベルが上がると、その人が生まれた時から覚える事が決まっているスキルを一つ解放されるんです!能力も上がるのが決まっているらしいです!生まれつきって事ですね!」
生まれつき。
決まっている。
【背水の陣】は俺が【ニンジャ・カウンター】のレベルが上がった時に取ったスキル。
ステータスも当然、力と体力にぶっぱ。
という事はつまり。
【ニンジャ・カウンター】(レベル最大)のキャラシ通り覚えるって事・・・?
「(【仕返しの刃】の為の強化系スキルしか無ぇぇぇ!!!!!)」
過去の俺、悪いことは言わない。
今すぐそのキャラシを消してくれ。
◇
「だ、大丈夫ですか・・・」
「さっきからずっと項垂れているが・・・」
「気にしないでくれ、現実に打ちのめされているだけなんだ」
「それ大丈夫じゃないですよね!?」
今後の戦闘で俺は通常攻撃か【仕返しの刃】の二つだけで戦うことが確定した。
しかも能力だってミロネの言ってることが正しいなら、俺が今後上がるステータスは力とHPだけである。
つまりこれからも魔物と殴り合い宇宙しないといけないのだ。
そら項垂れるやろ。
「本当に大丈夫だ、気にしないでくれ」
「それならいいですけど・・・」
まぁ唯一の救いはこの世界がTRPGそのものでは無いことだ。
やろうと思えばオーガがこん棒を投擲したように、自分で考えた攻撃だってできるだろう。
難易度が跳ね上がった気がするが、見なかったことにする。
「それで・・・これからどうするんだい?」
「これから・・・か」
さっきギルドカードを見た時、【背水の陣】以外にも変化している箇所があった。
おもむろにカードを取り出し、一番下の項目を見る。
【異界の救世主 2/8】
2/8、まさか日付なんてことは無いだろう。
これは【糸】に縛られていた人の事・・だと思う。
2が二人の事、残り六人。
今だ尚、この世界で終わらないシナリオのNPCをさせられている。
「(全部助けろって事なんだろ、どうせ)」
まんまだもん、名前が。
少しは捻ったらいいんじゃないか?
俺と一緒に名前メーカー使おうや。
「(・・・そりゃ助けれるんだったら助けたいけども)」
ハッキリ言って地獄だろう。
何度も何度も同じ動きをさせられて。
やりたくもない事させられ続けて。
狂うことも死んで終わることもできない。
それを助けることが出来るのは現状俺だけ。
自分のできる範囲というのが付くが、助けたくはある。
でもそれは公式シナリオをクリアする必要がある。
今回の「冒険者をオーガから救い出せ」は難易度が高い意味でのクソシナリオだが、公式シナリオにはもっとやばい特級呪物がある。
アナケンの公式はシナリオを作るのだけは壊滅的なのだ。
俺もTRPG仲間も二度とやりたくねぇと言わせたクソシナリオが複数。
「(クリアできるのか・・・?)」
俺だけで、公式シナリオを?
仲間とガチ構成組んで何とかクリアしたあのシナリオ共を?
深夜3時までかかって必死こいてクリアできてGMもPLも憔悴しきったあれを?
「(怖ぇ・・・)」
逃げ出したい。
何だったらこの街にずっと滞在して外に出たくない。
でもやらないと帰る手がかりを手放すことになる。
仕事も家族も友人も全て捨てることになる。
そう思ってた時───。
そっと、俺の手を握る人が居た。
「・・・・・・・・・」
「ミロネ・・・」
もしかして震えていたのだろうか。
ミロネが俺の右手を自身の両手で包み込んでいた。
「ニンジャさん」
「・・・なんだろうか」
「大丈夫です」
「?何が───」
「私はニンジャさんの味方です」
「味方・・・?」
「はい」
握る力が強くなる。
「あなたに助けられて、私は救われました」
「真っ暗な暗闇の中に居た私を、地獄に居た私を」
「返したいんです、少しでも。この恩を」
「あなたが今、何に怯えているのか、それは分からないけれど─」
「例え世界の全てがあなたの敵になっても、私はあなたの味方です」
「私の力が少しでもあなたの役に立つなら、私はいくらでも貸します」
「それくらい、私はあなたに感謝しているんですよ、ニンジャさん。だから」
「私を─あなたの仲間にしてください」
─────────。
「僕も同じ思いだよニンジャ」
「カロル・・・」
「ただでさえ僕は君に恩を借り過ぎてるんだ。利息が付く前に返済させて欲しいな」
そうか・・・。
少し俺は、深く考えすぎていたのかもしれない。
一人で無理なら、誰かに頼る。
当たり前のことを忘れていた。
「…二人のように、まだこの世界には【糸】に縛られている者がいる」
「その人達を助けたいと思っている」
「それが私の─
「でも一人では無理だ、だから」
「俺と共に、来てほしい」
二人は顔を見合わせた後、満面の笑顔でこう言った。
「「喜んで!!!」」
この日、俺はこの世界で初めて、仲間が出来た。
だって私達みんな・・・仲間だもんげ!