戦いの余韻がまだ肌に残る中、タケルが手に入れたばかりのベートーベン眼魂を差し出してきた。黄金と黒で構成されたゴースト眼魂——その表面には確かに目を模した複雑な文様が刻まれている。
「これがゴースト眼魂。英雄の魂が宿ったアイテムだ」
タケルが丁寧に説明を始める。その口調はどこか教師のように落ち着いていた。
「出現条件は三つ。まず『英雄に関する物』が必要になる。例えば古い楽譜や遺品みたいなものだ」
彼が指先でくるりと眼魂を回す。
「次に『英雄への思いを持った人』。この場合はベートーベンの音楽に人生を捧げた作曲家だったね」
御成さんが大きくうなずくのが視界の隅に入った。
「最後が『目の紋章』。特定の場所に浮かび上がるんだ。それが揃うと……」
タケルの手の中で眼魂が微かに脈動する。
「ゴーストが現れるんだよ。そう、彼らの姿はいつも透けてて……でもちゃんと意思を持っている」
「そして召喚の仕方は特殊なんだ」
タケルが続ける。
「目を模した印を結んで精神統一し、英雄と波長を合わせる。例えば今回ならベートーベンの苦悩とか栄光とか……そういうものを自分の感情に乗せるんだ」
サクナヒメが遠くで興味深そうに耳をそば立てているのがわかる。普段なら「くだらん人間の遊び」と一蹴するところなのに。
「そうすることでパーカーゴーストが具現化する。それをゴーストドライバーに取り込めば……」
タケルは誇らしげに変身ポーズを決めた。
「・・・それで聞きたいけど、それでシンクロした人は?」
「いや、無事に決まっているよ!けれど、その時に英雄に関する物は無くなっちゃうけど」
「・・・それじゃ違うのか、だとしたら」
俺は、それと共に思い出すのはグリム眼魂が出た時を思い出す。
「俺が神を召喚する時に舞う神楽とは違う感じか」
タケルの説明を聞きながら、ふと思った。
(似てるようで全く違う)
俺がサクナヒメやココロワヒメを呼び出す時は神楽だ。笛や太鼓の音色に合わせて舞い、神との契約に基づいた正確な動作が求められる。一挙手一投足が祖先への敬意であり、間違いは許されない儀式なのだ。
だがタケルのそれは……もっと即興的で個人的感情に依存している。
(俺は契約に基づいて神に仕える者)
(彼は英雄の魂と対話する戦士)
タケルがゴーストドライバーに眼魂をセットする姿が目に浮かぶ。
「そして、タケルと同じようにゴースト眼魂を狙う彼らを含めて、一体何を考えているのか」
未だに謎に包まれているこの戦い。
探り続けるしかない。