フリーファイトが最適解なんて小学生には判らんよ……。
(2回目以降でもパイロレクスの方がえぐい強いし)
01-11 運河要塞
Ver1.0
「――なんというか……寂れているね」
眼に映るのは未開の森林と差し支えない様相であり、運河という多大な労力を掛けて造ったのであろう壮大な構造物が無秩序に生い茂る木々に埋もれている様には何とも言えぬ物悲しさがあった。
同時に、そんな森林の中に聳える城のような砦(ようさい)はあきらかな異彩を放っており、外縁部にある草臥(くたび)れた酒場がその印象を殊更に強調していた。
『(……そういえば、塩害とかって大丈夫なのかな?)』
‘人間(イロウル)’の知識によると運河という人工の河川は物流という商業活動には大変有益な物であるらしいが、同時に海水という物が周囲の環境に与える悪影響は想像以上に大きいとの事だった。
とは言え、出来ている物をどうこうするのは後の祭りであり、埋め戻しても土壌の汚染や環境の変化は戻らない事から――考えるなら、楽しい事の方がいい。
『(――どうやって造ったんだろうね)』
この場所が次の外征対象であるとアバロンで聞いた時に‘竜(ベルフェジール)’が調べた限りだと、帝国近海のオレオン海と遠くのロンギット海とを隔てていた陸地を穿って造った河――というか海の道――がこのヴィクトール運河であるらしいが、その概要を聞かされた時には『地面を削って新しい地形を造るなんて、人間も大胆な事をするね』と感心したものだ。
原野に道や川の類を創るなら制限を解除した“炎息”をぶっ放すか、地道に土砂をどっかに持って行けばいいというのは‘ベルフェジール’でも考え付くものの、人間ならばどうするだろうかと考えた所でウィンドシードとシリウスの姿が脳裏を過る。
『(…………昨日の事のように思えるけれど、人間の世界ではもう懐かしい人になるんだよね)』
この世界で初めて縁を結んだあの2人は昨今の戦闘でも通じるような手練れであったが、土木作業であれば彼等程の技量は必要ない筈であり、放出系に優れた術のあるこの世界であれば、‘イロウル’の知る造り方よりも容易に設える事が出来ると思えた。
「ヘクター、どう思う?」
「やっつけ仕事なようにも見えますが、要点は確りしています。――規模もそうですが、素人が作ったもんとは思えませんね」
2人(イロウル)がそんな他所事を考えている中、ジェラールとヘクターは攻略対象である要塞の造りを巡って所見を確かめ合っていた。
尚、術による遠距離破壊を捨てきれなかった‘ベルフェジール’がエメラルドに「術法による要塞破壊の実現性」を問うた所、「十数人の魔術師を集めれば出来なくは無いでしょうが、攻撃中の魔術師を守る戦力も必要となる事から現実的では無い」との答えを得ていた。
「――――」
ここまで接近されても明確な迎撃対応が為されていないのは偏に潜入したジェラール達が少人数で動いているからであり、エメラルドの言うような状況になる事を考えれば動員や補給という脆弱性持つ攻撃側が不利になるのが明白であり、そう考えれば皇帝が直参と共に敵中枢を突くという搦め手に拘るのも頷ける話だった。
『(……私だけだったら――うん。やっぱり離れた所から“竜息”を連射すれば崩落させられるね)』
とはいえ、最適な手段を持つ‘ベルフェジール’としては態々潜り込む事を億劫と考えてしまう所であり、要塞の術的防御の低さを看破した彼女がジェラール一行から離れた所に隠れながら“竜息”を撃って崩落させたいという欲求を抱いていると、「(どうやってもバレますからね?)」と‘イロウル’から釘を刺される。
そんな騒動がイロウルの中で繰り広げられている内に運河要塞への見聞を終えたジェラールは外縁部に建てられた酒場へと歩き出し、その粗末な扉に手を掛けると中のカウンターに座って入り口を眺めていたキャットがすぐに駆け寄ってくる。
「……皇帝さ……陛下……」
