前世の幼馴染があべこべ世界で幼女として存在してる 作:宇佐見あまの
前世では合理主義の塊であり、部下にも容赦のないターニャであったがその性格が災いとなりクビにした男に駅のホームで突き飛ばされ、死亡した。
だが、彼が死ぬ前に見た走馬灯は輝かしいものであった。
彼には幼馴染がいた。
常に彼の事を思い、孤立しない様に立ち回りみんなに優しい男だった。
その男は高校を出ると直ぐに就職をした。
ターニャにとっては理解し難い行動であったが、のちに分かる。
ターニャを高待遇で迎える為に先回りして会社に入っていたのだ。
その男の友達、というだけで会社の評価は上がった。何故なのか?
それはその男にあった。
みんなの為にみんなは世界のために、ぐるぐると思いやりが巡る様に全員が彼について行くほどのカリスマ性があった。
そして実力も……
だからこそターニャは彼に近づく女性をそれとなく近づかせなかった。
前世の時点では気づいていなかったが、周りからすれば嫉妬、あるいは恋心に近いそれだと勘づかれていた。
ターニャが気づいたのは走馬灯を見た瞬間であった。
そもそもターニャの前世を駅からホームに突き飛ばした男も、クビにされただけで上司を突き飛ばす様な人間性を持っていなかった。
その男はターニャと同じく彼が好きだったのだ。だからこそ羨ましく恨めしかった。だから押したと後に供述してるが、ターニャの知らぬところである。
そして彼に惹かれていたのはターニャ達だけではなかった。
神々もまた彼に魅力を感じ、ターニャとのカップリング…に論争を重ねに重ねていた。
信仰心の問題もあるが、新しい世界に彼と同じ場所に転生させたのはそういう事だと存在X(神々)からターニャは聞いた。
ターニャにとっては千載一遇のチャンスであった。
神々から彼の特徴を事前に知らされ、巡り合う様に運命を操作しているというのはターニャにとって信仰心を密かに抱くのに十分な理由であった。
ターニャは孤児院に預けられたが、それは帝国が経済危機でインフレ、失業、破産が相次いだからだ。
しかし孤児院での生活は一般的な家庭の生活よりも充実したものであった。
なぜならば世界各地に孤児院を建て、資金を援助しているのはターニャの想い人、エイル・スーの財団だったからだ。
たった数年で世界経済を牛耳り、世界各国に恩を売り、戦争を経済へと向かわせたエイル・スーは帝国経済に徐々に浸透していた。
企業こそ設立されていないが、現地民の徹底的雇用、適材適所の配置は帝国人や他の帝国恐慌に襲われた国々にとってありがたい事であった。
ターニャからすれば好感度は鰻登りだ。
元から好きな相手が今も世界のために尽力している。
そしてターニャもその恩恵を預かっている。
ターニャははっきり言ってエイルに対してはチョロかった。
だから魔導師としての能力が判明した時も、軍隊に入った時もエイルと会うために必死に徹底的に努力しコネは作りまくった。
お陰で参謀本部はターニャに絶大な信頼を持っている。
だから、ターニャとその副官であるヴィーシャにエイルの護衛任務を任せたのだ。
ーーーーーー
ターニャはエイルの後ろをピッタリと付かず離れず、しっかりと護衛しつつもしっとりした目線を送っていた。
(存在X!感謝するぞ…!またエイルと出会えた事を、そして交わる機会を与えた事を……!)
この瞬間、ターニャの信仰心が一般的な信心深い教徒より上がった事をターニャは知らない。神々はニマニマしながら『抱け!抱けー!』と言っている事もターニャは知らない。
エイルは何者かに邪な目で見られたと感じ、冷や汗をかいていたのをターニャも神々も知らなかったのであった。
ターニャは護衛のついでにエイルと談笑し、距離をスルスル詰めていったのだが、エイルから少し距離を置かれている……
というより子供として見られてるのに不満だった。
このままでは一線を越えれない、合体できないと考えたターニャは強硬策に打って出る。
夜這いだ。
ターニャは粉状の媚薬入れたコーヒー粉を市販のコーヒー袋に偽装し、エイルの油断を誘うために前世の話をしながら、ヌルッと潜入することに成功した。
(こんなに上手くいくとは!ハハハ!い、いやダメだまだ顔に出すな……!まだ幼馴染としての距離感を保つんだ)
ターニャはエイルにコーヒーでもどうか?と聞くとエイルは嬉しそうに頷いてくれた。
前世でもそうだが、エイルは大のコーヒー好きだ。
しかし味や価値に興味があるタイプの人間ではない。ただ好きなだけという特殊な人間なのだ。
前世での思い出で安いコーヒーと高級コーヒーを飲み比べしたが、エイルは『どっちも同じでは?』というほどだった。
だが、コーヒーは好きなので、理解者であるターニャの淹れてくれるコーヒーに信頼を置いていた。
おそらく女性に媚薬入りやそういったコーヒーを淹れられそうになった事があるのだろう。
新聞ではコーヒードリップマスターの資格を取った時に大々的に報道されていたからな……とターニャは思いつつ、少し緊張しながら媚薬をコーヒーに混ぜた。
前世からの話に花を咲かせ、今の世界での情勢や、ターニャは女性になった時の苦悩を話しながら、お互いにコーヒーをちょびちょび飲む。
しばらくするとエイルが火照ってきたのか、薄着になりぽやぽやとした顔でターニャを観ている。
ターニャも『幼馴染だし遠慮はいらないぞ』と言い軍服をスルスルと脱ぎ、お互いに近づき、まずは体を近づける。
エイルはターニャがつけてきた香水の匂いで興奮しているのが、ターニャにも繋いだお互いの手を通じて解る。
そろそろ頃合いだろう……
ターニャはエイルにキスをし、ベッドに腰をかけると、エイル誘った。
お互い合意の上、濃密な夜を過ごしたのだった……
翌朝、コーヒーを淹れつつ朝起きて動揺してるエイルに
「おはよう、私の旦那様?」
と心の底から【勝った!!!!】という気持ちで宣言した。
エイルが責任を取ると宣言したそれを勝ち誇った笑顔で聴くターニャであった。
存在X「エイ✖︎タニャしか勝たん!」
別の神「タニャ✖︎エイだろう!」
神々「やんのかテメェ!!!!」