悪の組織で幹部をやってる。時給3000円で。   作:かませ犬S

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第二章 悪の天秤
第二十二話 モーニング


 先日の作戦から一夜明けた今日。

 

 気持ちこそ少し沈んでいるが、体のコンディションはすこぶる良い。いつも通りの朝と言えよう。

 

「先輩、起きたんだな!今準備してるからもう少し待っていてくれ」

「また朝食を作ってくれているのか? ありがたいが、無理はしなくていいぞ」

「へへ!無理はしてないから安心してくれ!先輩に俺の手料理を食べて貰えるのが嬉しいだけだからさ」

「そうか。ありがとう⋯⋯」

 

 最近は俺よりも夏目の方が早く起きる事が多く、今も朝食の為の準備を行っている。食パンとコーヒーだけの朝食が基本だった朝のメニューに和食が追加されたとだけ言っておこうか。

 

 形の良い尻を眺めていると、ユラユラと揺れる尻尾が視認できた。夏目の機嫌がいい事だけは分かるな。

 

 洗面所で顔と歯を洗って戻ってくると淹れたてのコーヒーがテーブルに置いてあった。夏目が淹れてくれたようだな。気が利くと思ったし、いい女だなと再認識した。

 

 これで俺の好みのタイプなら既に落ちていただろう。

 

『現場からの中継は以上です。悪の組織(ベーゼ)の脅威は日に日に増しております。決して一人で行動しないでください』

 

 夏目が淹れたコーヒーを飲みながらテレビを見ていると、ボスが陽動で暴れている様子が映されていた。市民を安心させる為か、ヒーローによってボスがボコられて逃げ帰る姿までしっかりと放送している。

 

 やはりというべきか、ボスを敗走に追いやったのは金色のヒーロースーツのヒーローだ。映像を見ていても分かるが、あのヒーローだけ異様に強いな。俺から見ても化け物だと分かる。

 

 まだ、俺はあのヒーローと戦った事はないが勝てるかどうか分からんな。少なくとも周囲の被害を気にする余裕はないだろう。

 

「アルカトラズ島についてはなしか」

 

 アメリカの現地のライブ映像が映っていたが、アルカトラズ島についての言及はなかった。

 

 ヒーローが30人近く亡くなり、島一つが消し飛んでいる。隠蔽する事は不可能だ。いずれは公のものとして公表しなければいけないだろうが、今は立て続けに怪人の襲撃が続いている。市民を不安にさせない為にあえて放送しなかったんだろうな。

 

「ん?」

 

 コーヒーを飲み終えたタイミングでスマホが鳴った。朝早くから連絡を入れてくる相手は限られているが⋯⋯。鳴り止まない着信音を止める為にスマホを取る。

 

「そうか、生きていたか」

 

 俺に電話をかけてきた相手の名前を確認して、僅かな安堵と共に自分の甘さを再確認した。

 

 ため息を吐いてから通話に出る。

 

「もしもし、こんな朝早くからどうした?」

『おはよーさん。朝はよーにかけてすんまへん。ちょっと色々あって落ち込んでたんよ。時間あるんやったら颯人に愚痴らせて欲しいわ』

 

 俺に電話をかけてきたの太陽だ。

 

 島ごと消したつもりだったが、しっかり生きていたらしい。影に潜って俺の一撃を躱したのだろうな。俺の甘さが出た結果だ。同じ過ちを繰り返さないようにしっかりと戒めておこう。

 

 それにしても声に元気がない。

 

 間違いなく昨日の戦いが原因だろうな。俺に愚痴りたいと正直に言うくらいには意気消沈している。出勤までにまだ時間はあるが、俺の予想ではこの話は長くなるとみている。

 

 夏目の方を見ると料理を作り終えたのか皿に盛り付けしている最中だった。味噌汁に卵焼き、焼き鮭と昨日の残りの煮物だな。見たところ今日は和食のようだ。

 

 さて、どうするか。敵対する相手をわざわざ励ましてやる義理はないが⋯⋯。

 

 ───太陽が親友である事に変わりはないか。

 

「分かった、話に乗ってやる。ただ、ちょうど今から朝食を食べるところだったんだ。20分後でもいいか?」

「タイミング悪い時にかけてしまったんやな。すんまへん。20分後でもかまんよ。食べ終えたら電話して」

「分かった。また、連絡する」

 

 スマホの通話ボタンを切って電話を終了した。

 

「なぁ、先輩」

「なんだ?」

 

 作り終えた料理をテーブルに並べながら夏目が俺に話しかけてきた。眉が下がっている。心配そうな表情⋯⋯さては、通話の内容を聞いていたな。夏目は怪人に変異した事で聴覚や嗅覚が人の数倍に跳ね上がっている。

 

 元気をなくして、普段よりも声が小さかった太陽の声もしっかりと拾ったようだな。

 

「気にしなくていい。親友の愚痴を聞くだけだ⋯⋯」

「先輩は男色じゃないよな?」

 

 ───思考が停止した。

 

 急に何を言い出しているんだこいつ?

 

「急にどうした?」

「いや、だって!先輩、俺に手を出してこないだろ?オレ様の裸を見たって反応しないしさ⋯⋯。さっきのやり取りを聞いていたら、先輩の声凄い優しかった」

「それで邪推したのか?」

「うん」

 

 夏目が俺の家に転がり込んでから既に一週間近く経過している。その間に夏目の裸を見たのは一度や二度ではない。

 ラッキースケベ的なイベントが起きたわけでもなく、夏目の方が見せにきていた。チラチラと俺の反応を確認していたからな。特に俺の下半身を見てた。

 

 誘惑しても反応しない俺に不安になっていた所に太陽との通話が聞こえた、と。

 

 あからさまに落ち込んでいたから、普段より声が優しかったのは認めるがそれで男色だと決めつけるのはやめてくれ。

 

「女好きという訳ではないが、性癖は正常だ。抱くなら男ではなく女を選ぶ」

「なら、なんでオレ様に興奮しないんだ?自分で言うのもなんだが、結構エッチな体をしているぞ?」

「タイプじゃないからな」

 自分の胸を揉んで大きさのアピールをしていた夏目に、本音をぶつけたら石のように固まった。

 

 悪いことをしたと思いつつ、夏目が作った朝食へと手を伸ばした。

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