待ち人の来訪に喜色を零したキャットであったが、何かを探るように左右へと視線を振った彼女は「ここでは話せません。ついてきてください」と続けてから一行を店の外へと誘う。
そうして酒場の内情を見る間もなく踵を返せばキャットの後ろ姿が見て取れ、その背を追って行くと使われていないように見える井戸の前で彼女は足を止める。
「この涸れ井戸から要塞に潜入できます」
そう言ってから説明を続けたキャットからは自らの仕事に対する自信と好意的な相手を見詰めるような“情動(いろ)”が混じり合っており、『(才ある番(おとこ)には姫(じょせい)が寄って来るという人間の物語によくある記述は本当なんだねー)』と‘イロウル’も言っていた人間の知識を‘ベルフェジール’が追認していると、脇から徒ならぬ“気配(いろ)”を感じた。
「――――」
そのおどろおどろしい“気配(いろ)”に彼女が首を振れば、感情が抜け落ち過ぎて能面になっているエメラルドの姿が見えた。
何時もの可愛らしさと凛々しさとが同居したソレとはあまりにも違う様相に『(人間は面白いね)』と口走りそうになった‘ベルフェジール’の奇行を‘イロウル’が強引に留めた事でイロウルの表情が引き攣ったような変顔になる中、「――では、参るか」と静かに意向を示したジェラールが涸れ井戸へ入り込む。
「……斥候を飛ばしてから進んで欲しいものですね」
守るべき相手が死地に先行してしまう事に愚痴を零した女猟兵(テレーズ)が続き、「一番槍こそ優れた戦士の証だろうよ」と囃し立ててから傭兵(ヘクター)が続く。
「――――」
「…………」
次にキャットを睨み付けていた宮廷魔術師(エメラルド)が涸れ井戸に手を掛け、にこやかな笑顔で一行を見遣っていた盗賊女を横目に捉えている竜術士(イロウル)が殿となる。
「どうかご無事で」
『(――見惚れるような“情動(いろ)”を出せる人でも、道から外れるんだね)』
キャットが見せた親愛のソレは確かな本物であり、どうあっても簡単には割り切れそうにはない人間の概念(ほんしつ)を垣間見た‘ベルフェジール’が『(人間は本当に難しいなぁ)』心の内で続けながら涸れ井戸の中へと潜って行った。
手引きされ涸れ井戸――まだ水が出ていた事から古井戸?――の先にあったのは運河要塞内の倉庫と思しき場所であり、要塞の構造体の一部や梯子まであった事からこの侵入経路の本来の用途は要塞側が据え付けた秘密通路の類であったのだろう。
しかし、一部の者にしか知らされていなかった弊害なのか、今のソレは排除対象である筈の帝国側に利用されてしまっており――彼等にとっての外敵の侵入を招く要因となっていた。
「――――む」
そうして要塞内に易々と入り込んだ一行は手引きした者の言っていた目印を探そうとしたものの――。
「……随分と余裕があったようですね」
「学の無い俺でも面白く思えるんだから、結構な才能だよな」
「――――警戒は緩めるな?」
地下の要塞構造体にも描かれていた猫の絵(みちしるべ)が要塞の中にも記されており、戦場に只中に在ると思えぬソレに一行の戦意と緊張が緩みそうになるものの――。
その本質は、そんなイラストが描かれている事を要塞側に気付かれないと確信出来る程に敵側の警備体制を把握出来ている事にこそあった。
思わず言葉を零してしまったテレーズとヘクターの2人がその意味をどこまで把握しているかは判らなかったものの、滲み出ている“感情(いろ)”から鑑みるに、その隔絶した技量に気付いたジェラールとエメラルドの内心は穏やかではなかった。
『(――自分の足元にそんな事が出来る存在が居ると判れば怖いよね)』
歩き続ける中でも要塞の巡回兵に遭遇する事はなく――竜の“目”で測れば際どい所を進んでいる事が判るものの、ソレを知る由もないジェラールや他の直参は本当の意味でに魔法に掛かったような気分なのだろう。
