悪の組織で幹部をやってる。時給3000円で。   作:かませ犬S

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HEROES SIDE 3. もう一つの世界Ⅱ

 竜による支配? あかん、イメージが湧かへんわ。

 

「太陽君は竜に対してどんなイメージを持っているかな? 」

「現実的やないのもあって、強いモンスターって印象しかないで」

 

 首を傾げる俺に手助けをするように博士が話を振ってくれたけど、最近モンスターをハントするゲームが流行ってるのもあって、竜は強いって印象はあっても支配者って感じではないんよな。

 

 中には竜が支配者として存在するゲームもあったと思うけど、少数とちゃう?

 

 あー、初代のドラゴンのクエストとかはラスボスが竜王やったか。それでも最後には勇者に倒される終わりやし。

 

「そうだね、この世界に来てあまりに違い過ぎてびっくりしたゾ。だから認識の違いをはっきりさせる為に説明するね。僕様たちにとって、竜とは神に等しい存在だった」

「竜が神?」

 

 博士が指さすイラストを見るとやはり、竜を崇めるように人のような絵が頭を下げている。

 

「竜とは絶対的強者であり、一種の天災のような存在であった。翼の羽ばたきは木々をなぎ倒し、口から吐く炎はあらゆるものを焦土へと変える。逆らう事すら許さない圧倒的な暴力。竜による支配とは力による支配」

「竜が強過ぎて、みんなビビって竜に従ったって事でええ?」

「そうだゾ。誰も逆らえなかった。竜に刃向かった者は皆、その暴力を前に押し潰されるしかなかった」

 

 博士が指で人のような絵を潰すように抑え込む。暴君みたいやな。

 

「数多の種族が竜による支配を受け入れたゾ。それはひとえに竜の力によって滅ぼされたくなかったから」

「酷い話やな」

「けど、悪い事ばかりではなかった。竜が支配する事で世界から争いが消えたんだゾ」

 

 それこそ意味が分からんのやけど?なんで竜が世界を支配したら争いがなくなるん? それに今の言い方やと、竜が支配する前は争いが絶えなかったみたいに聞こえるで。

 

 念の為、確認したけど俺の考えで間違ってないみたいやわ。

 

「太陽君たちの世界を支配しているのは人族───人間で間違いないよね?」

「支配しているかどうかと聞かれると返答に困るんやけど、文明として発展してきたんは人間やな」

「そう。けど、同じ種族であるにも関わらずこの世界は争いが絶えなかった。あらゆる理由で人間同士で争い、殺しあった」

 

 人類史を振り返れば争いは狩猟採集時代から存在しとる。農業の普及とともに領土を巡る争いに発展し、国家の形成と共栄の歴史をたどった。

 

 特に戦争は、技術進歩により形態を変えながら現代まで続いとる。

 

 その理由は様々や。生きる為に必要な資源の奪い合いであったり、それに伴う領土を巡る争い、民族や宗教の違い、政治的な不満、経済的な格差、それこそ挙げだしたらキリがない。しょうもない理由で争った歴史すらある。

 

「人間だけが繁栄した世界ですらコレだよ。太陽君、考えでみなよ。人間以外の種族が存在し、それぞれが別々の思想を掲げて生きているんだ。これで対立が起きないと思うかい?」

「思わへんな。人類史を振り返った後やと、口が裂けても争いは起きんとは言えんわ」

「そう。竜が世界を支配する以前の世界は、異種族との争いが絶えなかった。始まりはこの世界と同じだゾ。資源の奪い合い、思想の押し付け合い。そこから争いは激化し生きるか殺されるかの生存競争まで発展した」

 

 博士たちの世界はこの世界と違い多くの種族が存在した。それこそ創作作品のように、エルフやドワーフ、獣人、巨人、吸血鬼⋯⋯あまりに多すぎて博士の口から聞かされた種族全部を覚える事は出来んかったわ。

 

 それだけの種族が生きる為だけに争う。俺が想像していた以上に殺伐とした世界やと思う。

 

 事実、長く続いた争いの歴史は多くの種族を途絶えさせてそうやわ。それでも尚、争いは治まらず世界は混沌に満ちていった。

 

 そんな中、どの種族が束になっても叶わない絶対的強者───竜が現れた。

 

