そんなこんなで今回は空き教室の亜鳥ちゃんの落書き回をお届けします。亜鳥ちゃんは何を空き教室のホワイトボードに刻んだのか⋯そして、秀と優ちゃんはどうなるのか?どうぞお楽しみに!
また後書きにてお会いしましょう。
side秀
ある昼休みのこと、今日も今日でみんなは変わらないテンションで昼休みの時間を楽しむ。俺はさっきまで涼の勉強を教えていてこれから教室に戻ろうとすると、優が陰でいつものことをやっていた⋯水鳥先輩の観察だろう。
「また水鳥先輩の観察か?」
「うわっ⋯お兄ちゃん!?もう、びっくりさせないでよ。」
「先輩と話したかったら堂々と話しかければ良いのに。」
「そんなこと言われても⋯神のような先輩に話しかけるなんて恐れ多いよ。あっ、ちょっと待って!今空き教室の中に入ったよ⋯とりあえず追いかけないと。」
「おい待て、優!」
優はそう意気込んでから空き教室に入った水鳥先輩を追いかける。あの教室は俺が2年生に上がってからは空き教室になっていて、ほぼ倉庫みたいな状態でここに入る人はほとんどいない⋯そんな教室で先輩は何をするのだろうか?
(5分後⋯)
「傑作だわ〜♪」
しばらく様子を見ていると水鳥先輩がノリノリな感じで空き教室から出てくる。一体、中で何をしたのだろうか?傑作とは言ったが、そこで何かを作ったものと思われる。俺達は先輩の姿が見えなくなったことを確認してその教室に足を踏み入れた。
「傑作とおっしゃってたけど、何だろう⋯」
「何か工作とか作ったんじゃねえのか?とりあえず調べてみようぜ。」
俺達は教室の中を隅から隅まで探し回る。工作⋯とは言ってもそれらしいものは見られず、工作を作ってたわけではなさそうだ。そんなこんなでホワイトボードに目を移すと、そこには『あとり』というサインが記された2匹の生き物らしきものの絵があった⋯
「何だこれ⋯優、ちょっと見てくれないか?」
「どうしたのお兄ちゃん⋯ってこれ、お兄ちゃんが描いたの?」
「ちげぇよ!俺はこんなに下手じゃねえし⋯水鳥先輩が描いた落書きだよ。」
「なっ⋯お兄ちゃん、何てことを言うの?水鳥先輩の絵は世界の芸術としてアトリストが認めている世界遺産なんだよ?そんなのが下手だなんて失礼な!」
「いや、勝手に崇めてるだけだろ⋯右下に『あとり』ってサインがあるぞ。」
「本当だけど、これ⋯先輩が描いたのかな?先輩の絵を見たことないからよく分からないよ。」
(見たことねえなら世界遺産とかどうのこうのベラベラ語るな!)
俺が水鳥先輩が描いたと思われる落書きを見せると優は先輩が描いたという現実を最初は否定するも、本人のサインを見て少し信じる方向に傾く。ただ、本人のを見たことないのに世界遺産だのどうのこうの語るのはちょっとなぁ⋯少しは現実を見た方が良いだろう。
「ところで、お兄ちゃん⋯仮に先輩がこれを描いてたとしたら先輩は何を描きたかったんだろう?」
「そうだな⋯生き物であることは間違いないはず。ただ、人間ではねえな⋯頭はあっても角はあるし四足歩行だし。しかも縞模様と尻尾にも顔がある。マジで何だこれは⋯優は何だと思う?」
「うーん⋯でも、先輩のお考えを自分の物差しで測るのはダメだと思うよ?私やお兄ちゃんに見えてないものがきっと先輩には見えてるはず!そう考えると⋯これは鵺じゃないかな?」
「鵺?どうして水鳥先輩が鵺をホワイトボードに描くんだ?」
「どうしてかは分からないけど猿の顔、虎の手足に蛇の尻尾!この特徴は間違いなく鵺だと私は思うよ?」
優は水鳥先輩の描いた落書きを見て鵺ではないかと推察する。描いた真意は優でも分からないが、何かがあって鵺を描きたい気分になったんだろうな⋯でも、あんな楽しそうな感じで鵺って描くものなのか?そこは疑問符だ。
「でも、どうして鵺がスニーカーを履いてるんだ?水鳥先輩のセンスが独特すぎるだろ⋯そうなると、隣の生物は牛の身体に人間の頭。鵺の流れからしたら件(くだん)か?」
「それもあるね⋯でも、先輩はどうして不吉な象徴である生き物の鵺と件を描いたんだろう?」
「むしろ俺が聞きたいよ⋯とりあえず、この絵面は不吉だから描き足しておくか。」
そんなこんなで俺は水鳥先輩のサインを下にして傘を描き足す。鵺と件が並ぶ絵面は不気味だろうからちょっと恐怖心を紛らわせようと相合傘を作ってみた⋯
「あっ、お兄ちゃん?まさか自分の名前を書こうとしてないよね?」
「ギクッ!?な、何を言ってるんだよ⋯俺がそんな中学生までがやることをするわけねえだろ?第一相合傘とか迷信だし遊びだし⋯」
「でも、『秀』って書こうとしてたじゃん!私にはお兄ちゃんのやりたいことは分かるからね?」
(なっ⋯コイツ、水鳥先輩とのことになると勘が鋭くなりやがって!流石に行動が読まれたか!?)
