ヒーローを諦めた少年と魔法少女達 作:キー(pixivでも同じ名前)
キーと申します。
ずっとpixivのみの活動でしたが、こちらでも活動してみたいと思い投稿してみました。
私は豆腐メンタルですので温かいお言葉をいただければなぁという...そんなことを思っています。
「...ぼ、僕の将来の夢はオールマイトのようなヒーローになることです」
中学生になり最初の授業で、クラスメイトに自己紹介をする時間はあったのではないだろうか。
自分の趣味、将来の夢、性格等。自身を知ってもらうために正直に話しただろう。
「何言ってんだクソナードォ?テメェは無個性だろ?」
しかしこの世界で最も注目されるのは”個性“。
事の始まりは中国、軽慶市。『発光する赤児が産まれた』というニュースだった。
以降各地で「超常」は発見され、いつしか「超常」は「日常」に、「架空(ゆめ)」は「現実」となった。
世界総人口の約八割が何らかの「特異体質」である現在、個性を悪用する敵(ヴィラン)により混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が、脚光を浴びていた。
そう、「ヒーロー」と呼ばれる職業が。
折寺中学に入学した緑谷出久も例外ではなかった。
緑谷出久は自身の将来の夢は”ヒーロー“と語るが、個性は無い。今の世の中では珍しい“無個性”であった。
彼の夢は嘲笑われた。誰もが不可能と罵ったのだ。その中で目立ったのは彼の幼馴染である少年の存在。彼は恵まれた個性“爆破”により、彼に恐怖心を与えて彼の夢を否定したのだ。
それからも緑谷出久の考えを否定し続けるが誰も彼に手を差し伸べなかった。幼馴染は緑谷出久とは真逆の存在であった。成績優秀、荒々しいが整った容姿、そして爆破という個性。
皆が幼馴染の存在に若干の恐れを持ちながらも皆の中心人物と化していた。
また個性差別が重い問題となっている世の中で無個性にはとても厳しい世の中だった。更に緑谷出久が今いる環境では人権すら怪しい立場だった。
「道端の石っころ以下のテメェがヒーローになれるわけねえだろうが!!!」
緑谷出久はほぼ毎日罵声を浴びせられ、罵られ、否定され続けていた。身も心も疲弊し続けていたが、ヒーローになりたいという淡い気持ちは失われていなかった。
本来の歴史では、小さな声で反論をした後何倍にもなって暴力が返ってくるのが日常のようになっていたが、この世界では違った。
「や、やめてくれよ!!!ぼ、僕は本気なんだ!!!君には関係ないだろう!?かっちゃん、なんで君のいう通りにしなくちゃいけないんだ!黙っててよ!!!」
BOOOOM!!!!!
1回だけ、たった1回だけ後のことも考えずに本気反論しただけだった。その行動が幼馴染逆鱗にいつもの何倍も触れてしまい、気づいたときには爆破の個性で吹っ飛ばされていた。
「あ゛あ゛あ゛あっっっ!!?!?」
教室に何かが焦げた異臭が充満した。緑谷出久が痛い、痛いと苦しんでも誰も彼に駆け寄らなかった。
幼馴染“爆豪勝己”に歯向かうものはいなかった。そしてそれは教師もだった。
「み、緑谷が爆豪君に喧嘩を売って...」
「そうそう、ただ爆豪君は緑谷君を思って話をしていただけなのに」
緑谷出久が今回の原因であると現場を見ていた生徒達が話し始め
「あー.........緑谷は反省文5枚出せよ?爆豪も感情的になりすぎないように」
教師から言われた言葉はこれだった。
優秀だった爆豪勝己は厳重注意のみで終わるのには理由があった。爆豪勝己はあの“雄英高校”に行ける可能性を大いに秘めている生徒である。
雄英高校...正式名称”国立雄英高等学校 “はNo.1ヒーローオールマイト、No.2ヒーローエンデヴァー、No.4ヒーローベストジーニストをはじめ、数々の名だたるプロヒーローを輩出してきた名門校である。
折寺中学から雄英入学者が出れば一目置かれるのだ。生徒ではなく学校を優先した結果緑谷出久のみが罰を受けるのだった。
