Ver1.11
最後の断崖を抜けた洞穴の先には小さなな町と見紛う程に整備された港が巨大な海食洞を埋め尽くすように広がっており、係留されている船のメインマストに武装商船団の刻印が施されている事からして目的の場所であるのは確かだろう。
『(……無事にたどり着けたのは良かったけれど――人間からすると、ちょっと高いかな?)』
眼下には武装商船団の構成員と思しき人影はあるものの、険しい半島を抜けて来る者が居るなど考えてもいないのか見上げる様子はなく、奇襲は確実に成功するであろうが――。
今居る高台と町の石畳との高低差は目算で十数メートル程となり、普通の人間が安全に飛び降りられる高さを越えていた。
「んじゃ、行きますか」
「ええ。先に行くから付いてきてね」
‘イロウル’に聞かなくても判る状況に‘ベルフェジール’が何らかの補助を掛けようかと考えた瞬間、オライオンが遊びに行くかのような声音を洩らし、皇帝一行の中で最も身軽なビーバーがそれに乗っかるように飛び降り、オライオンとバイソンが何の迷いもなくそれに続いてしまう。
『「――――――」』
下から届いた衝撃音は人間の足が出して良い音ではなかったものの、ヌオノに踏み込んだ3人は何事もなかったかのように驚く武装商団員と対峙し、唖然のあまり言葉を失ってしまった‘
「(…………なんで無事なのでしょうか?)」
『(この世界の概念は不思議だね)』
流石にこの状況で留まる事など出来よう筈もなく、“身体強化”の魔術を編みつつ‘ベルフェジール’も続いたものの――突貫で編んだ術では衝撃を殺しきれず、幾つか損傷した骨等を修復しながら立ち上がった竜は戦闘に備える。
『(……さて)』
予想外の出来事はあったもののここから先が肝要であり、何時ぞやのダグラス攻略戦のような制圧戦をこの人数でやらねばならないと気を張り直した‘ベルフェジール’であったが――。
「お、お前はアバロンの皇帝!? どうしてここに……」
「まさか、あのモンスターだらけのハリア半島を越えてきたっていうのか?」
「ちくしょう、カシラに報告だ!」
皇帝一行を見据えていた団員達は陣形を組む事も遅滞戦術に動く事もなく潰走を始めてしまう。
『…………は?』
竜よりも遥かに脆い身体でありながら荒れ狂う事もある海に挑み続けているというのがモーベルムで聞き知った武装商船団員の生き様であり、ハリア半島というモンスターの群生地を踏破した後にも激戦は続くと考えていた‘ベルフェジール’にとって今の状況は拍子抜けも良い所であり、竜は「――海の男は勇猛だと聴いていたのだけれど」と周囲に向けて明らかな落胆を零す。
「奇襲を受ければ、誰しも判断を誤るよ」
「海上での荒事に慣れてはいても、陸上での戦には慣れていないってこった」
しかし、走り去る団員達の無様な姿を同じように見ていたビーバー達には思い当たる節があるのか、警戒を解きはしないものの諭すような口調であり、そのまま事もなげに歩き出す。
「イロウル殿も、それを狙って陸路を選んだのでは?」
「――――」
建物の陰で縮こまっている団員の背中を見たバイソンがそう続け、少々答え難い事を突かれた‘ベルフェジール’は押し黙る事でやり過ごしに掛かる。
「とはいえ、連中にも戦う力が有るのは確かだ。――統制を取り戻されて組織的な市街地戦に
「では、さっさと済ませるとしましょう……首魁の居場所の目星も付いてるし」
沈黙によりイロウルが納得したと判断した彼等は次の話題へと話を広げ、ビーバーの視線を追うように一行は崖の上に造られた建物を見上げる。
指導者や扇動者、まとめ役の類は高い所か大きい所に居るのが人間の常であり、ロンギット海を我が物としている連中の首魁はそこに居る筈である。
根拠地に踏み込んでしまえば『交渉』自体はあっさりと片が付き、独立組織であった武装商船団は帝国に属する帝国武装商船団と名前を変え、帝国の支配下に収まる事となった。
