ココロワヒメを呼ぶ。
これからの事が決まったのは良いが、俺は一つ、疑問があった。
「ココロワヒメを呼ぶと言っても、どうやって呼ぶんだ?」
それが、一番の疑問だった。
ここまでの出来事を思い出す限りでも、未だにサクナヒメを呼び出した方法ですら、あまり分からなかった。
その疑問について尋ねると。
「まぁ、疑問に思うのは仕方ない。なにせ、この時代では、あまりにも信仰心がないからな。多くの科学の発展と共に、人間達の暮らしが豊かになる一方で、ワシらのような神という存在を信じる者が少なくなった。
だからこそ、普通の人間では見えなくなったからなぁ」
「それだったら、余計に呼ぶのは難しいんじゃないのか?」
「あぁ、普通だったらな。だが、絶対に呼び出せないという訳じゃないんだ」
すると、サクナヒメは笑みを浮かべる。
「このシャーマンドライバーは、人と神を結ぶ為に必要な儀式。これを通じれば、神の国から神を呼び出す事が出来る。まぁ、儀式に必要な物はあるがな」
「儀式?それは」
すると、サクナヒメは笑みを浮かべる。
「まず、その神に対する強い信仰心を持つ者。まぁ、この場合は葉とワシに対して思っていたようにな。これは、別に神自身じゃなくても、ワシの場合だと豊穣神としての信仰した者だと良いからな」
「この場合だと、ココロワヒメは?」
「ふむ、お主ならば大丈夫じゃ!だが、問題は場所じゃ。ワシの場合だと、ここから開拓する事で、呼び出せたが、ココロワは発明を司る。つまりは、発明に関する事で関係がある場所じゃなければ」
「発明かぁ」
その言葉に対して、俺は腕を組む。
しばらく考えていると。
「園田発明ラボ?」
「発明?」
「あぁ、この近くにある場所で、結構面白い物を作っていたんだ。島での暮らしの時に色々と器用に出来たのは、そこにいた園田さんが教えてくれたおかげだからなぁ」
「発明!なるほど、だったらさっそく行ってみよう!」
「あぁ!」
サクナヒメもまた、その言葉を聞いて、乗り気になって、すぐに走り出した。
園田発明ラボには、すぐに辿り着く事が出来た。
「ほぅ、ここが現代の、なんというか、色々とあるのぅ」
「とにかく、呼んでみよう」
「そうじゃなぁ、それじゃ、ほれ」
すると、シャーマンドライバーから飛び出たのは、ガンガンタマフ。
「神楽を舞い、ココロワをこの世に導く時じゃ」
「神楽か、まぁ、あんまりやった事ないけど、とりあえずやるか」
そうして、周囲に誰もいない事を確認すると共に、その手にあるガンガンタマフを握りしめながら、俺はその場で神楽を踊り始める。
サクナヒメ曰く、この舞は神聖なものらしく、正確さよりも真心が重要らしい。
しかし不思議なことに自然と体が動く。まるで昔から知っていたかのように足取りは軽やかだ。
舞が進むにつれて周囲の空気が変わり始めた。視界の端には微かに光る粒子が漂い始めている。それらは次第に集まり、やがて人型のシルエットを形作っていく。
「ほう……美しいものじゃな」
サクナヒメが呟く声すら遠く感じるほど集中している自分に驚く。
ゆっくりと舞い上がる。
それと共に、眼前にいる人の周囲には、歯車が。
歯車のような瞳を持つ少女の姿が、宙に浮かぶ歯車の中に形成されていく。腰まで届く艶やかな黒髪。冠は金色の歯車と熨斗紋章が組み合わさった複雑な意匠。十二単風の衣裳は青藍と漆黒が絡み合い、裾に揺れる青海波模様が電子回路のように輝く。
やがて。
「お久しぶりですね、葉様」
「ココロワぁ!」
そう、サクナヒメの顕現が完了すると共に、サクナヒメがそのままココロワヒメに抱きつく。
「うわっと、サクナさん」
サクナヒメの小さな体を受け止めると、ココロワは優しく微笑む。その背後では巨大な金属製の歯車がゆっくりと回転していた。
「相変わらず元気ですね。神界で心配していましたよ」
二人は互いの頬を擦り寄せ合う。その光景に俺は思わず笑みを零す。
ココロワヒメの視線が突如鋭くなった。
彼女の瞳が、ラボの隅に佇む大型装置を捉えている。
「あれは……!」
そこには、何やら見た事がない機械。
「なんだこれ?」
「さっぱり分からぬ、ココロワ?何がおかしいのじゃ?」
サクナヒメがココロワヒメの表情に不安を覚える。
ココロワヒメの目が細くなる。
「これは……危険です」
「「???」」
俺とサクナヒメは思わず首を傾げる。