ただ、覚えている限りではSFC版を6回やって1回クリア。
リベサガ版をキッチリクリアしている事から、原作が好きな事は確かですね。
(というか、SFC版は小学生にはキツイて)
01-00 英雄の帰還に引き寄せられて
Ver1.0
青々とした草花の生い茂る、肥沃な草原。
そのただ中に唐突に降り立った女性は、思いもよらぬ変化に驚きながらも着地の衝撃を逃がす。
この世界に唐突に表れた彼女はゆったりとした赤いローブのような服で身を包んだ長身の女性であり、周囲を見渡した事で靡いた灰色の髪が揺れ、静かな風が祝福するように頬を撫でる。
「自然豊かな平原――北部か南部?」
『ここ、どこ?』
その見覚えのない景色に警戒を表した女性の声に、舌足らずな幼子のような声が続く。
「……ベルフェジール様? どちらにいらっしゃるので?」
自分が洩らした不安に続く声に驚いた女性であったが、それが友人の声だと判ればその巨躯を探すように視線を巡らせる。
その友人は人智を超えた存在であり、こんな見通しの良い場所で見落とせる筈もない赤い竜となるのだが――。
『――イロウルとおなじばしょ……あぁ、これはまざっているんだね』
その応えは要領を得ないモノであったが、自分が居る事を示すような熱を身体に感じた女性は自らの内へと意識を向ける。
「…………どういう事でしょうか?」
その熱の正体が‘竜(ベルフェジール)’なのだと判らされた、‘人間(イロウル)’であったが、把握は出来ても理解が追いつかない事態を前にした彼女は問いを重ねる。
『イロウルのきおくだと、さいごはなにをしてた?』
「ベルフェジール様の思い付きに付き合って――あぁ……混ざっているというのは、こういう意味ですか」
人知の及ばぬ存在である竜の成せる御業なのか、状況を把握しているように見える‘ベルフェジール’に対し、ただの人間である‘イロウル’は疑問を重ねようとするも、続けられた彼女の言葉に従って自分の内に意識を広げれば知らない筈の記憶が過り――。
それが‘ベルフェジール’の記憶であると判れば更に状況の理解が進み、答えを求めれば求めた分だけの思考が返ってくる。
「――ですが、あの魔術は元から失敗する心算の遊びでしたよね?」
そうして‘ベルフェジール’と同じ認識にまで追いついた‘イロウル’であったが、それでも残る疑問を問い掛ける。
‘ベルフェジール’の記憶にある原因と思しきモノ――竜の方々の扱う概念魔術――というものは“現実”を材料として“願いを形とする”魔術であり、構築要素に現実が混ざっている事からも判る通り、使おうとする術式が世界の理に則しているほど成功率と効力が増していく魔術となる。
逆説的に言えば、それが現実可能な願いであろうとも最適な方策を知らなければ法外な燃料(まりょく)だけを取られる効率の悪い魔術であり、知り得ぬ異世界に跳ぶ等という“未知の事”を願うとなれば、魔力を無為に消費するだけの愚行となる筈だったのだが――。
『近くで現実的な転移があり、それに引っ張られたとすれば?』
「――――」
種族的な思考構造の違いか、同じ記憶を共有しているのにも関わらず‘イロウル’では考えも付かなかった可能性を見出した‘ベルフェジール’の言葉に人間は沈黙し、黙考する。
‘ベルフェジール’の言葉遣いが急激に達者になった事にも驚いたが、ソレは‘イロウル’の表層にある人間の経験を彼女が読み取ったからであり――元々人間以上の能力を持つ竜であるならば知っている言語の習熟など造作も無い事であり、その高い知能によって提示された推察もまたするりと納得出来る理論であった。
「―――――あり得るかもしれませんね」
その推察を認めながらも、‘イロウル’は‘ベルフェジール’の記憶の中にある概念魔術の法則と今の状況とを照らし合わし、裏取りを行う。
先にも述べたように、竜の方々の扱う概念魔術は願いに近付く為の魔術であり、無理だと諦めながら使った遊びであったとしても、現実として別の世界(?)に飛ばされたとなればその効果を認めざるを得ず、未知の事象であるが故に意図せぬ事故が発生する事も必然であると考えられた。
「……帰れるのでしょうか?」
『多分無理。私が無理だと思っている以上は概念魔術が上手く発動しないし……無理だと思わないような知識を得たとしても、お父さんが居る場所を探す方法が思い付かない』
ふと思い浮かんだ‘イロウル’の疑問に対する先駆者の言葉に、彼女は沈黙する他ない。
‘ベルフェジール’の言葉を人間の考えで言い直すのならば、地図も無い状況で見知らぬ場所に放り出されたようなものであり――方位磁石や移動手段を得たとしても、広大な世界を前にしては家に帰れないというのは確かにその通りなのだろう。
