Digital Doll ーThe world within the programー   作:菓子好きの優里

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私は、誰も守れないらしい。
妹や優しくしてくれた者、愛してくれた者も。
輪廻転生や、それに付随する何かがあるのならば私は手に握った物を守れる人間になりたい。
いや、違うなそんな人間に私は自らの手でなるんだ。
私は神を見た。
愛に飢え狂ったように人を殺す人でなしの。
だから私は神の手は借りない。


第一話 始まり

世界は破滅の一途を辿っていた。

未確認生命体がある日突然現れたからだ。

名前はバグ。

まるでコンピューターのバグの様に形容し難いツギハギの見た目をしているからだ。

バグには戦車も、戦艦も、核ミサイルも通用しなかった。

そんな中、一人の天才プログラマーが一つの発明をした。

後にデジタルドールと名前が付けられたそれは、バグに有効打を与え人類の反転攻勢の狼煙となった。

しかし、それは女性のみしか扱えないと言う重大な欠陥を抱えている。

 

△▽

 

—俺は、毎日夢を見る。

少女が泣き、好きだった人が目の前で次々と殺され、そして自身も殺される夢を。

ヤケに現実的な夢で、毎朝飛び起きる。

だから寝るのは嫌いだ。—

 

「口の周り、自分でふけるか?」

「もーお兄。私も義手の扱いには慣れたのよ?バカにしないで」

二人の男女が静かな食卓で笑い合っている。

兄妹だろう。

だが、顔の雰囲気が全く違う。

兄の方は紺色の美しい髪の毛を少し長めに切り揃え、アホ毛が特徴的。

少々女顔の純日本人。

対し妹はどう見ても日本人には見えない。

綺麗な白髪を長く伸ばし、優しい目元が可愛らしい。

顔つきから察するに英国人の様だ。

兄はアオ。

妹はシアンと言う。

彼らは血が繋がっていない。

孤児院に捨てられ同じ家に拾われ、また捨てられた悲しき兄妹なのだ。

今は小さなマンションの一室に二人で生活している。

なぜ、彼らは捨てられたのか。

兄は記憶がない。

当初は文字の読み書きすらできない程に記憶を喪失しており、日本語のみを覚えている状態だった。

そして妹の方はバグの被害に遭い、両足の太ももから下と右腕の肩から下がない。

正直、里親はその二人に嫌気がさしたのだろう。

今は行政の援助のもと、クリスタ・スクールと呼ばれる学園に通っている。

「シアン。明日から二学期だな」

「はい。お兄は学校、楽しい?」

「そうだな友達もいるし、楽しいよ」

「私はこの体の所為で行けていないので、羨ましいです」

シアンはそう言うと、少し俯き浮かない顔を見せる。

「あ〜やめてくれよ。シアンの美人が台無しだ。」

アオはそういうとシアンの顔を優しく撫でる。

「どうだ?今日は二人でショッピングでも」

アオのその言葉に、シアンは顔がパッと明るくなる。

「はい!いきましょう!!!」

そう言い手をパタパタさせるシアン。

これは着替えさせての合図だ。

アオはそれに気づくとクローゼットをあけ、シアンの服を見繕う。

「どうかな、これは!」

アオの選んだコーデを見たシアンは頬を膨らませ、

「ぶー。お兄センスないよ〜」

と言う。

それを聞いてムスっとするアオ。

「なんだと!俺のこの前衛的なセンスがわからんと言いたいのか!」

「前衛的じゃなくても良いのですよ?それよりも私はこっちが良いです!」

そう言い、シアンが指を刺したのは落ち着いたデザインのワンピースだった。

「わかった。ほら腕あげる」

アオはそのシアンの選んだワンピースを手に取り着せる。

そしてシアンの座る車椅子の持ち手を掴み、押してやる。

「ではいきますか」

「はい」

二人はそう言い、狭いマンションから出る。

現在は8月の最後の日。

天候は雲ひとつない晴天で、まだ朝早いってのに夏休みを謳歌したい学生たちは遊びの為に歩いていた。

ここはクリスタ・スクール。

世界有数の学園都市。