そして、これまでの根拠地であったヌオノは隠れるには良い立地であったが利便性には乏しく、文官を常駐させるには不向きであった事から今後は帝国の文官が居るモーベルムに拠点を置く事を命じ、今の代表であるエンリケは同地の館――ビーバーとイロウルが調べていた時にまんまと逃げおおせられた場所――を今後の根拠地として組織を統率する事となった。
そうして大まかな指針を纏めたビーバーはエンリケに移動を命じ、今は彼の操るキャラック船に同道する形でモーベルムへと向かっているのだが――。
「――カンバーランド王国の時は随分と迷われましたのに、今回は随分ハッキリと服従を命じらたのですね」
海の上に居る事を考えないようにしたい‘ベルフェジール’は、気を紛らわすのと同時にビーバーが以前の対応とは異なる決断に至った情報を得るべく、対面に座るビーバーへと言葉を向ける。
「相手は『法』と『歴史』で形作られている国家はなく、力と利益だけで固まっている集団だよ? ――そんな不安定な
向けられた質問に意外そうな“
『――――』
その応えと共に向けた“目”から真意も知れた‘ベルフェジール’に生まれたのは驚きであり、半年前までは平民のような感性が抜けていなかった事から先帝の言葉を借りたのだろうかと予想した竜が深く“見て”みるもビーバー自身の判断である事に間違いないようであり、育てた存在の――人間の成長の早さに静かな吐息を零す。
「――解散させなかったのにも、理由がおありで?」
「イロウルがソフィアに言っていたように、帝国の海軍力はカンバーランド王国に大きく水をあけられているからね。……ミラマーを抑えておけば経済力で追い抜かれる事はないけれど、海上戦力として引き抜ける彼等を解散させるのは流石に惜しい」
「――――」
‘イロウル’に示されるままに続けた問いに対するビーバーの応えは‘人間’が思う指導者の発言としての満額回答であり、それを共有された‘ベルフェジール’に一抹の寂しさが過ったものの多くの人の為に力を振るわねばならぬ指導者は優秀であればある程に世界の為になると、竜はその
「とはいえ――北ロンギットは大きな経済圏とは言え元が無法者の集まりだからね。……治安維持には気を張らないと」
そう続けた皇帝の顔は彼女の祖父の若かりし頃や元居た世界に居る‘ベルフェジール’の父が見せるような“
「(ベルフェジール様。その考えは流石に身勝手が過ぎるかと)」
『(……判ってるよ)』
優秀な人間となるように育て、定めた道を歩めるように舞台を整え、その道を踏み外して倒れぬように傍に居続けたのは‘ベルフェジール’であり、そうして完成された皇帝から目を逸らすのはビーバーの努力と自らの判断に泥をかける行為となり、自らの未熟の致す所となるそれが恥ずべき事であると判っている竜は目を瞑ったまま別の事を考える。
『(……ジェラールのように、名君と言われるままで終われればいいのだけれど)』
「(――――)」
気を取り直して紡いだ問いも長命故の傲慢である事は‘ベルフェジール’も理解していたが、同時にジェラール帝の晩年が中々に危うかった事を知っている‘イロウル’はその言葉を否定する事が出来ず、‘友人’の心中を察した竜は相談を続ける。
『(……やっぱり、離れるのは危ないと思う?)』
「(それは確かなのでしょうが――そう遠くない未来に離れる時を見出さねば、ベルフェジール様が考えたような未来が待っていますよ)」
『(――――)』
竜の力は絶大であり、時を重ねる事で衰える事もないと判ればそれに縋ってしまうのが人間の
『(……ジェラールの時と、そんなに変わらない状況の筈なのにね)』
ジェラール帝の時と同じく、勢力圏が急拡大した後に控えているのは新体制の確立という名の停滞であり、彼の時は初めての対応でありながらも近づける限界の距離を維持しつつ、最適な時期に離れる事が出来たと‘ベルフェジール’は考えていた。
「(――――)」