「…………次の問題ですが――私達、どうなっているのでしょうか?」
『――見た目は人間(イロウル)に見えるけれど、“魔力(いろ)”の流れを見た感じだと本質は竜(わたし)に近い存在になっていると思う』
質問を向けながら‘イロウル’が右手を動かそうとするも、彼女に返ってくる感覚はまるで他人の手を自分が動かしているような違和感であり――意識していなかった左手は、そんな彼女を安心させるように右の手首を包む。
『ここがどんな世界なのか判らないけれど……今の身体の“存在(いろ)”は安定しているし、『誰か』と接触するまではこのままでいいんじゃないかな?』
‘ベルフェジール’の言う『誰か』が人間でない可能性に思い至った‘イロウル’が慄(おのの)く中、『この世界の支配者が未知の生物だったら私の方に戻すなり、大きさを変えるなりすればいいし』と、気楽な言葉を続けた彼女は身体へ干渉する事を止め、周囲を探るように意識を伸ばしていく。
その感覚が竜の警戒の仕方であり、行き先を探っているのだと悟った‘イロウル’は‘ベルフェジール’が考えていない事に思案を巡らせる。
「――竜の里でもそうだと思いますが……生きていくには、名前が必要です」
『そうだね。……それじゃ、イロウルの名前で生きて行こう』
‘ベルフェジール’にも判り易いように考えている事を強く思いながら‘イロウル’が言葉を向けるも、その意味理解している筈の彼女はあっさりと主導権を手放す。
「ベルフェジール・フィフトメル……語呂は少し悪いですが、ベルフェジール様が主体なのですから――こちらの方がよろしいのではないでしょうか?」
『身体はイロウルの形をしているし……もしもここが人間の世界なら、竜が人の中で生きていけるとは思えないよ』
‘イロウル’としては竜を差し置いて名を語る事に気が引けたものの、‘ベルフェジール’は決定を覆す心算は無いようであり、それを翻意させられないと理解した彼女は静かに息をつく。
「――承知しました。では、僭越(せんえつ)ながらイロウル・ベルフェジールと名乗るように致します」
『うん、これからもよろしくね』
竜の方々は寛容が過ぎると思いながら、‘イロウル’は視線を巡らせる。
そこに映るのは見渡す限りの平野であり、あえて違いを挙げるなら左手の遠くには山々の影が見える位であり――正直な話、水や食糧、夜を越す為の道具(すべ)を持たない身一つとなれば早々に立ち行かなくなるような状況だ。
「とはいえ……これからどうしましょうか?」
『西と東の両方に人間っぽい“気配(いろ)”が見えるけれど、西の方が明らかに数が多いかな?』
‘イロウル’にとっては切実な問いに応えた‘ベルフェジール’は、身体の視線を左手(にし)側に向けつつ知覚出来た情報を共有するも――“魔力(いろ)”を読めぬ彼女の目には、遠くの山々以外に見える物は無かった。
「この状態で踏破できるとは思えないのですが……」
‘ベルフェジール’の共有から得られたのは目的地までの大凡の距離であったが、それは‘イロウル’が目算で見立てた認識が正しかった事が確定しただけであり、元居た世界で歩荷による旅商をしていた事から距離感と必要なモノが判るだけにその絶望は一際重い。
『見た目はイロウルだけど、本質は私の筈だから大丈夫だよ』
「――――」
それでも楽観的な態度を崩さぬ‘ベルフェジール’に押され、途方に暮れていた‘イロウル’は未開の平野へと踏み込む。
そうして、北バレンヌの中央に降り立った異邦人は、西へと歩み始めた。
イロウル・フィフトメル
別の世界にて幸運にも竜と縁を持ち、竜の里と人間の世界との間で行商を行う事で莫大な富を得た人間。
特異な生まれから、剣や魔術が主な武力となっている文化レベルを逸脱した知識を有する。
要約すると、外見担当。
【挿絵表示】
:ねヴぇ様に依頼し、描いて頂きました作品の縮小版。
(Pixivにて完全版や別衣装が掲載されております)
B系フレーム・ベルフェジール
竜の里で『姫』と呼ばれる生産ユニットの内の1体。
父親と縁のある竜の友人となったイロウルと知り合った事で人間と関わる事となり、それを切っ掛けとして人間の世界に多大な興味を抱くようになった。
要約すると、中身担当。
【挿絵表示】
:ねヴぇ様に依頼し、描いて頂きました作品の縮小版。
(Pixivにはまだ掲載されていません。創作者様をブクマしてお待ちください)
本来は腕の小さいフォージウィルムのような竜であり、上記は精神イメージとなります。