緑谷出久の味方はこの世で1人しかいなかった。それは母である緑谷引子である。無個性の息子を持ち、周りからの目もある中、緑谷出久を信じ、いつも味方でい続けてくれていた。
しかし昔の面影はなくストレスにより肥満体型となっていた。それでも緑谷引子は息子を一度も拒絶することなどなかった。
「ごめんね...ごめんね出久...あなたを普通の子に産んであげられなくてっ...」
「違うよ...違うんだお母さん......お母さんは悪くないんだ...」
元はと言えば自分がヒーローを目指すなどとほざいていたから母を悲しませている。
必要以上に存在を否定される。
母以外、誰も肯定などしてくれない。
緑谷出久はヒーローになるのを諦めよう...そんな気持ちがドロドロと心を侵食していっていた。
そのことを母に伝えると少し複雑な表情をしながらも、どこか安堵した様子で息子の決断を聞き入れた。そしてこの決断と学校での出来事から母である緑谷引子は折寺中学から息子を救うために転校することを伝えた。
緑谷出久はこれ以上母を苦しませたくないとその案を受け入れた。ほんの僅かに憧れを持った爆豪勝己には何も伝えずに。彼から離れて、ヒーローになりたいという欲望を少しでも早く消すために。
緑谷出久、中学2年になる直前の春の時期に本来の歴史とは異なる世界を歩み始める物語が始まったのであった。
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そして4月中旬ごろ全国の中学校が入学式を終えてひと段落したころ。緑谷出久は折寺中学の黒い学ランとは真逆の白い学ランを着て、転校先の“見滝原中学”の職員室で担任の教師である早乙女先生と話していた。
「今日から遂にこの中学での生活が始まりますね。何か疑問などはありますか?」
「い、いえだ、大丈夫です」
「緊張しなくても大丈夫ですよ。皆さん優しい子ばかりですから。それにあなたの個性のこともこの中学では気にすることもありませんからね!」
母である緑谷引子が見滝原中学を選んだのには理由がある。理由は単純にこの中学は無個性の生徒の割合が多いことだ。今の世の中の中学もヒーロー科のある有名校への進学を目指している。つまり個性差別の機会が増えている。
しかしこの見滝原中学では生徒に合った進路を考える。今では希少な価値観を持った中学なのだ。
(ガラス張りで教室を区切っているんだ...それに教科書は使わないでパソコンで授業を...ここ最近の学校で導入され始めているらしいけどここまで進んでいるんだな)
見滝原中学内の構造に少し驚きながら、転校先のクラスのドアの前に着いた。
「では後で呼びますので緑谷君はここで待っていてくださいね」
早乙女先生が先に教室に入った。中から起立、礼という声が。出久はいつ呼ばれるか緊張しながらドアに耳を近づける。
「皆さん心して聞くように!シュークリームを食べるときはお皿に出しますか!?それとも手づかみですか!?はい!中沢くん!」
(シュークリーム?えっ、あのシュークリームだよね?ぼ、僕を呼ぶんじゃ!?)
「あ、えっと...どっちでもいい...と言いますか...お皿洗うのが大変だから...いらない、かなと」
「その通り!お皿など出さなくてよろしい!シュークリームを皿に盛り付けるかどうかで女の魅力が決まると思ったら大間違いです!......女子の皆さん、シュークリームを皿に出さなきゃ食べられないとか抜かすお上品ぶった男とは交際しないように!」
(あ、あの僕の...)
「そして男子の皆さんは絶対に皿の有無ごときにケチをつけるような大人にならないこと!はい、そして今日は皆さんに転校生を紹介します」
今!?という心の叫びを発した出久。しかし同時に急にサラッと呼ばれてしまったため準備などできているはずがなかった。
「緑谷君、入ってきていいですよ〜」
「は、ははは、はいぃ!」
ガンッ!!!
