フェイトオブエクシリア   作:シュキヨ

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クレインたちとの共闘

「お兄様!」

 

 カラハ・シャールに辿り着いたジュードたちを待っていたのは、クレインの帰りを心配していたドロッセルと兵士たちだった。街の入り口に姿を見せるやいなや、彼らは一斉に駆け寄ってくる。

 

「お怪我はありませんでしたか?!」

 

「僕は大丈夫だ。それより、この人たちを早く病院へ」

 

 クレインが指差した先では、徴集されていた住民たちが疲弊し、呻き声を漏らしている。

 

「うう……」

 

「は、はい!」

 

 兵士たちは慌てて動き、負傷した住民を支えながらその場を去っていく。

 

「皆さんはこちらへ」

 

 ドロッセルが促すと、ジュードたちは「ありがとうございます」と深く礼を述べ、彼女の案内でクレインの家へと足を運んだ。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「徴集された民はみな、命に別状はないようです」

 

 少しの休息をとったクレインが報告すると、部屋の空気はようやく安堵に包まれる。

 

「みなさん、本当にありがとうございました」

 

「私からも、お礼を申し上げます。ありがとうございました」

 

 クレインとドロッセルの感謝に、ジュードは柔らかく微笑んだ。

 

「みんな無事でよかったです」

 

 和やかな空気の中、しかしミラが鋭い声音で割って入る。

 

「仲良しごっこをするために助けた訳じゃないぞ、ジュード」

「あ、うん。そうだね」

 

 二人のやり取りにクレインが首をかしげる。

 

「……どういうことでしょう?」

「実は……」

 

 ジュードが事情を語り始めると、クレインは静かに頷き、表情を引き締めた。

 

「なるほど……それで僕の力を借りようと」

「ああ。どうにかできないか?」

「勿論、協力させていただきますよ。おそらく、あなた方がイル・ファンの研究所で見たものは、ナハティガルが関係しているでしょうし」

「やっぱりそうでしょうか」

 

 ジュードの問いに、クレインは確信めいた口調で答えた。

 

「ええ。バーミア峡谷にあった例の機械。それと同程度の物をイル・ファンの研究所で見たというのであれば、ナハティガルが関わっているのは明白。そもそも、奴が王位についてからのラ・シュガルは、常にキナ臭いものを感じますから」

 

「そう、ですよね……」と呟くジュードの横で、マシュが問いを挟む。

 

「ちなみにMr.クレインは、ラ・シュガルの中でも権力を持つ六家のお方。何か情報を知らされたりはしていないのでしょうか?」

「残念ながら何も……」

 

 クレインが首を振ると、ローエンが補足するように言葉を継いだ。

 

「今のナハティガルにとって旦那様は、いわば目の上のこぶ。その血筋は勿論、カラハ・シャールという大きな街の領主という点においても。ですので、クレイン様は騎士王(セイバー)さん同様、厄介な相手との認識でしょうから、情報の共有はまずしないものかと」

 

「そうですね。人間から強制的にマナを吸いだし、新兵器を開発していたなんて、騎士王さんからも聞かされてはいませんでしたし」

 

 クレインの説明に、アルヴィンがにやりと笑う。

 

「へぇ? あの騎士様も知らないんだ。って、やっぱり二人は内通してた訳ね」

「ええ、勿論。私と同様、彼女もナハティガルには敵対的な姿勢ですから。おかげで、奴側の情報は綿密に伏せられてしまっているようですが」

 

「ナハティガル王はそこまでして何をしようと……」

「それは会えば分かる。なので、手を貸してほしい」

 

 ミラの真っ直ぐな視線を受け、クレインは頷いた。

 

「ええ、それは構わないのですが……ここからイル・ファンに向かうとなれば、ガンダラ要塞に向かうことになるかと」

「ガンダラ要塞?」

 

 ミラが問い返すと、ローエンが厳しい表情で説明を加える。

 

