地面が、悲鳴を上げるように歪んだ。
謎の敵の全身が脈動し、岩の装甲が内側からせり上がってくる。その表面が裂け、無数の突起が生まれ、瞬く間に巨大な棘の群れへと変貌した。
まるで、大地そのものが牙を剥いたかのようだった。
「――撃ってくる!」
マコトの警告と同時に、棘の嵐が放たれる。
空気を裂く音が重なり、視界が黒い影で覆い尽くされた。
その前へ、迷いなく踏み出したのはアランだった。
「ここは、私が引き受ける!」
玄武の力が一気に噴き上がる。足元から滲み出た緑の液体が、瞬時に集束し、巨大な半透明の盾となって彼の前に展開された。
棘が次々と盾へ衝突する。
轟音。
衝撃。
爆ぜる岩片。
だが、水の盾はただ波打つだけで、砕けない。衝突した岩は、まるで水に沈むように勢いを殺され、軌道を失って次々と落下していく。
「勢い、削げてる!」
タケルの声が弾む。
「今だ、葉様!」
ココロワヒメの呼びかけが、耳の奥に響く。
「――行く!」
俺は羽衣を翻し、一気に前へ跳び出した。
白虎の力が脚に集中し、空気を踏み台にするような感覚で宙を駆ける。
落下してくる岩棘の群れ。
だが、それはもう“弾丸”じゃない。
「はああああああっ!」
フロンティアガミ・ブレードを振るう。
刃が白く輝き、風を裂き、岩へと食い込む。
一閃。
二閃。
三閃。
切り裂いた瞬間、岩は粉砕され、火花のように砕け散る。
俺は止まらない。
次の棘、さらに次の棘へと斬り込み、空中で身体をひねりながら連続で斬撃を叩き込む。
岩の雨が、白い閃光の連なりに変わって消えていく。
砕け散った岩片と土煙が、一気に爆発したように広がり、戦場を覆い尽くした。
視界、ゼロ。
だが――
「このまま突っ込む!」
炎の気配が、俺の横を一気に追い抜く。
タケルだ。
鳳凰の翼を広げ、炎を纏いながら煙の中へ突進していく。
「右から行く!」
「了解、左は俺が取る!」
声だけで位置を合わせる。
視界はない。だが、気配はある。
俺とタケルは、ほぼ同時に粉塵を突き抜け、謎の敵の目前へ躍り出た。
「斬るぞ!」
「今だ!」
赤と白の刃が、左右から交差する。
装甲が軋み、岩の外殻が深く裂ける。
衝撃が内部へ伝わり、巨大な身体がわずかに揺らいだ。
その隙を、逃さない。
「追撃だ!」
マコトの声と共に、蒼い雷が迸る。
青龍のエネルギー弾が、裂け目へ正確に叩き込まれる。
ほぼ同時に――
「受け取れ!」
アランが水の盾を回転させ、そのまま前方へ投げ放った。
盾は空中で巨大な円盤となり、轟音を立てて敵の胸部へ激突する。
斬撃。
雷撃。
水撃。
三方向からの集中攻撃。
謎の敵の動きが、明確に鈍った。
地面がうねり、岩壁を形成しようとするが、展開が追いつかない。攻撃の間隔が崩れ、連携への対応が間に合わなくなっている。
「効いてる……完全に、崩してる!」
タケルが叫ぶ。
「今なら――決められる!」
俺は大きく頷いた。
「全員、距離を取れ!」
四人が一斉に後退し、自然と正方形の陣形を取る。
空気が、張り詰める。
全員が、同じタイミングを感じ取っていた。
――ここしかない。
「合わせるぞ!」
「了解!」
「いける!」
「行こう……!」
同時に跳躍。
その瞬間、四人のベルトが共鳴し、重なった音声が戦場に轟いた。
『ダイカイガン!四聖獣!オメガドライブ!』
赤い炎がタケルを包む。
青い雷がマコトを貫く。
白い風の光が俺の身体を覆う。
緑の防護光がアランの全身を輝かせる。
四色の流星が、一直線に並ぶ。
謎の敵は最後の抵抗として、瞬時に巨大な岩壁を形成した。
だが――
「――砕く!!」
四人同時の叫び。
ライダーキックが、岩壁へ激突する。
一瞬、壁は耐えた。
だが次の瞬間、内側から光が溢れ、音を立てて崩壊した。
爆音。
閃光。
衝撃波。
壁は粉砕され、謎の敵の巨体が大きく吹き飛ばされる。
俺たちは着地し、同時に振り返った。
抉れた大地。
崩れ落ちる岩の巨体。
まだ、完全には倒れていない。
だが、勝ち筋は、はっきりと見えていた。