勢いよくドアを開けたことにより大きな音が出てしまう。これには出久だけでなく中にいた生徒達もビクッと体を震わせた。
だがそんなことよりも自己紹介で何を言うかをグルグルと頭を回転させるのに必死だった。そのため教室の真ん中に移動する際にカチコチに固まりながら手足を同時に出していたことにも気づいていなかった。
「お、折寺中学からき、きましたっ!みど、緑谷いず、くで、です!え、えっと...あの...あっ!シュ、シュークリームは、お皿がなくても全然大丈夫派です!よ、よろしくお願いいたしましゅ!!......あ゛っ......」
緑谷出久はコミュ障であった。前にいた環境が最悪だったこともあり母親以外の相手とはまともに話せていなかった。しかも本来の歴史よりも待遇がひどかったことによりコミュニケーション能力が更に下がっていた。
クラスメイトも出久の挙動にポカンとした顔で見ていた。出久は顔を真っ赤にして次の言葉をなんとか考えだそうとしていたが
「はい、今日からこのクラスの一員になった緑谷出久君です。そうですよね、シュークリームに皿がなくても問題ありませんよね。完璧な自己紹介をありがとうございます」
シュークリームの話を肯定しただけで満面の笑みを浮かべる早乙女先生に出久は少し冷静さを取り戻し、クラスメイト達は相変わらずだと言うような顔で苦笑いを浮かべるのであった。
「緑谷君はあそこの席に座ってください」
指定された席にそそくさと移動した出久。席に腰を下ろしてようやく一息つけると安心したとき、隣から声をかけられた。
「大丈夫?あの先生はたまにああなるんだ。初めてだとビックリしちゃうよね」
「ひょえ!?」
ただ声をかけられただけだが、相手が悪かった。相手は“女子”だったのだ。コミュニケーション能力が低い上に異性への免疫がこれっぽっちもないのだ。
悲しいことであるが普通に話せる異性は母親だけだった。前の中学では爆豪勝己の影響もあり、女子からは煙たがれていたのだ。
完全なるクソナード出久は顔を真っ赤に染め上げ、腕を顔に前に出しながら目線を背けた。
「えっと...どうしたの?」
「な、なんでもないです...」
チラッと声をかけてくれた女子生徒の方を向いた。ピンク髪を黄色いリボンで止めたピックテールの女子生徒、ニコニコと出久に話しかけてる姿には純真無垢と言う言葉が合っていた。
「私は鹿目まどか、よろしくね緑谷君。隣だから分からないことがあったら遠慮なく聞いてね?あと私保険係だから、怪我しちゃったら相談してね」
「よ、よろ、しくお願いします...」
たった一言であるが返答した出久。まどかは満足そうに頷いた。そんな中出久の心中だが
(じょ、女子と話しちゃったぁぁーーっっ!!!)
クソナードっぷりを発揮しているのだった。
こうして本来の歴史とは違う道を辿り始める緑谷出久は見滝原中学で人生の再スタートを始めるのであった。
環境が急激に変化したことにより戸惑う出久であるが、とある場所では出久以上に環境に追いついていない人物が存在していた。
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その人物がいるのはとある病院。その人物である彼女はいつもの冷静さを欠いていた。彼女はどんな状況でも冷静さを保てる精神力は持てていたはずだが
「どうしたの?そんなに怖がって...病気は治ったばかりなのよ?」
「そ、その声はいつもの看護師...さん......!?な、なぜ首が長いの...!?先生は何故羊の被り物を...!?」
「何言ってるんだメェ?被り物だなんて...まさか手術で何かの後遺症が...?」
「何言ってるの“暁美”さん?先生が羊なのも、私の首が伸縮できるのも“個性”だからよ」
「個性って言葉で簡単に片付けていい問題じゃ...!?」
目の前の不可解な状況に困惑する彼女...暁美ほむらも本来の歴史とは違う人生を歩み始める。
これは本来決して交わることのなかったヒーローを諦めた少年と魔法少女達の物語である。
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