「このカラハ・シャールとイル・ファンとを繋ぐ要衝です。交易路の安全を守る、という名目で建設されましたが……どう考えても、王に逆らうシャール家とカラハ・シャールへの当てつけでしょう」

「では、そこに向かえばいいのだな」

「え! もういくのー?」

 

 ティポの驚きに、クレインがすぐさま制した。

 

「お待ちください。ガンダラ要塞を、どう抜けるつもりなんですか?」

 

 ミラは、きっぱりと言い放った。

「ん? 普通に通るが?」

 

 だが、クレインは首を横に振る。

「残念ですが、今あそこにはナハティガルの指示のもと、大勢の兵士が集まっていると聞きます。ナハティガルに会うという目的はまだ残っていれば達成できるでしょうが……その《クルスニクの槍》という物が目的というのであれば、押し通るよりほかありません」

 

 ジュードは険しい表情を浮かべた。

「それなら、この数じゃ無理だね」

 

「はい。カラハ・シャールの兵士たちを総動員しても無事でいられるかどうか……」

 クレインの言葉に、場に重い空気が落ちる。

 

「む……ではどうすれば」

 ミラは眉をひそめる。

 

 ジュードが思案顔で口を開いた。

「一応、山間や海を経由すれば行けなくはないけど……流石に遠回りだよね」

 

 すぐさまマシュが補足する。

「はい。Mr.クレイン救出の道すがら調査したところによれば、大した整備もなされていないとのこと。であれば、サマンガン樹海以上の困難な踏破になることは予想されます」

 

 アルヴィンが肩を竦め、皮肉めいた笑みを浮かべる。

「それじゃあ、到着した頃にはボロボロで、下手すりゃすぐに返り討ちってな」

 

 ミラは黙考し、小さく息を吐いた。

「そうか……」

 

 そんな中、クレインが穏やかに告げる。

「ご安心ください。僕の手のものが既にガンダラ要塞に潜こんでおりますので、手配してうまく通り抜けられるようにしてみます」

 

 アルヴィンが目を細めて笑った。

「あら、準備の早いこって」

 

 ローエンが静かに付け加える。

「それだけ、今のナハティガルには不満を持つ者が多いということです」

 

 ジュードは一瞬迷いを見せつつも、クレインへと視線を向けた。

「なるほど。……でも、本当にいいんですか? 僕たちに協力したりして。こんなこと頼んでおいて言うのもおかしいんですけど……僕たち、軍に追われている身ですし」

 

 クレインは淡々と答える。

「構いませんよ。元々、我がシャール家はナハティガルに従順ではありませんし、それは向こうも知るところでしょうから。もっと言えば、先ほど軍に抗議し、兵をカラハ・シャールから退かせるよう手配したところでもありますので」

 

「つまり、これ以上軍や奴との関係は悪化しようがない、ということか」

「ええ。それにこれは助けていただいたお礼でもありますので、お気になさらず」

 

 アルヴィンが腕を組み、頷いた。

「……んじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうぜ。無策で要塞に突っ込むより何倍もマシだからな」

 

「そうか……そうだな。では頼む」

 ミラの声は、どこか安堵を含んでいた。

 

「お任せください。とはいえ、手配は上手くいってもしばらくはかかるでしょうから、それまではここに滞在なされるといい。ローエン、君は彼らと共にいてくれ。彼らのお世話も、その方がしやすいだろう」

「承知いたしました」

 

「わーい。まだドロッセル君といっぱいお話しできるねー」

 ティポがはしゃぐと、ドロッセルは頬を染めて微笑んだ。

「ふふふ。ええ、そうね」

 

 最後に、クレインは柔らかく言葉を添える。

「今日はもうお疲れでしょう。部屋を準備させておきます。休まれるのなら、おっしゃってください」

 

「お世話になります」

 ジュードが深く頭を下げると、場の空気はようやく落ち着きを取り戻した。

 

 ――こうして、一行は暫くの間、クレインの家に滞在することとなった。

お聞きしたいのですが、1話何文字ぐらいが読みやすいでしょうか?

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