地下室の奥に積まれた資料の山を漁っていた。モノリスに関する手がかりが欲しくてな。壁一面に張り巡らされた配線コードが剥き出しになったこの空間は、どこか墓地のように冷たい。
「……ん?」
指先が何か硬いものに触れた。埃にまみれていたそれを引っ張り出すと、古びた円盤だった。直径二十センチほどの金属板。表面には複雑な幾何学模様が刻まれている。
「羅針盤……か?」
慎重に裏返す。中央には方位磁針。
だが、北を指すべき針が六芒星の形に絡まったまま微動だにしない。代わりに針の周囲を囲むように東西南北を司る四つの動物が浮かび上がっていた。龍・虎・鳥・亀。伝承に聞く四聖獣だ。
「四聖獣……」
その時、背後でサクナヒメの気配が膨れ上がるのを感じた。普段は飄々とした彼女にしては珍しく声に緊張が滲んでいた。
『……厄介なものを見つけたな』
「どういう意味だ?」
サクナヒメの言葉は重かった。
「四聖獣は四方を司る護国の神々よ。だが、その力はあまりに強大すぎる。暴走すれば自然災害そのものだ」
羅針盤を握る手に汗が滲む。金属の冷たさが背筋を這い上がる。
「具体的にはどんな……?」
『大地を揺るがし、火を噴き、風を荒らし、水を濁らせる……』
ココロワヒメの声が震えた。科学者の理性を越える恐怖だろう。
「現状じゃ到底扱えん」
サクナヒメが短く切る。
四聖獣の力を制御することは今の俺達には難しい。
「やはり四聖獣の力は強大過ぎるようだ」
僕は四つの眼魂を手に持ってみた。それぞれが微かに脈動し、互いに呼応するように微かに振動している。だが、どれも単独では真価を発揮できないことは明らかだった。
「四聖獣を同時に使えば……」
サクナヒメが不安そうな表情で呟く。
「でも、それって本当に危険じゃない?」
「もちろん危険だ」
俺は厳しい表情で答えた。
背筋を這う冷たい感触。
俺はすぐに羅針盤の前で神楽を舞い、すぐに眼魂に変える。
しかし、変える最中に感じる。それは明らかに悪意が存在し、それはタケルの方向に向かっている。
『何だこれは?』
『あちらでは、何が起きているのですか?』
サクナヒメとココロワヒメは慌てたように問い詰める。
俺も何が起こっているのかわからない。
だが、そのまま見つめた先。
「ほぅ、それが神の眼魂ですか。興味深いですね」
「…お前は、図書館の時の」
そうして、そこにいる全身を黒に染まった奴を見つめる。
「初めまして、西園寺主税と申します。まぁ、私は今から、少し忙しくなりますが」