「言っておくけど、先輩と相合傘で隣になるのは私だよ?変態なお兄ちゃんにその座は渡さないんだから!」
「変態はおめぇもだろ!相合傘ってのは男女のカップルで成り立つってものだ。お前が相合傘に入る資格はねえんだよ!」
「二人とも楽しそうね、私も仲間に入れてくれる?」
俺達が水鳥先輩との相合傘の隣の座を争っていると、その張本人が教室に入ってきては背後から声をかける。まさかこのタイミングで本人が入ってくるとは⋯かなり間が悪すぎだ。
「せ、せ、せ、先輩!?」
「この空き教室に何か御用でしょうか?」
「もう、優ちゃんも秀くんも反応が可愛いわね。実は私、さっきホワイトボードに絵を描いてみたの⋯どうかしら?」
「す、す、素晴らしい絵だと私も思います!」
「俺もです⋯」
「流石、優ちゃんと秀くん⋯見る目あるわね。今朝散歩した時のワンシーンがよく描けてるわぁ♪」
優と俺が水鳥先輩の絵を褒めると、描いた張本人は鼻高々に喜んでどんな絵なのかを説明する。散歩の時のワンシーンってその時に鵺と件を!?
「先輩、俺もまさかと思いますけども⋯鵺と件と散歩したんですか?」
「鵺?件?何を言ってるの?とにかく可愛いでしょ⋯ウチのワンちゃん達♪」
「ええっ!?」
俺が絵を見た上で素直に疑問をぶつけると、水鳥先輩は何を言ってるのかと言わんばかりにドヤ顔で自分が飼ってる犬を描いたとアピールする。いや、これが犬だなんて無理がありすぎだろ⋯どんだけ絵心ないんだ!?ア〇トークに出てくる絵心ない芸人と同レベどころかそれ以上の特級呪物を生み出してるだろ⋯
「あはは⋯そうですよね?本当にウチの兄が本当に申し訳ありません!とっても可愛いですよ?エキゾチックというか⋯」
(優、お前⋯都合が悪くなったら俺を切り捨てようとしやがって!お前が鵺だのどうのこうの先に思いついたんだろ!?)
「でしょう?チャームポイントはこの大きめな耳と⋯」
(耳どこ!?)
「愛らしい肉球ね♪」
(スニーカーじゃねえのかよ!)
水鳥先輩は自分の描いた犬の絵を解説する。こうして聞いてても全然納得できない⋯どんだけ絵が下手なんだよ。でも、描こうとしたいものは何となく分かる。これは馬鹿にできたもんじゃねえな⋯
「優ちゃんと秀くんは何か飼ってたりするの?」
「柴犬を1匹飼ってます。とりあえず、俺と優で自分の家の柴犬描くんで見比べてもらって良いですか?」
「ええ、見せてもらうわね。」
そんなこんなで俺と優は即席で自宅で飼ってる柴犬を水鳥先輩の前で描いてみせる。俺と優は成績優秀なものだからもちろん美術の成績も良い⋯なので絵心はどっちもあるってわけだ。
「どうですか?俺と優で即席で描きましたけど⋯」
「わぁ⋯可愛い。優ちゃんのはゆるゆるで可愛いし、秀くんはなかなかリアルながらも可愛い。実物もこんなに可愛いと思うと私も会いたいなぁ⋯優谷家の柴犬ちゃん。それともう1匹、優ちゃんとも遊びたいわ♪」
「いや、私人間ですけど⋯」
「それにしても、2人ともなかなか絵が上手ね?」
「ええっ、そうですか!?」
「いやぁ⋯自慢じゃないんですけど、俺は漫画とか芸術作品とかあらゆるのを色々見て絵の勉強を独学したもので。」
「もちろん、私の次にだけど!」
(どこが!?)
