勇者ロトの弟にチート持ちで転生したけど、異世界のダンジョンに転移したのは間違っているだろうか 作:醜い蛭子
またオリ主タグの付け忘れの申告、誤字脱字報告もありがとうございました。
今後は気を付けます。
「神様!?」
アストレア・ファミリアの窮地を救った礼としてその主神であるアストレア自ら作った料理を振る舞われていたノクスとセレネだったが、改めてこの世界について説明を受けている途中でセレネが驚きの声を上げた。
「ダンまち」という物語を知るノクスですらも今まで培われてきた常識との違和感を覚えるくらいなのだから、セレネからすればそんな反応を示すのは当然だろう。
「うーん?神様かどうかは兎も角、一目見ればアストレア様が普通の人間と違うって事は気付くと思うけど。やっぱり二人が異世界人だからアストレア様の神威を感じられないのかしら?」
そんなノクス達の状況を補完するように、アリーゼが推論を述べた。
確かにこの世界の人間でないならば、この世界の神々の神威が通じないというのも道理である。
「しかしそうなるとアストレア様はよく二人の言っている事に嘘がないと見抜けた事にございますわね」
輝夜の指摘にセレネが疑問の表情を浮かべる。
アリーゼがアストレアを通じて質問した理由が嘘を見抜く為であった事をノクスは最初から理解していたが、今の推測が正しければ神としてアストレアの力が何処まで通じるか疑問も残った。
「……鋭いわね、輝夜。ごめんなさい、嘘を吐くつもりはなかったの。それに子供達の恩人である二人に、何の事情も説明しないままなのは不義理だわ」
アストレアはそう言って仕切り直すように改めてノクスとセレネに向き直る。
「
それを聞いてアリーゼの疑念に対してアストレアの答えが何処か微妙に言い淀んでいた理由にノクスは得心する。
一方でセレネはまだ理解が追いついてないようで、怪訝な表情を浮かべたままだ。
尤もこの異常事態に疑われるのは当然という思いはセレネもあったので、詳しい話を聞かされても特にアストレアやそのファミリアに対する印象が変わるという事もなかったが。
そして大雑把にここ迷宮都市オラリオや冒険者としてダンジョンに挑むファミリアに関する話などを聞いた後に、今度は自分達の身の上や世界の事について語った。
「大魔王から世界を救った勇者の弟!?」
「道理で滅茶苦茶強い訳だぜ」
「兄貴って言っても顔すら見たこと無いんだけどな」
そうなると欠かせないのはやはり勇者アルスの英雄譚だが、実の弟であるノクスの態度は何処か他人事であった。
別に世界を救った兄に対してコンプレックスを抱いているという話ではない。
兄と容姿が良く似ていると評される事や弟として将来を期待される事を苦に思った事はなかったし、前世でも好きだったゲームの主人公と兄弟になれるなんて寧ろ誇らしいくらいだ。
ただ身内として語るにはノクスは余りに兄としてのアルスについて知っている事が少な過ぎた。
本当なら憧れの英雄であるアルスと兄弟として過ごす時間が欲しかったというノクスの思いが、却ってぶっきらぼうに思えるような態度に表れてしまっている。
アストレア・ファミリアの面々もノクスの心情は分からずとも触れて欲しくない話題だと思ったのか、それ以上あまり深く尋ねてくることはなかった。
「それにしても異世界から旅人が訪れるなんて本当に下界は未知に溢れているわ。ただ本当なら貴方達が元の世界に帰れるよう手伝いをしたいのだけれど、神である私も過去にそんな事例は聞いた事がない。出来得る限りのサポートはさせて貰うとして、これからどうしたいか貴方達に何か考えはある?」
「元々私達は知らない景色を求めて世界を旅する途中だったんです。この場所に辿り着いたのは予想外でしたけど、せっかくだから色々見て回ろうかと」
アストレアの問い掛けに対するセレネの回答にノクスは内心ギョッとする。
確かにセレネの言葉に間違いは無かったものの、ノクスの中でまず優先すべきは元の世界に帰る方法を見つける事。
その途中で色々な景色を見られれば良い程度に思っていたのだが、セレネの意思は最初の目的から全くブレていない事が言葉の節々から伝わって来た。
随分と肝が据わった幼馴染にノクスは呆れ半分の驚嘆を抱くものの、昔から決まって二人で行動する時の決定権はセレネの方が上である。
それならそれでその傍ら自分は帰る手段を探せば良いと、特にノクスはセレネに異を唱える事はしなかった。
「それなら暫くは私達と一緒にダンジョンを探索してみない?」
「え?」
「さっき話した通りダンジョンは危険に満ちてるから、勿論無理にとは言えない。でもダンジョンにアナタ達が求めるような世界が広がってる事だけは保証するわ!」