全体的に自然との調和を大事にし、緑と水色そして透き通る様な建築が特徴的な街並みには、学校を起点に娯楽施設や飲食店に大型ショッピングモールが並んでいる。

バグの進行以降、バグの研究とそれと対抗するためのデジタルドール装者の人材育成を目的としたスクールと呼ばれる学園都市は世界中に建てられた。

ここ、クリスタ・スクールもそれの一つなのだ。

そしてアオはデジタルドールのエンジニアになるために、日々頑張って勉強している。

ここ最近、といっても今が16なので5年以上前だが日本語を喋るのがやっとだったんだ、遅れを取り戻すのは大変だ。

だが、今は最愛の妹との時間を大切にしたい。

アオの考えはそれに尽きるのだ。

少し歩いて電車を一本乗ってついた場所こそ、この都市一番のショッピングモール。

アルプスである。

中はエアコンが涼しく効いており、汗を冷やしてくれる。

「寒くないか?」

アオはシアンにそう聞く。

元々冷え性なシアンその上今は汗を軽くかいている。

エアコンは気持ち良いが、風邪を引いたら元も子もない。

「少しだけ、寒いです」

シアンがそう言うので、車椅子についているポケットから一枚のタオルケットを取り出し、シアンにかけてやる。

「ありがとう」

シアンがそういい、可愛い笑顔を見せてくれる。

アオはそれに返すように笑ってやる。

そんな二人に声をかける者が現れた。

「よっすカップル兄妹。今日もラブラブで」

「誰が、カップルですか!」

「誰が、カップルだ!」

二人は声を揃えそういい、振り返る。

そこには一人の少年が立っていた。

アオの学友のハルキである。

少しチャラそうな金髪少年は二人の前に立つ。

「買い物か?」

「そんなお前はサボりか?塾だろ今日も?」

「痛いとこ付くね?安心しろ今日は休講日だ」

「ならよかったです。サボりはいけませんからね」

「シアンちゃんに言われると、流石に応えるね」

「俺の忠告は無視するくせに」

「ははは、俺もお前らパーティーに混ざっていいか?」

アオの言葉を華麗に無視したハルキはそう、二人に聞く。

アオはシアンの顔を見ると、静かにシアンは頷くので、

「良いぞ」

とハルキに行ってやる。

するとハルキは嬉しそうな顔をして、アオの横まで来た。

「またいつもの行き当たりばったりショッピングだろ?」

ハルキはそう聞く。

結構な頻度で兄妹はショピングする為にアルプスに来るのでハルキの行き当たりばったりという言葉に頷くしかないアオ。

もう行くところも行き着くし、暇だから来ているだけになりつつあるショッピング。

「それなら、映画でもどうだ?ポップコーン位なら奢るぜ?ちょうど見たいアクション映画あったからさ!」

アオとシアンは少し悩んだあと頷く。

 

映画館は人が少なく閑散としていた。

夏休みだと言うのにこの少なさは、今のデジタル社会を象徴している様に感じた。

今時映画を映画館でって言うのは珍しいのだろう。

セルフ券売機でハルキは3人分のチケットを買う。

後ろの隅の方の席。

シアンの車椅子は折り畳みできるので、あまり気にする事が無い。

何より人も少ないから迷惑を感じる者が居ないのだ。

映画館の座席にシアンを座らせ、アオとハルキはシアンを真ん中にして座る。

「知ってるか?この映画の俳優スタント使わないんだぜ?」

「前作の爆発シーンの演技とか圧巻ですよね」

ハルキとシアンは両者共映画を好むので中が良い。

アオ的にシアンが付き合う男性はハルキの様な人間が良いよな、何て考えていた時期もあるが、それは本人の決める事なので考えない事にしている。

そんな事を考えていると、映画が始まった。

 

△▽

 

一人の大きな斧を手に持った女性が街の中を駆けていた。

斧は女性と同じだけ丈がありそうなサイズであり、刃とは反対の方向に威力を上げる為のスラスターがついている。

グリップには握り込む方式のレバーがついている。

うさぎの小さなぬいぐるみのキーホルダなんかも付いていて、殺意とキューティクルが交わった斧は全体的にメタリックな黒色をしているが、その上に蛍光色の緑のラインがアクセントになっている。