水鳥先輩は俺達の絵を褒めると、それに被せて自分の次だとドヤ顔で言い放つ。いや、あなたの絵は正直言ってア〇トークに出した方が良いかと思うんですけど⋯この人は芸術のセンスがかなりなさそうだ。ポンコツなのか、天然なのか、感覚がズレてるのか⋯
「あっ、そうだ⋯折角だから私の似顔絵を2人に描いてほしいな?」
「そ、それは⋯」
「分かりました。俺が描いてみせますよ!先輩は素敵なお方ですからね⋯その通りに描きます。」
「本当に!?何故か今まで私の似顔絵を誰も描いてくれなかったのよ⋯秀くんが描いてくれるなんて嬉しいな♪」
「お、お兄ちゃん⋯何を考えてるの!?先輩の似顔絵とか失敗したらこの世界が滅びるぐらいの怒りの雷が先輩やアトリストから降りかかるんだよ?覚悟できてるの!?」
「優ちゃん、私は怒らないから大丈夫よ?優ちゃんにも描いてほしいなと思ったけど、ダメかな?その代わりに優ちゃんと秀くんも描いてあげるから。」
「そこまでおっしゃるなら⋯よろしくお願いいたします。」
(とりあえず、大丈夫か?まあ、下手だと気づいて自信喪失しないように接待というか忖度はしないとかもな⋯)
そんなこんなで俺と優は水鳥先輩、水鳥先輩は俺と優の似顔絵を描くことに。俺と水鳥先輩はそれぞれ何も気にせずマイペースに描いているが、優は緊張してなかなかペンが進まない⋯しかし、実はコイツは密かに水鳥先輩の同人誌を描いたりしているらしい。ただ、恥ずかしくて世に出せるネタではなく俺にだけは見せたものの先輩の前では出さないと宣言している。実際に読んでみて、その中身は優の妄想の塊だったのは言うまでもない⋯
「でーきた♪」
「はやっ!?」
「早いですね⋯どんな出来ですか?」
「見て!優ちゃんと秀くん♪」
そうして水鳥先輩は自慢げに堂々と優と俺の似顔絵を見せると、その出来を見た優と俺は絶句してしまう⋯何と、俺達が鵺のように描かれてあったのだ。辛うじて俺のに関しては眼鏡をかけていたので俺だと分かったのだが、これを忖度してどう褒めろと言うのだろうか?褒める言葉がパッと浮かばない。
「なかなかですね⋯俺、先輩の絵を見てますます尊敬してます。」
「嬉しい!あと、時間が余ったから涼風さんと瑠璃葉さんの似顔絵も描いたのよ?」
(全部鵺⋯!?)
「あと、私とウチのワンちゃん♪」
(鵺が鵺を連れて散歩してる!もうこの人の芸術センスは末期だよ⋯涼やるーちゃんですら鵺とかこんなの世に出したらアトリストが全員幻滅するぞ!?)
「大変なんですね⋯先輩。」
「何が?」
優は水鳥先輩の絵を見て心情を察したのか涙をこぼしながら彼女を慰める。ただ、慰められた先輩からしたら何のことだかさっぱりな状態⋯本当にこの人には絵心がないという自覚がないのだろうか?
「それよりも、優ちゃんと秀くんは描けたかな?」
「俺は描けましたよ。先輩よりは時間をかけました(これでも即席)けど、特徴は捉えたと自負してます。どうですか?」
「凄い、まるで私の顔写真のようね。笑顔が素敵で自分ながら照れちゃうかも⋯」
「お兄ちゃん、凄い⋯本当に先輩そのものみたいだよ。可愛いしリアルだし!」
「だろ?お兄ちゃんの本気、なめんなっての!」
「優ちゃんの方はどう?」
「それが⋯その、すみません。」
水鳥先輩は俺の描いた先輩自身の似顔絵を褒めた後に優の出来を確認するも優の方は結局あれから何も描けず⋯それだけプレッシャーがあったのだろうがせめて少しは手を進めるべきだったのではないか?