 天災と比喩される圧倒的な力で、竜は瞬く間に世界を支配した。

 

「竜は争いを許さなかった。自身が支配した世界が血で汚れ、争いで壊れるのを嫌がったんだゾ。竜の制止を無視して争う種族はみな滅ぼされた。見せしめのように幾つかの種族が竜によって滅ぼされて、ようやく支配を受け入れた」

「そして、世界から争いが消えたって訳やね」

 

 圧倒的力による抑圧。

 

 良し悪しの判断に困るところではあるけど、少なくとも竜のお陰で争いはなくなった訳やな。

 

 世界の支配者である竜に献上品みたいな物は捧げないといけなかったみたいやけど、争いが続くよりは遥かにマシとちゃう?

 

 博士が言うには竜による支配が続けば続くほど、竜の支配を受け入れる者は増えていったそうやし。

 

 ───争いのない平和な日常は、竜の崇拝者を増やしていった。

 

「そして、それが災いとなってしまった」

「どういう事なん?」

「竜は喧嘩を売ってはいけない相手に喧嘩を売ってしまったんだゾ」

 

 世界を支配し、数多の種族が竜をこの世の王として崇めた。

 

 自身こそがこの世界を真に支配する絶対者であると確信した竜はついに重い腰を上げて、天界に住むとされる神々に喧嘩を売った。

 

 竜からすれば神という存在は目障りな存在ではあったそうや。殆ど下界には介入してこん癖に、強い影響力を持つ存在ってことで。

 

 事実として、竜の支配を受け入れながら神に信仰を捧げる種族もおったそうや。

 

 言ってしまえば、神という存在は唯一竜の支配が揺るがす不安要素やった。それを取り除く為に竜が動くの至極当然の事やな。

 

「ここまで聞いて気になったんやけど、竜って何匹もおったん?そん中に竜の王がいたって解釈でええ?」

「人間や他種族みたいに大量にいた訳ではないよ。記録に残されている内容では竜は五柱いたとされている。その中の一柱が竜王として世界を支配した」

 

 やっぱり俺と博士やと、竜に対する認識がちゃうみたいやわ。思いっきり失礼な事言ってない俺?『柱』って数える存在を『匹』って呼ぶんはマズイよな?

 表情を窺う限りでは不快そうではないけど、念の為言葉には気を付けよ。

 

「始まりは竜と神との戦いだったゾ。竜が天界へと攻め込む事で神との戦いが始まった」

「どっちが強かったんだ?」

「互角の戦いだったと、記録には残っているゾ。両者の力が拮抗していたせいで、竜と神との戦いは長引いてしまった。その結果、地上もまた地獄と化した」

 

 竜と神の戦いの舞台は天空やった。

 

 竜も神も、自身を崇拝する数多の種族を大事に思っており、戦いの余波を気にした両者は戦場を手の届かない遙か上空とした。

 

 その甲斐あって両者が激しくぶつかり合っても地上には大きな影響はない。

 

 ───筈やった。

 

「見落としていたのは竜と神、それぞれに崇拝者がいたという事」

 

 竜と神が戦いを始めた事で、それぞれの崇拝者たちは崇める存在を助けようと動き出した。

 

 そして気付く訳や。異端者がおるって。

 

「地上は竜を崇める種族と、神を崇める種族で対立した。竜の支配によって訪れた平和は、竜が神に戦いを挑んだ事で崩壊したんだゾ」

 

 ここまでの話を聞いて竜やら神やらと随分とまぁ、非現実的(ファンタジー)な話やなって感想が浮かんでたんやけど。気付いてしまったわ。

 

 これ、規模が違うだけで俺たちの世界でも同じ事が起きとる。

 

 

 

 ───そう、宗教戦争や。

 

 

 

 それぞれが信仰を捧げる『主』の為に、異端者を排除しに動いた。ほんでもって厄介な事に宗教戦争って簡単には治まらんのよね。

 

 それは博士の世界でも同じやった。

 

「空では竜と神が争い、地上ではそれぞれの崇拝者が竜と神の代理戦争を繰り広げる。この戦いは後の世まで大きな影響を及ぼした」

 

 百年続いた泥沼の戦争。

 

 

 

 

 ───『竜戦争』。

 

 

 

 

 

 その戦いの勝者が地上を、世界を支配した。

 

 

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