そして、そんな“目”を持つ竜であるからこそ“目”に映らぬ脅威が如何に怖いかがよく判る‘ベルフェジール’はジェラール達が考えている“感情(いろ)”に深く共感し、彼等と同じ感覚を思える事に小さな喜びを感じていた。
「(……とは言え――恐ろしい事ではありますね)」
‘イロウル’としても秘密通路を抜けたばかりの頃は「警備の穴もあるのだろう」と気楽に考えていたものの、中枢に近付いても警備の影すら見えないのは神業と言っても過言ではなく――キャットと言う女盗賊もまた広義の意味での英傑と言えるのだろう。
『(…………うん?)』
方向性は違えども2人(イロウル)の中でキャットの認識が変化している中、ふと、隣を歩いているエメラルドの気配が変化している事に気付いた‘ベルフェジール’の視線が才女に向く。
表情にこそ出していないようだが、前を進むジェラールの背を見るエメラルドの“感情(いろ)”は複雑な模様を描いており、色恋沙汰からは静かに遠ざかっていた‘イロウル’と、恋愛という概念をこの世界で初めて見た‘ベルフェジール’の認識が重なった事で、イロウルの口から何とも朗らかな吐息が洩れる。
『(……心地よい空気(まそ)だね)』
「(ベルフェジール様はそう感じるのですね)」
敵地の警備体制を的確に見抜いたキャットを認めたいという誠実さ、同じ人を想っているのだという直感から来る敵愾心、戦場で余計な事を考えてしまっている自分への不甲斐なさに、ソレ等を抑えようと務める自制心。
壁に描かれた猫を睨むエメラルドの内にはそんな感情が渦を巻いており、‘ベルフェジール’はその願いの結末を見たいと更に彼女に入れ込み、そんな願望も含めた友人の全てを共有されている‘イロウル’はその情動が身体の方にまで影響が出ないようにと気を張りながら足を進めていく。
「――――悔しいですが、優秀な方ですね」
「そのようだな」
そうして歩き進めた先で中枢と思しき最奥に辿り着いたと同時に絞り出したエメラルドの言葉に周囲の全員が同意する。
一行の眼前には外の陽の光が漏れ入って来ている階段があり、今居る通路の左右には豪奢な寝室とソレを遥かに上回る財宝が押し込められた部屋が存在しており、ここが要塞の中枢に近しい場所であるのは確かだろう。
権力者の類が高い所や奥まった場所を好むのは人間の性質(サガ)であり、その理に則れば自室と財宝の先にある場所がただの屋上であるとは考えられず――剣の感触を確かめたジェラールは、この部屋の主にして運河要塞の長と思われる存在に引導を渡すべく階段を昇る。
「ソーモンのクジンシーを倒し、日の出の勢いのだそうだがそれもここまでだな」
階段の先は目測通り要塞の屋上階に繋がっており、澄み渡った青空の下には頭髪の無い偉丈夫と檻に入れられた2匹の大蜥蜴が待ち構えていた。
「クジンシーは七英雄でも小者。我が主ボクオーン様こそ真の英雄よ」
要塞内には人間の気配が多かった事からその長が人間である事は想像できたものの、この場で七英雄の名が出た事によって一行の中に微かな警戒が走る。
ボクオーンという名は伝え聴く御伽噺において智将と語られている存在であり、その名を持つ者が組織だった要害を築いているとなれば帝国にとって明確な脅威となる。
「昇った日は必ず沈む」
他にはジェラール達の侵入を知らなかったのにも関わらず手勢を入れた檻を準備していた事、運河を閉鎖していた意図はなんなのか等――たとえ断片であっても聞き出したい事は山程あったのの、2匹の大蜥蜴を檻が内側から開いた事でその機会は永遠に失われる。
「ボクオーン様の片腕として、この要塞を預かる私が沈めてやる!」
ジェラール相手に口上を立てていた相手は棍に盾という僧兵のような装備を身に付けており、その珍しい出で立ち――この世界の術法を主体とした戦士の装いがこの組み合わせである事をまだ知らなかった――をイロウルが不審に思う中、相手は大きく構えた棍を何もない地面へと振り下ろす。
「――っ!? 床が割れ――概念攻撃!?」
