転生特典が「キノコ栽培」だったので戦闘は避けるようにします。   作:菱形の面積

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第4話 異世界生活について本気で考えてみた

 異世界の朝は早い。基本的には日の出と同時に起床だ。何故かって? 遮光カーテンなんてモノがないからお日様がカーテン越しに差し込むんだよ!

 

 ただし俺は朝にはめっぽう強い。目覚ましが鳴る前に起きて、目覚ましと同時に跳ね起きるなんて得意中の得意だ。その反面夜更かしはできないんだがなガハハ。

 

 さて、せっかく宿で一泊できたのだ。今後の身の振り方について考えてみようか。昨日聞いた話では、この町には商人ギルドも存在するようだ。ここに所属できれば商売がかなり楽にできるかもしれない。元の世界の商社……とはいかないまでも問屋みたいなものにまとめて納品できれば、俺自身が接客してちまちまとキノコを売る生活なんてしなくても定期的にキノコを採取して売るだけの生活でお金が稼げる。

 

 ただ、商人とは金のにおいに敏感だ。それこそ腹をすかせた獣よりも。

 

 俺のスキルがバレたらどうなるだろうか? 選択肢は二つ。一つは、俺のスキルを「利用」する道。ギルドは俺を独占契約で囲い込み、栽培したキノコを二束三文で買い叩くだろう。稼ぎは渋くなるだろうが、命までは取られない。いわば、乳牛になるようなものだ。 もう一つは、俺のスキルを「脅威」と見なす道。市場価格を破壊しかねない俺の存在を邪魔に思い、秘密裏に消しに来るかもしれない。派閥争いに巻き込まれれば、俺なんて簡単に潰される。派閥って怖いね。

 

 かといってギルドに所属せずに商売をしていたら、きっと面倒なことになる。後ろ盾のない商売なんてしていたら、これは本当に命の危険がある。禁制品をうっかり売ったら良くて国外追放、悪ければ縛り首だろうし。

 

「とりあえず商人ギルドに所属しないと、命の危険だよなあ」

 

 硬いベッドに寝ころびながら木の天井を見上げる。電灯なんてない、のっぺりとした木の板だ。

 

 うんうんと唸りながら朝から頭を回転させていたら、不意に空腹に気づいた。人間は寝転んでても腹は減る。食うためには金が要る。ならばやることは一つだ。仕事をすることしかない。でもその前に腹ごしらえだ。俺は仕事をするために食っているんじゃない。食うために仕事をしているのだ。

 

 ベッドから起き上がって昨日の酒場へと向かう。といっても建物自体は隣だ。幸いなことにもう入れる状態である。扉を開けると、朝から肉の焼ける香ばしい匂いが鼻をくすぐり、胃袋を鷲掴みにしてきた。こいつぁたまんねえや。朝からでも飲めそうだぜ。

 

「いらっしゃい! っと、アンタは昨日のヒョロヒョロだね! よく眠れたかい?」

 

「おはようございます。素晴らしい部屋でしたんで横になるなり気絶するように眠りました。稼げたらまた泊まりに来ます」

 

「アッハハ! 世辞でもうれしいねえ!」

 

 豪快な給仕とそんな軽口を交わしながら店内を見渡すと、見覚えのある顔が3つあった。昨日の冒険者パーティ、「鉄斧ガントレット」の面々だ。ちょうどいい、商人ギルドの場所を教えてもらおう。

 

「昨日はすまなかった。あんまり覚えちゃいないがすごく楽しかったよ」

 

 テーブルに近づくと、ジェフが少しバツの悪そうな顔で頭を掻いた。シラフの彼は、昨夜の酔っ払いとは別人のように落ち着いている。さすがに朝から酒を飲んではいないのだろう。

「いえいえ! 楽しいお酒でした。おかげで街のことも知れました」

 俺が自然に空いている席に着くと、イリスが丁寧にお辞儀をした。

「食事代まで出してもらって、本当にありがとうございます。改めて紹介させてください。私たちは冒険者パーティ『鉄斧ガントレット』。リーダーはこっちの戦士ジェフ、私はファイターのクロエ、こっちはヒーラーのイリスです」

 

 まさか二度会うことがあるとは思っていなかったので昨日は覚えるつもりはなかったが、これも何かの縁だ。よーく覚えておくことにしよう。

 

 筋肉ムキムキ、傍らに身の丈ほどもある両刃の大斧を立てかけている偉丈夫がジェフ。物腰が柔らかで温和な雰囲気だがボクサーのジャブより早い拳でジェフの鼻を粉砕したのがクロエ。そして、その鼻を治療したのがどこか眠たげな様子でこちらを見つめるイリスだ。というか、イリス半分寝てないか?

 

「これはこれはご丁寧に! 私も改めてご挨拶を。ヒナビシです。昨日この町についたばかりの商人見習い。取り扱う品目は主に多種多様なキノコ類でございます。とはいえ! ご要望があれば酔い覚ましの薬でもなんでも探して見せましょう!」

 

 この芝居がかった口調、この世界では結構通用するかもしれない。前世で落語を趣味にしててよかったー。え? 演るんじゃなくて聞くほうだよ。できるわけないだろ落語なんて。

 

 そして、やってきた給仕に焼き魚とスープを注文する。鉄斧ガントレットの面々は食事の最中だったようだ。

 

「もう一度お会いしたらぜひお礼をしようと思っていたんです。どうでしょう? この町に来て二日目ということですから、お邪魔でなければ私たちがご案内しましょうか?」

 

 願ってもない申し出だ! 情報収集の手間が大幅に省ける。昨夜の50エルグが、最高の形で返ってきた!!

「なんともありがたい! ぜひともお願いいたします!」

 

 裏で常に損得を考えてしまう俺だが、この時の言葉だけは、間違いなく本心からのものだった。

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