さて、そんな斧を持っている女性はメイド服を着ていた。

ロングスカートにナイフの刺さったホルダーを付け、綺麗な金色の髪の毛をヒラヒラと靡かせている美人さん。

そんな女性は後ろを振り返る。

そこには、一体の醜い生物がいた。

まるでゲームのグラフィックバグの様な一部が欠損したり、グロテスクに内部が丸見えの、それでいて全身が黒色の一部が取ってつけたようなカラーバーが目立つ異様なそいつがバグである。

しかし、その両者とも街の人は気づいていない。

それどころか、両者の体を街ゆく人たちはすり抜けている。

「隠匿迷彩はあと30分しか持たないのに!」

女性はそう叫び斧を大きく振り上げ、バグを真っ二つに両断する。

だが、その後ろを見るとそこにはまだまだ沢山のバグが溢れかえっている。

「クソ」

女性が逃げるよに飛び込んだのは、一つの建物だった。

その建物には大きく雅でそれでいて踊っているような文字でアルプスと書かれていた。

 

アオ達は映画を見終え映画館前のゲームセンターに居た。

「いいか?アオ、シアン。UFOキャッチャーは物理なんだ。科学なんだ。だから俺は行ける!」

ハルキはそう叫び、すでに万を注ぎ込んだUFOキャッチャーの筐体にしがみついていた。

—あぁ、哀れなり。

アオはそう心で呟き、ため息を吐く。

シアンは心配そうな顔をしてあたふたしている。

「ハルキさん、もう負けたんですよ・・・もう負けたんですよ!」

シアンがそう言うと、ハルキは振り返る。

「何も終わっちゃいないんだ!何も!」

そう叫び、100円玉を筐体に入れる。

「俺にとって戦いは続いたままなんだ!。この景品に一目惚れして小銭を入れ続けた、しかし取れなかった。そして両替の為に離席したら知らんガキが100円で取りやがった!。あげく、横に居た母親に感謝の限りを並べやがった!。あいつはなんだ!俺の万札の存在も知らないで!。頭に来たぜ!」

