転生特典が「キノコ栽培」だったので戦闘は避けるようにします。 作:菱形の面積
商人ギルドを後にして2時間ほど経過したころだろうか。俺は転生場所の森の中にいた。理由は一つ。明日までに、極上品のシイタケを一箱納品しなければならないからだ。しかも、サブマスターであるヴァレンテとかいう、あの食えない狐目クソジジイ直々の業務命令である。お願いしただけで成果が帰ってくれば誰も苦労はしないんだよ!! そこらへんわかってんのかあのジジイ!!
いや、わかってやってるんだろうさ! おそらく、本当の納期は別にある。それは俺も社会人してたから薄々わかる。だが! ごめんなさい遅れました許してください! なんて言ったら俺の評判はボロクソに落ちる。なんてったって商人ギルドに所属して二日目なのだ。たとえるなら新入社員が二日目にして寝坊してきたようなもんになる。それだけは避けたい。商人にとって大切なのは、多分信用とか信頼とか、そういうものなはずだ。マンガやドラマの中だけでなければ、多分そういうものだろう。
「やりたくねえけどやるか」
前世からの口癖をつぶやいて、周辺をぐるりと見渡す。シイタケが目標だが、この際だ。採れるキノコは片っ端から収穫してスキルとストレージの能力を確かめてやる。
転生初日にやったように、ピンときた場所に「スキル発動」と念じる。
念じた、その瞬間だった。
ぽんっ。
まるで、手品のように。何の予兆も、成長過程もなく、倒木の上に、いきなり、完成品のシイタケが、ずらりと姿を現したのだ。
「…………は?」
おかしい。初回は、確かに、キノコの生育の様子を、ビデオの早回しにしたみたいだったはずだ。それが、今や、中間過程を全てすっ飛ばして、結果だけが、そこにある。これも、あのクソバカスキルの、インフレ性能の一つなのか……。スキルの効果によれば成長速度と収穫量を上げるとあるが、収穫量はそこまでインフレしないみたいで安心した。
俺は前回と同じくらいの量のシイタケを見て、胸をなでおろした。そして、掌をシイタケに向けてストレージへとしまう。
【ストレージが一杯です】
「え?」
アホみたいな声が出た。まだ目の前にはシイタケが大量に生えている。それなのにストレージが一杯とは?
恐る恐るストレージを確認する。
【シイタケx99
シイタケx99
シイタケx99
シイタケx99
シイタケx99】
なるほどー。ストレージは1スタック99個で五種類まで仕舞えるのかー。すんごく勉強になるなあー。
「クソバカスキルにもほどがあるだろ!!!」
クソバカスキルにもほどがあるだろ!!! クリッカーゲームみたいなインフレしやがって!!!
多分物理法則を捻じ曲げているのだ。1個採取したらストレージに2個入るような仕組みになっているのだろう。もう一回言わせてくれ。
クソバカスキルにもほどがあるだろ!!!
そしてさらに恐ろしいことが起こった。今のでレベルアップしたようだ。なんで??? もうしばらくいいよ???
とはいえ、レベルアップしたらステータスを確認するのがゲーマーというもの。悲しいかな俺は半分反射的にパークポイントを振るために能力ツリーを確認する。
前回ポイントを振った「キノコ類ストレージ」の下の項目を確認する。「大容量キノコ類ストレージ」というちょっと理解したくないパークが取れそうだ。問題なく取得する。
はてさて、どんな効果なんだろうか。
大容量キノコ類ストレージ:キノコ類ストレージを大容量キノコ類ストレージに変換する。キノコ類専用の貯蔵庫。入れている限り、キノコの鮮度・状態は完全に保持される。また、スタック上限と種類はそれぞれキノコ類ストレージの容量の10倍として扱う。
「クソバカー!!!」
やっぱりクリッカーゲームみたいなインフレしてるじゃん!!! ストレージに【シイタケx495】の表示があるが、そのうち1.0e6とかいう科学的な表記にならないだろうな!?
もうやだ、突っ込むのも疲れた……もう帰って明日に備えよう……。せっかく生やしたシイタケだ。腐らせるなんてもったいないことはせずに全部採って帰ろう……。
結局、生やしたシイタケは全部ストレージに入れた。1スタック999個、そして50種類のキノコが入るはずのストレージだったが、もう容量はカツカツだ。どうしてこうなった。