「君島康介氏がビルから転落寸前だったと!」
御成さんのスマホ越しの切迫した声に、背筋が凍った。森の湿った空気が突然重くなり、サクナヒメの紅蓮の瞳が鋭く光る。
『命を捨てる愚行よ。早急に向かわねば』
俺は即座に愛車のペダルを蹴った。ココロワヒメの細い指が俺の襟元を掴む。
『芸術家特有の執着ですね……「歴史に残る」という妄執が危険です』
鉄錆びた非常階段を駆け上がる。タケルがコンクリートにしゃがみ込む君島氏を抱きかかえ、陽子さんが泣きじゃくっていた。
「お兄ちゃん。どうして…」
コンクリートに刻まれた五線譜。楽譜用紙が風に舞い、インクが血のように滲んでいる。
「歴史に名を残すためだ!名作は作者が死んでこそ名作になるんだ!」
「か~つっ!歴史に名を残すためには精進あるのみですぞ」
御成さんは、そう言って君島さんに叫ぶ。
そのやりとりを見ていて。
「ただ生きていても何の意味もない。死んでるのと同じだ!」
「そんなこと言わないで!お兄ちゃんは…私のたった1人のお兄ちゃんだよ…」
「あなたをこんなに大切に思ってくれている人がいるのに、なんでわからないの?あなたが今ここにいることが大切なの!生きてる意味とか、死んでるとか、生きてるとか、そんなことどうでもいい!」
涙が君島の頬に伝い落ちた瞬間――
コンクリートの隙間から眼魔の亡霊が這い出した。薄汚れた五線譜が鎖のように彼の首を締め上げる。
「自分を信じる…?」
君島の言葉が途切れると同時に、俺の手の中のガンガンタマフが熱を帯びた。
「生命の根源を見失った愚か者め」
サクナヒメの声が森の梢を揺らす。
「ならば示しましょう。本当の『生』の輝きを」
ココロワヒメが囁く。
俺は腰を落とし、ガンガンタマフを両手で構える。
舞うべき神楽は……音楽の神?
君島の血濡れた五線譜が風に舞う。ピアノの鍵盤型眼魔の残滓が蠢く。
「魂よ鎮まれ」
笛の音が空気を切り裂く。ココロワヒメの指先が弦を弾く幻聴。
サクナヒメの足踏みが拍子を刻む。
踊れ。奏でろ。
「!」
君島の喉仏が上下する。ピアノ眼魔が五線譜に溶けていく。音符が銀砂のように砕け、眼魂へ収束した。
「……これか?」
ジーニー魂。
そうして、現れたのはターバンを身に纏った神が現れる。
それを俺が手にした。
それと共に見つめると、タケルの元にも新たな英雄ゴーストが現れた。
けれど、そのままどこかへと向かって行く。
「あれが、葉さんの神?」
「けれど、一体?」
「ならば、見せようか」『カイガン!ジーニー!三つの願い!七海の神秘!』
それと共に変身する。
どこか神秘的なターバンを身に纏う姿へと変わる。
「さて、追いかけようか!」