フェイトオブエクシリア   作:シュキヨ

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ミラを追え

 激しい戦闘を終え、兵士たちを打ち倒したジュードたちは、荒い息を整えながら先を急ごうと、ミラが駆け抜けた扉の前に立つと力を込めて押す。

 

 しかし――。

 

「……あれ? 開かない?」

 

 眉をひそめるジュードに、ローエンが冷静に調べを入れる。

 

「どうやら、鍵をかけられてしまったようですね」

 

「そんな……! この先に、ミラが一人で行っちゃったのに……」

 焦りを隠せないジュード。ローエンは静かに言葉を添える。

「ご無理をされていないと良いのですが……」

 

 だがアルヴィンは肩をすくめ、皮肉めいた口調で吐き捨てた。

「あのお嬢さんが、遠慮とか考えると思う?」

 

「……だよね」ジュードは小さく頷く。「早く、ミラと合流しなきゃだけど……」

 

 一方で、背後では別の声が響く。

 

「ティポ! 起きて! ティポ!!」

 

 扉を前に悩む男三人を余所に、エリーゼは腕に抱いたティポを必死に揺さぶっていた。しかし、ぬいぐるみから返事はない。

 

 同じ頃、ドロッセルもまた声を張り上げていた。

 

「マシュ! マシュ!!」

 

 謎の装置に繋がれていた少女の拘束を解き放ちつつ体を揺さぶると、こちらはティポとは違い、すぐさま瞼を開けた。

 

「……っ。実験は……」

 

「実験? 実験って、今行われていたこと?」

 ドロッセルが問い返す。

 

 マシュは視線をさまよわせ、やがて彼らの存在に気づいたといったよう。

「……? おや? Ms.ドロッセル? それに皆さんも……」

 

「ったく、珍しく寝ぼけてんのな。お前」

 アルヴィンが茶化すように言えば、マシュは努めて平静に返事を返す。

「……なるほど。どうやら私は寝ぼけていたのですね」

 

 ドロッセルはなおも問いを重ねる。

「どうしてあなたはここに? 今まで何をされてたの?」

 

「……それは……」

 マシュは言葉を詰まらせた。

 

 その沈黙を埋めるように、アルヴィンが口を挟む。

「ま、奴らの目的なんて、今の俺たちにはわかんねぇだろうよ」

 

 そして、ぐっと視線を前に向ける。

「その目的を知るためにも、あの王様を追わなきゃだしな」

 

「それもそうね」

 ドロッセルは頷くが、マシュは何かを飲み込むように口を閉ざしていた。

 

「とりあえず、皆と合流できたのは良かったけど……ミラが……」

 ジュードが小さく呟いたその時――。

 

「ふむ。……みなさん、こちらへ」

 

 声をあげたのはローエンだった。ティポやマシュの元に集まっていた一同を振り返り、彼らは部屋の奥へと歩み出す。

 そこには制御装置らしき機械が鎮座していた。ローエンは指でその表面をなぞり、何かを発見した様子だ。

 

「これをご覧ください」

 

「なんだこれ? 何が書いてあんだ?」

 アルヴィンが覗き込む。

 

「えっと……何かの装置の制御をここでしてるってこと、かな?」

 ジュードが読み取ろうと試みると、ローエンが頷いた。

 

「ええ。おそらくはお嬢様方の拘束具や、この基地全体のエネルギーなどの運用を総括して行っているようです」

 

 ドロッセルは、自分の足首にはめられた黒い輪を示した。

「この呪環も?」

 

 ローエンが頷き、厳しい表情を浮かべる。

「はい。それを解除するにはパスワードが必要なのですが……残念ながら、彼らを逃してしまった今、それを知る術はありません」

 

 ジュードが思わず声を荒げる。

「それじゃあ、どうしたら……!」

 

「問題ありません」ローエンは静かに答え、前方の制御装置へ視線を移した。「幸い、この装置は他の施設内の制御を担う術式にも接続されているようです。おかげで、この術式を焼き切ってしまえば、呪環も、先ほどの扉のロックも外れ、人力での解放が可能になるはず」

 

 ジュードは息を呑む。「だけど、こんな大きな要塞の制御術式を……できるの?」

 

「私一人では」ローエンは微笑んだ。「ですから、私が魔法陣を展開します。皆さんはそこにマナを注いでください」

 

「わかったよ」ジュードが力強く応じる。仲間たちもそれぞれ頷いたが、何故かアルヴィンだけは視線を逸らしつつ気付かれないように返事をしない。

 

「では、行きますよ!」

 

 ローエンが詠唱とともに広大な魔法陣を描き出す。光の輪が制御装置に展開され、ジュードたちは一斉に手をかざした。

 

 マナが注ぎ込まれていくが、肝心の術式は少しの時間が経とうとも焼き切れる気配を見せない。

 

「くっ……七人もいて、まだマナが足りないなんて……!」ジュードが歯を食いしばった、その時――。

 

 ボンッ、と遠くで爆発音が響き渡り、辺り一帯に軽い衝撃を奔らせる。

 

「な、何!? 今の!」ジュードが振り向く。

「まさか……ミラ!?」ドロッセルの顔が蒼白に染まった。

「え!?」

 

 ドロッセルは声を震わせる。「今の音、呪環が爆発した時の音に似てるのよ!」

 

「そ、そんなっ……!」ジュードは血の気を失った顔で叫ぶ。

 

「集中してください!」ローエンの声が鋭く響く。「時間がないようですから!」

「早く……早くしないと!」ジュードは必死に力を注ぐ。だが、光の陣はまだ応えない。

 

 その時、エリーゼが涙声で叫んだ。

「ミラが……ミラが危ないの! ティポ、起きて! お願い!」

 

 すると、その呼びかけに答えるように、ティポの瞳がぱちりと開く。

 

 彼の目覚めと共に、魔法陣が一気に輝きを増し、足りなかったマナが流れ込んだ。

 次の瞬間、制御術式が焼き切れ、呪環が外れる音、そして扉のロックが解除される音が立て続けに響く。

 

「やったわ!」ドロッセルが声を上げる。

「おっはよー! 会いたかったよー、エリー!!」ティポが飛び起き、エリーゼに抱きついた。

「ティポ!」エリーゼも涙声で抱き返す。

 

「ミラ!!」ジュードは解放された扉へと駆け寄り、力任せに押し開けると、一心に走り出した。

 

「お待ちください、ジュードさん!」ローエンの声が背に飛ぶ。「あなたまで単独行動を取られては危険です!」

「ま、とにかく追いかけるしかないっしょ」アルヴィンが肩を竦める。

 

 こうして一行は、ジュードの背を追って走り出した。

 

お聞きしたいのですが、1話何文字ぐらいが読みやすいでしょうか?

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