仮面ライダーシャーマン   作:ボルメテウスさん

106 / 116
心の重なり

「アデル、その力でお前は何がしたい!?」

問いかけた瞬間に、戦いの温度が変わるのが分かった。

言葉は橋で、同時に引き金だ。俺が話した分だけ、相手の正体が露わになる。

 

「世界を正す。愚かで不完全な人間により滅びへと向かう全ての世界を」

重い。

大きすぎる正義は、目の前の命を平気で踏み潰せる。だから嫌だ。

 

「確かに人は不完全だ。一時の感情に飲まれ、争うこともある。でも、信念があれば心は通じる!」

息が苦しい。

それでも言葉を切ったら終わる気がして、声を繋いだまま前へ出る。

 

「貴様ら人間の心は迷いと弱さを生む」

嫌だ。

心を弱さと呼ばれた瞬間、俺の戦う理由が空洞になりそうだった。

 

武器型のガンマイザーが空中で形を変え、刃にも銃にもなる“正しさ”を振り回してくる。

パーフェクト・ガンマイザーのそれは、狙いが正確すぎて、避けた先に次の刃が待っている。

俺が受ければ削られ、避ければ守るべき場所が空く。会話の隙間に攻撃が刺さる。

 

「タケル、距離、詰めないで。狙い、あなたです」

怖い。

ココロワヒメの声が短いほど、状況が切迫しているのが分かる。

 

「分かってる。俺が引き受ける!」

言いながら、俺は武器型の軌道を見た。

直線で来るならまだいい。問題は“曲げてくる”ことだ。刃が曲がるのではなく、世界の優先順位が曲げられていく。

 

「右。踏む位置、変えて」

足元の指示が、命綱になる。

俺は半歩ずらし、刃の通る“正しい位置”から外れる。正しさの中にいれば斬られる、という矛盾が怖い。

 

「確かに、心があるから人は悩み、悲しむ。でも、楽しみを知り、笑顔になれる」

痛い。

痛いのに笑顔を言うのは、嘘を言うみたいで怖い。けれど嘘じゃないから言える。

 

「楽しみ?私には不要だ!」

冷たい。

不要と言い切れる欠落は、強さじゃなくて空洞だと俺は思う。

 

武器型ガンマイザーが分裂するように増え、剣が槍になり、槍が鎖になって空間を縫ってくる。

「当てる」より「逃がさない」攻撃だ。俺の言葉も、俺の手も、逃がさないために塞ぎに来ている。

それでも、背後のココロワヒメが退路を一本だけ残す配置を作っているのが、視界の端で分かった。

 

「背中、私が見ます。あなたは前だけ」

熱い。

この熱は怒りじゃなくて、支えられている感覚だ。

 

「……ありがとう!」

礼が遅いのは分かっている。

でも礼より先に守らなきゃいけないものがあるから、言葉だけ置いて前へ出た。

 

武器型ガンマイザーの刃が、俺の武器へ噛みついた。

火花が散り、腕が痺れる。完璧な相手の衝撃は、受け止めるほど骨に残る。

その瞬間、ココロワヒメが一歩踏み込み、何かを起動させる気配がした。

 

「タケル、武器、預けて。――強化、入れます」

眩しい。

視界の白が一瞬だけ増え、世界が“切り替わる”音がした。

 

ココロワヒメの能力が、俺の武器へ絡みつく。

それは魔法みたいな光ではなく、構造を組み替える手つきのように静かだった。

柄の握りが馴染み直し、刃の輪郭が研ぎ澄まされ、重量配分が変わっていく。

武器型ガンマイザーの変化に“対抗する変化”を、こちらも同じ速度で走らせる。

 

「……何をした」

アデルの声がわずかに尖る。

尖った瞬間が、完璧のヒビだ。

 

「武器の可能性を、引き出しただけだ!」

口が勝手に言った。

俺の言葉が、ココロワヒメの仕事を“意味”に変換する。

 

武器型ガンマイザーが銃へ変じ、光弾の雨を降らせる。

俺は武器を横一文字に振り、刃で弾を“切る”のではなく“逸らす”。

当たれば終わる攻撃を、当たらない攻撃へ変える。

それが強化された武器の性格だった。

 

「人は1人じゃない!仲間がいるから喜びがある!」

熱い。

この台詞は祈りじゃない。合図だ。

 

「了解。射線、通す。今、真っ直ぐ」

ココロワヒメが短く言い、俺の前に“道”ができる。

武器型ガンマイザーの鎖が一瞬だけ絡み損ね、刃がこちらへ届く前に角度が崩れる。

その隙間は小さいが、俺には十分だった。

 

「仲間?弱いから群れを作り、また争う!」

違う。

弱いからじゃない。弱いからこそ、支えるんだ。

 

「何度も衝突し、人は学ぶ。本当の強さと、優しさを!そして目の前の苦難に、勇ましく立ち向かう!」

言いながら、俺は踏み込む。

強化された武器が軽い。軽いのに芯がある。俺の意思が遅れない。

 

武器型ガンマイザーが剣へ戻り、真正面から受け止めに来た。

完璧は完璧で、真正面の力も強い。

だが、こちらには仲間がいる。

ココロワヒメが作った“半拍の遅れ”が、完璧に混ざっている。

 

「天空寺タケル。人間は変わることはない」

冷たい断言が来る。

でも、その断言はもう俺を止めない。止められない。

 

「人は変われる!人には、無限の可能性がある!」

俺は叫び、武器を振り抜いた。

強化された一撃は、破壊ではなく“突破”の性質を持っていた。

武器型ガンマイザーの形が崩れ、光が散り、完璧の一部が撤く気配がする。

 

「タケル、追わないで。次が来る」

ココロワヒメの声が短く、硬い。

その短さが、また現実だ。

 

「分かってる。――でも、止める。必ず」

息が荒い。

それでも武器の握りはぶれない。

一人じゃないという事実が、俺の腕の中で確かな重みになっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。