忠告を無視され続けていた‘イロウル’には思う所があるようであり、今の状況においても何かを隠している節もあるが――自分の為を思っているのだとは判っていても意地悪だなと感じてしまった‘ベルフェジール’は、迂闊な事に現実へと戻って来てしまう。
そうして自らの思考の内から離れた所でここが“目”で見通せぬ海の上である事を思い出した竜は話す事も無い事からマストの上に逃げようかと考え始めた所で対面に座っていたビーバーに右手を掴まる。
「関係を持ったばかりの商戦団員に舐められる訳にはいかないから――ここで待っててね」
「……御意」
機先を制された事に若干驚いた‘ベルフェジール’であったが、船の上での自分の奇行はオレオン海で皇帝一行の知る所となっており、読みやすい未来である事から当然の流れであったと驚きを収めた竜であったが、自分が“目”の届かぬ場所に居る事に代わりはなく、背中に嫌な汗が流れるのを感じながら、早くモーベルムに着くようにと願う事となる。
「(…………やはり、ご不満ですか?)」
『(――人間の世界にあっては、いけない考え方だというのは理解しているよ)』
そうして静かに震えている中、対面に座るビーバーを見ていた‘ベルフェジール’の脳裏を再び過った感情が気に留まったらしい‘イロウル’の言葉を呼び水に、竜は自分の内へと意識を向ける。
『(……お父さんも「進化が止まった君と戦っても退屈なだけだ」って私を取りに来た竜に言った事があったけれど――そんな傲慢をこう何度も思ってしまうのは、私も竜であるからなのか……それともお父さんや私の資質の問題なのかな?)』
「(それは――なんともお応えし難い内容ですね)」
竜という存在を深く知らない‘イロウル’は明確な答えを返せない旨を真摯に伝えながらも「ですが、グゥエルナー様は人間である私から見ても聡明で堅実なお方だったと思いますよ」と‘ベルフェジール’の言葉の一部を否定しつつも結論の先送りを提案してくる。
『(――少し、寂しいね)』
‘友人’の記憶に残る父を誇らしく思う‘ベルフェジール’は、70年経った今であってもはっきりと思い出せる深い森の中で傍に居続けてくれた
もっとも――その面白味の無くなったビーバーへの頼もしさは、数年後に裏切られる事となるのだが。
北ロンギットの統治体制が軌道に乗り、一新されつつある帝国海軍がカンバーランド王国の海軍と合同演習が出来るようになった頃――。
「……叔母様。――どうしたらいいと思う?」
「――それを聞くの、今日で何度目になるのかな?」
配下に敬称を付けるのは御法度である事は皇帝であるビーバー自身も重々承知しており、この10年で生まれた頃からの癖は矯正されたものだと思っていたものの――。
届いた文を読み返した辺りからビーバーの情緒は退行しているようであり、訂正してもすぐに戻ってしまう事から諦めざるを得ない状況に陥っていた。
「でも、私よりも長く生きている叔母様ならこういう話にも詳しい筈でしょう? 他の直参に相談できる話でもないし……」
『――――』
ビーバー熱烈な“
ちなみに、人生の先達というのなら先帝達の方が適任であるように見えるが、孫(曾孫)の色恋に纏わる話という事で『伝承法』の主体を成している初代皇帝とジェラールが殴り合い(?)が発生しているらしく、‘ベルフェジール’にとっては不明な所の多い『かの術』への理解を深める切っ掛けになればと詳しく内情を聞いてみると、非常に人間臭い状態となっているようだった。
なんでも「娘や孫に苦労をさせるとは何事だ!」とビーバーの出生や生い立ちを聞いてからの憤りが
尚、『伝承法』を受けたもののあまり馴染まず力を振るえなかった他の先帝達は今の力の源泉たる2人を止める事も出来ずに沈黙しており、「そもそもとして――お主の晩年の動きからして、他の子や孫が居るのではあるまいな!?」という初代の追及に「オアイーブという魔道士に対して情動を抱いておりました父上に言われたくはありません!」と返すという――なんとも見苦しい話も聞かされる事となった。
