廃校の門を潜ると、錆びついたフェンスが軋む音を立てた。校舎は外から見るよりもずっと大きく、威圧感があった。窓ガラスは半分以上割れていて、朽ちたカーテンが風もないのに微かに揺れている。
「……なんか怖いです」
篠崎幹太が俺のシャツの裾を掴んだ。彼の母親が襲われた場所だ。恐怖は当然だろう。
「大丈夫。俺が必ず守るから」
俺がそう答えた瞬間だった。
ドカーンッ!!
凄まじい爆発音とともに、正面玄関のガラスが粉々に砕け散った。砕け散ったガラス片が雨のように降ってくる。
『敵襲じゃ!』
サクナヒメの警告とほぼ同時に、無数の弾丸が俺たちめがけて飛んできた。床が跳ね上がり、壁に無数の穴が開く。
「伏せろ!」
俺は咄嗟に幹太を庇いながら廊下に飛び込んだ。シャーマンドライバーが震え、ココロワヒメの声が脳裏に響く。
『葉様、屋上からです!右腕にマシンガンを一体化させた眼魔が!』
見上げると、窓の外に黒い人影。異様に肥大化した右腕に銃身が埋め込まれている。
「あれは眼魔か……!」
黒光りする機械部品でできた異形の右腕。肩口から肘にかけて銃器と融合している。全身からは機械油のような液体が滴り、異様な鉄臭さを放っている。
「葉さん!これで母さんを!」
幹太が涙目で叫ぶ。マシンガン眼魔は俺たちを見下ろし、口元に嘲るような笑みを浮かべた。
銃口から火花が散る。次の連射が始まる気配だ。
「だったら、これを使わないとな」
それと共に、俺は手に持った眼魂を、シャーマンドライバーにミチザネ魂を装填する。
『カイガン!ミチザネ!筆神、三神!稲妻と文学の化身!』
神々しい閃光が俺を中心に渦を巻き始める。黒雲が空を覆い、雷鳴が鳴り響いた。稲妻の紋章が額に浮かび上がり、紫電が身体を包み込む。
ミチザネ魂へと姿を変えた俺は、稲妻の力で空中を駆け抜けた。
新たな姿になると共に、ガンガンタマフを構える。
すると、ガンガンタマフの先端部分にはヨーヨーを思わせる丸い先端が装着される。
俺の周囲に雷撃が走り、銀髪が逆立つ。ガンガンタマフの先端には紫色の稲妻を帯びた巨大ヨーヨーが装着されていた。まるで生き物のように宙を滑る。
「ふん……この程度の鉛玉で俺を止めるつもりか?」
嘲笑うようにそう言いながら、マシンガン眼魔の猛攻を待ち構えた。
銃口が火を吹く。千を超える弾丸が雨のように降り注ぐ。
「来るぞ!すべて受け止めてやる!」
左手に携えたヨーヨーを高速回転させる。金属音が耳をつんざく。まるで壁のように展開した円盤が次々と銃弾を受け流す。
カン!カン!カン!
一つ一つの弾丸がヨーヨー表面で跳ね返る。まるでダンスステップのように華麗に動きながら、全方位から飛来する弾雨を完璧に防ぎ切る。
「この程度の火力で俺を押さえ込めると思うな!」
ヨーヨーを鞭のように振るいながら反撃を開始する。空中を自由自在に跳躍し、稲妻の軌跡を描きながら接近していく。
「うおおおおっ!」
マシンガン眼魔が怯んだ一瞬の隙を突いてヨーヨーを投擲。弧を描いて飛翔したヨーヨーが相手の右腕に絡みつく。
ビリビリッ!!
紫電が走り、マシンガン部分がショートする。鉄屑が飛び散り、焦げた臭いが立ち込める。
「文学の筆は時に槍より恐ろしい……覚えておくことだ」
冷笑しながら宙返りし、今度は両手にヨーヨーを構える。左右から同時に放たれる雷撃の旋風。
『ダイカイガン!ミチザネ!オメガドライブ!』
絶叫とともに両手を振り上げる。二つのヨーヨーが十字に交錯し、巨大な雷撃の光輪となって相手を飲み込んでいく。
ギャアアアッ!!
断末魔の叫びと共にマシンガン眼魔の体が粉々に砕け散る。黒い灰となって風に舞うその姿を見届けると、俺は静かにヨーヨーを手元に戻した。
「さて、次はってっ」
ふと、感じた気配。
同時に俺は走り出した。
そこでは、先程のゴーストとスペクターが再び戦っていた。
先程と同じようにゴーストは負けている様子はあった。
けれど。
「・・・なんだか、放っておけないな」
そうして、俺は再び、その戦いに介入する事になる。
「この気配、またお前かシャーマン」
「また、俺だ、というよりもお前、こいつに恨みでもあるのか」
「貴様に語る必要はない」
それだけ言い、スペクターは、そのまま去って行った。
「・・・はぁ、とりあえず」『あっ、おい、葉』
このままでは、何も始まらない。
そう感じた俺は、変身を解除する。
「色々と聞きたい事があるが、良いか?」
そう、ゴーストと初めての対話を行う事にした。