景品はサメの大きなぬいぐるみ。

すでに彼の財布の中にたくさん入っていた万札は姿を消していた。

「悪気はなかったんだよ。子供のしたことよ」

シアンは神妙な面持ちでそう告げる。

「子供!俺だって世間じゃ子供だ!」

16歳を子供として扱うか、微妙である。

そう叫ぶ、ハルキの肩をアオは叩く。

「貸してみ?」

そう、アオは言うと慣れた手つきでボタンを押下しアームは動く。

まるで針の穴に糸を通す様な細やかな調整で、的確にぬいぐるみの重心を的確に捉え、アームはそのまま取り出し口に落とす。

「アオ、お前、、、、、、」

「流石に見てらんなくてさ」

「アーーーーオーーーー」

ハルキは勢いよくアオに抱きつく。

アオはハルキの背中を叩く。

「よかったですね、ハルキさん」

シアンはハルキにそう言う。

するとハルキはシアンに抱きつき。

「やったよ〜〜〜〜〜」

と叫ぶ。

その時だった。

ドンと芯に響くような重厚な音が響き、地面が揺れる。

「なんだ?」

アオはその状況を疑問に思い、筐体からぬいぐるみを取り出し。

「とりあえず、出るべきかもな」

と言い、シアンの車椅子を押す。

それは他の人々も同じなようで、一回の出入り口に裏口。

パーキングへでる計5ヶ所の出入り口には沢山の人が押し寄せていた。

「こりゃ、当分出れそうにないな」

そうハルキがつぶやいた瞬間だった。

ピーンポーンパーンポーンとスピーカーが音を奏で。

「館内でバグが出現しました。皆様はスタッフの指示に従い。焦らず退避してください。」

と女性の声が聞こえる。

そのメッセージが裏目に出たのか、人々は出入り口に押し寄せ、全然進まない。

「クソ。少しは冷静になれよな!」

アオはそう呟き。

シアンは少し体を震わせていた。

怖いのだろう。

バグに一度襲われている訳だ、トラウマを呼び起こしてしまったのだろう。

アオは今日ショッピングしようと誘った事を後悔してしまいつつも、仕方ないことだと割り切り、安心させるよに優しくシアンの頭を撫でる。

「安心しろ。俺もハルキもついてる」

と言ってやる。

するとシアンはアオの目を見て、静かに。

「ありがとう」

と言う。

アオは少し笑い。

「ハルキ!確かスタッフの出口あったよな!」

「あ、、あぁ!まかせろ!元々ここでバイトしてたんだ!」

ハルキはそう言い、人の流れとは逆に走り始める。

アオもシアンの車椅子を押して付いていく。

ついたのはバックヤードだった。

スタッフオンリーと書かれているが、今は非常時その言葉に効力はない。

肝心のスタッフ達は対応で出払っていたので、止める人間はいない。

少し広くて肌寒いバックヤードを通っていた時だ。

形容し難い機械的な金切り声が聞こえ、3人の足が止まる。

3人は恐る恐る振り返る。

そこには、ちょうどアオ二人分くらいのサイズのバグが立っていた。

腕は刃の様に鋭利に鋭くなっており、明確な殺意を物語っている。

ここは倉庫、背の高い棚には沢山の段ボールがつまれ、それは溢れ出している。

入り組んだ一本道とかした倉庫。

出口は背中の後ろ。

走れば間に合う、後ろからはモンスターが来る、大丈夫ゲームでよく見る光景だ。

アオは車椅子をしっかり掴み、勢いよく走り出す。

ハルキはその後ろを追うように付いていく。

走れば出口はすぐそこだ。

しかし、相手は猫のように動き始めた3人を本能で追い始めた。

歩幅が広いバグの方が早い。段ボールを避ける3人に対し、踏み潰して行くバグ。

だが、バグに残念なお知らせだ。

もうすぐ3人はここを出る。

あとちょうど棚一つ分の距離。

勝った!と確信したその時だった。

