指名手配の妹 作:とっさん
「到着〜....と言っても普通の部屋だけどね」
「いえ....屋根と安全が保たれる場所なので今ままでより格段にいい場所ですよ...」
これは本当で、雨漏りがあったり、蜘蛛の巣を始めとした不衛生な所に比べたらこの場所は楽園のような場所なのだ。
「でも、ほんとうにいいんですか...?」
「いいって。私がやりたくてやってるんだからそれでいーの。」
「......ありがとうございます」
「━━━にしてもあんた、流石に汚れてるねー。お風呂入っちゃおっか。」
そう言って私の服を脱がそうとしてくる。まずい
ずっと深く被っていたフードを外そうと手をかけられる
「あ、ちょっと待ってくだ「.........え?」.......」
あーあ、見られてしまった。
「あんた......その耳、どうしたの....?」
そう、私が隠していた場所には、
猫耳があった。いや、正確には
そのまま斜めに刃物で切られたような、歪な形の左耳があった。
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「......ねぇ、新しく入ってきた子分かる?」
「あーあの猫耳の子?珍しいよねー」
「ちょっとかわいいかんじだし、なんか自信もってそうだよねー」
「なにそれ笑、、まぁわかるかもwあざといっていうかーw」
あの場所で獣耳はあまり居なく、入った当初は噂になっていた。ただし、ネガティブな話題として。
特に何かをしたわけではない。ただ、噂が回るのは早く、少しずつ邪険に扱われるようになっていった。
きっかけとなる出来事は、割とすぐに起こった。
いつものように補給品が入っているところを見ると
「.....無い。」
綺麗に私の部分だけ。
近くで誰かの笑い声が聞こえる。こっちを見て笑っているのでか確実に何かを知っているだろう。
「.....ねえ、私の補給品が無いんだけど。」
「えw知らない!........なに、あたしたちのこと疑ってんの?」
「.....いや、やっぱりいい」
私の防護ベストと銃は、ゴミ箱の中の奥にあった。
ある日の夕食で。
「.....また、無い」
この場所は配給制で、みんなで集まってご飯を食べるのだが、私の分が見当たらない。
少し探すと、ひっくり返った皿とスープのような物が飛び散った床が、私が座っていた死角の場所にあった。
「..........ww」
まただ、おそらく同じような人達。
だが、見てた人もいるだろうに、誰も私に目を合わせようとしない。
とぼとぼと帰ろうとすると
「......レイ、こっち」
「お姉ちゃん...」
お姉ちゃんの分の食料なのに。半分も譲ってくれた。ここでも私は優しくしてくれる人に迷惑をかけていたのだ。
でも、ある日
2つ分、皿が無くなっていた。
私と、
お姉ちゃんの分。
私はすぐにそいつらに詰め寄った。
「なんで関係ないお姉ちゃんのやつまで!!!?ふざけないで!」
「はあ?だからーあたし達じゃないってwww第一証拠もないでしよ?ww」
頭に血が登り、手を上げて殴りそうになる。その時
「何をしている!?」
「あっ♪すいませーん、レイさんが急に殴ってきてー♪あたし怖くてーーww」
「なに?仲間に手を挙げるとは何事だ⁉️こっち来い!」
私は後ろの首根っこを掴まれて別の部屋に連れていかれた。
そこでは、教育という名の体罰が行われた。殴る。蹴る。私たちにはヘイローとかいうものがあり、頑丈であるため、銃撃も。
何がいけなかったんだろう。
私個人のことにお姉ちゃんまで巻き込んでしまった。
何が悪かったの?
そっか。私が人と違うのが原因だった。
じゃあ、その原因の根本から消せば元通りになるのかな?
その日、空のテーブルから食器のナイフだけを持ち出し、自分の部屋に帰った。
お姉ちゃんに迷惑はかけたくないから、声を出さないように近くにあった布を口に詰め込んで。
水たまりに見る私の顔の上にある忌々しいものに狙いを定めて。
刺した。
「.......ン''ン”ン”ッ”!!.....」
痛い。ぴちゃぴちゃと何かが床にたれている。でも、そんなのは関係ない。
位置をずらして、刺す。抜く。位置をずらして、刺す。抜く。
何回繰り返しただろうか。
ブチッ、と音が聞こえた。右側から。
「......あ、取れた。」
良かった。じゃああともうひとつ.....あれ、平衡感覚がなくなって視界がぐわんぐわんなっている。
「バカ!!なにやってんの!!?」
そのまま横に倒れた私は誰かが叫んでる声が聞こえたあと、その間意識が沈んで言った。
その日から、私を嫌な目で見たり、いじめのようなことをされることはなくなった。
その代わり、私は聴力を半分失って、周囲からの怯えたような目と、姉からの少し所では無い過保護を受けるようになった。
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「....そっか......嫌な事聞いちゃったね」
多少ぼかしたが、最終的に自分で切ったことは伝えた。
「いえ、もう過ぎたことなので、全然大丈夫ですよ。もう痛くないですし」
「....ううん。あんた.....レイは頑張ったよ。辛かったでしょうに」
「でも......わたしのせいでなったことなので」
優しい手つきで頭を撫でられた。傷には触れないように、ゆっくり
「.....いいんだよ、弱音吐いても。ここにはレイの敵はいないんだから。」
「..........あれ.....なんで.....」
目の辺りに熱がこもり、水が溢れてきた。手で拭おうとしても、拭いても拭いても零れ落ちてくる。
そんな様子を見ていた彼女は、私を抱き寄せ、私の頭を包み込むようにして抱き締めた。
私は、その1人も入り込めないような暗く、ただただ優しく暖かい空間で泣き続けた。
彼女はそんな私が泣き止むまで、ずっと背中をさすって、包み込んでくれた。
「........あれ、泣き疲れて寝ちゃったか。」
「....おやすみ。いい夢を、なんてね」
レイは聴力を半分失った代わりに人の気配を読むことができるようになったそうです。すごいね、レイちゃん。