ホビーアニメじゃないらしい   作:こまつな

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第22話

 今日はなんともなしに、街でひとりでぷらぷらしていた。

 

 友人たちとも毎日都合が合うわけでもなく、たまにひとりになりたい時だってある。

 

 本日は後者のパターン。

 特に目的地を定めることもなく、ウィンドウショッピングをしながら適当に歩いていた。

 

 甘いものを口に入れてリフレッシュするでもなく、今日に限って絡んでくる辻プレイヤーもおらず、気がついたときには普段足を運ばないような場所にまで辿り着いていた。

 

 それでも、足の向かう先にカードショップがあるのはプレイヤーの性なのか。

 単にこの世界のカドショがコンビニより多いレベルで大量展開しているだけなのか。

 

 自動でもないガラスのドアを潜り抜けひょっこりと中を覗いてみれば、CCCの直営店とは違う個人経営のこじんまりとしたお店だった。

 

 この世界ではカードショップにもそれぞれ特色がある。

 一番多いのがCCC直轄のチェーン店なのだが、画一的過ぎて地元の色みたいなものはあんまりない。

 対して個人経営のお店は、地元の人に愛されて現地民がたまり場にしていることが多い。

 宗教施設に併設されたお店はまだ行ったことがないけれど、精霊関係の対応が売りなのだそうだ。

 

 他にも飲食店やテーマパークの売店にだってパックは置いてある。

 ササキさんのパン屋さんもそうなのだが、その店舗に関連したエキスパンションが売っているというのも大きな特徴だろう。

 

 その関係で飲食物関係のカテゴリというのはこの世界では結構数が多い。

 尻に挟むタイプの代物は流石に世界にひとつだけなのだが、そのせいで他のカテゴリのサーチカードに対応していることが発覚した例のバゲットはまたしても勢力を伸ばしていた。

 本当にひどい世界である。

 

 CCC直営店で調べれば個別に取り寄せてもらうことも可能なのだが、ふらりと寄ったお店でそういった一期一会のテーマパックを購入してみるというのも乙なものだろう。

 

 他のお客さんもおらず、ショーウィンドウに並んでいるカードにも、どうにもピンとくるものがない。

 白髭を生やした店主のお爺さんがレジで待機しているのを見ると、冷やかしだけで帰るのもなんか悪いことをした気分になりそうで。

 

 ストレージでも漁って時間潰そうかなぁと店内を見回してみれば、この店と関連のあるだろうエキスパンションが視界に入った。

 なのだけど、どうにもそのパッケージには違和感というか、作りの雑さが見て取れて。

 

「……オリパ?」

 

 市販されている未開封のパックではなく、店員さんの良心が試されると噂の例のアレであった。

 

「それに興味があるのかい?」

 

 私の呟きを目敏く聞きつけたのか、おじいさんが声をかけてきた。

 

 店内にBGMがあるわけでもなく、喧騒の中にいるわけでもなく。

 私の高い声は彼の耳にも届いていたのだろう。

 

「あぁ、すみません。普段はCCCの直営店でパック買ってるので、どうにも珍しくて」

「いやいや、気にすることはない。……わたしの使っていたカードが持ち主を変えて活躍する。それを想像するのが、老い先短い爺の老後の楽しみなんだよ」

「長生きしそうなお爺さんだなぁ」

「はっはっはっ」

 

 そういうことならと、手に取っていたオリパを元の棚に戻す。

 

「……おかしいな? これを言うとみんな買って行ってくれるものなんだが……」

「あー、私のデッキって混ぜ物相手を選ぶので。活躍させてあげられそうにないんでやめとこうかと」

「ふむ? ……最近流行りの降臨型かな? 自分がバトルフィールドで戦うとなると忙しくなるからなぁ……」

「風評被害なんでやめてもらえます???」

 

