転生特典が「キノコ栽培」だったので戦闘は避けるようにします。   作:菱形の面積

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第7話 俺の夢ってなんだったっけ

 気が付いた。おはようございまーす。俺はいつもの部屋で寝ていたらしい。昼間から浴びるほど酒飲んで意気揚々といつもの部屋に戻ってぶっ倒れたんだろう。こんな経験は前世では日常茶飯事だ。

 

 今何時だ? 時計なんてものはこの世界に存在しない。だからノロノロと起き上がって、俺はうっすいカーテンを開けてちらりと外を見た。

 

 あー、真っ暗。街灯がないから前世で経験したことない真っ暗闇……いや、ガキの頃に過ごしたド田舎の夜が、こんな風景だったか。祖母ちゃんに「夜中に外さ出だら、山さ棲む鬼っこに連れていかれっぞ」と、何度も脅されたっけな。それで俺、「あそこ」って指さしたら祖母ちゃん「見るな」って俺の胸ぐらつかんできたんだよな。

 

 っていうことはつまり、今俺は外に出ることはできない。いや、物理的にはできるんだけど、追剥ぎとかモンスターとかを相手にしなきゃいけないから単独で行動は絶対にできない。

 

 じゃあ、今何ができるのか? 俺はぽけーっと考える。

 

 宿代はもう底をつきそうだが、稼ぐ手段はある。シイタケはちょっと間隔を置いて納品するにしても、それ以外のキノコは納品できる。

 

 いや、まてよ? ちょっと大事なこと忘れてるぞ? ギルドのサブマスター、ヴァレンテと、確かに取引の約束はした。だが、待てよ。

 

 雇用契約書とか労働条件通知書とかもらってないし見てないんだが???

 

 前世の常識が、警鐘を乱打する。口約束だけ? サインも、捺印もなし? そんなの、あまりにも危険すぎる。

そもそも、俺とギルドの関係性って、一体なんなんだ? 俺はギルドの一員なのか? それとも、ただの外部業者(サプライヤー)なのか? 定時に出勤とか、必要なのか? 報連相は? 業務報告書の提出は?

 

 というかギルドって何したらいいんだ? 定時に出勤して定時に退勤していいのか? それとも商品を買い取ってそれに対するお金を渡すだけの付き合いなのか?

 

 なーんもわかんね! もっと言えば俺が個人的なプレゼントでシイタケを贈っていいのかすらわかんね。

 

 わかんないってのはすっごい怖いよ? 俺が善意で、例えば鉄斧ガントレットに「これいつもお世話になってるんでシイタケプレゼントします」なんていうでしょ? そうしたら商人ギルドが「貴様何勝手なことをしている!! こんな奴は縛り首だ!」「ぎえー!!!」 ってこともあり得るんでしょ??

 

 もっと怖いのは……「マイタケプレゼントします!」 「貴様! それは禁制品だ!!」 「何!! 禁制品を扱ったと!? この者は縛り首じゃ! ギルド連中も同じようにせい!!」 『ぎえー!!!』 ってこともあり得るのだ。俺がとんでもない品物出したら商人ギルドの連中が死ぬと考えたら楽しくなってきたな。いやいやいや、ダメだ。楽しくなってきたけど、ダメだ。俺は、そういう責任とは、最も遠い場所で生きていたいのだ。俺の命も、他人の命も、俺のせいで失われるなんて事態は、断固として、絶対に、何があっても、勘弁願いたい。

 

 ……俺は何のために商人ギルドに入ったんだっけ? 答えは単純。ある程度の金を稼いで適当に暮らすためだ。ある程度の金を稼いで、誰にも迷惑をかけず、誰からも迷惑をかけられず、ただ、適当に、快適に、のんびりと暮らすためだ。子孫繁栄とか、世界平和とか、そんな高尚な目的のためじゃない。あくまで、俺が、俺だけが、幸せになるための金が欲しいのだ。

 

 そう考えると、ふっと、心が軽くなった。

 そうだ。何を、そんなに難しく考えているんだ。

 いざとなったら、この街から逃げ出せばいいだけの話じゃないか。俺には、スキルがある。この身一つあれば、どこの街へ行ったって、また一からやり直せる。

 

 いざとなれば町から逃げて別のとこにいけばいいだけの話だ。俺はそんな諦めにも似た言葉を吐いて、もう一度ベッドに横になった。

 

 

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