「――――大変だね、貴女も」
「慣れてるから大丈夫……」
元居た世界の思い出話となるが、娘である
それを知っている‘ベルフェジール’は繁殖が可能な『生産ユニット』に対して“
『(――――)』
そんな会話の中で‘ベルフェジール’が視線を向けた執務机の上にはカンバーランド王国から届いたら国書が広げられており、本来であれば平民扱いであるイロウルが目にする事など許されぬ存在なのだが――‘イロウル’に翻訳して貰った所、その内容を端的に表してしまえば一途な恋文だった。
「――共感や同調などの感情は、現実を前にしては意味を持たない事から……1つ1つ、事実を挙げて確認していくよ?」
‘イロウル’は何やら思案に耽っているものの、‘ベルフェジール’からすればどこに迷う必要があるあるのかと判然としない中――人間の理にそぐわないかもしれない内容である可能性を排除するべく、確定している事から共有を始める。
組織の長が他に組織の妃になる。
これは誰が見ても大問題になるのは明白であるが、退位して組織の長でなくなってしまえばその原因自体が消失する事から他の組織の妃になる事を望むのであれば方法はある。
次に、竜が知り得ている人間の世界の理への対応方であるが、『伝承法』と現行の帝国法には退位に関する規定は存在しており、それに則れば誰に咎められる事なく今の重責から逃れる事ができる。
「ここまでは、これでいいね?」
「うん」
『――――』
ビーバーが素直に頷いた事で、ここまで理解していてなぜ人間ではない自分でも判る事に悩むのかと‘ベルフェジール’の溜息が深くなる。
「私、もう26だよ? こんなおばちゃんが22歳の子と結婚するなんて――」
「ビーバー……人間の一般常識では、その年齢で自称をおばちゃんと卑下する事は戦争に発展しかねないから――改めた方がいいよ」
死ぬまで『生産ユニット』であり続けられる‘
「………トーマは確かに武技の才能はないけれど、内乱後の混乱と我が帝国への忠誠を見せる為の国事をこなしながらも切り詰める所は切り詰めてよく国を発展させている。――そんな未来ある賢王の妃になるなら、もっと若くてしっかりと支えられる才女を選ばないと……」
「――――」
バレンヌ帝国とカンバーランド王国の関係は表向きは同盟という関係であるがその実情は宗主国と属国という関係に近しく、年に1回以上の頻度でトーマ王は多くの外交団を連れてアバロンに訪れる必要に駆られており、大使の交代等の諸費用はかの国の国費を確実に圧迫している筈である。
そんな実情を知っていても止められない状況にある自分の不甲斐なさがビーバーの言葉に入っている事を“目”を持つ‘ベルフェジール’には理解出来たものの――。
「ビーバー……惚気ているという自覚はありますか?」
人間ではない竜でも判る言葉の内容を指摘すると、ビーバーは「あー、うー……」とダンゴムシのように頭を抱えて丸まってしまう。
「……モーベルムで武装商船団の見張りをたぶらかした女傑は何処に行ったのやら」
バレンヌ帝国の皇帝としてよく世界を差配し、勢力下にある人々の安寧に寄与しているものの、その奥にある“
「――ビーバー。……女には、男と比べて1つだけ多い――幸せになる道があるよ」
‘友人’とビーバーの反応から自分の考えに間違いはないと目算を立てた‘ベルフェジール’は自らの理を詳らく。
才在る者は世界の為にその力を振るう。
才無き者はそれを支え、その邪魔をしない。
それらの理外れた者は、速やかに排除する。
それが竜の理であり、人間の世界にもある程度は通じる真理であるが――‘ベルフェジール’が言葉としたように、定命かつ役目を果たせる期間の短い人間の女には別の理もある。
「このまま皇帝として在り続ければ、貴女は力ある者の責務を果たし――最期まで国に尽くした『伝承法』の申し子にして、かのジェラール帝をも越える偉人として歴史に名が残ると思う」