 お爺さんも他に客が居なくて暇なのか、じゃあデッキ診断でもしてみようという流れになり、特に断る理由もなかったのでフリースペースで基本的な流れを展開する。

 

「……確かにこれは、気難しいカテゴリだね」

「なんか一番手に馴染んだのがこれだったんで。もう慣れましたけどねぇ」

 

 私の使っている【システムエラー】はかなり、結構、非常に……特殊も特殊なカテゴリである。

 基本的な仕様として、基幹となるメインエンジンを起動すると【システムエラー】カテゴリ以外の使用に制限が付く。

 更にルール上ターンに一度は可能なモンスターの招来権を失うデメリットもあるため、根本的な部分で混ぜ物に向いていない。

 

 強いか弱いかで聞かれたら、手に馴染むとだけ。

 この世界のカードはデメリットが重いのであれば釣り合いを取るようにスペックが高くなる傾向にある。

 だけどスロースターターであるため耐久型のデッキとしても序盤はほぼ素通しに近いという致命的過ぎる弱点も抱えている。

 

 それだけダメな部分が際立っているので、回り出すと手が付けられなくなるデッキではあるのだが。

 

 速攻タイプの強者であれば、たぶんこのデッキはただのカカシだ。

 最低限の準備が整う前にフルボッコにされてGGする未来があまりにも容易に想像できる。

 

 ならなんでこのデッキを使っているのかと聞かれれば……未練のようなものだろう。

 

 私にだって過去はある。

 元の世界に居た頃は色々あったのだ。

 それこそこっちの世界にやって来る原因となった、故郷の家族や友人たちを残してでも向こうへ帰る気が失せるような、くだらない事件とかが。

 

「じーちゃん! カード買いに来たぜ!」

 

 ちょっとセンチになっていたところで、ずびしと扉が開かれた。

 やってきたのは小学生くらいの男の子で、手にはお小遣いであろうなけなしの硬貨が握られている。

 

 あんな時期もあったなぁとしんみりした感情を湛えて少年の顔を穏やかに眺めていると。

 

「……あっ! うんこまんのおねーちゃんと一緒に居た人だ!」

「おいクソガキ。その覚え方は流石に失礼だと思わねーのか」

 

 情緒が一気に吹き飛んで舐め腐った野郎に対して殺意さえ沸いてきた。

 我ながら沸点が……いや、この物言いは女子なら誰だってキレていいだろ。

 

「えー、だって俺、ねーちゃんの名前も知らねーし」

「ウィーだよ。ウィー・マイン。せめて名前で呼んでちょうだい」

「わかった! ウィーねーちゃん!」

「素直でよろしい」

 

 お爺さんのショップを拠点にしている地元民は、かつて野生の魔王を返り討ちにしていた少年だった。

 

「おい小僧! 我を置いて行くな! ぜぇ……はぁ……くそっ、分かっていたことだが軟弱過ぎるではないかこの肉の器は……っ!」

 

 そして彼に続くように中二病っぽい同年代の女子が入店してくる。

 紫髪赤眼褐色肌ゴスロリツインテ眼帯右手包帯とフル装備の重症患者である。

 

「……貴様はっ!?」

 

 その子は私の顔を見るなりキョロキョロと周囲を見渡し始め、けれども結局何も見つけられなかったかのように、用心深くこちらを見据えている。

 

 ははーん、これはアレだな?

 テンプレもテンプレで使い古されてるくらいよくあるやつだな???

 

「ねえ、あの子って君が撃退した魔王で合ってる?」

「あぁ、負けっぱなしは我慢できないって戻ってきたんだ。ま、俺の敵じゃなかったけどな!」

「ええい黙れ黙れ! 一度や二度の敗北で屈する我ではない! 必ず貴様に吠え面をかかせてやるからな……!」

 

 うーん青春青春。

 

 何も分かってないチビスケとそんな相手に対抗心を燃やす元魔王。

 今日はこれが見られただけでも、ふらついてた価値があったかなぁ。

 

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