景気づけかと思われた棍の一撃が地面に触れた瞬間、ジェラール達の足元へと“気配(いろ)”が走り――その次の瞬間には陣形の中心で巨大な地割れが発生する。
土属性の竜が使う高位魔術かと見紛うソレに巻き込まれたのは陣形(インペリアルクロス)の中心に固まっていたジェラール、エメラルド、テレーズの3人であり、現象の終息と共に地割れの中から叩き出された彼等は床面へと転がり落ちる。
起こった現象を鑑みれば足が挟み潰されていてもおかしくない惨状であったが、床に転がる3人は五体満足であるように見て取れ――剣技ですら概念攻撃を含ませられる彼等には何らかの概念保護の加護も在るのだと‘ベルフェジール’は認識するも、状況が悪い事に変わりはない。
「ぐっ……散開しろ!」
土の概念攻撃――後に『地裂撃』と名付けられる妙技――を受けた中、唯一意識を保っていたジェラールは苦しげに陣形変更の檄を飛ばし、ヘクターは弾かれたように緑色の大蜥蜴(リザード)へと切り掛かる。
その流れからイロウルの相手は赤い大蜥蜴(パイロレクス)となり、彼女もまた長剣を抜きながら距離を詰め、誰を回復させるべきか思案を回す。
戦場を俯瞰するに、首魁(ヴァイカー)を相手取っているジェラールは苦しそうであるものの――倒れた2人を起こさねば立て直しが出来ない。
「……ったいわねぇ!」
そんな中、‘ベルフェジール’が振るった刃は赤い鱗にあっさりと弾かれ、体制を崩しながらもテレーズに『月光(偽) (ひかりのいやし)』を掛けた彼女にパイロレクスの牙が迫るも――竜はその開いた大口に大盾を巻いた左腕を捻じ込ませる。
「テレーズ! エメラルドを起こして陛下達の援護を!」
自身の左腕を銜え込んでいるパイロレクスが頭を振って腕を捩じ切ろうとするのを堪えながら、‘ベルフェジール’は起きたばかりで意識が朦朧としているであろう多芸な猟兵に状況を伝え、自由な右手で剣の直撃を狙うも――。
「――っ、これでも通らない……!?」
弾かれようの無い所を狙ったその刃は強靭なパイロレクスの鱗に止めら、またも不発に終わる。
イロウルの剣であれば自分の膂力だけで両断出来たのにと‘ベルフェジール’は毒突き、こんな事なら剣を振らずに『月光(偽)』を誰かに飛ばしておけば良かったと‘イロウル’が後悔する中でもパイロレクスの顎は更に狭まり、拉げた盾が左腕を圧迫し、盾の一部を砕き抜いた牙が肌を突き破る。
「……っ!」
滲み出たイロウルの血に味を占めたパイロレクスは首どころか全身を振るって彼女の細腕を捩じ切ろうとするも、2人の身体は‘ベルフェジール’の膂力でソレに堪え、‘イロウル’はこれまでに無い重い外圧と竜の膂力に晒されている左腕からの痛みに耐え続ける。
「(――まだ、その時じゃないです。……堪えて、ベルフェジール様)」
そんな‘イロウル’と感覚を共有している‘ベルフェジール’は慣れない連続的な痛みに晒された事でイロウルに課せられている制限を解除しようとするも、同じ痛みに堪えている‘イロウル’はその動きを止め抑える。
‘ベルフェジール’が力を制限しているのはイロウルとして人の傍で生きていく為には必要不可欠な偽装であり、どんな苦境に立とうとも周囲の人間が思う以上の成果を挙げてはならないと‘イロウル’は訴え、左腕からの痛みに耐え続ける。
そんな中、粗暴な判断ではあるが剣で切る事を諦めた‘ベルフェジール’は剣を鈍器として扱う事でパイロレクスを怯ませ、ソレを危険と見たヴァイカーはジェラールへの追撃を諦めながらパイロレクスに癒しの術法を飛ばす。
「――――」
ジェラールと組み合っている首魁の手を煩わせたとなれば直参としては上出来な動きであり、更に言うなら数で勝る一行にとっては時間こそが最大の味方であり――。
拮抗していたヘクターとリザードとの攻防――時折危機的な状況に陥りはしたが――はテレーズとエメラルドの支援を受ける事でヘクターの勝利となり、手の空いた彼等は他の行動に移れるようになる。
