転生特典が「キノコ栽培」だったので戦闘は避けるようにします。   作:菱形の面積

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第14話 個人面談

「ふふ、ごめんなさいね。少し意地悪したくなっちゃったわ。ごめんなさいね」

 

 先ほどの悪魔的な雰囲気はどこへやら、まるで、演劇の舞台が暗転からの場面転換でもしたかのようだ。俺の心臓に悪いから本当にやめてほしい。

 

「何せこっちの世界に来てから30年近く経って、ようやく私と同じような人を見つけたんですもの。さっきまでの話は忘れて……とは言わないけど、もっとお互いのことを知っておくべきだと思うわ。私は商人ギルドのマスターで、あなたはそんなギルドに規格外に高品質な品物を納品してくれた期待の商人。ビジネスパートナー同士、友達とはいかなくても敵にはなりたくないわよね?」

 

 レーナは、いたずらっぽく片目を瞑って微笑んだ。その言葉には100パーセント同意だ。こんな、底の知れない相手と敵対関係になることだけは、絶対に、避けたい。

 

「まずは私のことを話しましょうか? あぁごめんなさい、そっちのソファに座って。セリア、お茶を用意したら席を外してくれるかしら?」

 

「かしこまりました」

 

 そうだ、秘書さんがいたんだった。あまりの衝撃ですっかり忘れていた。

 

 俺は促されるまま、部屋の高級そうなソファに腰掛ける。すげえフカフカだ。前世含めていままでこんな座り心地のものに座ったことなんてねえぞ。

 

 セリアさんは俺とレーナの前にお茶と、ご丁寧にお茶請けらしいクッキーを用意すると一礼して部屋を後にする。二人きりだ。

 

「さて。さっきは話途中だったわね。『相川 玲奈』よ。こっちの世界ではレーナで通してるわ。覚えてる最後の記憶は2023年。私が72歳でボケが進行して入院していた病室の天井の風景。あれから何年生きて何歳で死んだのかわからないけど、まあそんなことはどうでもいいわよね。ユウ君は?」

 

 人生の大先輩を相手にしている!!! 口の中がカラカラだ。セリアさんが用意してくれたお茶を一口、口に含んでから俺は口を開いた。

 

「『雛菱 優』です。2025年に交通事故で死んだはずです。その時は33歳で、気が付いたらこの世界にいました」

 

 ぽつぽつと俺は話始める。なんだかんだ、一人で寂しかったんだろうな、俺。

 

「そう。まだ若いのに残念だったわね。それじゃあ質問なんだけど」

 

 本当に残念だって思ってるのか!? いやに淡泊じゃねえか??

 

「私、すっごく強い能力を持ってるの。大雑把に言うと、個人から町、国の需要と供給が確認できるのよ」

 

 その言葉に、ハンマーで頭をぶん殴られたみたいな衝撃が走った。たとえるなら経営シミュレーションゲームのステータスの確認みたいなものだろう。だが、その能力を持っているのは他ならない商人ギルドのマスターで、彼女の意思で自由に操れる商人を山ほど抱えているのだ。

 

 さっきの口ぶりから察するにこの世界に赤ん坊で生まれたようだが、その能力を駆使してきっとこれほどの組織の頂点に君臨しているのだろう。一番持たせたらいけない人間がすごいスキルもってんなおい。

 

「それで、さっきユウ君の商人としての供給を確認してみたのだけど」

 

 プライバシー存在しないんか???

 

「キノコ関連の品物の供給は個人のレベルではないわ。それこそ、このブドランガ商人ギルド全体に匹敵するくらいに高い。ただほかの品物は期待できないと分かった。君も不思議な能力を持っているんでしょ?」

 

 正直に答えるべきだろうか。そうだろうね。嘘ついてもしょうがないしね。

 

「はい。俺はキノコ類の栽培に関するスキルを持っています。ですから、ギルドが求めるキノコがあれば相応のお代はいただきますけれど、安定して供給できるはずです」

 

 俺の言葉に、レーナは本当にうれしそうに笑った。

 

「それを聞いて安心したわ。何せ錬金術部門ではキノコを大量に使うし、食材にも使う。先日君が納品してくれたシイタケだけでもギルドに莫大な利益が入ったし、マルコとフィリアスがあんなことになったのだから。君は本当に有能ね」

 

 褒められて悪い気はしない。俺ってチョロいのか?

 

「もちろん、悪いようにはしないわ。死ぬまで働かせるつもりもないし、そんなことは絶対にさせない。だから、君には今までのようにキノコ類だけの納品を続けてもらいたいの。もちろんそれに見合ったお金は払うし、相談には乗る。この話、受けてくれないかしら?」

 

 ははーん、適材適所ね。わかるわかる。営業の適性がないやつに営業の仕事はさせられないし、現場勤務の適性がないやつに現場勤務はさせられないのは当然だ。その点俺はキノコ栽培に関してはスキルのおかげで達人だ。どうやら経済を掌握して国家転覆とかそういうことの片棒を担ぐわけでは……いや、間接的に稼ぐのか? まあ、直接担がないんならいいだろ。

 

「私としては断る理由はありませんね。ただ、前世のようにみっちり8時間労働なんて御免なんで、一か月のノルマを納品したらあとは自由にさせて下さい」

 

「決まりね」

 

 安心したようにレーナは大きく息を吐いた。

 

「さて、さっそくだけど、このリストのキノコが用意できるか調べてほしいのよ。期限は7日後の朝6時まで。実際に用意してくれたら報酬は弾むわ」

 

 そう言ってレーナが差し出した羊皮紙には、以下のキノコが記されていた。

 

 「ゲッコウダケ」「コダマタケ」「ライウンダケ」「キザミキノコ」。

 

 なんだこれ。聞いたことねえぞ。中二病の必殺技リストか? 文字から目を上げてレーナを見つめると、彼女はウインクをして「お願いね」と言った。

 

 くそがよ!!!

 

 俺は、心の中で、そう、絶叫するしかなかった。

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