ガシャンと大きくけたたましい音がなり、目の前右手側にあった棚が、道を塞ぐように倒れる。

積まれていた段ボールや重そうな家電が完全に出入り口を通せんぼする。

「嘘だろ、、、」

アオはそう呟き、ハルキはため息を吐く。

「お兄、、、、、、」

シアンは不安そうな目をアオに向ける。

後ろを振り返ると、先のバグがこちらを嘲笑う様にけたたましい咆哮をする。

そして、右腕を振り上げる。

ここはバックヤード。

薄暗くて、声が響く。

それは彼ら以外誰もいないと言う事実の証明。

死んだなコレわとその場に座り込むハルキ。

庇うようにシアンに覆い被さるアオ。

誰一人、希望なんて持ち合わせていない。

死を脳内で連想し、神に祈りを捧げたその刹那。

鼓膜を押し付ける様な鈍い重低音が響く。

肉を引き裂くような音と、何か振るわれ空気を揺らす音が響く。

「クソが!!!これで切り裂けないって嘘でしょ!」

口の悪い女の声が聞こえ、アオは目を開ける。

そこにはバグとタイマンでやり合う女性の姿があった。

纏う衣はビリビリに破け、綺麗な柔肌を露出させている。

ロングスカートが蝶々の様に可憐に空を舞い、その容姿は天女のよう。

手にはその見た目とは不釣り合いなほど大きい無骨で無粋な斧を持っている。

その女性は感情の昂りを一才隠さぬ叫び声をあげ、何十回もバグを切りつける。

「洒落臭い!!!!」

そう女性が叫び、手元のレバーを握り込む。

すると斧の背後から真っ青な炎が吹き出し、斧を押し出す。

その勢いを華奢な体で女性は制御し、勢いよくバグを切りつける。

真っ二つに上下に弾け飛ぶバグ。

女性はバグを倒したのだ。

来ているメイド服はボロボロで、綺麗な白い肌はバグの体液で汚れている。

そんな女性はハッとした顔をして、こちらに駆け寄る。

「大丈夫ですか!すいません遅れてしまって」

床に優しく斧を置き、アオの前までくるとアオをまじまじと見る。

「怪我はないですね。よかった〜あなたに何かあったら私はどうすれば良いのか、、、」

そういう女性は色々わちゃわちゃ話しているが、アオ達は訳がわからなく、目をパチパチさせる。

その姿を見て、何かを思い出したような表情をし

「すいません。私は自己改善型汎用大規模言語モデルのイロです!お久しぶりです!」

女性はそう言った。

「お久しぶり、、、初めましてなんですけれど、、、」

アオはそうつぶやく。

「あ、そっか。なんでもありません」

イロはそういうとアオの肩をポンポンと叩き立ち上がる。

「出口まで案内します。ついてきてください!」

そう、イロが言った瞬間だった。

ガンと大きな音がなり、アオの視界からイロが消える。

違う吹き飛ばされたんだ。

横を見ると壁にめり込み血をダラダラと額から流すイロがいた。

気絶しているのか、ピクリとも動かない。

「あ〜邪魔!彼女を献上できないじゃないの!」

小さな少女の声がしたかと思うと、物陰から背の低い小学生くらいの少女が現れる。

一つ変な点を上げるとすれば、バグを数体引き連れていると言う点だろうか。

「何あの子」

ハルキはアオの耳元でそう聞く。

シアンはアオの腕の中で恐怖と不安とでぐちゃぐちゃで泣きべそかく一歩手前と言う感じだ。

「お兄、、、怖い、、、、怖いよ、、、」

「心配するな。」

「君は何者なんだい?」

アオはそう、目の前の少女に優しく聞く。

すると少女は笑い出し。

「忘れたんですね!いや、、今は別人なのかな?じゃあ自己紹介をしよう。私は天羽(あもう)(しず)、年齢は11歳よろしくね」

雫はそう言い、軽く笑う。

「それじゃ!彼女を頂いていくよ!」

そう叫び、雫は手をアオとシアンの方に伸ばす。

—シアンが危ない!!!

