闘魂ブースト魂となったタケルの拳が空気を灼く。
振り抜かれた右腕が残す赤い軌跡──まるで火龍が舞うようだ。
「ふっ……」
吐き出す呼吸すら熱を帯びている。
対峙するジャベルが防御姿勢を取るよりも速く、灼熱の左フックが炸裂した。
「ぐおぉっ!」
装甲が歪む鈍い音。ジャベルの体が宙を泳ぎ、コンクリートの壁に叩きつけられる。
破壊された建材が煙を上げて崩れ落ちた。
『すごい……』
サクナヒメが呟く。ココロワヒメも目を細める。
『単純な物理的強化ではありません。タケルさんの魂自体が二重になっている』
「二重?」
俺は思わず訊き返した。
サクナヒメが頷く。
『別々の魂が共鳴しているのではありません。一つの器の中で異なる魂が互いに補完し合っています』
「それって融合っていうより……共生か?」
『いいえ』
ココロワヒメが首を横に振る。
『プログラム的なデータの重ね合わせでもなく、有機的な結合です。まるで肉体の遺伝子が書き換わっているような……』
「つまりタケル自身が変わってきてるってことか」
俺は手を握りしめた。
同時に戦場に赤い剣の姿が現れる。
「サングラスラッシャー!」
タケルが鞘から剣を抜く。刀身が炎を吸い込んで赫々と輝く。
「はぁっ!」
袈裟懸けの一閃。剣筋が追いつかぬ速度で火花と共に空気が割れた。
ジャベルの右腕装甲が斜めに切断され、金属片が夜空を舞う。
「まだだ!」
続けて放たれる横払い。燃える弧が弧を描きながら複数回転。
地面を抉りながら突き進む炎の刃──《赤熱波》とでも呼ぶべきか。
ジャベルは跳躍で回避しようとするも、熱波が追尾し膝を焼く。
「がああッ!」
ついに膝をついた敵兵士。肩を震わせて苦悶の息を吐く。
「……終わりだ」
タケルがドライバーのレバーを引く。
『闘魂!ダイカイガン!ブースト!』
全身から紅蓮の炎が吹き上がる。背中から爆発的に放射されるエネルギーが羽根のように広がった。
「ゼロ距離で決める」
地を蹴った瞬間──タケルの姿が消える。
いや、“焼き切って”いた。超高温で空気抵抗を分子レベルで切断したのだ。
「迅烈連環(じんれつれんかん)!」
爆心地のごとき衝撃波。
連続殴打が雨のように降り注ぎ、最後に燃え盛る右ストレートが腹部へと突き刺さる。
凝縮された太陽が破裂したような閃光。光の爆発と共にジャベルは仰向けに吹き飛んでいった。
余韻の熱風が顔を叩く。
戦場に沈黙が落ちた。
「タケル君……!」
声を掛けようと歩み寄った刹那。
振り返った彼の瞳に違和感を覚える。
普段の柔和さは影を潜め、燃えるような熱情と芯の強さが混在していた。
「大丈夫……?」
躊躇いがちに訊ねると、彼はゆっくりと瞼を閉じた。
「……ああ。大丈夫」
静かな声なのに腹の底から響くような重みがある。
『今のタケルさんの中にいる魂……これは』『親子かのぅ?』
そう、サクナヒメとココロワヒメは疑問に首を傾けると。
「えっと、葉さん、そこにいる2人は一体」
「っ!?」
その一言に、俺は驚きを隠せなかった。