先程はすぐさま地上に戻ってしまったがやはりダンジョンに興味が惹かれるものがあるのか、アリーゼの提案にセレネは表情を活き活きとさせる。
その見た目麗しい容姿に反してセレネは昔から英雄譚に憧れる活発な少女で、物腰が柔らかくなった今も本質はあまり変わってないらしい。
一方のノクスも帰る手段を探すとしたらまずはダンジョンからだと思っており、その為にアストレア・ファミリアの助力を得られるのは望んでいた通りの展開だ。
ただしノクスが気に掛かるのはアリーゼ自身が言っていたようにダンジョン攻略における危険が未だ未知数である事。
単純な戦闘力以外にもダンジョン攻略に様々な知識が必要な事をノクスは知っていたし、そもそも戦闘力に関しても異世界人の自分達の力が何処まで通じるか不明瞭な部分も多い。
「……アストレア様、一つ不躾なお願いをしてもよろしいですか?」
「何かしら?」
「俺達にも貴女の恩恵を授けて貰う事は可能でしょうか?」
周囲が騒つく中、ノクスはジッと真剣な表情でアストレアを見据えた。
何も「
実を言えばノクスにとっても予想外の事であったが、元いた世界にはステイタスという概念が無かったのだ。
戦いの経験を積む事でレベルが上がるという事自体は確認出来るものの、自分で記憶しておかなければ後から自分の正しいレベルを確認する手段はない。
またゲームでは小刻みだったステイタスの上昇もレベルが1上がれば明らかに自分が強くなった事を実感出来る程であり、それと同様に呪文を発動する際に内から湧き出る魔力と威力が増加している事から察するに後続のシリーズにおける攻撃魔力や回復魔力に当たるステイタスが存在するのも間違いないだろう。
しかし何にせよ数値として自分の力を測る事が出来ない事に変わりはないので、この異世界で何か危険な事に挑むにしても安全を裏付ける為の確たる根拠が欲しいというのがノクスの目論見だった。
「さっきの通り
「
しかし狙いすましたかのようにジャガーノートが出現したタイミングでこの世界に転移した事に、ノクスは何かアストレア・ファミリアに対する縁のようなものを感じ取っていた。
それにこの世界の神々は基本的に娯楽を求めて下界に降りた来た事もあってか、例え悪神でなくともアストレアのように完全な善神と呼べる存在は限られている。
他にも後ろ盾を求める候補がいるとはいえ、もし異世界からの転移者だと広まれば神達から余計な興味を抱かれる事は必須。
そんな時にまだ中堅ながらも将来有望とされる冒険者が集まるアストレア・ファミリアなら身を寄せる場所として申し分ない。
セレネもまたアストレア・ファミリアが信頼に足る存在であると直感しているようで、二人はアストレアの言葉に頷いた。
「……これは神としてではなく私個人の勘に過ぎないけど、二人を招き入れる事はファミリアにとって良い結果を齎すと思うわ。だけど最終的な判断は団長であるアリーゼに任せます」
「わかりました、アストレア様。私はもう二人の事は信頼してるし、今更入団テストのような真似事をするつもりはない。でも私達はアストレア様の眷属として、正義を掲げて戦ってる。だから二人にとって正義とは何かを聞かせてちょうだい」
アリーゼからの質問にノクスとセレネの間に僅かな沈黙が流れるが、逡巡を経て先に質問に答えたのはセレネだった。
「少し質問の意図とはズレるかもしれないけど、もし正義を貫こうとするなら私は独り善がりにならない事に気をつけるわ」
「その心は?」
「善悪の区別は前提とするにしても、正義は時と場合によって否応に移ろってしまうものだと私は思う。そして例え同じ信念を抱えている者同士であろうと、人によっては取るべき選択肢が変わる事だってある。だからそういう局面に直面した時に、視野が狭くなっていた事による後悔を私はしたくない。……ごめんなさい、今はこんな事しか言えないんだけど」
「ううん、十分よ」
セレネの言葉を気に入ったのかアリーゼはニッコリと満面の笑みを浮かべた。
そして今度はノクスの番だと言わんばかりにアストレア・ファミリアのメンバーからも注目が集まる。
分かりやすく耳障りの良い言葉を並べるのは簡単だ。
しかし目の前にいるのは文字通り正義の為に命を賭してきた戦士達。
適当な建前が通じるとは思えないし、何より頼み込んで仲間にして貰おうと言うのに不誠実である訳にはいかない。
「……悪いが俺は正義について語るような言葉は持ち合わせていない」
「これは予想外の答えね。理由を聞かせて貰っていい?」
「自分で言うのも何だが、俺は根っからの打算的な性分だ。別に疾しい事があるとは言わないけど、少なくとも正義を理由に行動を起こせるような高潔さは微塵もありゃしない。けどもしファミリアに加わる事を許されるんだとしたら、その恩に報いる為に俺に出来る事があるとすれば行動と結果で示すくらいだ」