直感でそう感じたアオはその手を叩く。

「何さ?」

「渡さねーぞ」

「何?」

「渡すかよ!!!!」

そうアオは叫び雫を蹴り飛ばす。

ウェイトの軽い少女の雫は大きく吹き飛び、その隙にシアンを抱え上げたアオはハルキと共に走り出す。

とりあえずこの倉庫か出るのが先決だ。

出る事さえできれば、人に紛れてどうにでもなる。

アオはシアンを大事に抱え、出ようとしたその時。

バグの数体が行手を塞ぐ。

「残念でした」

雫の声が聞こえ、奥から飛ばされた雫が笑いながら来る。

「ゲームオーバー」

そう言い笑う雫。

アオはその顔が物凄く癪に触る。

「ハルキ、シアンを持てるか?」

「は!何する気だよ!」

「お兄!!!」

アオは押し付けるようにシアンをハルキに渡す。

そして床に転がっているイロの斧を手に取り構える。

とても重い、だが出来るはずだ。

背中にも重い者抱えているアオ。

「バカか!!!相手はバグだぞ!」

「知るかよ」

そう言いアオが斧を振り上げ、雫がバグを操ろうと腕を伸ばした瞬間。

「アオ!!!!動くな!!!!!」

声が聞こえ、横を見るとイロが立っていた。

「お前、まだいたのか」

雫はそう吐き捨てる。

「ざんね〜ん。バグ少女に殺される程やわじゃないのよ」

そう叫ぶとイロはアオの方に走りより、そのままアオを押し倒す。

「質問はなし!!!今からあなたの力を解き放つ!!!!」

そうイロは叫び、アオの首に一つの鍵を突き立てる。

何をする気だとアオが思った瞬間。

アオ自身の首に一つの鍵穴が現れる。

そして鍵を回した瞬間だった。

「え?」

アオの頭の中が掻き乱される様な感覚に陥り、体が燃えるように熱くなる。

視界が暗くなり、こう囁かれた。

『おかえり、どうすんの?私は元の人生に戻りたい?。それとも、まだ保留?』

「何を言ってるんだ?」

『いいから。助けたいんでしょ!妹!』

「そりゃ助けたいさ」

『じゃ、私に戻ろ?』

私に戻るそれが何を意味するのか一才わからないアオ。

しかし、それは危険な物のように感じる。

アオが答えを決めあぐねていると、その声はクスリと笑い。

『私らしいね』

そう言い残し、去っていった。

アオは視界が戻ると、そこには少し笑っているイロと、驚きの表情を浮かべるシアン、ハルキが、そして何より、絶望の顔を見せている雫が目に留まる。

「アオ“イ“。お帰り。ドールの起動方法はわかるよね」

イロは優しくそう言うと、アオに手をかしおこす。

何か視界に違和感を感じつつ、アオは立ち上がりあたりを見回す。

そして自身の腕に一つの腕輪が付いていることに気づいた。

真珠の様な白色の球体がついたブレスレット。

アオは無意識にその球体を指で弾く。

まるでこれまでもそうしていた様に。

すると、一線の白い光が伸びそれはアオの腕を中心に一回転し魔法陣の様な物を描く。

アオは手の中に現れた銃の引き金を引いたこう呟いて。

「スタート、プログラム」

—Welcome, Master. Let me guide you into the digital world. Brace yourself—

英語の何を言っているのか分からぬ女性の声が、脳に響きアオのブレスレットは弾け飛ぶ。

破片が数十数百と飛散し空中で留まる。

音を掻き立て変形する破片達。

それはまるで装甲の様な物になり、アオを包む。

「どうだ!!!世界最初のデジタルドール!プランカルキューレだ!!!!!」

イロはハイテンションでそう叫ぶ。

それとは反対に舌打ちをする雫。

シアンとハルキは前の光景が理解できず、驚くことしかできていない様子。

アオは前を向く。

謎の自信が心のうちから湧いてくるんだ。

ここにいるバグを倒せるって。

「まぁ、良い。私のバグちゃん達!行っちゃえ!」

雫がそう叫ぶと5体のバグはアオに飛びかかる。

場所は倉庫。

段ボールや倒れた棚でグシャグシャだ。

アオは静かに太ももに付いたウェポンラックから一本の剣を取り出す。

長い日本刀の様な剣。

その姿を見たイロは驚くが、何か自身の中で納得いったらしく、その場に座る。

「そういう事。やっぱ嫌ですか」

 

アオは深呼吸して、目の前の状況を整理する。

5体の敵が自身に飛びかかっている、多分いつもなら走って逃げるだろう。

だが今は違う。

アオは自然と口角が上がる、それを合図に一気に剣を振るアオ。

ブンと風が断ち切れる音が響く、手には確かな感触を残して。

いきなり5体のバグは真っ二つになり、あたりに屍の残骸をばら撒く。

「はぁ。これは怒られるわね」

雫はそう言い残し、バレぬ内に姿を消した。

アオはその場に崩れ落ちると、纏っていた装甲が消え腕にブレスレットが巻き付く。

「疲れた、、、頭痛いし。体が変な気分だ」

アオは俯く。

すると視界に髪の毛が入ってくる。

—やべーな短い筈なのに、幻覚か。

アオは少しフラフラしながらも体を起こし、シアンとハルキの方向に振り返る。

「大丈夫か?二人とも!」

シアンとハルキを心配する女の声が倉庫に響き渡る。

そして目を丸くするシアンとハルキ。

「お前、アオなのか?」

ハルキは恐る恐ると言った感じでそう問いかける。

「頭でも打ったか?俺だぞ?」

「いや、だってお前、女になってるぞ?」

ハルキはアオを指差し、そういった。

そこに立っているのは、男でなく女。

背は低めで、髪の毛は首を隠すくらいの長さ。

見た目は中学生くらいだろうか、可愛らしい少々童顔の少女が立っていたのだ。

 

 

 

 




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