先日、現れた謎の男。
その男によって、生まれた新たな眼魂を作りだしたのか。
目的は未だに分からない。
「どちらにしても、あのゴーストやスペクターの奴との関係性を知らなければいけない。でないと」
『今後の動きも分かりませんからね』
俺と同じような意見なのか、ココロワヒメも頷いた。
結局は、それが一番の問題となる。
街の中を歩く俺たち三人の横を、鋭いエンジン音が駆け抜けた。
「なっ!?」
反射的に振り向くと、見覚えのある黒色のバイクと青のバイクが猛烈な勢いで車の間をすり抜けていく
「あいつら……追っかけてくるのか!」
バイクの運転席には、ゴーストとスペクターが跨っていた。
二人の間には火花が散るような緊張感が漂っている。
「葉っ!これはチャンスだぞ!」
サクナヒメが興奮した声で叫ぶ。確かにこの二人は俺たちの質問に答えないまま行方をくらませた連中だ。ここで捕まえられれば色々と分かるかもしれない。
「ああ!追うぞ!」
俺はガンガンタマフを取り出し、そのまま自転車に装填する。
それにより、瞬時にバイクへと変形すると共に、2人を追いかけていった。
戦いはすでに終わりを迎えていた。砂煙が立ち込める場所で、倒れた黒いパーカー姿の青年──ゴーストが倒れていた。
対峙するのは青いパーカーのスペクター。その手には、ゴーストから引き剥がされたばかりの金色の眼魂が握られていた。
「自分の命を守れなかった奴が、皆の命を守る為に戦うだと?」
「そうだっ決めたんだ」
「だったら!お前は他人の命の為に自分の命を諦められるのか!」
そう、スペクターと思われる男は、彼に向かって睨み付ける。
その様子を見ていて。
「誰かの為に戦おうとする奴を、そう言う風に非難するのは、どうかと思うがなぁ」
「っ」「えっ」
俺が声をかければ、2人は同時にこちらを見た。
「お前は、あの時の」「シャーマン」
そうして、こちらの存在に気づきながら、スペクターの方は既に構えていた。
「丁度良い、お前の英雄眼魂、ここで貰う」
「残念ながら、俺はその英雄眼魂は持っていない。そして、持っていたとしても、今のお前に渡すつもりはない」
「ほざけ!」『カイガン! エジソン!エレキ!ヒラメキ!発明王!』
スペクターは瞬時に、眼魂を装填した。
同時に、手には銃を持ち、こちらに構える。
それを見た俺もまた、別の眼魂を取り出す。
「戦う気満々か」『カイガン!コロポックル! 小さな力!大きな守り!』
俺もまた、瞬時にコロボックル魂になると共に、迫る雷を氷の壁で防ぐ。
「コロポックル?あれ、それって」
俺はそのまま、真っ直ぐとスペクターに向かって、接近していく。
スペクターから放たれる銃弾は、雷が纏っており、地面に当たれば爆発していく。
「やるしかないのか!」
『あぁ、これじゃあ話し合いもできないからな』
『大丈夫でしょうか?』
ココロワヒメの不安な声が響く。だけど俺は唇を噛みしめた。
目の前には倒れているゴースト――黒いパーカーの青年。彼を守らなければ。
「悪いけど……こいつを傷つけさせるわけにはいかない」
「ならどうする?お前が代わりに俺の的になってくれるのか?」
スペクターが挑発的に笑う。ガンガンハンドから次々と放たれる電撃弾は地面を抉り、土埃が舞い上がった。
俺の叫びと共に、周囲の気温が一気に下がる。掌に嵌まった氷のグローブがさらに冷たく輝きを増した。
「来るなら来いよ!」
接近戦に持ち込むためにダッシュ。だがスペクターは冷静に照準を定めると連続射撃してきた。
バチィッ!バチィッ!
避けきれなかった一発が肩を掠め、痛みと共に痺れが走る。
「くっ……!」
だけど止まらない。木々の間を縫って側面に回り込む。
「甘いな!」
スペクターは素早く銃口を転換。再び電撃が迸る。
「だったら!」
俺は咄嗟に片腕を前に突き出して盾のように構えた。氷のグローブから冷気が噴出し、巨大な壁となって電撃を防ぐ。
ジュワァ……!
蒸気とともに水滴が飛散する。ギリギリ耐えたけど肩で息をするほど消耗した。
『まだよ!』
サクナヒメの声。そうだ、ここで負けるわけにはいかない。
俺はゴーストの方を見る。まだ気絶したままだった。守るべき者がいる限り引くわけにはいかなかった。
「お前のその余裕……いつまでも続くと思うな!」『ダイカイガン!エジソン!オメガドライブ!』
再びスペクターが銃口を向ける。今度はもっと高出力らしい。空中で黄色い火花が散り、周囲の葉っぱが焦げる臭いが鼻をつく。
「さぁな!!」『ダイカイガン!コロポックル!オメガドライブ!』
互いの必殺技が激突し、爆煙が舞い上がる。それによって、戦いは終わりを迎える。
ドォン!!
衝撃波が森を揺らした。俺の放った氷拳とスペクターの電撃弾が空中で激突し、まるで雷鳴のような轟音と共に巨大なエネルギー球を形成する。それが一瞬で破裂し、白い爆煙が辺りを覆い尽くした。
「がはっ……!」
煙幕の中から呻き声が聞こえる。どちらのものか判別できなかったが、確かなことは――俺たちは互角に戦ったということだった。
「……っ!」
煙が徐々に晴れていく。視界が開けると、そこには膝をつくスペクターの姿があった。ガンガンハンドが地面に落ちており、彼自身も肩で息をしている。しかし致命傷ではない。俺も同じだった。
「……引き分けか?」
「……認めたくはないがな」
それと共に、俺達の戦いは、ここで一旦、終わりを迎える。