『伝承法』の力を十全に引き出せているのはジェラールと同じであるが、かの先帝よりも政治体制が盤石である事から内輪揉めに起因する妨害によって足踏みをさせられ、理想と現実との差に絶望してしまった結果、迷走してしまった彼のようにはならず――残された時間を有効に動かせるビーバーの手は、この大陸の南の端やまだ見ぬ東方にも伸ばせるだろう。
「けど、ビーバーはまだ次代を繋ぐ為の存在として振る舞える状態にあり、それを成す事は全ての生きとし生ける物が行い続けねばならない不変の真理であり、貴女が此処に居る事もその尊い連鎖の結果になるよ」
彼女の祖母であるキャットやその娘の生き様は人間の世界では排除されて然るべき存在であり、その行為の結果としてもそれに相応しい最期を迎えたが――。
その先に在るビーバーが世界の宝となった事を鑑みれば、彼女達が『居なければ良かった』等と宣う存在は理を解さぬ愚か者であり、その生を汚し、蔑ろにする者が居るならば‘ベルフェジール’は害意を抱き、『血と花束事件』のように殺せる理由が生まれた折には躊躇なく皆殺しにするだろう。
「――それらを踏まえた上で、国家の慣習に戻るけれど、……もしも貴女の配下――海運大臣のワイアット卿辺りが公の場で貴女に求婚すれば、あいつはどうなるかな?」
「……とんでもない不協を買い、そう遠くない未来に一族郎党路頭に迷うかな」
「そう。それを考えれば――トーマは、この想いに自分の首を賭けている」
大臣の例を挙げた辺りで聡明になったビーバーも気付いていたであろう事に、彼女は目を瞑って俯く。
「選ぶのは貴女です、ビーバー。………大丈夫。何かあったら一緒に逃げてあげるから――気楽に選ぶといいよ」
才無き者は決断出来ない事が多く、勘違いしている無能は嬉々として間違って破滅を選ぶ。
だが、そのどちらでも無い
その数刻後、ビーバーは自身の個としての武力が衰えて来ている事を理由として退位を発表。
ジェラール帝に勝るとも劣らぬ偉業を打ち立てながらも、更なる高みを目指せる未来を期待していた伝承派は突如として旗頭が失われる事への懸念を示し、壊滅の危機に陥っていた貴族派は『それ見たことかと』唐突な判断を大いに非難するも、積み上げられていたビーバーの実績の前には双方の言葉は無力であり、退位の手続きは粛々と進められた。
そうして
そして、その半年後――。
一国の妃に相応しい、絢爛な花嫁衣装を纏った1人の女性がカンバーランド王国の王妃となり、その経歴から来る多くの理なき害意に屈する事なく未来ある
ビーバー帝
ジェラール帝の全てを『伝承法』で引き継いだとされる皇帝であり、同時にバレンヌ帝国の歴史上で初めて皇族の血を引いていない身で皇帝となった人物となる。
戴冠当初は平民の出という事でその能力を疑問視する目も多かったものの、カンバーランド王国の併合・属国化 (公式には同盟と濁される事も多い)に加えてロンギット海での商業活動の障害となっていた武装商戦団問題の解決という大局を上手く収め、ジェラール帝の活躍によって盤石なものとなっていたバレンヌ帝国の影響力を更に拡張させ、当時の帝国が知り得ぬ外界への足掛かり築いた賢帝(※)とされている。
とはいえ、26歳という若さで退位し、次の皇帝が戴冠するよりも前にカンバーランド王国に嫁いだ経歴から自分本位な女帝とも伝えられており、国粋主義の強い歴史家からは蛇蝎のごとく嫌われている皇帝でもある。
尚、カンバーランド王国の国母としても極めて優秀であったとされており、後のトーマ2世を偉大なる王として育て上げつつ、フォーファーに戻ったソフィア元大使とも交流を深め、同国の経済価値を大きく高めた(※)ともされている。
(※)ただの町娘の出であるとは思えぬその来歴は現代においても論争の的となっており、帝国の伝説の中心にある『伝承法』で得た知識を使ったという説と、戴冠以前から付き従っていた優秀な側近に依る所が大きいという説の2つが有力視されている。