同時に、パイロレクスと組み合っていたイロウルまた勝負を仕掛け、叩き付けるばかりだった剣を引き、崩れた刃を左腕の上にある大蜥蜴の目に突き立てようとする。
その危機を前に、流石のパイロレクスも咥えていたイロウルの腕を離すも――開いままの口の中に赤い光を灯す。
『(“竜息”かな? それにしては魔力が薄いけれど)』
その集まる光から炎が漏れ出た事で何の変哲もない火炎だと看破した‘ベルフェジール’は、周囲の人間が被害を受けないようにと前に出る。
結果、放たれた無数の火球の大元へと踏み込んだイロウルを中心として爆炎が巻き上がり、そのあまりの衝撃と煙の広さによって一時の静寂が訪れるが――
『(火竜である私に――そんな炎が効くものですか)』
紅蓮の残り香から無傷のイロウルが飛び出した事で周囲の“気配(いろ)”が息を呑み、火炎を吐いた状態のまま目を剥いて驚いているパイロレクスの姿を見た‘ベルフェジール’に悪辣な考えが過ぎる。
「……せいっ」
その空いたままの口が閉じ切る前に、‘ベルフェジール’は剣を差し込む。
口腔内への一刺しでも相当な痛手であろうが、本命は此方ではなく――長剣の柄から手を離した彼女は一緒に突き入れた左手に魔力を込める。
『(炎を吐けるのだから中身も火に強いのだろうけれど……剣と一緒ならどうかな?)』
そうしてパイロレクスの口腔内で破裂した『ファイアボール』は長剣を弾丸とする為の推進力となったものの、そもそもとして過剰な火力は大蜥蜴の半身を爆裂させ、その血と体皮に塗れたイロウルは“浄化”の魔術で身を清めながら次の術を編む事でヴァイカーへの包囲網に参加する。
「まさか、帝国の力がここまでとは……」
降り注ぐパイロレクスの肉片とそれを火種とした炎を見渡したヴァイカーが思わずそんな言葉を零すも、棍は降ろされておらず――その目に宿る戦意にも陰りはない。
しかし、いかに手練れとはいえジェラール1人すら押し切れなかった首魁に直参全員の連続攻撃を捌く術など在る筈もなく、最後は膝をつき、棍を落とす。
「ぐ……七英雄に仇なす存在であれば、ここで始末しておきたかったが……。ボクオーン様、不甲斐ない私をお許しください……」
その言葉を最後にヴィクトール運河を制圧していた勢力は崩壊し、オレオン海に閉じ込められていた帝国の経済圏はロンギット海にまで広がる事となった。
ジェラール帝
レオン帝の次男であり、『伝承法』を行使する事で七英雄との戦いを始めた(※)とされている皇帝。
立て続くアバロンへの襲撃と当代皇帝の崩御という前代未聞の窮地からジェラール帝の覇道は始まり、手始めにアバロン周辺のモンスター群生地を一掃した彼はその勢いのままに七英雄の1人であるクジンシーを撃破し、その翌年にヴィクトール運河の通行権を支配していた運河要塞を攻略・解放する事で当時の人々の記憶にあるバレンヌ帝国最盛期の領土を取り戻す事となる。
それ以降はヴィクトール運河の再整備事業や広がった支配圏の混乱を収める為に歴史の表舞台から姿を消すものの、彼の妃となった当代の宮廷魔術師と共に領内の安定に努めつつ、乱立していた鍛冶業の統合や術法研究所の設立等、後のバレンヌ帝国発展の基礎を築く事となる。
上記の偉業により「バレンヌ帝国において最も偉大な皇帝は誰であるか?」という論争にあって必ず名の挙がる人物であり、共和制に移行してから久しい現代においてもその人気は健在である。
尚、他の偉業に比べて地味である事からあまり知られていないが、下水関連の治水事業にあっては水質環境学や公衆衛生学の先見の明を示した神様と言われるまでに神格化されており、アバロンがダグラスやミラマーと比べて疫病等の衛生問題が起き難いのは偉大なるジェラール帝のお陰であると断言されている。
(※)七英雄との戦いと『伝承法』を初めたのは先帝であるレオン帝であるとの説も存在するが、此方を議論の題材とした場合には最終的に相手と殴り合いの交渉になる事が決定的となる為、曖昧とするのが暗黙の了解とされている。