「あらら、これは時間がかかりそうね⋯それじゃあ、はい。これならじっくり描けるかしら?」
そして、水鳥先輩は最終手段として椅子に座ってから優の前でモデルとなった。何という気遣い⋯上手く描けなくて悪戦苦闘している優に助けの手を差し伸べるとは、この人聖人すぎる!普段は天然だけどいざという時には頼りになる先輩だ。
「お、お兄ちゃん⋯どうしよう?」
「とりあえず、描いてみろって!先輩がここまでしてくださってるんだ。頑張れ!」
「う、うん⋯!」
そして、優は俺や水鳥先輩の後押しもあり何とか似顔絵を描いていく。ただ、緊張のあまりに手が震えている⋯優は果たして大丈夫なのだろうか?
(5分後⋯)
「あっ、描けたみたいね。どれどれ?」
「えっ、ああっ⋯」
「⋯」
それから5分で優は水鳥先輩を書き上げることには成功。しかし、その出来は水鳥先輩の鵺風の絵にも引けを取らない鵺である⋯一番失敗したらダメだと訴えてた優が皮肉にも大失敗を犯してしまった。
「可愛いワンちゃんの絵だ!」
(おいおい、優が特級呪物を描いてどうする…ってか、先輩もそれはワンちゃんじゃなくてあなたの似顔絵ですよ?)
「いやぁ、なかなか大作になったわねぇ⋯そうだ、記念に写真♪」
水鳥先輩はホワイトボードに刻まれた絵を見て喜ぶ。しかしながら、何という地獄絵図だろうか⋯特級呪物クラスの絵が大半を占めていて先輩も何が何なのか(元からだが)感覚麻痺を起こしている。これが女の子のお絵描きとは思えない光景だ⋯その中でも水鳥先輩はスマホで記念撮影をしようとしていた。
『3年の水鳥亜鳥さん、至急職員室に来てください。』
しかし、そのタイミングで校内放送が流れて水鳥先輩に呼び出しがかかる。職員室ってことは教師からの呼び出しであろう。これは流石にすっぽかすことはできないだろうな⋯ましてや風紀委員長なら尚更だ。
「あらら、呼ばれちゃったみたい⋯優ちゃん、写真お願いしちゃって良い?」
「あっ、はい⋯」
「後で送ってね♪」
「お疲れ様です!」
そう言い残して水鳥先輩は空き教室を出てから職員室へと向かった。本当にこの人は忙しい中でも楽しむことを忘れていない⋯まるで風紀委員という堅苦しい仕事に縛られていないかのように。俺もこういう人になりたいなと心から憧れをまた抱くのであった。
「お兄ちゃん、これ⋯写真撮って良いのかな?魂抜かれそう⋯」
「まあ、縁起は悪いかもしれねえが変なことが起きなきゃ問題ねえよ⋯って、えっ?」
「どうしたの、お兄ちゃん⋯えっ?」
俺がホワイトボードを一通りに確認すると、俺がサインに被せるように描いた相合傘の横に『ゆうちゃんとしゅうくん』と書かれてあってそこには『またやりましょ♪』と添えられてあった⋯
「「コヒュッ!?」」
side out
~~~~~~~~
side涼
「⋯」
しばらく優が戻ってこず2時間待った私は例の空き教室に入る。そこには魂が抜けて抜け殻になっていた優と秀兄の姿があった⋯この2人の顔、とても安らかで幸せそうである。
(優と秀兄、可愛い⋯写真撮っちゃおう♪)
私はスマホのカメラで幸せそうな顔をしている2人と一緒の自撮りを撮影した。これで鳥先よりも1歩リードかな?絶対に優と秀兄はあの鳥女には渡さないから⋯嬉しさとその気持ちがますます強くなるのであった。
いかがでしたか?秀も交えた落書き大騒動⋯途中では相合傘の横で喧嘩したりとまあ色々ありましたけど、結局は2人とも書いてもらってこれに秀と優ちゃんは気を失いました。最終的には涼ちゃんがこの2人と写真を撮ってほっこりエンドでしたけど、原作でもほっこりしましたよね⋯ただ、2時間もコヒュッて気を失うのは笑えましたw
その中で亜鳥ちゃんの気配りができるところも出てました。こういうところがやはりみんなから慕われる秘訣なのかなとも思ってます。アトリストはこれにも撃たれたりしてるんでしょうね⋯もちろん、美貌とか変に作られたカリスマ性とかもその要因でしょうけども。
次回は映画を観に行く回でるーちゃんがまた出てきます!優ちゃんとるーちゃんの漫才、そして秀とどうなるのか⋯そこをどうぞご期待ください。
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