流石に悪人とまではいかなくとも、ノクスは自分が正義の味方といった精神性の持ち主でない事は自覚していた。
不相応な力を有する故に親しい人間ならば迷わず手を差し伸べる事くらいは出来るだろうが、他人の為に我が身を危険に晒せる程の気概はない。
だから最初から自分がアストレア・ファミリアに相応しいとノクスは思っていなかったものの、せめて誠実さだけは見せておこうと嘘偽りのない本音を述べたのだ。
これで駄目ならそれこそ打算的に次の居場所を探せば良いと、ノクスはアリーゼの下す判断を待つ。
「うんうん、二人とも良い答えね。改めてアストレア・ファミリアの一員として歓迎するわ!」
「良い答えって、セレネはともかく俺も入団を認めてくれるのか?」
「最初に入団テストはしないって言ったじゃない?それに私って人を見る目はある方だって自負しているの。きっとアナタの言葉には良くも悪くも偽りはない。でもセレネが言っていたように正義の形は一つに定まらないものだから、アナタの行いが誰かにとっての正義になる事もきっとあるわ。そしてそれはアストレア・ファミリアが掲げる正義に近いものだって私は確信してる」
「少し買い被りな気もするけどな」
「現にアナタは身体を張って私達の事を助けてくれたじゃない?人助け以上に分かりやすい正義ってないと思うわよ」
それも打算の内だとノクスは口にする事はなかった。
アストレア・ファミリアに対して誠実であろうと心掛けてはいても、必要以上に自分を貶めるような真似をすれば却って亀裂を生みかねない。
アリーゼがここまで言ってくれている以上、後はその期待に応えられるよう振る舞うだけだとノクスは心に誓う。
「ごめんなさい、この人ってば昔から変に斜に構える所があって」
「ふふ、そうみたいね。とにかく二人をアストレア・ファミリアに迎える、これは団長決定よ。何か異議がある人はいる?」
アリーゼの言葉に他の団員達は全員が首を横に振り、満場一致でノクスとセレネのアストレア・ファミリアへの入団が決まる。
「ただノクス、見ての通りアストレア・ファミリアは女所帯なの。いくら私達が魅力的だからって、風紀を乱すような真似はしちゃ駄目よ」
「そ、そんな事しねえよ!」
しかし冷静に考えれば女性だけで構成されたアストレア・ファミリアに入団を希望するなんて、不埒な輩と勘違いされても仕方ないのではないかとノクスは我が身を振り返る。
現に入団に反対する者はいなかったとはいえ、ノクスと目が合うと露骨に顔を背ける者が何人かいた。
それにアリーゼの言葉を聞いた途端、何故だかセレネにまで白い目を向けられてしまう。
流石にこのまま『星屑の庭』に男が紛れ込んで共同生活を送るのは拙かろうと、生活基盤に関しては別に考える必要があると今の流れに身を任せながらもノクスは頭の片隅に留めておくのだった。
「アストレア様、こういう事になりました」
「わかったわ。二人とも
そして二人の入団が認められたことを見届けたアストレアに促され、ノクスとセレネはアストレアの私室へと向かうのだった。
「これはっ!?」
結論を言えば異世界人であるノクスとセレネも「
そして新たに眷属に加えた二人のステイタスを確認して、アストレアは驚きの声を上げる。
ノクス
Lv.3(レベル38)
職業:勇者
力:xxx
耐久:xxx
器用:xxx
俊敏:xxx
魔力:xxx
勇者:S
闘気:S
《魔法》
【】
【】
【】
《スキル》
【
・対象のイメージに基づくスキルを発現させる
【
・異界の勇者に纏わる能力を発現
・逆境時全アビリティに超高補正
【
・異邦の理に則って成長する
・成長が確約される
セレネ
Lv.3(レベル35)
職業:賢者
力:xxx
耐久:xxx
器用:xxx
俊敏:xxx
魔力:xxx
賢者:S
融魔:S
《魔法》
【】
【】
【】
《スキル》
【
・異界の賢者に纏わる能力を発現
・呪文効果に高補正
【
・異邦の理に則って成長する
・成長が確約される
この世界の
基本アビリティを示す数値は神であるアストレアでも解読できない状態であり、ランクアップを示すLvも何やら表示がおかしい。
今まで見聞きした事が無い効果も不明な未知の発展アビリティの等級は異様に高く、未収得とはいえ魔法のスロットは二人とも
しかし何よりアストレアの目を惹いたのはノクスに発現しているスキルだ。
(この力は下界を救う為の切り札、いえそれ以前にオラリオの有り様を変えてしまうかもしれない)
人の潜在能力を引き出す神の奇跡と同質の効果を有するスキル【
このスキルが齎すであろう希望と混乱の未来をアストレアは密かに予感するのであった。